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「陸の孤島」に現実味 気仙沼線、復旧の見通し立たず
 | 津波によって、トンネル(右上)まで真っすぐ延びていたレールが押し流され、ぐにゃりと曲がった=8日、宮城県南三陸町のJR気仙沼線清水浜駅 |
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宮城県北の沿岸部を走り、東日本大震災で被害を受けたJR気仙沼線は復旧の見通しが立たない。沿線自治体には不安が広がり、特に同線の中間に位置する南三陸町の住民は「陸の孤島」化に危機感を募らせる。移動手段だった自家用車の多くが津波で流された上、仙台、気仙沼方面への代行バスもないためで、住民は一日も早い地域の足の復活を望んでいる。
JR東日本によると、町内5駅のうち、陸前港、歌津、志津川、陸前戸倉の4駅が津波で流失した。清水浜駅は辛うじてホームが残ったが、付近のレールは無惨に折れ曲がった。線路寸断にとどまらず、鉄橋の崩落が至る所で発生、トンネル内にもがれき類や漁船なども入り込むなど甚大な被害を受けた。 「気仙沼まで通わせてやりたいのだが…」。同町志津川下保呂毛の遠藤修さん(50)は、息子の気仙沼高2年翼さん(16)の通学を心配する。 志津川駅から学校に最寄りの不動の沢駅(気仙沼市)までは普通列車で約1時間かかる。始業式を間近に控え「町内から気仙沼の高校に通う子どもたちは少なくない。何とか足の確保を」と訴える。 同町歌津寄木の畠山隆さん(56)も、娘の志津川高2年千絵さん(16)のことが気に掛かる。 畠山さん一家は仮設住宅が歌津地区にできるまでの間、地元を離れることを考えている。避難先で高校に編入したとしても、不安の種は歌津に戻った後の通学環境だ。最寄りの歌津駅から学校のある志津川駅までは2駅ある。「スクールバスがなければ通えない」と頭を抱える。 交通弱者の高齢者にとっては、さらに不安がのしかかる。 町内の中核病院で志津川地区にある公立志津川病院は仮診療所で診療を再開したが、歌津地区の千葉由二郎さん(78)は「移動手段がない。気仙沼線が早く復旧してくれると助かるのだが」と話す。 南三陸町には現在、高速バスなどの別の交通機関もなく、沿線北部の気仙沼市より事情は深刻だ。気仙沼市内では、大船渡線が気仙沼―一ノ関間で運転を再開。仙台へは高速バスが運行中だ。JR東日本の清野智社長は5日の記者会見で、気仙沼線を含む7路線について「責任を持って復旧させる」と強調。ただ、復旧の時期については全く見通しが立たない。 変わり果てた志津川駅を目の当たりにした同町志津川南町の千葉勇喜さん(58)は「駅舎も、レールも流された。元の状態に戻すには並大抵の労力ではいかないだろう」と立ちすくんでいた。(吉田尚史、水野良将)
◎鉄道を復興の柱に
東北福祉大の星山幸男教授(社会教育学)の話 津波対策として内陸部に鉄道を再建するとすれば、トンネル工事など費用が膨らむ。どの程度の地震を想定して駅や線路を再設計するのか。綿密な復旧計画が求められる。鉄道は観光振興など地域活性化にも不可欠。自治体側は鉄道活用を復興ビジョンの柱に据え、JRと連携しながらまちづくりを考えるべきだ。
[JR気仙沼線] 気仙沼(気仙沼市)―前谷地(石巻市)間の約73キロ。1977年に全線開通。志津川(宮城県南三陸町)―仙台間は快速で約1時間半。東日本大震災によって線路や橋など約250カ所の被害が確認されている。
2011年04月19日火曜日
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