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[22786] [習作]英雄伝説~焔の軌跡~ クロス元(テイルズオブジアビス)
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/26 10:15
はじめまして、soranoというものです。暇つぶしに作ってみました。
更新は不定期になると思われるのでそれでもよければどうぞ。
また、にじファンにも同じものがあります。
後、序盤部分でにじファンのLUNAR~英雄伝説~の文を一部流用していますが
作者様から許可を得ているので安心してお読みください。

また、作者のオリジナル設定等ありますのでそれでもよろしければどうぞ…






プロローグ





まもなく、俺は消える。

それは、覚悟していた事でもあったし、やらねばならない義務でもあった。

ルーク・フォン・ファブレは、その為だけの存在だったのだ。

いくらユリアの預言書に詠まれていた事とはいえ、アクゼリュスの人々を消滅させた事は事実だったから。

だから俺は、本当は生きていたかったけど、後悔なんかしていない。

だけど、俺の傍にいて、ずっと見守ってくれたティアが唯一の未練だった。

創り物の劣化品の俺でも、彼女と共に生きたかったな、と思う。
また、レプリカであっても親友でいてくれたガイにも申し訳なかった。
そして、ローレライから運命の宣告を受けるその時だった。
『ルーク。お前を異世界に移動させられる。』
「は?」
『だから、その異世界ならば我の力でお前の存在を存続させられるということだ。』
「ちょ、ちょっと待てよ・・・・・・異世界って・・・・・・俺は消えないでそこに行くのか? 帰ってくることはできるのか?」
『残念だが1回限りでしかできないので帰ってくることは無理だ。だが我は嬉しいぞ。ルークがこのまま消滅するのは、我としても心苦しかったからな』
「そうか…帰ってこれないのか。」
 唖然としながらルークは寂しそうに嘆いた。
『ルーク、異世界でもしっかり生きろ。これはローレライとして命令だ』
「ああ、解ってる。命を粗末にはしないさ。ただ1つだけお願いがある」
『なんだ?』
「帰れないのだったら、俺が異世界にいる事を、そこで生きている事をティアとガイに教えてやってくれ』
『わかった。約束しよう』
 ローレライの言葉にルークは頷いて、身体は序所に消滅を始める。
『達者でな・・・・・・そして、わが力の一部だが持っていけ。役に立つだろう。』
「ああ、この力、人を助けるために使うよ。ありがとう。」
 ローレライの鍵がが光り、それがルークの胸元に飛び込んでくるのを見届ける。
 ルーク・フォン・ファブレ。
 レプリカ・ルークは消滅し、異世界に転移した。




[22786] 設定
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2011/01/22 08:42
ルーク・フォン・ファブレ レベル70

HP7000
ATK600
DEF500
SPD50
ATS400
ADF300

クラフト
魔神拳 10 直線距離の離れた敵にダメージを与える
烈破掌 20 ダメージ&駆動解除
双牙斬 20 2回攻撃
真・招来 30 一定時間ATK30%、DEF30%アップ クリティカル率30%アップ
粋護陣 40 全ての攻撃を1度だけ防げる
烈震天衝 30 中円攻撃
紅蓮襲撃 40 小円・遅延攻撃
翔破裂光閃 50 ダメージ率200% またこのクラフトの後すぐ自分の番になる 

Sクラフト
レイディアント・ハウル 自分自身を軸とした中円攻撃50%の確率で即死
ロスト・フォン・ドライブ 直線攻撃ダメージ率500% ただしローレライの鍵を装備していないと撃てない




[22786] 第1話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/09 14:28
ゼムリア大陸西部に位置する街、リベール王国。

 千年以上の歴史を誇る小国で、君主制を布いているが貴族制は廃止されている国家であり、2つの大国『北のエレボニア帝国』と『東のカルバード共和国』と国境を接している。
 小国でありながらも豊富な七耀石資源と高い導力器技術、そして現在の国王・第26代目となる女王アリシアⅡ世の巧みな外交によって両大国とも対等な関係を保っており、緊張感の高い両大国の間に位置する緩衝国として働いている二つの大国に挟まれていた。

 導力器「オーブメント」と呼ばれる技術が発達した世界。
 そんなゼムリア大陸西部の情勢は今、緊張状態であった。
 そしてここロレントは現在エレボニア帝国の侵攻にあい、破壊の一途を辿っていた。

「エステル、大丈夫?」
「うん、大丈夫。でも、怖いよ…」
「大丈夫、何があってもあなたを守るわ。」
2人の名は、女性の方を『レナ・ブライト』と云い、女の子の方を「エステル・ブライト」と云った。

 レナやエステルは茶色の髪をしていて、瞳は綺麗な紫。
 特にレナは綺麗な長い茶色の髪を腰まで伸ばし、穏やかな雰囲気も相なってなんとも優しい雰囲気を纏っていた。
 そんなレナの血を色濃く受け継いでいるのか、エステルもまたレナに近い容姿をしている。
 
 レナの旦那にしてエステルの父親はカシウス・ブライトと云い、このリベール王国においては大佐の肩書きを持ち、また『剣聖』と称されるほどの腕前を持つ、まさにリベール王国において重要且つ最強の軍人であった。
カシウスの作戦により大打撃を受けた帝国軍人達がカシウスに対する報復行動として今、レナ達を探して、故郷であるロレントを破壊しているのであった。

「何処にいった!」
「探せ! カシウス・ブライトに対する重要な人質だ!」
「市民も皆殺しだ! 殺せ!」
軍人の罵声と共に幾人もの足音が時計台を通り過ぎて行く。

(家に逃げるにしてもこれじゃ、逃げれない…)
レナはなんとか家までの安全なルートを考えていたがいくら考えても帝国軍人がうろついているため、動けない。だが、それがいけなかった。
 ―――――――ドォォォン!

 激しい閃光。一瞬だけ辺りが闇に包まれ一瞬で切り替わり白い世界に。
 つんざくような爆発音と共に、ソレはレナと愛娘に襲いかかった。

「エステル――――――――!」
「きゃぁ~~~~~~!」

 爆破され崩れ落ちる時計台。
 レナは力の限りに必死でエステルを突き飛ばした。できるだけ遠くへ。母親として愛娘を守りたい一心で。
 それは己を顧みない助け方であった。

「おかあさん!!」

 地面に転がったエステルは起き上がり母親がいるはずの方へと目を向けた。
 エステルの目に飛び込んできたのは、あった筈の時計台が半ばから無くなっていて、瓦礫となって崩れ落ちている光景と。

 その瓦礫の下敷きになっている母親の姿であった。

 エステルは必死に駆け寄り、母へと泣き縋った。

「おかあさん! おかあさん!」
「…………エス…………テル…………怪我は、ない?」

 意識が飛んでいたのか、エステルの声でようやく目を開け、弱々しい笑みを向けるレナ。
 そんなレナを見て、なんの知識もない子供であるエステルも本能で悟ったのだろう。
 母は死んでしまうと。

「おかあさん! しっかりして!」
「……エステル……逃げなさい」
「いやだぁ!」
「お母さんの事は……いいから……早く……逃げなさい……」

 爆破されたのはエレボニア帝国の兵士。おそらく取り残された事からリベールに対して腹いせまがいに、ロレントの象徴の時計台を破壊したのだろう。
 そう予測したレナは、エステルを一刻でも早くここから逃がそうとする。。

「だれかぁ! おかあさんがたいへんなの! だれかたすけて~~~~~!!」

 逃げ惑う人々に助けを求めるエステルだが、人々もそれどころではない。
 自分の身が危ないのだ。一刻もはやく逃げ出したいのだろう。誰もエステルに取り合わないし、目も向けない。

「だれか~~~~~!」
「エス……テル……」

 全く逃げようとしないエステルに、レナは全身に走る痛みに必死に耐えながらエステルに話しかけようとしていた。
 自分が死ぬ前に、早く逃げろと云うつもりだった。

その時、事態がさらに急変した

キュイーーーーーーーーーーーーン

その場にまばゆい光が走り、そこから一人の紅い髪をもつ剣士が現れた。

「ここは…な!!」
ルークが目を開けるとそこは戦場ともいえる地獄絵図だった。
「ねえ、おかあさんが大変なの! あの石どけるの手伝って!」
そこにエステルがルークを見つけ助けを求めるようにルークの服をひっぱていた。
「君は…ってそれどころではねぇな!わかったすぐに行く」
ルークはレナを見つけそこに行き、瓦礫やレナの状態を見て考えた。
(これは…今すぐにでも助けないとマズイ!!仕方ない。あまり、使いたくはなかったがそうはいってられないな。)
「今、助けるから君はちょっと離れてて」
「え…うん。」
エステルは瓦礫から少し離れた場所に移動した。それを確認しルークは瓦礫に両手をかざした。
「ハァァァァ!!」
ルークは超振動を使い、微妙な力加減で瓦礫を消滅させた。
「お母さん!!」
エステルはレナに駆け寄り呼びかけた。
「エ…ス…テル。私のことはいいから逃げなさい」
「いやだよ!お母さんもいっしょじゃなきゃダメ!」
ルークはレナの状態をみて、心の中で焦った。
(この傷では…クソ!!俺がティアやナタリアのように回復魔法が使えたら…なにか…なにかないのか!!)
ルークは自分の持ち物を調べて、ある薬を見つけた。
(これは…これなら助かるぞ!)
ルークはその薬を見つけホッとした。その薬とはエリクシール。万物の霊薬たる薬といわれその効果は死者さえも生き返すほど。ヴァンとの戦いで持っていきそのまま使わずに残っていたのだ。
「今すぐ、これを飲んでください!」
「え…ハイ」
ルークはレナの口にエリクシールの瓶をあてて、少しずつ流しこんだ。そして、
レナの体に光が走り、傷一つない体に戻った。
「お母さん!」
エステルはレナの傷が治ったのを見て、抱きついた。
「よかった…よかったよ~」
「これは、いったい…」
レナは抱きついたエステルを受け止め、死ぬはずであった自分の状態を見て驚いた。
(よかった…こんな俺でも人1人の命を助けられたんだ)
ルークは抱き合っているエステル達を見て、一人の命を助けられたことに嬉しさをかみしめた。

するとそこにバタバタと響く足音が聞こえ、あっという間に時計塔の周りは武装した帝国兵に囲まれてしまった。











後書き
次回、ついにゼムリア大陸最初のバトルです。そして、いきなり、レナ生存という原作ブレイクです。ゲームをやっていてやっぱりあの人には生きてほしいですから。カリンも生存させたかったのですが自分の文才ではカリン生存以降のヨシュア、レーヴェが書けないのでカリンは申し訳ありませんが原作のままです。



[22786] 第2話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/09 14:28
「いたぞ!あれが、カシウス・ブライトの妻と娘だ!」
「へっへっへ。これでカシウス・ブライトに報復できるぜ!」
帝国兵に囲まれて、レナはエステルをギュッと抱きしめた。
「お前ら、この人達はただの民間人だぞ!軍人のくせに民間人に手を出すつもりか!」
とルークはエステル達をかばうように前に出て叫んだ。

「るせぇ!テメェには関係ないだろ!死にたくなければそこどきな!」
ルークは殺気立つ帝国兵を見て戦いは避けられないと悟った。
「あの、どこのどなたかは存じませんが私達のことはいいですから逃げてください!」
とレナはルークにむかって逃げるように言った。

「…どうしても、この人たちに手を出すっていうんだな?」
ルークは覚悟を決めたように帝国兵たちに言った。
「あ!?それがなん「魔神拳!」…ガハ!!」
と一人の帝国兵が最後まで言うことはできず吹っ飛ばされた。
「テメェ――――何をした!」
「もう一度言う。この人達に手をだすなら命の保障はしないぜ?」
いきり立つ帝国兵に向かって戦いの構えをしたルークが言い放った。

「殺せーーーーーーー!」
帝国兵たちが銃を一気に放った。それを見てレナがエステルを抱きしめ、ルークはレナ達の壁になるように前をでてある構えをした。
「粋護陣!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

放たれた銃弾は全て防がれ兵たちはそれをみて驚愕した。
「な、無傷だと!!」
「もう一度撃て!!」
ルークは帝国兵達が銃を構えるのを見て、両手を地面につき超振動を開放した。
「悪いが一気に決める!ハァァァァァ!これでも喰らえ!レイディアント・ハウル!!」
「ギャァァァァァァ!!」
「痛い!!いやだ!死にたくないよ!!」
「チクショォォォォ!化け物が!!」
超振動をまともに受けた兵達は消滅していった。また、運良く余波だけ喰らったものもいたがそれらも足や手が欠けたりして呻いていた。

「あなたはいったい…」
レナは呻いている兵達をエステルに見せないように抱きしめて、ルークを見て驚愕した。
「話は後です!どこか安全な場所はありませんか!」
とすぐにこの場からの離脱が必要と感じたルークは叫んだ。
「あ、ハイ!ここをまっすぐ抜けて森の中に入れば私たちの家があります!」
「わかりました!!そこまで護衛するので案内をお願いします!」
「どこのどなたかは知りませんがお願いします!こちらです!」
レナはルークから安全な場所を聞かれ、自分を助けてくれた青年を少なくとも帝国兵ではないと思い、すぐに答え、エステルと手をつなぎ走りだした。ルークもそれを見、走り出した。

「市民を見つけたぞ!殺せ!」
帝国兵が走っているレナ達に銃剣で突撃しようとしたが、
「双牙斬!」
「ギャア!」
フォニックブレードを抜いたルークに斬られ絶命した。
「エステル、見てはダメ!!」
「ウ…(パタン)」
絶命した帝国兵をみないようにレナはエステルに忠告したが、運悪く死に顔の兵をみて、エステルは気絶した。それを見て、レナがエステルを背負った。
「すみません。こんな小さい子に血生臭い所は見せたくなかったのですが…」
「いえ、戦争ですから仕方ありません。それより急ぎましょう。もう少しで町をぬけれます。森に入れば兵達も来ないでしょう。」
エステルに人の血生臭い所をみせて罪悪感の沸いたルークはレナに謝ったが、レナは仕方がないとわりきり走りだした。ルークもそれをみて、走り出した。

そして3人はブライト家に無事着いた。
「よかった…ここなら兵達も来ないでしょう。ありがとうございました。」
「いえ、俺は当然のことをしただけですから。」
お礼をいったレナにルークは返し来た道を戻ろうとしたところを、レナが呼び止めた。
「待って下さい。どこに行くつもりですか?」
「適当に隠れれる場所を探しにいくだけです。大丈夫です。戦いには自身がありますから」
とルークはフォニックブレードをポンと叩いた。
「あの、もしよければ家に来てください。お礼もしたいですし。」
「そんな!お礼だなんて!それに娘さんに嫌なところも見られましたから、きっと娘さんも俺を怖がるでしょうし。」
ルークは帝国兵を殺したことをエステルに見られたことを思い出し暗い顔をした。
「お兄さんいっちゃうの?」
「エステル!起きたの?」
気絶して眠っていたエステルが起きルークを呼び止めた。
「いやだよ!あたしもお兄さんにお礼がしたい!いっちゃやだ!」
「エステル…あの、お願いします。エステルもこう言ってるので家に来て下さい。よかったら戦争が落ち着くまでいてもかまいません。」
(どうしよう…でも、この世界を知るチャンスでもあるし、こんな森の中の上親父さんが見当たらないこの人達も心配だし、せっかくの好意だし受けておくか…)
「わかりました。お邪魔でなければお願いします。」
「よかった。こちらへどうぞ。」
「わ~い!お兄さんどうぞ!!」
そして3人はブライト家に入っていった。

そして数カ月が立ち、のちに百日戦役とよばれる戦争が終結した。


後書き
エステル、レナ、ルークの口調が変になっていないか心配です。確か断髪後のルークは基本、仲間以外の他人には敬語で話していましたよね?次はルーク、剣聖との邂逅です。そしてこれからの方針を決めます。



[22786] 第3話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/10/31 14:19
ロレント郊外にある一つの家
今、そこに一人の男がそこに向かって鬼気迫る勢いで走っていた。

その男の名はカシウス・ブライト
リベール戦役において大きな貢献をし、エレボニア帝国を退けた重要人物の1人だった。
彼は戦後処理が本格的になる前に戻ってきたのだ。

なぜ、軍の中枢ともいえるカシウスが戦後処理をする前に帰ってこれたのは、
捕虜にした帝国兵が持っていた導力無線からある情報が入って来たのだ。それは、
「カシウス・ブライトの妻と娘を見かけたので討取った。」
カシウスを動揺させるためにもたらせた、この情報は見事カシウスを動揺させた。

この情報を聞きカシウスは顔を真っ青にし、一刻も早くロレントに戻ったのだ。
なぜ、軍の重要人物であるカシウスの突然の帰省が許されたのは、モルガンやリシャール等、軍の上層人物達がカシウスのために融通を効かせたからだ。
また、一般兵等カシウスの周りの人たちはカシウスのおかげで帝国を追い払えたことを
理解しており誰もが、快くカシウスを送り出したからである。

「レナ!エステル!」
ドアを蹴破るようにして帰ったカシウスが見たのは、いつもと変わらず食事の用意をしている
愛妻と椅子に座ってストレガ―社の新作モデルの雑誌を見ている愛娘であった。
「おかえりなさい、あなた。」
「おかえりなさ~い、お父さん!」
軍部で聞いた悲報と全然違うことを理解し、呆然としていたカシウスだったが
いつものレナとエステルの笑顔で迎えられ、ハッとし、レナとエステルの体中をペタペタ
さわり、無事や傷がないこと、そして帝国兵に襲われなかったかを聞いた。

