vol.6  リアリティを求めて。 ①「氷上体験」




都内、某所。

吉田さんとわたしは、リンクの上にいた。

フィギュアスケートを描く以上、
実際にリンクの上での感覚を、改めて知る必要がある
というわけである。

真央さんがリンクで感じている風やスピード感、
目にしている風景を、リアリティのあるものとして
読者に届けたい。

そんな吉田さんの情熱に引っ張られ、
リンクにやって来た。

しかし、わたしは、ほとんどスケート未体験。
最初は立つだけで精いっぱいだった。

吉田さんのほうはというと、
すいすいとリンクを周回し始めていた。

その周回コースのなかでは、
フィギュアスケート教室が開かれていた。

色とりどりの衣装を着た、
小学校中学年くらいの女の子や男の子が
軽やかに滑り、高らかに跳んでいた。

こんな小ちゃな子たちがすごい。

それにしても、一般客と混じっての練習とは。
聞いてはいたが、実際に見て改めて驚いた。

休憩を挟みながらの2時間ほどの氷上体験のあと、
リンク内のショップの店員さんに
スケート靴や衣装についていろいろと話を聞いた。

このとき見聞きした知識は、
のちに小塚コーチへの取材時に役立つことになる。



ちなみに、この氷上体験のあと、吉田さんは、
真央さんが情熱を傾けているフィギュアスケートとは何か。
それを頭だけでなく、心と体でもわかりたいという気持ちがさらに膨らみ、
人づてに、フィギュアスケートの元女子選手に
個人レッスンをお願いしたそうです。


(文=S編集部員)



NEXT予告 → 6行に込めた、妥協なき情熱。

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Vol.1 執筆者を誰にすべきか。
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Vol.3 このシーンは必見。
Vol.4 ライバル構図。
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