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構造力学 −構造屋さんの入口−
それでは、まずは基本中の基本である、構造力学について
軽く触れてみましょう。コツをつかんでしまえばとても簡単なので、
リラックスして見てくださいね。
支点の3形態
部材を支えるための支点は、主に3つの形態があります。部材にかかる
力には3種類あります。それは、
1.縦方向の力(鉛直荷重)
2.横方向の力(水平荷重)
3.回転する力(モーメント)
があり、そのうちどの力を受け止められるかで、支点の形態が分かれています。
(1) 移動端(ローラー)
縦方向の力のみ受け持つことができる支点です。足元にはローラーがあり、
横方向力を受けると動いてしまうので、力を負担できません。また部材を支える
点はピンになっていて回転力には抵抗できません。
(2) 回転端(ピン)
縦・横の直線的な力を受け持つことができる支点です。足元は固定されている
ものの、部材を支える点はピンになっていて回転は自由にできます。部材同士の
接合部にもピンが使われることがあります。
(3) 固定端(フィックス)
回転力をふくめて、どんな力も負担することができます。
それぞれの支点を力学では以下のように表現します。
移動端 ローラー |
回転端(ピ ン) | 固定端 フィックス |
|
支点 | 部材間 | ||
構造の3形態
力学で扱う部材の形は、主に3種類に分けられます。梁は、それだけで「構造」
と呼べるのかどうか疑問ですが、一応、形態を分類するという意味でここに入れました。
(1) 梁(単純梁)
横架材をピンとローラーで支える構造のもので、力学で扱う形としては最も基本となる
ものです。梁の端部がピン又はローラーで、端部に曲げモーメントがかからないものを
単純梁といいます。
(2) ラーメン
柱と梁で構成されている構造のもので、建築物を構成する1つのパーツといっていい
構造です。
(3) トラス
すべての部材を、形が三角形になるようにピンで接合したもので、すべての部材に軸力
しかかからないために比較的細い部材で大きな構造を形成することが可能となります。
接合部は○印で描いてありませんが、トラスの場合は、必ずピン接合です。ピン接合と
決まっているので、わざわざ○印で描かず、省略しています。
大スパンの屋根などでトラス構造が見られます。
梁 | ラーメン | トラス |
応力の3形態
部材が荷重などの力を受けたとき、部材の内部で受ける(応じる)力を応力といいます。
その応力にも3種類あります。
(1) 軸方向力(軸力)
部材に対してまっすぐに掛かる力のこと。引張力と圧縮力があり、記号は N で
表されます。引張がプラスで圧縮がマイナスの値となります。
(2) せん断力
部材に対して、互いに反対方向に力がかかり、ずれるようにかかる力のことで、記号は Q
で表されます。ずれるような力が時計回りの場合プラス、反時計回りの場合はマイナスとなります。
(3) モーメント
部材に対して、回転するように働く力のことをモーメントといいます。記号は M で表されます。
時計回りがプラスで、反時計回りがマイナスです。
軸方向力 | せん断力 | モーメント | モーメント(部材内での曲げ) | |
正 (プラス) |
||||
負 (マイナス) |
モーメントは、直接回転力がかかっている場合と、垂直・水平荷重が距離をおいて回転力が発生する
場合の2通りがあります。単位は【kN・m】【N・cm】など、荷重と距離の積となります。
普段なじみのない単位ですが、建築や機械関係などで使われています。また、日常生活でも、
モーメントは「てこの原理」を数学的に表現したものですので、知らないうちに私達は利用していることに
なりますね。
例)
上図のA地点のモーメントは、
MA=3kN×2m=6kN・m
となります。
これは、以下の状態と同じです。
・モーメントと作用線
モーメントを考える上で、避けて通れないのが「作用線」という考え方です。
モーメントは荷重と距離の積ということは上記の通りですが、距離はどこからどこまでを
指すのか、それが問題となります。
言葉で表すと、ある点に力が掛かっているとき(この点のことを作用点と言います)、
力が掛かっている方向に線を引っ張ります(この線を作用線と言います)。
モーメントを求める点から作用線に対し直角になるように線を引いたとき、その線の
長さが作用線との垂直距離となります。
モーメントを求める際に掛ける距離とは、この作用線との垂直距離のことなのです。
図で考えてみましょう。
下図の図1のような、片持ちラーメンの先端に荷重Pが45度の角度で掛かっている状態
を想定します。この時、荷重が直接掛かっているB点が作用点です。
荷重に対し、その方向に沿って線を延ばします。図2の点線が作用線です。
ここで、片持ちラーメンの支点であるA点のモーメントを考える場合、荷重を水平方向と
垂直方向に分解して考えることもできますが、A点から作用線に向かって垂直に線を
延ばして(図3)、その線の長さ(垂直距離)を考えると、
荷重P×作用線との垂直距離
という計算だけで求めることができ、力の分解などという遠回りな手順を踏む必要が
無くなります(もちろん部材ごとの軸方向力等を求める場合には力の分解をする必要
があります)。
図1 | 図2 | 図3 |
ちなみに、この場合の作用線との垂直距離は、A−C間の下半分である1200の長さの部分を底辺
とした直角二等辺三角形と見なせるので、
であり、このことから荷重PをkN単位だとすると、A点に掛かるモーメントは約
0.849P[kN・m] と
求めることができます。
余談ですが、構造力学ではモーメントでつまずく人が多く、モーメントでつまずく理由がこの作用線
との垂直距離の概念だと私は思っています。上記のような問題のとき、A点に掛かるモーメントを
P×1.2m
などとやってしまうために、どうしても答えが合わず悩んでしまうようです。
ここでしっかり理解しておきましょう。
ちなみに、ここでわかることは、力の掛かっている部分が作用線上であり、同じ方向ならば、どの
位置であってもA点に掛かるモーメントは変わらないということです。作用点がB点であっても、
A−C間の中央部分であっても変わらないのです。
このことを「移動性の法則」といいます。言葉そのものはあまり使われてませんが、このような
概念を把握しておいてください。