レナは生涯初めて見る驚愕した夫を落ち着かせ何が起こったかを説明した。

時計塔の瓦礫の下敷きになり、死にそうになったことや帝国兵に襲われたのは本当。
だが、気付けば自分にのっていた瓦礫はいつのまにかなくなり、どこからともなく
現れたルークという青年に何かの薬を飲まされたら傷が一瞬で治った事や、また、帝国兵に襲われた時も
ルークが不思議な力を使って帝国兵達を消滅させたことや逃げてる最中に襲いかかられた
帝国兵もルークが斬り伏せたこと。
後にエステルから聞いたら、ルークが瓦礫の前に両手をかざしたら両手が光り、瓦礫が消滅したこと、
そして、ルークをお礼として今、この家に滞在させていること。

レナは自分の体験した全てを説明した。

「それは気になるな。だが、その前にそのルークという青年に私はお礼をしなければな。」
「ええ、私も気にはなっていたんですが、せっかく助けてくれたのですからあまり深くは
聞かないでおこうと思ったんです。それとルーク君は今買い物に行ってもらっていますから、
もうすぐ帰ってきますよ。」

カシウスはレナから聞いたことに驚いた。自分の知る限り医学の最先端である
七曜教会やレミフェリア公国のセイランド社が出している薬では
死にそうになっている人間の傷を一瞬に治す薬等ないし、

また、人間や物質を一瞬で消滅させる事はありえない。
最初はアーツや兵器を考えたが攻撃アーツに対象物を
完全消滅させるようなアーツはないし、
兵器でも導力器の最先端である自国、リベールではそのような兵器は開発等していないし
敵国であるエレボニアもそのような兵器があれば、最初から使っているはずだからありえなかった。

「ただいま戻りました。」
そこに食料が入った紙袋を片手で抱えたルークが帰ってきた。
「あ、おかりなさ~い、ルーク兄!」
「おかえりなさい、ルークさん。ちょうどよかった。今、主人が帰って来てお礼がしたいそうです。」
「君がルーク君か。話はレナから聞いた。妻と娘を助けてくれて本当にありがとう。」
カシウスは振り返りルークに頭を深く下げた。

「そんな!俺は自分がしたいと思ったことをしたまでです。頭をあげてください!
(この人強い…ひょっとしたら師匠(せんせい)以上かも…)」
ルークは頭を下げたカシウスに恐縮しつつ、カシウスの実力を感じ取り驚いた。

そこにエプロンを外したレナがやってきた。
「晩御飯ができましたよ。2人とも玄関で話さず食卓で話したらどうですか?」
「おおそうか!レナの食事は久しぶりだ!さあ、ルーク君もこちらに来てくれ。」
「いつもながら、ありがとうございます。」
カシウスは久しぶり食べる愛妻の夕食に喜び、またルークも新たな大陸に来て数カ月
レナに食事を提供してもらっていることにお礼を言った。

そして、食後エステルを寝かしつけたレナが居間に降りてきた。
食事の際、カシウスがルークのことを聞きルークは自分のことを話すのは
エステルにとってあまり聞かせられない話なのでエステルが眠ってからだと言ったのだ。
「エステルは今、ぐっすりと寝ましたよ。」
「そうか…ではルーク君、君の話を聞かせてくれ。」
「わかりました。」

そして、ルークは自分のことを説明した。
異世界の住人であったこと。自分がオリジナルのルーク・フォン・ファブレの
レプリカという創りモノの存在であったこと。
ローレライという星の神ともいえる存在を開放する為の存在であったこと。
自分の力のこと。また、レナを治した薬は最終決戦の時にもっていたオールドランドにある薬のなかでも
最高峰であったこと。そして、消滅するところをローレライに力を貸してもらい
この異世界、ゼムリア大陸で生きれるようになったこと。

その全てを語り終えた後、ブライト家は沈黙につつまれた。

カシウスは「そうだったのか…」とつぶやき難しい顔をした。
また、レナはルークに本当の両親がいなく、また育ての両親の父親のほうが国の繁栄のために
自分の息子を利用したことに悲しみと怒りを抱いた。

「それでルーク君、君は今後どうするか決めたのかね?」
「はい。こうやって生きれるようになりましたから、
人助けをして生きていこうと思っています。」
今後どうするかをカシウスに問われ、ルークは自分がしたいと思ったことを口にした。
「ふむ…ルーク君。うちの子にならんか?」
「ハ…?」
「まあ!それはいい考えね、あなた。」

ルークは突然言われたことに呆然としまい、レナはカシウスの考えに手を叩いて喜んだ。
「そんな!俺みたいな他人が…!」
「他人ではないよ。君は数カ月この家に住んでいた。それはもう私にとっては君は家族だよ。」
「そうよ、ルーク君。主人が言っているように私にとっても、そしてエステルにとっても
あなたは家族よ。」
ルークは恐縮して断ろうとしたが、2人の言葉に迷った。

「その…俺みたいな人間でない存在が本当にいいんでしょうか?」
「君は立派な人間だ。そんなことを言ってはいけない。」
「そうよ。主人の言うとおりだし。レプリカという存在も理解したけど
私にはあなたが人間のようにしか見えないわ。」
「ありがとうございます…」

ずっとレプリカという存在に悩みを抱いていたルークにとって2人の言葉は
自分が好きだった少女と親友に言われた言葉で、ルークは涙を流した。
「その…お願いします。父さん、母さん…」
「ああ。よろしくな、ルーク。」
「ふふ、エステルもきっと喜ぶわ。」
恥ずかしそうに自分達のことを父、母というルークに2人は笑顔を見せた。

「それで、ルーク。人助けをしたいというなら。遊撃士になったらどうかね?」
「遊撃士…ですか?」
カシウスは遊撃士を知らないルークに遊撃士とはどのような存在かを説明した。

遊撃士とは民間人の安全と地域の平和を守ることを第一の目的とし、魔獣退治・犯罪防止に従事する存在であること。また、軍等国に縛られない存在であること。

「君の見た目なら16歳以上でいけるだろう。どうかね?」
「ハイ!俺がしたいことといっしょですし、この力役立てるためにもなりたいです!」
「そうか。わかった、明日遊撃士協会に研修を受けれるよう手配しておこう。
今、リベールの遊撃士達は猫の手も借りたいほどだ。きっと君を歓迎してくれるだろう。」
「ありがとう、父さん」
「ああ、もう遅いから明日に備えて寝ておけルーク。」
「はい。お休みなさい。父さん」

ルークはこれからのことを決め、明日からのことを考えワクワクし寝室に戻った。

そして、ルークが寝室に戻った後2人は今後のことなど話し合った。
「まさか、異世界というのが本当にあるとはな…」
「ええ、私も驚きましたけど、ルークはただ住んでいたところが私達と違う。
それだけでしょう、あなた?」
「そうだな…全くお前にはかなわないよ…」
2人は笑いあっていたがカシウスが真剣な顔をし、自分もこれからどうするかを決めた。
「レナ、私はもう軍人をやめて、ルークと同じ遊撃士になることに決めた。」
「あなた?」
「今回の事で痛感した。軍人では身近な存在は守れない。だから遊撃士に
なることに決めた。」
「あなたがそう決めたのなら私はそれに従います。」
一家を預かる男として、職を手放すその行為にレナは笑顔で応援した。

その後、カシウスは周囲の反対を押し切ってリベール王国軍を退役し遊撃士になった。
また、ルークもわずか1か月で研修を終了し準遊撃士になった後、
わずか半年で全ての地方から推薦状をもらい、正遊撃士になった。
その実力は別の地方で若手の中でもすでに最強と謳われている2人の警察官並といわれ、
ルークのみため、いつも本気で遊撃士として取り組んでいるその姿から
「焔のルーク」と呼ばれるようになった。

そしてその後、ある教団の壊滅作戦にカシウスが指揮することになり、またすでに
B級の中でも1,2を争う実力を持つルークも参加することになった…




後書き
皆さんも予想していたと思いますが、遊撃士になりました。実力は強すぎじゃないの?
と思うかもしれませんが、最終決戦後のルークの実力ならこれぐらい評価されてもいいと思いB級にしました。そして、零の軌跡を知っているみなさんなら知っている事件が出てきました。ここでもある人物の未来にルークが乱入します



[22786] 第4話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/01 23:03
昨日が休日だったのでがんばって作ってみました!そしてここでルークが介入する人物についてモロバレです(^^)




~某日 某所~


そこには、各国、各組織の最高戦力の者達が集まっていた。
高ランクの遊撃士や各国の名将といわれる
軍人をはじめとし、七曜教会からは星杯騎士団
また、さまざまな貿易が盛んな自治州、クロスベルの軍組織の代わりである
クロスベル警察からは最強と謳われている部署の人間が集まっていた。

そこに一人の紅い髪を持つ青年、ルークが入ってきた。
「遅くなってすみません。前の依頼がながびいてしまったので。」
「来たかルーク。何、今から作戦会議を始めるところだ。
気にするな。」
最後に来たルークは謝ったがカシウスやほかのメンバーも気にしなかった。

      ざわざわ…
(あれが遊撃士協会の次世代を背負うといわれる遊撃士の一人
「焔のルーク」…まだ、成年ではないではないか。)
(噂によると息子がいなく剣を捨てたカシウスの後継者だそうだぞ。)
初めてルークを見、その若さに周りは驚き小声で話しをしていた。

(噂の的になるのって気持ちよくないな~ジェイドやナタリア、アッシュも
最初こんな気持ちだったのかな…)
居心地悪くするルークはかつての仲間ですでに地位が高かった仲間を思い出し
その気持ちを考えていた。そこに一人の青年が話しかけた。

「やあ、ルーク久しぶりだね。噂は聞いているよ。」
「クルツ!久しぶりだな!それにしてもよかったよ。顔見知りが父さん以外
いなかったから緊張してるんだよな~」

「ハハ、私も若輩ながら今回の作戦に参加することになったよ。
君もここに来たということは君も参加するんだろう?
君の実力を知っている私としては心強いよ。」
「おだてるなよ。俺はただ、いつも本気で依頼をこなしているだけさ。
今回の作戦に参加したのも幼い子供をさらっている外道の連中が許せないだけだよ。」

話しかけた青年はクルツ・ナルダン
リベールの遊撃士のNo2ともいわれる遊撃士で「方術使い」という異名を持ち
ほかの遊撃士、準遊撃士から慕われている凄腕の遊撃士であった。
ルークも最後の推薦状をもらうためにグランセルに来た際、土地勘のないルークの世話をしてくれ、
また、正遊撃士の心構えを教えてくれた恩人の1人であった。

ちなみにルークは最初敬語で話していたが正遊撃士になった際
クルツから「今日から君も同僚だ。同僚に遠慮をする必要はない。」
といわれ親しい口調で話しているのだ。

「へえ~お前が「焔のルーク」か。確かにその髪をみたらそう思うな。」
「…あんたは?」
「俺か?俺はガイ・バニングス。クロスベルの警察官さ。
ちなみにこっちの仏頂面のやつはアリオスっていう俺の相棒さ。」
「誰が仏頂面だ…アリオス・マクレインだ。今回の作戦に
参加することになったクロスベルの警察官だ。よろしく頼む。」
「あなた達があの「最強」といわれている警察官の…
俺の名はルーク・ブライトです。よろしくお願いします。」

突然話しかけた青年2人にルークは驚いたが2人の正体を聞き
姿勢を直した。

「あ~そういう堅苦しいのはいいぜ。年齢が近いようだし気軽に呼び捨てでいいぜ。」
「そうか。わかった。これからそうされてもらうよ。それにしても名前がガイか…」
「ん?俺の名前になんかあるか?」
「いや、俺の親友でガイ・セシルっていう奴がいたからさ、ややこしいなと思ってさ。」
「へぇ~、俺のほうもセシルっていう名前で恋人がいるんだが
面白い偶然だな。それだったらお前の呼びたいように呼んだらいいぜ。」
「わかった。ガイだとややこしいからバニングスと呼ぶよ。」
「おう!よろしくな!」

意外なことで共通点がありルークとガイは話に花を咲かせていた。

「さて、これで全員揃いましたな。それでは全国でおきている幼児誘拐犯
グループの壊滅作戦を行いたいと思います。」
一通り周りのざわめきが静かになったのを確認しカシウスは
作戦会議を始めた。
「みなさんもご存じの通り各国で幼児の誘拐が目立っております。
みなさんの協力やわれわれ遊撃士達の調べでわかったことですがこの犯行は
全て同じグループであり、そしてそのグループは各国で"ロッジ"と呼ばれる
拠点が数か所あることが判明しました。今回の作戦は犯人達に気付かれないように
また、一刻も早く子供たちを助けるため
少数精鋭でチームを分け一気に拠点を叩くことにしました。
グループのメンバーは今から読み上げるのでしっかりと聞いておいて下さい。
ではまず、カルバードのAロッジの攻略メンバーは…」

そうしてカシウスがメンバーを読み上げていった。
「最後に…"楽園"と呼ばれる拠点の攻略メンバーは
  クルツ・ナルダン、ジン・ヴァセック、
ルーク・ブライト、ルフィナ・アルジェント!以上の4人が
攻略メンバーです。各自健闘を祈ります!」

読み上げられた者たちは各自同じメンバー同士集まり、細かい内容や
お互いの紹介等を確認しあい始めた。その中でガイがルークに話しかけた。

「よう!ルーク。俺達とお前は別のチームになっちまったな。」
「ああ、ちょっと残念だけど仕方ないよ。お互いがんばろうぜ!」
「おう!そっちもな!」
「おい。何してるガイ。こっちも始めるぞ。」
「すいません!セルゲイさん。今いきます!じゃあなルーク!」
ガイもルークから離れ自分のチームに戻った。

そして、ルークのチームも同じように始めた。
「クルツ!いっしょになったな!よろしく頼む。」
「ああ、よろしく頼む。」
「お前さん達がリベールの「焔」と「方術使い」か。俺はジン・ヴァセック、よろしく頼む。」
「あなたがあの「不動」の…こちらこそよろしくお願いします。」
「俺のほうもよろしくお願いします。(デケェ!ラルゴ並のでかさだ!)」
クルツは他国で有名なジンに恐縮し、またルークはジンの大きさに驚いた。

「ふふ、私はこの中では仲間はずれですね。星杯騎士のルフィナ・アルジェントです。
高名なみなさんの足をひっぱらないよう
精進していきたいと思っています。よろしくお願いします。」
「あなたがあの星杯騎士の…よろしくおねがいします。」
「よろしくな。」
「よろしくお願いします。(この人、隙がない…自分では遠慮してるけど
この人も、かなりできる…!)
笑顔でルフィナは挨拶し、ルーク達もお互いのことを紹介した。
また、ルークはルフィナの立ち振舞いを見てタダモノではないことを悟った。


「さて、重要となるお互いのバトルスタイルを紹介しようか。
私は見ての通りこの槍を使っての中距離攻撃を得意としている。
また、東方の術「方術」をいくつか修めているからサポートはまかせてくれ。」
「俺は剣を使っての近距離が得意さ。アーツも使うけど基本俺は
近距離のほうが得意だから、そう思ってくれ。」
「俺はアーツは得意ではないが、接近戦には自身がある。
また、クルツとは違うが気功をいくつか使えるから
非常時には回復できるから安心してくれ。」
「私は七曜教会に伝わる"法術"が使えるので回復は任せて下さい。
あと私の武器はこれらです。」

お互いが武器等を見せ合ってる中、ルフィナだけ2種類の武器を見せた。
「ほう、ボウガンですか…導力銃が普及している中珍しいですね。」
「こちらの変わった形の武器はなんだ?見たところ剣にみえるが…」
「これは法剣(テンプルソード)。星杯騎士に伝わる一般的な武器の一つで
伸縮自在な剣で鞭のように伸び、離れた敵を斬ることができますし
もちろん剣なので接近戦もできます。」
「へぇ~便利な剣ですね。ということはルフィナさんは前衛、後衛
両方ともできるってことですよね?すごいですね。そんな器用な事が
できるのはほんのわずかじゃないですか。」
ルーク達はルフィナの武器を珍しがり、またルークはかつての仲間で
両方とも器用にこなしていた仲間、ジェイドを思い出していた。

「ふむ…ならばルークとジンさんが前衛で私は二人の少し後ろでカバーし
ルフィナさんは後ろからボウガンで援護しつつ、必要と感じたら前衛に
行くというのはどうだろうか?」
「ああ、それでいいぜ。」
「俺も問題ない。」
「隊列もちょうどいいと思いますし、私も賛成です。」
「よし!決まりだな。ほかのグループも動き出したようだし我々も
指定の地点へ行こう!」
「ああ!」「おう!」「ええ!」

そしてルーク達は指定の地点に行き、作戦開始時刻を待ち、ついにその時刻が来た…

後書き オリジナル設定としてクルツ、ルフィナが教団壊滅作戦に参加します。あの2人なら今の時点で作戦に参加してもおかしくない強さですし。

後、ガイ、ルフィナの口調が変になってないか心配です。



[22786] 設定2
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/02 01:15
ルーク・ブライト

レベル80

HP8500
EP445
ATK740
DEF650
SPD55
ATS500
ADF400
MOV10

装備
武器 フォニックブレード
防具 ブレイサーコート
靴  レアブーツ
アクセサリー グラ―ルロケット 
       ローレライの宝珠(一人終わるごとに自らのHP EP CP全て5%回復)

