東日本大震災の津波で被災地の農地が浸水し、塩害が懸念されている問題で、県は1999年の八代海沿岸の高潮被害で、農地を短期間で回復させた経験を生かそうと、復旧支援に乗り出した。過去に大規模な農地の除塩に取り組んだのは全国で熊本県だけで、県は農林水産省の要請に応じて、塩分を除去する技術マニュアルを提供。技術者の現地派遣も検討している。
高潮による塩害被害を受けた農地の復旧作業=2000年1月、宇城市松橋町
農水省の推定では、福島、宮城など太平洋沿岸6県で、全農地の2・6%にあたる計2万3600ヘクタールが津波で浸水。塩分が多い土壌では農作物が育ちにくいため、稲作などに影響が出ることが心配されている。
熊本県は99年9月の台風18号による高潮で、宇城市や八代市など八代海沿岸の水田や畑計約1400ヘクタールが浸水した。塩害が懸念されたが、県や地元自治体が連携して、農地にたい積した海底ヘドロの排出や除塩に迅速に着手。当初、数年かかるとみられていた復旧が早く進み、露地野菜は半年後に収穫でき、稲作も翌年の田植えに間に合った。
県は一連の取り組みを技術マニュアルとしてまとめており、今回農水省に提供。マニュアルには、「石灰を使って塩分を抜く技術」「6千カ所の土壌調査の結果」「塩害にあった土壌でのキャベツ、トマトなどの試験栽培データ」などが盛り込まれている。
農水省技術普及課は「千葉県や香川県などにも塩害からの復旧マニュアルはあるが、熊本県のマニュアルは実証データなどが格段に充実しており最も参考になる」と評価。被災した自治体に熊本県のマニュアルについて情報提供しており、青森県などが関心を寄せているという。
県農林水産部は「農業再開には除塩が不可欠で、被害が小さい所は今年の作付けに間に合う。職員派遣を含め、できる限りの支援をしたい」としている。(上田良志)
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