厚生労働省は19日、社会保障審議会生活保護基準部会の初会合を開き、5年に1度の生活保護水準の見直しに着手した。同省は1950年の生活保護創設以来初となる制度の抜本改革に踏み切る意向で、並行して「国と地方の協議」も始める。来年秋にも結論を得て、過去最高の更新が続く保護費について13年度からの総額抑制を目指す。しかし、「最後のとりで」である生活保護の切り下げは最低賃金など他制度にも影響を与え、社会のセーフティーネット水準全体を押し下げる可能性もある。【鈴木直】
「増税の議論が出てくる時に耐えられない制度ではいけない。納税者に一定程度理解される仕組みにしてほしい」。19日の同部会で、厚労省の岡本充功政務官は「納税者の理解」を繰り返した。
生活保護費の財源は全額税金だ。受給世帯数は、92年度の58万5972世帯を底に上昇し続け、09年度には127万4231世帯に達した。給付は09年度に3兆円を突破し、11年度予算には3.4兆円が計上されている。
部会では、総務省の全国消費実態調査のデータと照らし合わせ、保護基準を検証する。基礎年金との差や、最低賃金との比較などが論点になる。
生活保護のうち、基本的生活費を賄う「生活扶助」は、60歳代の単身高齢者の場合、地域により月額8万820~6万2640円。一方、基礎年金(11年度)は満額でも月額6万5741円で、都市部では生活保護費を下回る。
最低賃金も「逆転現象」が生じている。東京、宮城、神奈川など5都道県では、生活扶助と住宅扶助(家賃相当分の生活保護)の合計が、各地域の最低賃金を上回っている。東京都の場合、時給換算で保護費の方が最低賃金より10円高い計算だ。
生活保護費は国が4分の3、地方が4分の1を負担するが、リーマン・ショック後は失職して都市部に流れてきた人が生活保護を受け、都市の自治体財政を圧迫する例が増えている。大阪市の10年度予算案は保護費が2863億円で一般会計の約17%に達した。
こうしたことから、地方自治体の間にも生活保護の見直しを求める声が高まっており、厚労省は昨年秋から自治体と協議を続けている。東日本大震災で中断していたが、5月の大型連休明けにも再開し、給付抑制策を「税と社会保障の一体改革案」に盛り込む方針だ。自立・就労支援策に力点を置き、働いて収入を得ても保護費が減らない仕組みを拡大することが検討されている。政令市の市長会は、働く意欲のない人への給付を3~5年で打ち切ることも検討するよう求めている。
生活保護の見直しを巡っては「保護費が年金や最低賃金より高いのはおかしい」との批判は常にあり、同省はこうした指摘も念頭に置いて制度改革を進める意向だ。ただ、最低賃金は生活保護に配慮して決めるよう法律で定めており、最低賃金より高いことを理由に生活保護を引き下げれば、最低賃金の引き上げ幅を鈍らせるなどの影響が生じかねない。
毎日新聞 2011年4月19日 20時46分(最終更新 4月19日 23時38分)