オーブメント(無属性)並びはエステル、ロイドと同じです。
装備クオーツ HP3 省EP3 行動力3 回避3 攻撃3 天眼

クラフト
魔神拳⇒剛・魔神拳 10 直線距離貫通ダメージ
Sクラフト追加
殺劇舞荒剣 単体 かつての仲間の技をヒントにしカシウスに手伝ってもらいルーク自ら編み出した奥義。ダメージ率600%



ルフィナ・アルジェント

レベル60

HP5000
EP588
ATK550
DEF400
SPD40
ATS700
ADF550
MOV7

装備

武器 魔弓アイオーン,霊剣シルヴァーン
防具 正騎士の服
靴  正騎士の靴
アクセサリー ホーリーロケット
       星杯騎士のペンダント(ATS、DEF、ADF20アップ 対封魔)
オーブメント(幻属性)並びはケビンやエリィです。
装備クオーツ EP3 精神3 回避3 省EP3 凍結の刃 騒動2

クラフト
クロスギアレイジ 20 単体 ダメージ率150%
ホーリーブレス 50 HP、CP70%回復 戦闘不能解除
アークフェンサー 20 攻撃(地点指定)、技・アーツ駆動解除
インフィニティスパロー 30  大円攻撃
セイクリッドブレス 30  大円 状態異常HP40%回復

Sクラフト
グラールスフィア 全体 星杯を掲げて祈る。2度(CP最大時は3度)だけ完全防御する。
リヒトクライス 全体 慈愛溢れる祈り。HP全快戦闘不能解除。CP最大時に使用するとDEF+70%の追加効果。
へヴンパニッシャ― 中円 法剣とボウガンを使う法技。ダメージ率300%


後書き ジンとクルツはあえて設定しませんでした。ここで設定すると特にジンのレベルがおかしくなりますし。ルフィナの設定は安易と思われるような気がしますが許して下さい…



[22786] 第5話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/04 23:09
いよいよ、本編までのプロローグがクライマックスに入りました。

~某日 深夜~


「時間だ。ほかのチームもそれぞれ突入を開始しているだろう。私達も行こう!」
「ああ!」「おう!」「ええ!」
「だが、その前に作戦内容をもう一度だけ確認しておこう。まず、優先するのは
さらわれた子供達の救出。」
「そして、犯人グループの拘束とできれば今回の犯行の理由の解明ですね。お2人とも問題ないですか?」
「大丈夫だ」「問題ないぜ」
「と…そうだ!ルフィナさんこれをよければ持っていて下さい。」
「これは…?見たところ何かの人形のようだけど…?」
「これは俺の故郷のあるまあ、戦いに行く人に渡すお守りの一種のようなもんです。
俺達の生命線のルフィナさんが持っていたほうがいいかなと」
「まあ、ありがとう!ありがたく、受け取っておきますね。」

ルークはルフィナにオールドランドにいた時から持っていたアクセサリーを
ルフィナに渡した。だが、それがルフィナの運命を左右するとは渡したルークや
また、受け取ったルフィナもその時わからなかった…

そして、突入する拠点の近くの森に隠れているルーク達は作戦内容や武器の確認等をし
作戦を開始した。

「見張りが2人いるな…よしルーク手伝ってくれ。」
「わかった。いくぜ…」
「「剛・魔神拳!!方術、儚きこと夢幻の如し!!」」
「ガハ!」「な…グフ!」

2人の放ったクラフトが僅差で命中し悟られることなく見張りを倒した。
「さすがだな…それにルーク、今拳から衝撃波をだしていたが格闘もできるのか?」
「まあ、少しだけな…そんなことより急ごう!」
「待った。その前に…方術、貫けぬこと鋼の如し!!」
クルツの放った方術の光が全員を包みこんだ。

「これで身の守りが少し高くなっただろう。」
「いつもながらありがたい技だ。サンキュー、クルツ。」
「ほう、これが「方術」のひとつか…俺の使う気功とはまた別のものだな…」
「すごい効果ですね。これなら私達が使う"法術"と大して変わりませんね。
世界は広いですね。」
それぞれが感想を言い、そしてついに突入を開始した…

「行ったか…まさか遊撃士達がここまで来るとは思わなかったな…」
「どうするのレーヴェ?結社の命令は"教団の人間は殺せ"だけど…」
「やつらは恐らく敵を倒しても峰打ちにするだろう。
子供達はやつらにまかせておけばいい。ヨシュア、
お前は奴らに気付かれず後を追い奴らが倒した敵にとどめをさしていけ。
そして頃合いを見計らって館に火を放て、お前ならできるだろう?
俺はここで逃亡者の確認をし滅する。」
「わかった、じゃあ、行くよ」
ルーク達が突入した後銀髪の青年と琥珀色の瞳と黒髪を持つ少年が
どこからともなく現れ、少年は一瞬のうち気配を消し姿も消え、
青年もそれを見届けるといつのまにか消えた…

「な…侵入者だと!!」
「見張りはどうした!!」
「ク…とにかくやつらを無力化しろ!!」


館に入ると複数の傭兵達が現れ、ルーク達に攻撃しようとしたが、
「ぶっ潰れちまえ!烈震!天衝!」
「せぇぇぇい!雷神脚!」
「はあっ!せいっ!」
「そこ!ハッ!」
「「「ガハ!!」」」
「「「グフ!!」」」
「ガ!」「ゴフ!」
ルークとジンが複数の敵を攻撃するクラフトを発動して敵を倒し
また、かれらの攻撃から逃れた者たちはクルツの槍とルフィナのボウガン
にあたり気絶した。

そしてルーク達は襲いかかってくる敵を倒し子供達を探しさまざまな部屋に入り
子供達を探したが1人も見つからなかった。
「クソ!!子供たちはどこにいるんだ!?これだけ探してるのだから一人ぐらい見つかっても
いいハズだぜ!!」
「まだ、私達が入っていない部屋に隠されているか、もしくは隠し部屋のような
ものがあるかもしれませんね。」
「とにかく全ての部屋を回ろう。ルフィナさんの言う通り我々の入っていない部屋等に
隠されている可能性は高い。」
「そうだな…急ぐぞ!」

あせるルーク達は子供達を探しある部屋に入った。
「ここは…見たところこの館の責任者の部屋のようだな。」
「あそこの机になんかの本がおいてあるぜ。」
「見てみた方がいいだろう。もしかしたら子供達の手がかりが載っているかもしれん。」
「ええ。賛成です。」

ルーク達はおいてある本を見たがそこには驚愕することが書いてあった。

今回の犯行グループは<D∴G教団>という名前で空の女神を否定する
異教の教団であり今回の犯行目的は
子供達を「儀式」の生贄にし悪魔の呼び出しや新薬の実験体にするという
正に狂気の団体であった。また、ルーク達がいる拠点"楽園"は子供達を使い
各国の有力者達の慰めものや虐待をさせ資金を得る場所であったこと等
が書いてあった。

「なんだよこれ…奴らは命をなんだと思ってんだ!!」
「こんなこと許されん!(まさか各国の有力者達が後ろにいたとは…
これは全員拘束は難しいかもしれん…」
「とんでもない連中だ!一人でも多くの生き残った子供達を助けるぞ!」
「ええ、それにしてもまさか女神を否定する組織があるなんて…
(これは任務が終わった後報告する必要があるわね…)」
そこに書いてあった内容にルーク達は怒り、またクルツとルフィナは
それぞれ思惑を抱えて1人でも多くの子供達を助けるために部屋を急いで出た。

そして、大広間に出たとき一人の研究者風の男がいた。
「来たか、侵入者共。全く我らの教義を理解できん愚か者共め…」
「愚かなのはテメェだろ!人の命をなんだと思ってる!」
「ふん。なぜ"モノ"に情を抱かねばならない?」
「テメェ…!!」
「落ち着け、ルーク。遊撃士協会の者だ。誘拐、殺人容疑
その他諸々の罪で貴様を拘束する!観念しろ!」
「ふん!遊撃士にそれに忌々しい女神の僕までいるとはな…私が"あの方"を
裏切ること等できるものか…おい!出て来い!」

研究者風の男は指をならすと虚ろな瞳をした傭兵達が出てきた。
「「「……」」」
「まだ、こんなにいたんですか!(なんでしょうあの瞳は?あれではまるで…)
みなさん!注意して下さい!この傭兵達はなにかが違います!」
ルフィナは出てきた傭兵を見て、攻撃に移ろうとしたが傭兵の瞳を見て
なにかあると思ってルーク達に警戒を促した。

「クク…もう遅い。さあ、我らの"叡智"を知るがいい…!」
「「「グゥゥゥゥゥ…ガァァァァァァ!!」」」
傭兵達は唸りを上げると異形の姿になった。
「なあ!?」
「なんだこれは!」
「来るぞ!構えろ!」
「ハイ!」

そして驚愕するルーク達に異形の傭兵達が遅いかかった…




後書き
ルフィナが受けとったアクセサリー、テイルズやった人ならわかるかと思います。




[22786] 第6話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/04 23:16
一気に作ったら長くなったので2話に分けました。




ルーク達を襲ったそれらは
今まで倒した傭兵と段違いに強くルーク達は苦戦した。
「なんだこいつらは!人間の出せる力じゃねぇぞ!」
「とにかく1体づつ倒していくぞ!方術、穏やかなること白波の如し!」
「こおぉぉぉぉ…龍神功!」
「…時よ速まれ!クロックアップ改!力がみなぎる…真・招来!」
「我が右手に有りし星の杯よ、天より授かりし輝きもって我らが盾となれ・・・グラールスフィア!」

敵が強いと感じクルツは回復を、ルークとジンは自らの身体能力を上げ
ルフィナは絶対障壁をはり敵に向かっていった。

「ガァ!」
「と…アブネェ。お返しだ…貫く閃光!翔破!裂光閃!」
「セイ!」
「たあっ!」
「はっ!」
ルークが一体にダメージを与えるとほかの3人も集中攻撃をしていった。
そして襲いかかる敵を適度にダメージを与え1体の動きが鈍くなった。

「(これならもうすぐ倒せるな…なら一気に片をつける!)
みんな!下がってくれ!荒れ狂え殺劇の舞!
殺!劇!舞荒剣――!!」
「ガァァ―――!?」
ルークの放った剣や拳、蹴りのすざましい連撃が
まともに決まり1体の敵が倒れ動かなくなった。
「よし!まず一体だ!後2体は一気に決めるぞ!」
「おお!…切り刻め!エアリアル!」
「よし…敵が纏まっている今が好機だ!
覚悟!!はぁっ、ぬんっ!せいっ!…来たれ雷神、空と海の狭間より!」
「こおぉぉぉぉ、泰斗流奥義!はっ!雷神掌!!」
「裁きを受けなさい…!ハッ、セイ!ヤァァァァァ、法技!へヴンパニッシャ―!」
「「グォォォォォ…!?」」

ルークの放ったアーツが敵を纏め、その隙を狙って3人の強力なクラフトを当て
敵は完全に沈黙した。
「なんだったんだこいつら…」
「わからん。このような事態は初めてだ…」
「そうだな…しまった!あの責任者らしき者はどこにいった!」
「私達が戦っている間に逃亡したようです。」
「クソ!追うか?」
「いや、悔しいが今は子供達の救出が優先だ!いくぞ!」

そして、ルーク達はまだ見てなかった最後の部屋の扉を開けた。
そこにはグチャグチャになった子供らしき死体や
体が別れた状態の死体が散乱していた。

「う…ひどすぎるぞこれは…!」
「なんてことだ…!」
「ク…外道共が!!」
「女神(エイドス)よ、この者達に安らぎを与えて下さい…」
あまりにも悲惨な部屋の状態を見て、ルーク達は倒れそうになりながらも
生存者がいないか確かめた。そして奥に行くと一人の傷だらけの少女が倒れていた。

「この子だけ、まともな状態だ!もしかして…かろうじてだが生きているぞ!」
ルークは少女の弱弱しい鼓動を聞き、驚いた。
「よし!この子だけでも何が何でも助けるぞ!
方術、返り咲くこと風花の如し!」
「頼むから生きてくれ…全ての傷を癒やせ、ティア・オル!」
「おぉぉぉぉぉ……養命功!」
「女神の御加護を…ホーリーブレス!」
ルークはクオーツを素早く回復向けに変えて最高レベルの回復アーツを使い
ほかの三人はそれぞれのクラフトを使い少女の傷を癒した。
そして、光が収まると少女の傷はなくなり、規則正しい呼吸をし出した。

「よかった…これで大丈夫だ…」
「よし、後は気絶させた敵を拘束するぞ。」
「待って下さい。せめてこの子達を供養しましょう。
少しでもこの子達が救われるために…」
「そうだな…ルーク、君は先にその少女と共に外に出て待っててくれ。
私達はこの子達の供養と敵の拘束をする。」
「わかった。」
ルークは子供たちに黙祷をした後、少女を背負い一足早く部屋を出た。

そしてクルツとルフィナは子供達を供養するために部屋に残り
ジンは気絶した敵を拘束しに部屋を出た。

(さて…俺より若い2人だけにあの場を任すのは心苦しいから
さっさと敵を拘束して手伝いに行くか…うん?何かおかしいぞ…)
ジンは気絶した敵を拘束しようとしたが、様子がおかしいことに気付き
調べた。
(な…!死んでるだと!?馬鹿な、まさか…こいつも!)
ジンは敵が死んでいることに気付き、ほかの敵も調べたが
全員急所を斬られ絶命していた。
(どういう事だ…俺達以外にも侵入者がいたということか…
だが、何故こんなことを…うん、なんだこの匂いは…不味い!!)

ジンは思考を巡らしていたが突如におい始めた異臭が
館が燃えていると確信し、急いでクルツ達のいる部屋に戻った。

「クルツ!ルフィナ!この館は火事だ!一刻も早く脱出しろ!」
「なんですって!いったいだれがそんなことを…」
「とにかく速く逃げましょう!(ごめんね…ちゃんとした供養ができなくて…)
クルツ達は急いで館を出た。

「みんな!無事でよかった!館が燃えだしたから焦ったぜ!」
「ああ、なんとか無事だ。」
「これから、どうしますか?」
「もう、この場で私達のできることはないだろう…作戦終了だ。
帰還しよう。」
「ああ、賛成だ。その少女もちゃんとした所で治療したほうがいいだろう。」
「わかりました、では行きましょう。」
ルーク達は帰還するために館を背に向け歩き出した。

そして、少女は目がさめ自分が背負われている状態に気がついた。
(ここは、この人はいったい…そうだわ!きっとこの人がレンの本当の家族なんだわ!
やっと助けに迎えに来てくれたんだ…あんな偽物の"パパ"と"ママ"じゃなく
レンの本当の"パパ"と"ママ"に会えるんだ…)
少女は目が覚めたがルークの背中の居心地によさを感じ、また眠りについた。



そして別のところで先ほど逃げた責任者が走っていた。
「ハァ、ハァ、クソ…忌々しい遊撃士に女神の僕め…
我々は必ず立ちあがる、今に見ていろ…」
「悪いが貴様はここまでだ。」
「ガ!…そん…な…こんなところで……ム司祭……御子様…グフ!」
だが、青年に斬られ絶命した。
「ふん。こんな外道の血を剣に吸わせたくなかったんだがな…」
「終わったよ、レーヴェ。」
「来たかヨシュア、では俺達も戻るぞ。」
そして2人はまた、すぐにその場から消えた…

作戦は無事終了したが生存者はガイ達とルーク達が助けたわずか2名という
少なさで教団員も全員自決し、また、支援していた有力者達も何名か拘束したが
拘束した者達は一部のようで、ほかは全く不明という後味の悪い結果となり
事件は終わった…
また、今回の作戦でルーク、ジン、クルツの三人はB級からA級、
そしてカシウスはS級に昇格し、遊撃士協会のさらなる期待を背負った。







後書き
ジン、クルツがこの時点でB、カシウスがA、後アーツに詠唱があるのはオリジナル設定です。本編までもう1話作るので楽しみに待ってて下さい。



[22786] インターミッション1
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/10 21:16
前のあとがきで後1話あるといいつつもう何話かつくらなければなりませんでした。これから気をつけよう…






あの作戦の後、リベールに帰ろうとしたルークに
預けた少女がルークを呼んでいると聞き
親の事も含めて聞きたい事があるため少女が入院している
クロスベル自治州のウルスラ病院に足を伸ばした。

そして、ルークはウルスラ病院の受付に行った。
「すみません、面会をお願いしたいんですが。」
「面会する患者はどなたでしょうか?」
「はい、最近入院した菫色の髪を持つ10歳ぐらいの女の子です。」
「菫色の髪の少女…ああ!もしかしてあの子ですか!それに見事な紅い髪ですね…
ということはあなたが…速く行ってあげて下さい。
妹さんが首を長くしてお待ちですよ。病室は○○○号室です。」
「わかりました、ありがとうございます。(妹…?エステルが
ここにいるはずないし、それになんで受付の人が俺の事を知っている。
どういうことだ…?)」

ルークは教えられた病室に向かっている最中、受付から
妙なことと自分の事を知っているかのように言われたことに首をひねった。
そして病室に着きドアを開けた。

「お兄様!ようやく来たの!遅かったじゃない。レン、ずっと待ってたんだから!」
ベッドから起き上がった少女はルークを見て嬉しそうに言った。
「ああ、ごめんな。それよりお兄様っていうのは…?」
ルークはレンから自分のことを兄と言われ、戸惑った。

