8回、ピンチを抑えガッツポーズでベンチに引き揚げるヤクルト・由規=神宮球場で(佐藤哲紀撮影)
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◆ヤクルト1−0中日
9回裏無死一、二塁、サヨナラ犠打野選でのまさかの幕切れ。「次の回も投げるつもりだった」と延長に向けてスタンバイしていた由規は「一瞬、何が起こったのか分からなかった。まだ興奮してる」と、満面の笑みを浮かべた。
初回は3連続四球で1死満塁のピンチを招いたが、ブランコを二ゴロ併殺。「0点で切り抜けられたことですぐに気持ちが切り替えられた」と9回まで散発3安打で無失点。最終回にも154キロをマークするなど、球威も戦意も衰えず味方の反撃を待った。
どうしても勝ちたい理由があった。被災地の仙台から両親が駆けつけていた。いつもは、来ることを前もって連絡してくれるのに、それがなかった。震災の影響で大変なのだろうと思っていたところ、登板約2時間前に「神宮に来てるよ」とサプライズメール。片道約360キロの道のりを、日帰り日程で、車を走らせて来てくれた。余震のニュースを聞くたびに、安否を確認してはいたが、試合後、震災以来初めて両親と顔を合わせてホッとした。
「僕に心配かけないよう、いつも『こっちは大丈夫だから野球に集中しろ』と言ってくれて頑張ってこられた。本当に勝てて良かった」と由規。「私にとってはきょうが開幕戦。最後まで闘争心を見せてくれた」と言う父・均さんは宮城観光タクシーの代表取締役。仙台から被害の大きい大船渡へ物資を運ぶなど、復興に向けて現地で頑張っている。その父に、完封での今季初勝利という最高のプレゼントができた。 (竹村和佳子)
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