【藤原記者解説・波紋広がる学校の放射線量目安の公表】
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県内の保護者などから「子どもを登校させて大丈夫か」といった不安の声が上がっていることから、文部科学省などは、避難区域などを除く地域の保育所や学校で、校庭や屋外での活動を制限する目安となる、空気中の放射線量を定めました。
学校の放射線量の目安はどのように定められたのか、藤原記者の解説です。
藤原記者:
今回示された学校での屋外活動を制限する目安。改めてどんな判断があって決められたものなのでしょうか?
まず今回示された目安は、こちらです。
1時間あたり3.8マイクロシーベルト以上の学校ということになっていますけれども、これは政府の原子力災害対策本部が、とりあえずの考え方としてこの目安を決めたんです。
根拠となったのは放射線の専門家で作るICRP=国際放射線防護委員会です。ここが示している、事故が収束した後の基準として示している値なんです。この基準では、1年間で1ミリから20ミリシーベルト以上は浴びないようになっています。この20ミリシーベルトを今回、政府は採用しました。
その上で、子どもが1日8時間、屋外で過ごしたとしても年間20ミリシーベルトを超えない屋外での放射線量というのを計算したところ、この1時間あたり3.8マイクロシーベルトと数字が出てきたんです。
で、敷地の中で実際の測定といいますのは、敷地の中で複数の場所で放射線量を測定し、それを平均した値がこの目安以上になった場合は、校庭など屋外での活動を制限するとしました。
先週行った調査では、福島県内の13の保育所、幼稚園、小学校、それに中学校が目安を超えたため、制限の対象となりました。
まずこの避難区域とか、この計画的避難区域から見ると、広がったという感じがするかも知れません。
今回のこの目安ではですね、今のこの状態がずっと続いたとして最も多くの被ばくが、放射線を受けた場合を想定していますので、少し範囲としては広くなっています。
ただ、図では広く色がついていますけれども、実際には非常に限定されたところに放射線が観測されているということですので、目安を超えたからといって、すべてが放射線量が高いということではありません。
実際のところはですね、この想定ではずっとこのまま続くということになっているんですけれども、放射線の量は実際下がってきていますし、また屋内に入りますと半分以下になります。実際に体に受ける放射線の量としてはさらに少なくなると見られているんです。
ですからその目安を超えた幼稚園や、小中学校などでも、室内での活動には特に制限は設けられず、校庭や屋外での活動に限って、制限するとしました。
具体的には屋外での活動を1日1時間程度にするといったことが考えられています。
政府はこうした制限を守って対応すれば、健康への影響はないとしています。
ただ、体に受ける放射線の量はできる限り低く抑えるというのが国際的な大原則となっています。今回は政府もできるだけ被ばくの量を抑えるためにいくつかの注意点を合わせて示しているんです。
その注意点がこちらです。
屋外活動の後は、手や顔を洗って、うがいをするですとか、登校、登園時帰宅時、靴のどろを落とす。そしてつく土ぼこりが多いときは、窓を閉めるといったようなことが示されています。
こういう注意は土に付着した放射性物質からの放射線を防ぐ上では有効です。
ただ、政府はあわせてこの注意を守らなかったとしても、健康に影響が出るという訳ではなく、あくまでできるだけ放射線の量を、放射線を浴びる量を少なくするための対策だといふうにしているんです。
ただし、目安の公表にあたって政府は、安心してもらうことで、これが守られなかったとしても健康に影響がないというふうに言っているんですけれども、こうしたことはですね、逆に実際にはじゃあ守るべきなのか、守らなくてもいいのかということで混乱を招くおそれもあるということです。
このように注意すべき点をあげてはいるんですけれども、実際には例えば靴の泥を落とすときにですね、落とした泥はどうすればいいんだろうかとかですね、あとは土ぼこりが多いときといいますけれども、土ぼこりが多いというのはどういう状態なんだろうかという言ったようなことが、実際の生活の中ではこう迷ってしまうようなことが多く出てきます。
ふだんの生活で我々は放射線を気にするということは、これまであまり経験したことがないわけですから、できるだけきめ細かく示していくことが必要です。
今観測されている、放射線のレベルを見てみますと、実際の所はまだレベルは低いと言えます。健康への影響を考えた時にはですね。
ただ、新たな事態が起きるたびに対応がかわっていくと、住民は放射線の専門家ではありませんので、不安を抱くといったことにつながりかねません。今回も通常より高い放射線の量が検出されている、その状態が続いていることでですね、取り急ぎこの新しい目安を作った訳ですが、実際のところ政府内でどういう議論がされてこの値が出てきたのか、またより厳しい値を設定するという選択肢はなかったのかといったようなですね、そういった情報が十分に公開されているとは言えない状況です。地震や、津波、そして原子力発電所の事故とですね、これまで想定外のことが続いています。
ひたすらその「健康に影響がありません」ということを強調するだけではなく、今回のように住民の行動に直接影響がある決定を行う場合はですね、できるだけその情報を公開していくことが、住民の方々の不安や不信を、不安や不審を解消するのに欠かせないということがいえます。
投稿者:かぶん | 投稿時間:14:50
| カテゴリ:解説コーナー
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