「お兄様はお兄様じゃない。それより本当のパパとママはどこ?
レン、速く会いたいな。」
「(本当のパパとママ…どういうことだ…まさか!)
ごめんな、レン。父さんと母さんはここには来てないんだ。
俺が迎えにくることになってて、父さんと母さんは家で
お前が帰ってくるのを待っているよ。それより前のレンの両親に
ついて聞きたいけどいいかな?」
ルークはレンが言ったことに違和感を感じ、事情を聞いた。

「偽物のパパとママを知りたいの?嫌だけどお兄様の頼みだから
話してあげる。」
レンは思い出すのも嫌かのように両親のことを語った。

自分は両親にどこかに預けられたこと。その後、
気付いたら知らない所にいてひどいめにあったこと。
そのことから両親は偽物で本物の両親はいつか迎えに来ることを
信じていたこと。そして気が付いたらルークの背中にいて
自分を大事に運んでいたことからルークを自分の本当の家族と
信じたこと。
「だから、お兄様がここに来た時レン、本当に嬉しかったのよ。
だってここに来たということはレンが家族で妹が心配だったから来たのでしょ?」
レンはルークを見て幸せそうに言った。

一方その事を聞いたルークはレンの事情が予想以上に複雑であったことに驚き
本当ならレンを預けた実の両親を見つけ返すべきだが
今はそうすべきではないと思い、これからどうするか悩んだが、家族の暖かさを知らなく
自分を見ている眼がかつて自分がヴァンを何も考えずに
信用していた自分と同じ眼をしていると感じ、レンのために
家族の暖かさを知ってもらうためやかつての自分のようにしないため、
ブライト家に引き取ってもらうことを決意した。

「そういえばレン、どれくらいで退院できるんた゛?」
「後三日で退院できるんだって、だからパパとママに会うのが楽しみよ!」
「そうか…実はエステルっていうレンと2歳違いの姉もいるんた゛。だから、楽し
みにしててくれ。」
「わぁ!お兄様に続いてお姉さんもいるのね!うふふ、退院出来る日が楽しみだわ!」
レンは心からの笑顔を見せて言った。

「ああ、今日は時間だから帰るけど毎日来るつもりだからいい子に
して待っててくれ。」
そう言ってルークはエステルにもやっているようにレンの頭をなでた。

「(わぁ…気持ちいい…)うん、わかった!いい子にして待ってるから絶対明日も来て
ね!」
「ああ。」

そう言ってルークは病室のドアを閉めて急いで遊撃士協会に向かった。
そして協会の通信を貸してもらい、まだ壊滅作戦後の残務処理を行っている
カシウスを呼んでもらいレンの事情を説明しブライト家の養女にしてもらうよう嘆願した。

「…というわけなんだ、父さん。養子にしてもらった俺がいう資格はないかもしれ
ないけど、お願いします!」
「まさかそんな事情があったとはな…わかった。こっちの仕事はもうすぐ終わるから
すぐ片付けて家に戻ってレナやエステルにも話しておこう。だから今はその少女の心を
穏やかにするためにもお前が相手をしてやってくれ。」
「ありがとう!父さん!」
「何、気にするな。」
そう言ってカシウスは通信を切った。
ルークも通信を切ってホッとした。そして明日の見舞いのための
品物を買うため、近くのデパートに足を向けた。

その後少女――レンは無事退院し、
ルークと一緒にリベールのブライト家に戻った。

「ただいま。」
「「おかえり、ルーク、レン。」」
「おかえりなさ~いルーク兄!それにえっと…あなたがレンでいいのよね?」
「ただいまパパ、ママ!それにエステル!(わぁ…優しそうなママに
強そうなパパ。それに明るいお姉さんのエステル。そして素敵なルークお兄様!
ここがレンの本当の"家族"なんだわ!レンが思い描いた通りの!)」
レンはブライト家に笑顔に迎えられ不安だった顔も笑顔になり
カシウス達に挨拶をしブライト家の一員となった。






後書き レンの過去は知っていますが文章であらわすのは正直言って難しいので省略しました。
レンが変な口調になってたらレンファンの人、すみません…ちなみに自分が一番好きな軌跡キャラはレンです。一応原作に近い口調で書いたつもりです。後、レンの年齢が微妙に原作より歳をとっていますがオリジナル設定です。零で出てくる時に16でないと都合がわるいですから…



[22786] インターミッション2
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/10 21:05
その後レンはブライト家の一員として溶け込み家族の誰にも甘えたが取り分け
ルークとレナによく甘えた。そしてルークが剣術の練習をしているそんなある日
剣の練習をしているルークを見てレンが呟いた。

「ねぇ、お兄様。レンもお兄様のやっている剣をしたいわ。」
「え……剣を?なんでまた?」
「あら、パパとお兄様は遊撃士だし、エステルも遊撃士を目指すんだから
レンが目指してもおかしくないでしょ?」
「まぁそうだけどそれよりなんで剣を?父さんとエステルは
棒術だから武術を志すにしてもそっちかと思ったんだが。」
「そっちも考えたけど剣のほうがレンにあっていると思ったからよ。
ねぇ、それより教えてくれるの?くれないの?」
レンは眼をうるうるさせルークに訴えた。

「(う……こんな眼をされたら…断れねぇ…まぁ、護身にもなるしいいか…)
よしわかった。俺の剣はほとんど我流だけどいいか?」
「うん!それでいい!速く教えて!」
「わかった。まず剣の構えだけど…」
そうしてルークはレンに剣術の基礎などを教えた。
それを見ているカシウスも調子に乗って自分の剣術も教え出した。
流派の違う2人が教えることでレンにとって覚えにくくなるはずだった。だが、驚くことに
レンは教えた事を次々と覚えついには自分の技を編み出せるようにもなった。

「魔神剣!……やった!的に当たった!ねぇ、お兄様成功でしょ?」
「ああ、成功だ。レンは剣の才能があるよ。(……にしてもなんでこんなにすぐ
覚えれるんだ?いくら才能があってももう少し時間がかかる筈だ……もしかして
あれか!?)」

ルークは教えたことをすぐに覚えるレンを見て普通じゃないと思い、原因を
考えたが一つだけ思い当たるのがあった。それは教団が子供達を使って新薬の実験
をしていたことを思い出し、新薬の中には身体能力を上げるもの、感覚が鋭くなるなど
人間にとってさまざまな効果をもたらす薬があったことを思い出した。

(だとすると、レンは運よく薬の実験で生き残ってたからレンだけまともな状態で
残っていたのか……だったら俺や父さんができることは一つ。かつての俺みたいに
力を間違った方向に向けないように教えることだな……!)
そうしてルークは人知れずレンが間違った方向に進まないように教えることを
決意した。

これが後に「剣姫」と謳われるレンの修行の始まりであった…



~某日 紫苑の家・秘密の地下室~

そこには一人の人間が倒れていて、2人の人間が戦っていた。
一人は教団殲滅作戦に特別に参加したルフィナ・アルジェント。もう一人は
ケビン・グラハムという星杯騎士でルフィナにとって家族同然の
存在であった。

なぜ、2人が戦っているのは、七曜教会の孤児院
紫苑の家に突如傭兵が攻めて来て、たまたま任務から帰ってきたケビンが
傭兵の排除と紫苑の家の開放の任につき傭兵達をほとんど撃退したのだが
傭兵の一人がルフィナの妹、リースを人質にとり秘密の地下室に向かった。
それを追ってケビンが見たのは地下室に安置してあった
アーティファクト"魔槍ロア"を手に取り魔物化した傭兵だった。

それをなんとか撃退しようとしたケビンだったがアーティファクトの
力はすざましくケビン自身追い詰められそうになったが、突如ケビンの体に
赤い光が走り、魔物化した傭兵が持っていた魔槍ロアを吸収し今度は
ケビンが魔槍ロアを雨のように傭兵に叩きこんだ。魔槍を雨のように受けた
傭兵はもはや生きている者とは思えない悲惨な状態になり死亡した。

その後ケビンは暴走を抑えられず今度はリースに槍を向けようとしたところ
遅れてきたルフィナが到着し、ケビンの状態を見て一瞬で状況を理解した
ルフィナはリースに被害がいかないように戦い始めたのだ。

(ケビン、ついに聖痕が出てしまったのね…でも絶対にあなたとリースは
守るわ。例えこの身が犠牲になっても……)
そう決意したルフィナは戦闘の間にもリースを少しづつ移動させ
被害のいかないところまで非難させた。
(これで大丈夫……ケビン、今助けるわ……)
もう大丈夫と思ったルフィナは武器を捨てケビンを抱きしめた。
だが、抱きしめたルフィナの背中に数本の魔槍がささった。

(ウ……ここまでのようね……ケビン、リース幸せに生きなさい…)
そしてルフィナは絶命した。その後正気に戻ったケビンは
自分自身に絶望した。だが、追い打ちをかけるように聖痕が発動したケビンに
長らく空席であった星杯騎士団の守護騎士第五位を任命された。

ケビンとルフィナの上司であり、守護騎士第一位でもあるアインは断ることも
できると言ったがケビンはこれを了承。後に。《外法狩り》の異名を名乗り
その渾名の通り教会より外法と認定された存在の抹殺を主な任務とし始め部下も
最小限にしかとらなかった。

そして、殉職した星杯騎士の死体安置室にあるルフィナが入った棺桶に異変が起こった。
ルフィナがルークから渡された人形が突如壊れ、ルフィナは目を覚まし棺桶の蓋を
内側から開けた。

(ウ……ここは死体安置室……それより私は死んだはずなのにどうして……?)
ルフィナは生き返った自分の状態に唖然としたが砕け散った人形に気付いた。

(これは……ルークさんから貰ったお守り……もしかしてこれが私の身代わりに…?)
ルフィナは砕け散った人形の破片を見て驚愕した。人を生き返すアーティファクト
等聞いたことがないからだ。ルフィナは知らないことだがその人形は"リバースドール"
といい、所有者が死亡したら一度だけ身代わりになり所有者を生き返すオールドラントの
希少なアクセサリーであった。

本来ならすぐに発動するものなのだがルフィナの傷は
相当深く、魔槍の影響もありルフィナから槍が抜かれるまで発動できず死体を棺桶に入れるために
槍を抜かれようやく発動し、ルフィナを生き返らせたのだ。

(本来ならケビン達に会うのがいいけど、もし私が生き返ったとわかりその原因が
ルークさんの持っている人形だと判明したら、ルークさんが封聖省に注目されかねないわ……
調べたいこともあるし、今は死んだことにしたほうが都合がいいわね……
リース、ケビン、いつか会いに行くから待っててね……)

自分の命が助かった原因となるルークに迷惑をかけないためやこれからの行動の事を考え
ルフィナは人知れずその場を去った……




後書き レンのバトルスタイルが大幅に変わりました。次にガイ、ヨシュアが再登場します。そしてついにアビス側も……



[22786] インターミッション3
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/14 00:09
~某日 ブライト家~

「ねぇ、お母さん、お父さんまだ~?」
「協会の連絡では今日帰ってくるそうだからもう少し待ってなさい。」
「むぅ、パパったらどこで道草してるのかしら?」
そこには食事の準備をしているレナと食卓に座ってそれぞれ自分の趣味の本を読んで
待っているエステルとレンがカシウスの帰りを待っていた。

「許してやれよ2人とも。父さんは遊撃士として評価が高いんだから
難しい仕事が来てしまうんだよ。」
そこに外で剣の素振りをしていたルークが入ってきた。
「あ、ルーク兄。」
「お兄様。それはいいんだけど帰りを待っている家族がいるんだから、もう少し
仕事する量を抑えてほしいわ。」
「ハハ、厳しいことを言うなぁ。」
レンの言った一言にルークは苦笑した。

「今、帰ったぞ。」
そこに何かを抱えたカシウスが帰って来た。
「お帰りなさい、あなた。」「お帰りなさ~い、お父さん。」
「お帰りなさい、パパ。」「お帰り、父さん。」
それぞれから迎えの挨拶を言われ、カシウスは今までの修羅場から
帰ってきたのをホッとし、笑顔になりあることを言った。

「実はな今日はお土産があるんだ。」
「お土産!?もしかして、ストレガ―社の新作モデル!?
それとも新しい釣り竿!?」
「レンにもあるの!?ぬいぐるみ!?それとも外国の紅茶かお菓子!?」
お土産と聞いてエステルとレンの2人が眼をキラキラさせ、期待した。

「ハァ……育て方間違えたかしら……?」
「あのなぁエステル、レンのように何か女の子らしい物は
ほしくないのか?ぬいぐるみや服とかアクセサリーとか」
「ぬいぐるみはレンがいつでも貸してくれるし、綺麗な服は好きだけど
汚しちゃうもん。アクセサリーも遊んでいたら壊れるからヤだし。」
「ハハ、母さん、父さん人の趣味はそれぞれだから変えられないよ。」
ため息をつくレナとカシウスにルークが親友ガイの音機関好きの事を
思い出しながらエステルのフォローをした。

「それより、お父さんその大きな毛布何?ひょっとしてそれがお土産?」
「そうだ、よっと……」
エステル達に毛布の中身をみせるとそこには気を失った黒髪の少年が眠っていた。
「…………ふえっ?」
「……まあ」
「……あら」
「えっと……父さん?」
「まあ、こういうわけだ。割とハンサムな坊主だろう?」
それぞれが呆けている中カシウスは笑顔で言った。

「な、な、何なのこの子~~!まさかお父さんの隠し子!?」
「ひどいわパパ!こんな美人で優しいママを裏切るなんて!!」
「隠し子って……なんでそんな言葉知ってるんだ……?」
「シェラちゃんよ」
「あ~~そういえばシェラザードの奴2人になんかいろいろ教えてたなぁ…」
「全くあの耳年増は……」
少年に驚き憤る2人からは聞かないと思った言葉を2人の姉代わりで現在王国を廻って修行している
準遊撃士のシェラザードが原因だと知りカシウスは呆れた。

「さてと、この子を休ませるためにもベッドに連れていくか。ルーク、悪いがお前の
ベッドを貸してくれ。」
「わかった、父さん。」

そしてカシウスは少年をベッドに運び寝かせた。
「で、お父さんど~~いうこと?この子誰?なんでケガしてるの?」
「本当にママを裏切ってないでしょうね?」
エステルとレンがじとーっとカシウスを睨みつけた。
「全く俺がそんなことするはずないだろ?この子は……
仕事の関係で預かったんだ。」
「あやしい……」
「ふ~~ん。それでどうするのパパ?」
「ああ、この子を家の子にする。すまないがレナそういうこと
だから、今日からこの子の世話もする。」
「ふぅ……あなたが一度決めたことは覆らさせない頑固者ということは
私が良く知っています。仕方がないわね……も・ち・ろ・ん後で
理由はしっかりと聞かせてもらうわね?」

レナは凄味のある笑顔でカシウスに問いかけた。
それを見てカシウスは冷や汗を流し、そばで見ていた
ルークも当事者ではないのに汗をかいた。
(わぁ……さすがお母さん。すごいなぁ……)
(うふふ……さすがママだわ……レンも見習わなくちゃ。)
(こぇぇ~~母さんは絶対に怒らせないようしようっと)

それを見て、エステルとレンは感心しルークは人知れず
レナを怒らせないようにしようと思った。

「う…………ん?」
その時少年が目をさました。
「あ、起きた。」
少年の様子にエステルが真っ先に気付いた。
「………ここは……?それにあなた達は……?」
「俺の家だ、ちなみにこの2人が俺のかわいい娘でこいつが自慢の息子
そしてこの女性が俺の愛する妻さ。どうだ、話した通りだろ。」
「そういえばそんな事を言ってましたね……じゃなく!カシウス・ブライト、
あなたは何を考えているんですか!!」

少年はカシウスの行為がわからないようで叫んだ。
「こらっ!ケガ人が大きな声出さない!ケガに響くでしょうが!」
エステルは少年の寝ているベッドにジャンプしてキックをした。
「あたっ!」
「大きな声出さない!!」
「わ、わかったよ……でも君の行動のほうがよっぽど
ケガに響くんじゃ……」
「なんか言った~~?」
「いや、だから君の行動が……」
「な・ん・か・言・っ・た~~~?」
「なんでもないです……」
エステルに文句を言った少年だがエステルの綺麗で凄味のある
笑顔に黙った。

(おいおい……エステル、この年でもうこんな凄味のある笑顔を……
さすが母さんの子だな、さっきの母さんの笑顔を見ただけにそう感じちまうぜ……)
ルークはエステルの今後の未来を考え体がふるえた。

「わぁ、さすがエステル!じゃぁレンも……」
そこにレンが助走をつけてベッドに飛ぼうとした。
「こ~ら、ダメよレン。エステルに懲らしめられてあなたにも
懲らしめられたらこの子がさすがに可哀想でしょ?次の機会があったら
エステルに譲ってもらいなさい。」
飛ぼうとしたレンをレナが抑え、諭した。

「は~~い、レン次を楽しみにするね。」
(次もあるのか……?)
少年は女性陣に戦慄を抱いた。
「ま、この家の中では女性達には逆らわん方がいいぞ。こいつらが
本気になったら俺達男共はかなわないからな。」
「そうみたいですね……」
少年は一瞬でこの女性達にはかなわないことを悟った。

「ところであんた名前は?あたしはエステル・ブライトよ。」
「レンはレン・ブライトよ。うふふ、綺麗な黒髪に琥珀の瞳ね。」
「名前……?」
「そう、名前よ名前。あたしとレンが今言ったでしょ。
こっちの名前だけ知っているのもなんか悔しいし不公平じゃない。」
「……あ……」
「まあ、道理だな。今更隠しても仕方あるまい。
不便だし聞かせてもらおうか?」

エステルの言った言葉に少年は呆けたがカシウスの言葉で
我に返り少しの間考え決意した。
「…………わかり……ました………
僕の……僕の名前は……ヨシュアです……」

そして、カシウスはエステルとレンに少年――ヨシュアの看病を任せて、
レナとルークを連れ出して部屋を出て居間に下りた。

「で、父さん何者だよあの子?普通の雰囲気じゃなかったぜ。」
「そうね……あの眼はレンが昔の両親の事を話した時の暗い眼に近かったわ……」
ルークはヨシュアが普通ではないと気付き、またレナはヨシュアの眼がわずかながら
レンから昔の両親を聞いた時にしていた暗い眼に近かったことに気付き暗い顔をした。

「……実はな、あの子は俺を殺そうとしたんだ。」
「はあ!?」
「え……」
カシウスの一言にルークとレナは一瞬呆けた。
「どういうことだよ父さん!」
「まあ落ち着け。始めから説明しよう。」

そしてカシウスはヨシュアが子供のふりをして自分を狙ったこと
その後ヨシュアを戦闘不能にした後今度はヨシュアを狙って何者かが
ヨシュア共々殺そうとしたところをカシウスが撃退し、気絶したヨシュアを
ここまで連れてきたことを話した。

「……ということだ。」
「そんな、あんな幼い子を暗殺者にするなんて……」
「それにそいつらヨシュアの仲間っぽかたんだろ?仲間を平気で殺そうと
するなんて酷い奴らだ!!」
レナはショックを受け、仲間思いなルークはヨシュアの仲間らしき者達の
平気で仲間を殺そうとしたことに憤慨した。

「それで……家の子にするって言ってたけどどうするのさ?」
「ああ、あの子に暗い人生じゃなく明るい人生を歩いてほしくてな、家に連れて来たんだ。
ひょっとしたらエステルがヨシュアを変えてくれると思ってな。」
「ふふ、そうですね。確かにエステルならあの子を変えてくれるかもしれないわ。」
レナは先ほどのエステルとヨシュアのやり取りを思い出し、エステルならヨシュアを
変えてくれると思った。

「すまんがそういうことだ。さっきも言ったがヨシュアも今日から
家の子だ。俺の我儘だと思って頼む!」
カシウスは2人に頭を下げた。
「頭をあげて下さいあなた。私もあなたの考えに賛成です。」
「そうだぜ、父さん。」
「すまんな2人とも。」
頭を上げたカシウスは2人と笑いあった。

「そういえば父さん。部屋はどうする?俺とヨシュアが一緒の部屋でいいのか?」
ルークは思い出したように今後の部屋割を言った。
「ああ、とりあえず今はそうするが、近いうち家を増築しようと思うんだが
どうだろう?」
「そうね……エステル達も大きくなったら1人部屋が欲しいでしょうしいいと思います。」
家を増築するという考えにレナも賛成した。
「決まりだな!近いうち家を増築するよう依頼をしておこう。それより
ルーク、今後に関してだが……」
笑顔のカシウスは真剣な顔になりヨシュアの追手達が来る可能性もあるので
ルークと交代で家を守ったり買い物についていく等を話し合った。

こうしてヨシュアもブライト家の一員となった………

そして時は少し遡りルークの故郷、オールドラントに移る………







後書き ヨシュア編書くだけですごい量に……次こそアビス側を出して見せます……



[22786] インターミッション4
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/16 00:11
今回は短いのでそれでもよければどうぞ……



~タタル渓谷・セレニアの花畑 夜~


そこには一人の女性――ティアが兄と教官が眠る場所であり
決戦の場でもあった"エルドラント"を見つめていた。

あの戦いの後何年か経ち、ルークとアッシュの成年の誕生日にかつての
仲間達がルークの冒険の始まりであるタタル渓谷に集まっていたらアッシュが
帰還した。そのことに一人だけ喜んだがあとの仲間は複雑な気持ちで迎えた。
だがその後アッシュからもたらせえた情報を皆を驚かせた。

それはルークが異世界で生きていること、二度と戻ってこれないこと
数年後にローレライがルークのいる異世界に送れること
それらのことを聞き、ティアとガイは歓喜しある決意をした。
それは"ルークの元に行くこと"であった。

その後ティアは戦いの感を取り戻すために修行しかつての強さに
戻りつつあった。
(待っててルーク。いつかあなたの元に行ってあの時ハッキリ言えなかった
この気持ちを必ず伝えるから……)
ティアは踵を返し夜の渓谷を下りて行った。



~グランコクマ・郊外 夜~


「魔神剣!虎牙破斬!秋沙雨!獅子戦吼!……このぐらいか。」
修行をしていたガイは剣を収め一息をついた。
「精が出ますねガイ。」
そこにかつての仲間でマルクトでもかなりの地位の人物
ジェイド・カーティスが声をかけた。

「旦那か。見てたんなら声をかけろよな。」
「いや~~私はこれでも空気を読めますからあえて
声をかけなかったんですよ」
「よく言うよ……」
ジェイドはわざとらしく両手をヤレヤレと振って笑いそれを見た
ガイはその胡散臭さにため息をついた。

「それよりガイ、本当にマルクト貴族をやめる御積もりですか?」
「ああ。ルークを追うんだから地位なんていらないよ。」
「ふぅ……残念ですね……陛下も惜しく思ってますし、私としましても
非常に残念ですよ。」

マルクト貴族をやめるつもりのガイを止めに来たジェイドだったが
ガイの様子を見、無理と判断しため息をついた。
「以外だな。旦那もそう思ってくれるとは。」
「それはもちろんイジリがいのある人物がいなくなるから
つまらなくなるからですよ♪」
「うわ……やっぱりそういう理由かよ……」
ガイはジェイドの理由を聞き期待した自分が馬鹿だったと思った。

「ハッハッハ、冗談ですよ♪」
(嘘くせー……)
笑顔のジェイドを見てガイは相変わらずの表情にそっちが本音と思った。

その後ジェイドといくつか貴族をやめるにあたっての手続きなどの確認を
しジェイドは先に帰った。見えなくなるまでその後ろ姿を見送ったガイは
夜空を見上げ決意した。
(待ってろよ、ルーク。お前は俺が認めた唯一の親友で主だ。お前の
向こうでの生活を手伝ってやる……)
そして、ガイはジェイドの後を追うようにグランコクマに戻っていった……





後書き 次はガイ再登場とレンの両親が登場します。
後次の更新の際、チラ裏からその他版に移動しようと思っているので注意して下さい。



[22786] インターミッション5
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/17 00:26
やっとFCまでのインターミッションが終わります。長かった……
そしてついに版移動しました!これからもよろしくお願いします。





~某日 クロスベル某所~

そこには教団壊滅作戦に参加したガイ・バニングスが血溜りの中に
倒れていた。
「フ……さすがかつての"最強の警察官"だ。随分手こずったが
その傷でだれもいないこの状態ならもはや助かるまい……
我らの組織に目をつけたのが運の月だ……後悔して死んでいくがいい……」

ガイを瀕死にした謎の人物はガイの状態を確認しその場から去って行った。
(ち……く……しょう……目が霞んできやがる……セ……シル……
ロ……イド……すまねぇ……)
ガイが正に死ぬ直前、2人の人間が現れた。

「バニングス!?この傷はどうしたんだ!!しっかりしろ!!」
「お兄様、まだ息があるわ!!早く回復アーツを!」
その2人とはある用事と修行でクロスベルに来たルークとレンだった。

「ああ、少し待て……命を吹き返せ!アセラス!」
ルークは急いでクオーツを組み換え、最高回復アーツの一つであり
瀕死の傷をも治すアーツを使った。そのお陰かガイの傷が少しづつ塞がっていった。
「どうだ、レン?」
「ちょっと待って……大丈夫、なんとか死なずにすんだようだわ。」
レンはガイの鼓動を聞き、助かったことを確かめルークはそれを聞きホッとした。
「ふぅ~~よかった。レン、応急処置をするから手伝ってくれ。以前教えたから
大丈夫だよな?」
「うん、大丈夫よ!今、手伝うわ。」

そして2人が応急処置をして一息ついた頃にガイが目を覚ました。
「う……ん?」
「あ、目を覚ましたわ。」
「バニングス、大丈夫か?峠は越してるから大丈夫だと思うが……」
「ルーク、それに嬢ちゃんはあの作戦の時の……ああ、お陰さまで
女神(エイドス)の元に逝きそびれたぜ。」
ガイは起き上がり助かった事を実感し笑顔になった。

「にしてもバニングス、一体何があったんだ?」
「ああ、実は……」
ルークの質問にガイは説明した。

ある組織を調べていたらその組織の刺客らしきものが襲ってきたこと
もちろん、応戦したがその刺客は強くあえなく敗北したこと
それらを説明し、ガイはレンから一杯の水を貰い一気に飲んだ。

「まさかお前がやられるほどの使い手がいるとはな……」
「ああ。組織の名前でさえわからなく調べていたらこのザマだ。
ルーク達が来て本当に助かったよ……」
「それで警察のお兄さんはどうするの?」
「本来なら捜査課に戻ってまた調べ直したいんだが、今俺が
生きてるとわかったらまた刺客が襲ってくるかもしれん。
弟と恋人をそいつから守るためにも死んだことにして今は姿を隠して
おくさ。」
「……いいのか?たまたまアリオスと再会して聞いたけどお前、もうすぐ
結婚するんだろ?」
「……ああ……セシルにはすまねぇが少しの間だけ待ってもらうさ。」
ルークの問いにガイはつらそうな顔をしたがすぐに気持ちを引き締め
顔を上げた。

「という訳だから2人とも俺が生きていることは誰にも言わないでくれ。」
「……わかった。いつか姿を見せろよ。レンも頼むな。」
「は~い。お兄様の頼みだからレン、誰にも言わないわ。」

そしてガイは自分が流した血溜りの中に警察手帳とバッジ、上着を置き
その場を去った。それを見送った2人もその場から立ち去った……

そしてガイの偽りの葬式で遺体すらなかったので婚約者のセシルは号泣し
弟のロイドはそれを見て兄の死の真相を知るために警察学校の入学を
決意した……


~某日 クロスベル住宅街~



そこにある一軒の家の様子をガイ・バニングスを助けクロスベル市に戻った
ルークとレンが窺っていた。
なぜ、ルークがレンをクロスベルに連れてきたかは
長い間調べていたレンの両親の居場所がわかり、一度だけ
話してみないかとレンを誘った。レンは最初は嫌がっていたが
自分の心の片隅に残ってる両親のことを決着するいい機会だと
思いルークについて行った。

そしてその家に一人の男性と何かを抱いた女性が帰って来た。
それを見てルークは2人に話しかけようとしたが2人の会話を聞き
思い留まった。

「ふふ、本当に可愛いね。お前にそっくりだよ。」
「ほ~らよしよし」
女性は抱いている赤ん坊をあやしていた。

「ふふ、前の子はあんなことになってしまったけれど……
でもよかった。女神様は私達をお見捨てにならなかったんだわ。」
「おいおいその話はしない約束だろう?昔のことはもう忘れよう。」
「ええ……哀しいけれどその方があの子のためよね……おお、よしよし
いい子でちゅね~」
「あぶぅ、あぶぅ。」
赤ん坊は女性に甘え、また女性も笑顔であやしていた。

(な……ん……だよそれ!レンはどうでもいい存在だったのか!?)
その会話を聞きルークは憤慨し文句を言いにその夫妻の所に歩こうと
したがレンに服を引っ張られ止められた。

「レン?」
「いいのお兄様。今のレンには優しいママ、強いパパ、
明るいお姉さんのエステルに、カッコイイお兄さんのヨシュア
そして素敵なお兄様がいるからレンは幸せよ?それに言ったでしょ。
あの人たちはレンの偽物の"家族"だって。」
「レン、本当にあの人達に文句とかないのか?」
「ふふ、おかしなお兄様。なんでわざわざレンを酷い目に遭わせた
"他人"を気にしなきゃいけないの?」

レンは笑顔で自分の両親を"他人"と言ったことにルークは
何か言いたかったが今の両親の会話を聞き、それをする
必要もないと思い話題を変えた。

「そっか……今回は悪いことをしたなレン。」
「ううん、全然気にしてないわ。むしろレンは初めての
外国の旅行を楽しんでるわ。」
「そうだな……お詫びになんか買ってやるよ。」
「わぁ、本当!じゃあ速く行きましょう!クロスベル
限定の"みっしぃ"のぬいぐるみが前から欲しかったの!
エステルの分も買おうと思ってるんだけどいい?」
「お、レンはお姉さん思いだな。」

そう言ってルークはレンの頭をなでた。
「うふふ、レンは"家族"が大好きだもん!それにエステルは
今回の旅行に行けなくて残念そうだったから、何か買ってあげるのは
妹として当然よ。」
「そっか、じゃあ行こうか。」
「うん!お兄様!」
そうして2人はクロスベルのデパートのある中央広場に向かった。


そして月日は巡りエステルとヨシュアが16歳になった時に
物語は動き始めた……!




後書き いよいよ次からFCです。時間が少々かかるかもしれませんが待ってて下さい。ちなみにガイ2人とティア、レンのステータスをもうすぐ出します。



[22786] 設定3
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2011/01/22 08:43
宣言通りのキャラのステータスを作りました。


ティア・グランツ(本名・メシュティアリカ・アウラ・フェンデ)

レベル75
HP5400
ATK500
DEF450
SPD45
ATS1100
ADF950
MOV7

装備

武器 フォニックロッド
防具 フォニッククローク
靴  シルバーブーツ
アクセサリー メンタルシンボル(一人終わるごとにEP、CP3%回復)
       ティアのペンダント(ATS、ADF20%アップ、詠唱3/4、対封技、封魔)
オーブメント(空属性)並びはクロ―ゼやティオです。

クラフト

ノクターナルライト 20 単体 ダメージ&技・アーツ駆動動解除
ファーストエイド  30 単体 HP30%回復
ナイトメア  30 単体 ダメージ&気絶100%
チャージ  40 単体 味方のCPを40回復
レイズデッド 60 単体 戦闘不能者のみHP50%回復で戦闘不能解除
スペル・エンハンス 50 単体 対象の騒動時間を3/4にする
フォースフィールド 90 自らを中心とした中円 一度だけ全ての攻撃を無効化する
ホーリーソング 70 全体 HP20%回復&ATK、DEFを一時的に10%上昇
リザレクション 90 全体 HP80%回復  
ジャッジメント 80 全体 空属性の攻撃をする
グランドクロス 75 小円 地点指定・空属性の2回攻撃

Sクラフト

イノセント・シャイン 中円 ダメージ率200%&後退効果
フォーチューン・アーク 全体 ダメージ率300%

なおティアのクラフトはノクターナルライト以外は全てATSに反映される


ガイ・セシル(本名・ガイラルディア・ガラン・ガルディオス)
レベル75
HP7500
ATK700
DEF580
SPD70
ATS450
ADF400
MOV10

装備

武器 宝刀ガルディオス
防具 ミスリルスーツ
靴 ミスリルブーツ
アクセサリー ホーリィシンボル(一人終わるごとにHP3%回復)
       ガルディオス家の紋章(全パラメータ3%アップ
       一人終わるごとにCP3%回復、対封技、混乱、石化)

オーブメント(火属性)並びはランディやアガットです。

クラフト
魔神剣 10 単体 直線距離の離れた敵にダメージを与える
虎牙破斬 20 単体 2回攻撃
秋沙雨 30 単体 ダメージ率120% またこのクラフトの後すぐ自分の番になる 
粋護陣 40 自分 全ての攻撃を1度だけ防げる
獅子戦吼 35 単体 ダメージ&技・アーツ駆動解除、気絶率20%
柔気法 30 自分 HP15%回復&防御15%上昇
魔王炎撃波 40 小円 遅延攻撃&火傷10%
絶衝氷牙陣 50 小円 地点指定・ダメージ率200%&凍結20%

Sクラフト

鳳凰天翔駆 自分自身を軸とした中円攻撃 50%の確率で火傷



ガイ・バニングス
レベル55
HP5500
EP515
ATK500
DEF400
SPD40
ATS300
ADF250
MOV8

装備

武器 テイクプリズナー、デュアルスター
防具 サバイバルベスト
靴 トレッキングギア
アクセサリー 闘魂ベルト
       ディープオーカー

オーブメント(無属性)並びはヨシュアやダドリーです
クオーツ HP3 攻撃3 行動力3 防御3 情報 必殺

クラフト

ブーストラッシュ 20 中円 地点指定・衝撃波を纏ったトンファーによる連続攻撃。
スナイプショットⅡ 30 単体 ダメージ&技・アーツ駆動解除
ブレイブハート 40 自己 一時的にSTR/DEF/SPD+60%・「全状態異常」防止
エクステンドハーツ 60 全体 STR+25%・CP+30
クロスミラージュⅡ 50 大円 地点・指定攻撃
ブレイブスマッシュⅡ 40 直線 地点指定・封技85%
スタンチャージ 35 単体 攻撃&気絶率40%

Sクラフト

ライオンチャージ 単体 怒涛の連続攻撃で敵を圧倒する、獅子の如き突撃技。ダメージ200%
エクスパシオン 単体 トンファー、銃の両方を使う連撃 ダメージ300%
インフィニティアソウル 中円 目にも止まらぬ速さで範囲内の敵を攻撃する ダメージ350%

レン・ブライト

レベル20
HP1600
EP180
ATK200
DEF100
SPD20
ATS250
ADF150

装備

武器 エストック、リングダガー
防具 フリフリブラウス
靴 ストレガ―C
アクセサリー シルバーピアス
       エメラルドリング(たまたま持ち物の整理をしていたルークを見て駄々をこねて
                貰ったオールドラントの指輪、省EP2の効果)
 
オーブメント(無属性)並びは原作通りです
クオーツ HP1 行動力1 精神1 攻撃1 回避1 騒動1

クラフト

魔神剣 10 単体 直線距離の離れた敵にダメージを与える
身妖舞 20 単体 踊るように2回攻撃する 即死5%
瞬迅剣 30 単体 移動攻撃&技・アーツ駆動解除 即死15%
殲綱斬 35 単体 攻撃後敵のDEF15%低下 即死10%
月閃光 30 単体 即死30%
麒麟功(未完成) 40 自己 達人の技、STR/SPD10%アップ
爪竜連牙斬 40 直線 剣と小剣を使う移動連撃 ダメージ110%
           またこのクラフトの後すぐ自分の番になる 即死10%
剣技・八葉滅殺 30 単体 敵を乱れ斬る ダメージ160% 即死15%
邪霊一閃 30 小円・地点指定 カシウスの雷光撃をヒントにし編み出した技
               自分自身を軸とした小円攻撃 即死10%

Sクラフト

紅燐剣 中型直線 貫通する衝撃波攻撃 即死30%
魔神煉獄殺 単体 ルークの秘奥義、殺劇舞荒剣をヒントにした恐るべき連撃
         ダメージ300% 即死50%




後書き ガイ・バニングスはトンファーと銃の両方を使う設定です。警察官ですから使ってもおかしくないでしょ?ダドリーやセルゲイも実際銃でしたし。後レンがなぜオーブメントをすでに持っているかは次話で明かされます。ちなみにレンのクラフトがレベルに反して多いのはグノーシス&天才、そして師匠がルークとカシウスだからです。後レンのクラフトで
テイルズ、英雄伝説では見かけないクラフトもありますがあるゲームをしている人なら
わかるかと^^最後に言っておきますがレンのクラフトをみて裏切りor死亡フラグを心配する方もいるかと思いますがそんなことにはしないので安心して下さい。



[22786] 第7話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/25 09:23
いよいよ本編が始まります。




~ロレント郊外・ブライト家 朝~



チュンチュン……
朝の小鳥が鳴く声と朝日のまぶしさにエステルは目覚めた。
「う~~まぶし。もう朝か……今日の当番はお母さんだったわね。
ヨシュア達はまだ寝てるのかな……」

エステルは目覚めた後、ほかの家族はまだ寝てるのかを少し考え出すと
ハーモニカの音と剣撃の音が聞こえてきた。

~~~~~~~~~~~♪ キン!ブン!カキン!
「あは、みんなもう起きているみたいね。よーし、あたしも支度しよっと。」
エステルはいつもの服に着替えると2階のベランダに出た。
そして目の前にはハーモニカを吹いているヨシュア、下の玄関前では
朝の剣の稽古をしているルークとレンがいた。

「いくわよお兄様!ヤ、えい、身妖舞、爪竜連牙斬!」
「おっと。」
カキンキン、キンキンキンキン
レンは剣と小剣をたくみに使い、踊るようにクラフトを連携しルークに攻撃
したが回避されるか剣で防御された。
「むぅ、さすがお兄様だわ。ならこれならどう!?」
レンは防御されながらも次の攻撃の態勢に移りクラフトを放った。
「さぁ、八葉滅殺行くわよ!、ヤヤヤヤヤヤヤヤぁっ!」
キンキンキンキンキン!
レンの持つクラフト中でもかなりの威力と速さをもつクラフトだが
ルークはそれを全て捌いた。
「これで終わ「そこだっ」キャッ!」
カーン!カラ―ン!
連撃の中隙を突かれたレンの剣は宙を舞い地面に落ちレンはその
衝撃で地面にペタンと手を着いた。

「勝負ありだな。」
ルークはレンに剣を突き付けて笑った。
「むぅ、今回も負けだわ……今回の連携は結構自信があったんだけどなぁ。」
「ハハ、自信は持っていいと思うぜ。結構ヒヤッとしたし。」
「本当!じゃぁ、今度からこれを実際に防がれた時のことも考えとこうっと!」
ルークの言葉にレンは喜び連携の穴などを考え出した。

パチパチパチ……
そこに手を叩くエステルがいた。
「ひゅー、ひゅー、やるじゃないヨシュア。それに
ルーク兄とレンも相変わらずスゴイわね~」
「おはよう、エステル。」
「よう、エステル起きたか。」
「おはよう、エステル。うふふ、いつもやっていることだから
そんなに凄くないわよ。」
朝の挨拶で2人は手を止め、ヨシュアもハーモニカを吹き終わると
朝の挨拶をした。

「もしかして、僕達のせいで起きた?」
「ううん、ちょうど起きた所よ。でもヨシュアったら朝からキザなんだから~
お姉さん、聞き惚れちゃったわ~」
「うふふ、それには同感するわ。」
エステルとレンの2人にからかわれヨシュアは溜息をついた。
「何がお姉さんだか。僕と同い年のくせに、それに妹のレンからも
呼び捨てにされてるじゃないか。」
「チッチッチ、甘いわね。同い年でもこの家ではあたしが先輩なんだから
いうなれば姉弟子ってやつ?レンとは昔から妹兼友達感覚だから慣れてるし
それにヨシュアだって呼び捨てにされてるじゃない。」
「ふふ、エステルの言う通りよ。それにレンはちゃんとエステルを
お姉さんだと思ってるわよ?」
「もう、レンったら相変わらず可愛いんだから~」
「はいはい、良かったね。相変わらず2人は仲いいね……」
「まあ、2人とも年が近いから仲良くなるさ。」
仲の良い2人にヨシュアは少し嫉妬をしている所をルークに慰められた。

「それにしても、相変わらずハーモニカ吹くの上手いわね~
あ~あ、あたしもうまく吹けたらいいんだけどな~簡単そうにみえて難しいのよね。」
「君がやっている棒術よりはるかに簡単だと思うけど…ようは集中力だよ。」
「全身を使わない作業って苦手なのよね~眠くなるし。ヨシュアもハーモニカは
いいんだけどもっとアクティブに行動しなきゃ。ヨシュアの趣味って後は読書と
武器の手入れでしょ。そんなインドアばっかじゃ女の子のハートは掴めないわよ~?」
「うふふ、エステルの言う通りよ。ヨシュアは元がいいんだからもっと積極的に
なれば恋人の1人くらい作れるんじゃないかしら?」
「悪かったね、ウケが悪くて。(それに僕の気持ちも少しはわかってほしいよ……)」
2人に趣味の事をつかれた後溜息をついてヨシュアはエステルを見つめた。

「うん?何かあたしの顔についてる?」
「別になんでもないよ。」
「(うふふ、ヨシュアったら相変わらず気持ちがバレバレよ。まあ、それに気付かないエステルも
相変わらずの鈍さにおかしくなっちゃうわ。)」
2人のやり取りを見てヨシュアの気持ちがわかってるレンは面白そうに見ていた。
「?なあレン、2人の顔になんかついてるか?」
「(ふぅ……お兄様も鈍いんだから……いつもは素敵なのに
こういうことには鈍いのよね~)ううんなんでもないわ。」
2人を見て悪戯そうな顔をして笑っているレンを見てルークはレンに質問したが
レンは敬愛する兄の唯一の欠点に溜息をつきなんでもない風に装った。

そこにカシウスが子供達を呼びに玄関を出た。
「おーい、4人とも朝食の用意ができたから
レナが冷めない内に来いと言ってるぞ。」
「「は~い」」
「「わかったよ、父さん」」
そして4人はそれぞれ食卓に着き朝食を取り始めた。

「「ごちそうさま~」」
「はい、おそまつさまでした。」
その後エステルとレンは朝から良く食べ満足した。
「2人とも、朝からよく食べるなぁ……兄さん並じゃないか。」
ヨシュアは2人の食べっぷりに感心した。
「いいじゃん、よく食うこととよく寝ることは大事よ♪
それにお母さんのオムレツは大好きだし。」
「うふふ、エステルの言う通りだわ。それに朝から運動も
したからお腹も凄いすいてたんだもん。後、ママのオムレツは
世界一だもん♪」
「まあ、2人の言うことには同感だな。俺も少しは料理するけど
こんなに上手く作れねえしな。(それにこういう食事はいつでもいいもんだな。
屋敷の時は行儀作法がどうとかでウザかったからな~)」
「ふふ、ありがとうエステル、レン、ルーク。」
3人のほめ言葉にレナは笑顔で答えた。

「まあ、しっかり食って気合を入れておくんだな。今日はギルドで
エステルとヨシュアは研修の仕上げがあるんだろう?」
「うん、そうね。ま、かる~く終わらせて準遊撃士になってみせるわ。」
「エステル、油断は禁物だよ最後の試験があるんだから。」
「え”?試験ってなに?」
「シェラさんが言ってたよ、合格できなかったら追試だって。」
「……やっば~完璧に忘れてたわ……」
「おいおい、こりゃシェラザードに言っとくべきか?」
キルドの試験の制度をエステルが完全に忘れていることにルークは呆れた。
「お願い、ルーク兄それだけはやめて!後のお仕置きが怖いから!」
エステルは手をあわせてルークに告げ口をしないよう頼んだ。

「はぁ~後でばれても知らねぇぞ~」
「大丈夫、なんとかなるわよ♪」
「はあ、君って娘(こ)は……呑気っていうか、楽天家というか……」
「全く嘆かわしい。この性格は誰に似たんだか。」
いつものエステルにヨシュアとカシウスは溜息をついた。
「む、少なくとも父さんほどじゃないわよ。」
「うふふ、確かにママはもっとしっかりしてるもんね。」
「全く似たもの父娘(おやこ)ねこの人達は……」
エステルは顔をふくらませ、レナとレンは相変わらずの
お気楽なエステルに苦笑した。

「それにしてもいいわね、エステル達はもう準遊撃士になれるんだから……
レンは後2年待たないといけないから羨ましいわ。」
レンはエステルとヨシュアを羨ましそうに見てた。
「ま、こればっかりはどうにもなんないわ、お姉さんの特権てやつね~」
「何が特権なんだか……それにそう言うレンだって16歳になったら
準遊撃士じゃなく正遊撃士になるって聞いたよ。そっちの
ほうが凄いじゃないか。」
「うふふ、まだ「仮決定」よ。正確には決まってないわ。」
「まあな、まだ協会はかなりもめているから今の所はわからん。」
ヨシュアの一言にレンは含み笑いをし、カシウスは今のレンの状況を
話した。

実はレンはすでに準遊撃士扱いになっているのだ。なぜ、そうなったか
というと、女王生誕祭で人手が足りないグランセルに
出張していたルークについていき、1人でグランセル支部でたまたま席を外した
受付のエルナンがいなく留守番代わりに受付で遊撃士について勉強していたレンの
ところに緊急で依頼が来たところをなんとレンが解決してしまったのだ。

その解決した依頼がただの物探し等重要度が低い依頼だったのなら
少しほめられお小遣い代わりに報酬を貰い終わりだったのだが、なんと
その依頼はエルベ離宮までの護衛依頼でさらには手配魔獣まで倒してきたのだ。

これを全て知り、自信をつけたレンから自分も仕事をしたいと言われエルナンは悩んだ。
規定では16歳にならないと準遊撃士にさえなれない。だが遊撃士のサポーターなら
年齢制限はないという抜け穴が存在するのだがあくまでサポーターなので一人での
仕事は任せられない。だが、すでにリベールでも中堅の強さの魔物がいるエルベ離宮
まで一人で護衛し、さらには手配魔獣まで倒して来たのだからすでに準遊撃士の基準以上に
達してしまっているレンをどう納得させるべきか悩んだエルナンだがある条件を出した。

それは生誕祭のメインイベント、闘技大会で優秀な成績で収めることと筆記試験で
満点を取ることだった。これなら無理と思ったエルナンだったが予想以上の結果と
なってしまった。
筆記試験は正遊撃士でしかわからない事や普段出さない難しい問題
をも混ぜた試験は満点を取られ、闘技大会ではなんと優勝してしまったのだ。

さんざん悩んだエルナンはリベールの各支部や
協会本部に相談した結果、レンを仮の準遊撃士と認めたのだ。
なぜ、規定年齢にも達していないレンが認められたのはレンの家族
であるカシウスとルークの存在も大きかった。協会としても遊撃士は数が少ないので
自発的に遊撃士を目指す人材が欲しく、正遊撃士の中でも数少ない
S級とA級の家族がいるので彼らが導いてくれると思い大丈夫だと判断したのだ。

余談ではあるが闘技大会で優勝した後、優勝者決定戦の相手、
リベールの将軍モルガンから軍に入らないかと勧誘されたが
父や兄のように遊撃士になるつもりなので興味はないと断り
闘技場から出て行ったレンを見てモルガンは遊撃士にさらなる
嫌悪感を抱いたのはだれも知らない事である。

もちろん仮扱いなので手帳やエンブレムなどは配られなかったが戦闘を
する上での必須のオーブメントだけはレンに配られた。レンも仮扱いで
納得し、さまざまな地方に出張するルークやカシウスについていき依頼を達成した
結果、全ての地方から推薦状を貰える状態になり、さらにはBPも準遊撃士では
上位クラスのポイントになってしまったのだ。
これを知ったエルナンはレンが16歳になった際、
準遊撃士ではなく正遊撃士にするべきだと本部に進言したのだ。
そのほかの支部もエルナンの進言に遺憾はなく自分達も同じ考えだと述べ本部は
この前代未聞な件に関してかなりもめているのだ。現在ではレンが16歳になれば
自動的に準遊撃士になれるよう手続きも完了している状態である。

「いいわね~レンは試験がなくて16歳になれば自動的に準遊撃士にはなれるんでしょ?」
「あら、試験なら受けたわよ。結構難しかったけどパパとお兄様の仕事の様子を
見てたおかげでわかった問題もあったし。それにエンブレムや手帳がなかったから
なかなか信用してくれない人もいたから結構苦労したわよ?」
「エステル……多分だけどレンは僕達よりはるかに難しい試験を受けてるし
僕達より苦労しているよ……」
羨ましがるエステルを見てヨシュアは溜息をついた。

「ま、いいわ。ヨシュア速く最後の研修を受けに行こ!」
「わかった。じゃあ行ってきます。」
「じゃあ、俺も行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
「頑張って来い、2人とも。」
「うふふ、今夜はご馳走になれるよう応援してるわね♪」
それぞれから応援の言葉を貰い、エステルとヨシュアは
ギルドに向かい、またルークも仕事を探しにいっしょにギルドに向かった……




後書き レン、相変わらずのチートっぷりです。ですが原作でも幼いながら執行者になれましたから正遊撃士になれてもおかしくない実力だと思ってます。



[22786] 第8話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/23 22:36
~遊撃士協会・ロレント支部~

「アイナさん、おはよう!」
「おはようございます。」
「よう、アイナ。仕事探しに来たぜ。」
「あら、おはよう、ルーク、エステル、ヨシュア。」
ドアを開け挨拶をした3人に気付いた受付のアイナも挨拶をした。

「シェラ姉もう来てる?」
「ええ、2階で待ってるわ。今日の研修が終われば
晴れてブレイサーの仲間入りね。2人とも特別扱いされているレンにも負けないよう頑張って。」
「うん、ありがとう!」
「頑張ります。」
「んじゃ、俺もちょっと2階に行ってるわ。」
そして3人は2階に上がって行った。

2階では「銀閃」の異名を持つ遊撃士、シェラザードがタロットで
占いをしていた。
「………「星」と「吊るし人」、「隠者」と「魔術師」に逆位置の「運命の輪」、そして
「偽者」と「聖女」と「従者」に正位置の「再会の輪」……
これは難しいわね……どう読み解いたらいいのか………」
シェラザードは占いの結果の難解さに頭を悩ませていた。

「シェラ姉、おっはよう~!」
そこに元気よく声を上げたエステル達が上って来た。
「おはようございます、シェラさん。」
「よう、シェラザード。」
「あら、エステル、ヨシュア、それにルークも。
ルークはともかくあなた達がこんなに速く来るなんて珍しいわね。」
「えへへ、速くブレイサーになりたくて来ちゃった。」
「はあ、いつも意気込みだけはいいんだけど…ま、いいわ。その意気込みを
組んで今日のまとめは厳しくいくからね。覚悟しときなさい。」
「え~そんなぁ。」

シェラザードの言葉にエステルは声を上げた。
「お・だ・ま・り。毎回毎回教えた事を次々と忘れてくれちゃって……
そのザルみたいな脳みそからこぼれ落ちないようにするためよ。
少しはレンを見習いなさい。あの子は教えた事を一発で覚えたんだから。」
「え~ん、ヨシュア、ルーク兄シェラ姉がいじめる~」
エステルは嘘泣きで2人に訴えた

「大丈夫ですよ、シェラさん。エステルって勉強が嫌いで予習も
滅多にやらないけど……ついでに無暗とお人好しで余計なお節介が
大好きだけど……カンの良さはピカイチだからオーブメントも
実戦で覚えますよ。」
「ハハハ!流石ヨシュアだな。俺が言おうとした事全部言われたぜ。
シェラザード、いっそエステルの野生のカンにかけようぜ。」
「はぁ……こうなったらそれに期待するしかないわね……」
エステルの性格を改めて思い知ったシェラザードは溜息をついた。

「ちょっとヨシュアにルーク兄……なんか全然フォローしてるように
聞こえないんですけどっ?」
エステルは2人をジトーッと睨んだ。
「心外だな、君の美点を言ったのに。」
「全くだな。」
ヨシュアは笑顔で答えルークも頷いた。
「全くもう……ところでシェラ姉タロットで何を占っていたの?」
溜息をついたエステルは机に出してあるタロットカードに気付いた。
「ああ、これね……近い将来起こることを漠然と占ってみたんだけど……ちょっと調子が悪いみたい。
読み解く事ができなかったわ。」
「読み解くことができない??」
「へえ、そんなこともあるんですね。」
「ふ~ん、俺にはサッパリわかんねぇぜ。」
3人はそれぞれの反応をした。シェラザードは気持ちを切り替え顔を引き締めた。

「ま、いいわ。それより2人とも最後の研修を始めるわよ。」
「「ハイ」」
「じゃ、俺は依頼を探しに行くわ。頑張れよ2人とも。」
「うん、ありがとうルーク兄。」
「ありがとう、兄さん。」
そしてルークは1階に降りていった。

「さ~て、今日の依頼はっと……」
ルークは掲示板に張ってある依頼書を一通り見ていた。
「あ、ルーク。ちょうど頼みたい仕事があるんだけど……」
そこにアイナが声をかけた。
「ん、なんだ?」
「実は……」
「……へぇ!面白そうだな!わかったその依頼受けるぜ!」
ルークは依頼内容を聞きその依頼を受けた。



~ロレント・地下水道~
灯のオーブメントで照らされた道をエステルとヨシュアが帰りの道を歩いていた。
「ふふ~ん、ま、ちょろいもんよ♪」
「油断は禁物だよエステル。」
2人は地下水道にある捜査対象物を探すという簡単な依頼を成功させることが最後の研修であった。
そして2人は見事見つけ、エステルは上機嫌で帰っている途中だったのだ。

「それにしても、オーブメントの扱いを実戦で覚えるなんてやっぱりエステルだね。」
「なによ~その言い方は。頭で覚えるより体で覚えたほうが速いに決まってるじゃない。」
「まあまあ、いいじゃないか。無事対象物は見つけたんだから。」
「そうね♪これで、もうすぐブレイサーの仲間入りね♪」
ヨシュアの言葉でエステルは膨れていたがもうすぐ依頼を達成できるという言葉に笑顔になった。

「お、2人ともその様子だと見つけたようだな。」
出口が見えたところにルークが立っていた。」
「あ、ルーク兄。もしかして迎えに来てくれたの?」
「待ってエステル。もしかしたら何かあるかもしれないよ……」
「さすがヨシュアだな……」
ヨシュアの言葉にルークは含み笑いをし、拳を構えクラフトを放った。

「魔神拳!」
「わっ!」
「っつ!」
ルークの放った衝撃波は2人にめがけていったが、2人とも回避に成功した。
「ちょっと何するのよ~ルーク兄!」
「悪いな……これも依頼だからな……」
急な攻撃にビックリしたエステルだったが持ち直し文句を言った。
それを聞きルークは悪戯に成功したような顔で笑った。

「依頼……なるほど、僕達の腕を確かめるという訳だね?兄さん……」
「お、鋭いなヨシュア。その通りだ。お前達がどれだけできるか試すのが俺が受けた依頼だ。
ちなみにこれは父さんの入れ知恵らしいぜ?」
「あ、あんですって~!!」
ルークの言葉にエステルは大きな声を上げた。

「さて、試験内容を言うぜ?俺はお前達をこの先通さないつもりでいるから、どっちか1人でも、俺を抜き俺の後ろに立つか俺に剣を抜かせるかが合格内容だ。もちろん俺を倒すのもアリだぜ?」
「剣を抜かせるって、兄さんもしかして体術で戦う気?」
ヨシュアは試験内容を聞き驚いた。
「そりゃそうだろ。俺が剣を抜いて戦ったらお前らが可哀想だろ?」
「むっか~!こうなったらヨシュア、いっちょルーク兄にギャフンと言わせましょ!!そして帰ったらあの不良中年親父をとっちめてやるんだから~!!」
「エステル……兄さんは仮にもA級だよ……でも、そうだね……この試験に合格して準遊撃士になろう!」
「ええ、それにルーク兄との模擬戦は久しぶりだしね。行くわよ、ルーク兄!」
「おお、来い2人とも!」

そしてルークと2人の戦いが始まった……




後書き なんか、みなさんの感想を聞いていたらレンがいつのまにか主役ポジションに……そんなつもりはなかったんですが……まあ、レンは一番のお気に入りキャラですしFCから少しづつ原作に絡ませようとは思っています。



[22786] 第9話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/26 01:35
「ハッ!」
「おっと。」
キン!
エステルの放った一撃をルークは拳でガードした。
それを見てエステルは驚き後ろに下がった。

「なんで、素手で受け止められるの!?」
「エステル、よく見て。兄さんは籠手を装備しているよ。」
「まあ、俺も普段いくつかの体術を使うからな。拳を守るために籠手を装備してんだ。
実際これにはそんなに攻撃力はないしな。」
ルークは籠手をつけた両手をヒラヒラさせた。

「今度は僕だよ、兄さん。せいっ、はっ!」
「っとこれは籠手では危ないな。」
キン!カン!
ルークはヨシュアの放ったクラフトを剣を仕舞っている鞘で防御した。
「さすがだね、兄さん。普段からレンの剣を受けてたら僕の剣は楽かな?」
ヨシュアも受け止められたのを見て一端後ろに下がった。

「まあな。あいつは攻撃の時にもっと速い連撃を混ぜてくるからこっちも本気にならないとヤベェ時もあるからな。
今の年であの強さだから成長した時のことを考えたら恐ろしいぜ……。」
「む、なによルーク兄ったら。レンの事ばっかりほめて!今はあたし達の試験でしょ!?」
「ハハ、悪い悪い。だけど、そうやって油断しているとヤバいぜ?」
そう言ってルークは攻撃の態勢に入った。

「魔神拳!」
「よっと。」
「はっ!」
再びルークの放った衝撃波を2人は回避した。そして回避に成功してほっとしているエステルのところに
ルークが迫ってきクラフトを放った。
「烈破掌!」
「キャッ!」
ルークの闘気の籠った拳の攻撃を受けたエステルは後ろに下がった。
「エステル、大丈夫!」
「うん、攻撃を受ける瞬間に棒で防御したからなんとか……」
ヨシュアはエステルの所にかけよってケガの心配等したがエステルは苦笑して否定した。
「それにしてもさすが兄さんだね……なかなか隙が見当たらないよ。」
「その事だけど、ヨシュア。あたしに考えがあるんだけど……」
「………なるほど、いい考えだねエステル。やってみよう。」
エステルはヨシュアと小声で内緒話をしルークに向き合った。

「お、どうやら作戦会議は終わったようだな。ま、エステルの作戦なんて予想できるようなもんだけどな。」
「むっか~言ったわね、ルーク兄!ヨシュア、行くわよ!」
「うん、エステル!」
「「時の刃よ、水よ!!ソウルブラ―、アクアブリード!!」」
エステルとヨシュアは同時にアーツを発動させ、ルークに放った。

「へえ、アーツの同時撃ちか……なかなか面白い作戦を考えるじゃないか………だが、甘いぜ。粋護陣!」
ルークは迫りくる2属性のアーツを見て笑い、両手を構え闘気を全身に囲い防御した。

「こんなもんか……!」
防御をし終わったルークは笑ったが迫ってくるエステルを見て表情を変えた。

「さあ、行くわよルーク兄!これで決める……ハァァァァァァ!烈波!無双撃!」
「っつ!」
キンキンキンキン!
エステルの放った強烈なクラフトをルークは鞘でガードした。
「なるほど、アーツを放って俺に反撃の態勢をさせない攻撃する戦法か……なかなか考えるじゃないかエステル。」
そう、エステルはアーツを放った後すぐに走り、ルークに反撃の態勢を整わせないように作戦だった。

(ん?おかしい、ヨシュアはどこに……しまった!それが狙いか!)
ルークはヨシュアの姿を探したがいつのまにかいなくなっていて焦りを見せた。

「隙ありだ!兄さん!ハッ!」
そこにいつのまにかルークの後ろに回ったヨシュアは攻撃した。
「とぉりゃぁぁぁ!」
さらにエステルも連撃の後の最後の一撃を放った。
「ヤベッ!」
キン!ガン!

2人の同時攻撃にルークは堪らず剣を抜いて右手の鞘でエステルの打撃を、左手の剣でヨシュアの斬撃を防御した。
「あ~んもう、全部防がれちゃったか。でも、剣は抜かさせたわよルーク兄!」
「それに、兄さんの後ろを抜いたから文句なしの合格だよね兄さん?」
「あ~まさか俺の後ろを抜いた上、剣を抜くハメになっちまうとわな……俺もまだまだだな。約束だ、合格だ2人とも!」
得意げにしてる2人を見てルークは頭をボリボリかいて合格を言った。

「やった~勝ったわヨシュア!」
「ふぅ、確かに今回はエステルの機転のおかげだね。条件付きだったとはいえ兄さんに勝てたんだから。」
合格を聞き2人は笑顔になった。
「んじゃ、2人とも上に上がるか。報告があるんだろう?」
「おっと、ルーク兄に勝ってそのことを忘れてた。」
「エステル……しっかりしてよ。」
そして3人はシェラザードの待つ市街に戻った。

上って来た3人に気付いてシェラザードは労いの言葉をかけた。
「2人とも、お疲れ。その様子だと捜索対象を見つけてルークにも勝ったみたいね。一応、規則があるんで捜査対象を確認させてちょうだい。」
「うん、ハイ。」
「お願いします。」
そして2人は捜査対象が入った小箱をシェラザードに渡した。

「……うん、本物ね。途中で開いた形跡もなし、と。ちなみにルーク、2人はどうだった?」
「ああ、初めての実戦でのアーツを使い方としては文句なしの合格だ。それに攻撃も息を合わせてたしな。」
「そう、それはよかったわ。」

(あ、あぶな~)(やっぱりね……)
シェラザードの言葉を聞き帰りの途中で中身が気になり箱を開けるのをヨシュアに止められたエステルは冷や汗をかき、ヨシュアは予測通りでよかったと思った。
「2人とも、おめでとう。実技試験は合格よ。」
「ふふん、あのくらい楽勝よ。それでシェラ姉その小箱には何が入ってるの?」
エステルはずっと気になってた小箱の中身を聞いた。
「まあ、それは研修が終わってからのお楽しみよ。さあ、ギルドに戻りましょ。」
そして4人はギルドに戻った。




後書き ちょっと長くなりそうになったので一端ここできる事にしました。次回はルーク出張です。



[22786] 第10話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/27 23:12
~遊撃士協会・ロレント支部~

「お疲れ様、2人とも報告は完了よ。仕事によってミラが増減するから気をつけてね。
後報告をすればBPというポイントも追加されるわ。BPはブレイサーとしての実績を表すものだわ。このポイントを
ある程度ためるとランクが上がり協会から特別な備品が支給されるわ。準遊撃士のランクは9級から1級までの
9段階だわ。2人とも最高ランクを目指してがんばってね。」
2人の研修の結果を聞きアイナは2人に報酬を渡した。

「ねえねえ、アイナさん。ちなみにレンって今どれぐらいたまってるの?」
「レンのランクは今3級だわ。」
「3級ってことは上から3番目ってことよね。ふえ~あの子ったら凄いわね。」
「そうね、だからこそあの子が規定年齢に達した時準遊撃士のままだともったいないのよ。
あの調子だったら近い内に1級もとりそうだしね。」
「なるほど、だからアイナさん達はレンが正遊撃士になることを本部に提案しているんですね?」
「ええ、これはリベール支部全ての考えよ。」
エステルはアイナからレンの状況を聞いて驚き、ヨシュアは理由を聞き改めてレンの凄さを知った。

「よお~しレンに負けないようあたし達もがんばりましょヨシュア!」
「そうだねエステル。」
「お、気合が入っていい感じだな2人とも。」
エステルとヨシュアが気合をいれるのを見てるルークは2人のこれからの活躍に期待した。

「さあ~て最後の仕上げにかかるわ。悪いけどアイナ、2人を借りていくわね。」
「ううん気にしないで。」
「俺もちょっと着いて行くよ。」
シェラザードは最後の仕上げにかかるべく2人を2階に連れて行きまたルークもついて行った。

「これで全ての研修は終了したわ。後は実際の依頼で学んで行きなさい。さて……と」
シェラザードは先ほど預かった小箱を出した。
「あ、その箱はさっきの……」
「開けていいぜエステル。」
「ほんとにいいの、ルーク兄、シェラ姉。」
「ええ、開けてみなさい。」
2人は小箱を開けた。その中には準遊撃士の紋章(エンブレム)が入っていた。

「このエンブレムは……」
「じゃあこれで僕達も?」
2人は期待の眼差しをシェラザードとルークに向けた。

「コホン。エステル・ブライト、ヨシュア・ブライト。本日15:00を持って両名を準遊撃士に任命する。
以後は協会の一員として人々の暮らしと平和を守るため、そして正義を貫くために働くこと。」
「2人ともおめでとう。今日からお前らも俺達の仲間だ。」
「やったね。ヨシュア!これであたし達も晴れてギルドの一員ね!」
「そうか、僕がブレイサーか…………はは少し不思議な気分だよ。」
「ま、2人とも気持ちはわかるぜ。俺も準遊撃士になった時はスッゲー嬉しかったからな。」
2人は念願のブレイサーになったことを喜びルークもかつて自分がブレイサーになっと時のことを思い出していた。

「ふふ、さてと……あたしはそろそろ行くわね。溜まってた仕事もあるし。」
「そっか。忙しい合間につき合ってくれたんだ。ありがとうシェラ姉。」
「お世話になりました。シェラさん。」
「ふふ、気にしないで。新人を育てるのもブレイサーの義務よ。」
お礼を言う2人に笑顔をみせシェラザードは下りて行った。

「んじゃ、俺も行くぜ。これからもがんばれよ2人とも。」
「うん、ありがとうルーク兄!」
「ありがとうございます、兄さん。」
そしてルークも下りて行った。

下りてきたルークを見てアイナは声をかけた。
「ちょうどよかったわ、ルーク悪いけどまた出張をお願いしたいの。」
「わかった。どこだ?」
「ツァイスよ。」
「ツァイスか……レンも行きたがるかもしれないから連れていってもいいか?」
「ええ、キリカからもレンの事を一応聞いたけどぜひ来てほしいそうよ。」
「わかった。いつだ?」
「明日よ。もう、チケットも念のためにレンの分も取ってあるわ。」
「サンキュー、んじゃ明日の用意もあるから今日はあがるぜ。」
「ええ、お疲れ様。」
そしてルークはギルドを出た。


~ブライト家・夜~


そこでは2人の合格祝いでささやかなパーティーが開かれていた。
「ゴクゴク……プハー、とうとう2人もブレイサーか。月日は流れるものですね。」
「ああ、そうだな。」
「2人とも、明日も仕事があるんですからお酒はほどほどにしておきなさいね。」
カシウスとシェラザードは祝いに酒を飲んでいたがレナが自重するように止めた。

「いいじゃないですか、せっかくのお祝いなんですから。」
「シェ~ラちゃ~ん?」
レナは凄味のある笑顔でシェラザードを見つめた。
「う……ハイ、わかりました。」
凄味のある笑顔にシェラザードはすごすごと引き下がった。

「あはは、やっぱりシェラ姉もお母さんにはかなわないか。」
「まあね、あたしにとっても母親のような存在だからどれだけ時間がたってもかなわないのよね……」
「ふふ、それは当り前よ。シェラちゃんも家の子のようなもんだし。ねえ、あなた?」
「まあ、そうだな。」
「ふふ、ありがとうございます。」
レナとカシウスの暖かさにシェラザードはいつもながらこの家族は心地いいと感じた。

「そうだ、俺明日から出張になったから。しばらく家を離れるよ。」
ルークは言い忘れていたことを全員に言った。

「え~せっかくルーク兄と仕事場がいっしょになったんだけどなぁ……」
「エステル、仕方ないよ。兄さんは正遊撃士の中でも数少ないA級なんだから。」
「まあな、これもブレイサーの義務だ。ところでどこに出張だルーク。」
「ツァイスだよ。」
「ツァイス!レンもついて行っていい!?」
エステルとヨシュアは少し残念がり、レンは出張場所を聞いて身を乗り出した。

「レン、お行儀が悪いわよ。」
「ごめんなさいママ。でもティータに会えると思ってついはしゃいじゃった。」
「確かその子って向こうで仲好くなって文通している子よね。よくその子の名前の手紙を見かけるし。」
「うん、ティータはレンの親友よ!」
レンは以前ツァイスに行った時、友達になった女の子――ティータの事をエステルに聞かれ笑顔に親友と言った。

「ねえ、それよりもお兄様。レンもついていっていい?」
「ああ、お前の分のチケットもとってあるってアイナが言ってたぜ。もちろん仕事もしろよな?」
「うん!レンがんばるわ!」
「ふふ、レン、仕事をするのもいいけど友達は大切にしなさい。」
「うん、ママ!」
意気込むレンをみてレナは友達を大切にするように言った。

「じゃあ、そういう事だから2人とも後のことは頼むぜ。」
「ああ、こっちの事はいいから向こうでも頑張って来い。」
「こっちの事は心配する必要ないわ。ちょうど2人の新人も入って来たし。バリバリ働かせる気だし。」
「バリバリ……」
「覚悟したほうがよさそうだね、エステル。」
シェラザードの一言にエステルとヨシュアはこれからの事を考え苦笑した。

そしてその夜は2人の試験の事で盛り上がり夜は更けていった……

~ロレント・飛行場~

人々が飛行船に乗っている最中にレンとルークは飛行船に乗る手前で家族とシェラザードの送迎を受けた。
「じゃあ、行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい兄さん、レン。」
「2人とも気をつけてね。」
「うん、ママ。行ってきます。」
「あたし達も推薦状をもらいにリベールを廻るつもりだから向こうで会うかもね♪」
「うふふ、その時はティータを紹介するわ♪」
「ルーク、ラッセル博士によろしくな。」
「わかったよ父さん。」
「レン、もう向こうでの地理とか知っていると思うけどしっかりやりなさい。」
「ありがとう、シェラお姉さん。」

ピンポンパンポーン
「これより王都方面行セシリア号は出発します。まだ、乗船なさってない方は乗船して下さい……」

そこに出発のアナウンスが入った。
「っとそろそろ時間か……行くか、レン。」
「うん、お兄様!」

そして2人は飛行船の中に入り、セシリア号は出発した……




後書き え~この出張が終わるころには原作の序、1、2の終盤まで飛ばす予定でいます。あのあたりはルーク達を介入させる必要性ないですし……



[22786] 第11話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/11/30 00:38
~ツァイス・飛行場~

リベールの中でも最も発展した都市、ツァイスにセシリア号が降下した。
そして、ハッチが開き乗客が降りはじめた。その中にはロレントを旅立ったルークとレンがいた。

「ふ~やっと着いたな。ずっと、飛行船の中にいるのは疲れるぜ……」
「そう?レンはお空を間近で見れたから楽しかったわよ。」
「ハハ、レンは気楽でいいな。(空ならアルビオールで嫌っていうほど見たから飽きたんだよな~)」
レンの空を間近で見れることについて話して、ルークはかつての旅で嫌というほど見てきたので苦笑した。

「レンちゃ~ん!」
「あら、今の声は……」
そこに一人の作業服を来た女の子が2人の所に走ってきた。

「ティータ!久しぶりね!」
「うん!レンちゃん、久しぶり!」
「久しぶりだな、ティータ。」
「あ、ルークさん。お久しぶりです。」
久しぶりに出会ったレンと親交を深めていたティータは、ルークの方に向け、ペコリとお辞儀をした。

「それにしても、どうしてレン達が来るって知ってたの?」
「えへへ、昨日キリカさんにたまたま会ってレンちゃんが来ることを教えてくれたんだ。」
「へぇ、キリカの奴ああ見えて親切なんだなぁ……」
「うふふ、お兄様。そんな事言ってたら後で何言われるかわからないわよ?」
「う……あいつならあり得そうで怖いぜ……」
ルーク達が来る事をティータからキリカから聞いたと言ったルークは不思議がったが、
レンから忠告され普段勘のいい彼女ならあり得そうだと思い自重した。

「お兄様、キリカさんも待ってることだしそろそろ行かない?」
「ああ、そうだな。」
「あ、わたしもついていくね。レンちゃん。」
「ふふ、ありがとうティータ。時間は大丈夫なの?」
「うん!今日は特別な休憩時間を貰っているだから大丈夫だよ。」
「そっか、じゃあ行こうか。」
そうして3人はギルドに向かった。

~遊撃士協会・ツァイス支部~
「ええ……ルークだけでなくレンも来るのね、わかったわ……」
そこには導力通信で話しているのはツァイス支部受付であり、武術も収めている東方風の服装を着た女性、キリカだった。
そこにちょうど3人が入って来た。

「来たわね、ルーク、レン。それにティータも。」
キリカ後向きでルーク達が来たことを悟り、振り向いて受付に戻った。
「相変わらず勘のいい奴だな……」
「うふふ、お久しぶりねキリカさん。」
「あのあの、こんにちはです、キリカさん。」
「こんにちはレン、ティータ。」
ルークはキリカの勘の良さに感心し、レンとティータは挨拶をした。

「ツァイス在中のブレイサーが一人急な仕事でしばらく離れることになったから人手が増えて助かったわ。
ルークはともかくレン、あなたもここに来たということは戦力として期待していいわよね?」
「うふふ、特別扱いで準遊撃士扱いされているんだから当たり前じゃない。これもブレイサーを目指す者
としての義務よ。」
「お、言うようになったなレン。」
「わぁ、レンちゃんカッコイイ……」
「うふふ、それほどでもないわ。」
「そう……ならいいわ。後あなたに渡すものがあるから。」
「?何かしらこれ?」
レンはキリカに近づいた。キリカは小箱を出しレンに渡した。

「開けてみればわかるわ。」
「わかったわ。」
そしてレンは小箱を開けた。その中には翼のない"支える籠手"のエンブレムが入っていた。
「準遊撃士の紋章……!!本当にもらっていいの!?」
レンは顔色を変えキリカにつめよった。

「ええ、リベール支部全員の受付があなたに仕事をしやすくするために本部に掛け合ったわ。
そしたらとりあえずエンブレムだけは渡してくれたわ。それがあれば効率よく依頼を達成できるでしょう?」
「ええ……!うふふ、まさかこんな嬉しいサプライズがあるとは思わなかったわ。」
レンはエンブレムを服につけ誇らしげに胸をはり笑った。

「似合ってるぞ、レン。」
「レンちゃん、おめでとう!」
「ありがとう2人とも。」
「そのエンブレムは遊撃士の証。それを受け取ったからには今まで以上に本物のブレイサーとして責任を持った行動をしなさい。」
「ええ、わかってるわ……!」
キリカの言葉にレンは不敵に笑った。

「さて、それじゃあ依頼を始めるか……!」
「レンも探そうっと……!」
そして2人は掲示板を見て、緊急性の高い依頼をメモした。

「っと今日、できるとしたらこんなもんか。」
「お兄様、トラッド平原に珍しい手配魔獣がいるけどどうする?」
「何々……複数で組んでいる手配魔獣か……レン、今日の最後にいっしょにこいつを倒しにいかないか?」
「ええ、いいわよ。」
「そっか、じゃあ行ってくるよ。キリカ。」
「行ってくるわ。キリカさん。」
「ええ、あなた達の働きを期待しているわ。」
「おじゃましました。」
そして3人はギルドを出た。

「さて、本当はもう少し話したいけどお仕事があるからティータとは一端お別れしなくちゃね……」
レンは残念そうにティータに話しかけた。
「あ、その事なんだけどお2人に提案があるんですが。」
「ん?なんだ?」
「えっとですね……ツァイスにいる間は私の家に泊まっていきませんか?」
「え、いいの?」
「うん。お爺ちゃんに相談したらいいって言われたの。だからもしよかったら泊まっていかない?」
「お兄様、レンは賛成よ。いいでしょ?」
「そうだな……せっかくの好意だし受けておこうか。」
「わあ……!今日からしばらくいっしょだね、レンちゃん。」
「うふふ、そうね。楽しみだわ。」
思わぬティータの提案を受けたことでレンは帰ってからの事を想像し楽しい生活になると期待した。

「あっと……もうこんな時間だ。私もそろそろ行くねレンちゃん。」
「うん、がんばってね。」
「えへへ、じゃあ仕事が終わったら家に来てね。」
「うん、絶対行くわ。」
そうしてティータは時計の時間に気付き2人に挨拶をした後工房へ向かった。

「さて、じゃあ俺達も始めるか……!」
「そうね……!」
そして2人もそれぞれの依頼人の所へ向かった……





後書き 勢いでオリジナルを作ってみましたが早々にネタが思い浮かばなくてヤヴァイ……
FC後半のネタなら結構思い浮かべるんですが……
次回は久しぶりに戦闘します。



[22786] 第12話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/06 08:50
なんとかできましたが、クオリティが下がった気がします……






~トラッド平原~
ツァイス市とリベールの名所の一つであるエルモ温泉とカルバード共和国を結ぶ関所、ヴォルフ砦へ
行く道がある平原をそれぞれの依頼を終えたルークとレンが合流し手配魔獣を探して歩いていた。
「ふぅ……なかなか見つからないわね。」
「まぁ、このトラッド平原はリベールの街道の中でもかなり広いほうだからな。仕方ネェよ。」
「むぅ、さっさと終わらせてティータとおしゃべりしたいんだけどなぁ……」
溜息をついたレンをルークが嗜めている時に複数の魔獣が現れた。

「っと、敵だ。行くぜ!」
「そうね……先制攻撃よ、魔神剣!」
「グォ!」
レンの放った衝撃波は1匹の魔獣にダメージを与えた。
「んじゃ俺もやるか……双牙斬!」
ザシュ!
ルークのクラフトに魔獣は1匹倒れた。
「ハッ!そこ!」
ザシュ、ビシュ!
レンの剣と小剣の攻撃にまた魔獣が1匹倒れた。

「メェェェ!」
仲間を倒され怒った魔獣は力をためるように動いた。
「何か、やるようだな……」
「させないわ、瞬迅剣!」
「メェ!?」
レンのクラフトに急所をつかれて、力をためていた魔獣は力を発揮することなく倒れた。
「ま、こんなもんか。」
「うふふ、我が剣は飛燕のごとくよ♪」
魔獣の集団を倒し2人は武器を収めた。そしてルークはレンが何かを考えているように見えて声をかけた。

「どうした、レン?」
「うん、さっき放った瞬迅剣って突きを主体とする技でしょ?これ以外にもなにかできそうな感じはするのよね。
レンの技って基本的に斬撃を主体とするのが多いでしょ?だから技のバリエーションを増やそうと思っているのよ。」
「俺と父さんの技のいくつかと自分自身の技を持っているだけで十分凄いと思うけどな……
突きを主体とする剣は細剣(レイピア)だから俺では教えられネェよ。王国軍の親衛隊なら使っているのを見たことあるぜ。」
「ふぅ~ん、参考になるのは細剣に親衛隊か……ありがとう、お兄様。もし細剣を使う人と仕事をいっしょに
する時があれば参考にするわ。」
「まぁ、がんばれ。」

そして、2人が歩き出して少しして、一際大きい魔獣が数匹群れをなしているのを見つけた。
「あれは、手配書の……」
「うふふ、ようやく見つけたわ。お兄様行きましょう!」
「ああ!」
2人は剣を抜き魔獣の群れに突撃した。

「吹き飛びなァ!紅蓮襲撃!」
「「「グォ!?」」」
ルークの闘気により炎を纏ったような蹴りを喰らった魔獣達は思わず怯んだ。
「うふふ……隙だらけよ!邪霊一閃!」
ザシュ!ザシュ!ザシュ!
そこにすかさず、一瞬消えたレンが複数の魔獣にほぼ同時にダメージを与えた。
「グォ!」
「ガァ!」
だが、やられっぱなしだった魔獣達も黙ってなく、それぞれ2人に襲いかかった。
「おっと。」
「うふふ、動きが遅いわ。」
しかし、2人ともなんでもないように魔獣達の攻撃を回避した。

「んじゃ、そろそろ決めるぜ……ぶっ潰れちまえ!烈震!天衝!」
「「「グォォォ!?」」」
ルークの放ったクラフトに魔獣達はさらに傷ついた。
「お兄様、どいて!レンが決めるわ!」
「ああ!」
レンの言葉でルークは一端下がった。それを見たレンは剣に闘気を集中させた。

「うふふ……そろそろ終わらせてあげる……ハァァァァ……飛燕の円舞、紅燐剣!」
「「「グォォォォ……」」」
レンの闘気の籠った強烈なクラフトによる衝撃波を受け、手配魔獣達は沈黙した。
「ふふ、ご機嫌よう。」

「終わったな。もうここら辺に用はないし、ギルドに戻るか?」
「そうね、速く帰りましょう!」
「ああ。」
そして2人はその場を後にしてツァイスにギルドへ戻った。

~ラッセル工房・夜~

仕事を終え、ルーク達はラッセル家に行き、ティータとティータの祖父であり、ゼムリア大陸に大きな貢献をもたらし
「導力革命の父」と呼ばれるアルバート・ラッセル博士に迎えられた。

「あ、お帰りなさい、レンちゃん、ルークさん!」
「ただいまティータ。しばらくお世話になるわね♪」
「博士お久しぶりです。しばらくお世話になります。」
「おお、久しぶりじゃの、ルーク、レン。ゆっくりしていくといい。」
そしてその日はレンのエンブレムを貰ったこと等で盛り上がった。

「ほう、頭の固い協会本部がその年で遊撃士の証とも言えるエンブレムを渡すとはのぉ……」
「まぁ、レンの日ごろの仕事っぷりがよくて本部も渡さざるを得なかったと思うぜ。」
「うふふ……それほどでもないわ。」
「それにしても、その年で自分の道を決めるのはもったいないのぉ。レン、お主、ツァイス工房だけでなく
かのエプスタイン財団もお主をスカウトしたと聞いたことがあるが。」
「え!?そうなの、レンちゃん!マードックさんがレンちゃんをスカウトしたのは知っていたけど、
エプスタインの人がスカウトしたのは初めて聞いたよ!?」
「ええ、ロバーツって人がレンの書いた論文を財団が読んでぜひ、来て欲しいって言いに来たことがあるわよ。」
「論文って……レン、いつのまにそんなもん書いたんだ?」
「ふふ、暇つぶし代わりに書いたのを、試しに投稿しただけよ。」
ラッセル博士の言葉にレンはそれほどでもない風に装ったがルークとティータは驚いた。

「ねぇねぇレンちゃん。どうして、遊撃士になろうと思ったの?」
「ふむ……それは少しわしも疑問に思ったな。お主ならいろいろな選択肢もあったろうになぜ、
その年で危険な仕事である遊撃士を選んだんじゃ?」
「そうね……お兄様やパパを見て選んだっていうのもあるけど、一番の理由は遊撃士が"幸せ"をくれたことよ。」
「ふえ……?幸せ?」
ティータはレンの言葉に疑問を持った。

「ティータになら少し話してあげたでしょ。レンの"偽物の家族"のことを。」
「あ………」
ティータは以前、ルークとレンが兄妹のわりに全然似ていないことに疑問を抱きその事をレンに聞き、
レンが少し話した昔の家族のことを思い出し気まずい顔をした。

「"あの人達"に捨てられてレンはずっと願っていたの。"本当の家族"が迎えに来ますようにって。
そうしたらお兄様が迎えに来て、"本当の家族"に会えたの。だからお兄様達とレンを会わせて"幸せ"をくれた遊撃士には感謝してるの。
それにレンはだれかに束縛なんてされたくないし、今の生活が気にいってるの。」
「レンちゃん……」
「………ふむ」
「レン………」
レンの言葉に3人はさまざまな表情をした。

「ふふ、そんな顔しないでよ3人共。レンは今幸せだからそれでいいじゃない。」
「ふむ……立入った事を聞いてスマンかったな。」
「レンちゃん、がんばってね。わたしは応援してるよ。」
「ありがとう、ティータ。それよりお兄様、エステル達のこと言わなくていいの?」
「そうだな……ティータ、博士実は……」
レンに促されてルークはティータとラッセル博士にエステル達が近い内ツァイス市に来るかもしれない事を言った。

「わぁ……レンちゃんのもう一人のお兄さんとお姉さんが来るんだ……」
「その時は2人のこと、よろしくおねがいします、博士。」
「ふむ……まあ、いいじゃろ。」
エステルとヨシュアがその内来ることを聞いてティータはまだ見ぬ、2人を想像してドキドキし、ラッセル博士は
どのような人物か想像した。

そしてルークとレンはしばらくラッセル家の世話になりつつ依頼をこなしていった。
そんなある日、カシウスより手紙が届いたことにより、2人が今、静かに動き始めているリベールの闇にかかわることになる……




後書き ようやく2人がFCに介入します。ただルークの出番は少なくレンの出番が多くなるような気がします……ルークが主人公の話なのに…… 後更新速度が少し遅くなっていくと思います。グレイセスFをプレイ中ですから。グレイセスFを買って一言……なんで、未来への系譜が最初からできないんだ―――!!本編をまた、最初からだなんてだるすぎます……



[22786] 第13話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/25 03:02
お待たせしました!グレイセスエフ、クリアしましたので連載に戻ります。





ルーク達がツァイスに来て、別の地方で少し事件が起きた。なんとルーク達がロレントを出て数日後、飛行船リンデ号がハイジャックされたのだ。
事件は遊撃士と軍人のおかげで無事解決したのだが、なんと解決の手助けをした遊撃士の中にエステルとヨシュアがいたのだ。
事件のあらましをキリカから聞いたルークは2人とも「あいつらも成長したな」と思い、
またレンは準遊撃士でありながら新聞にも載るほどの事件を解決した2人を「さすがエステルとヨシュア」と思い
自分も2人に負けてられないと思い、より一層依頼をこなした。そのおかげでレンは2級の一歩手前までBPがたまった。

そしてそんなある日。

~遊撃士協会・ツァイス支部~

「今、戻ったぜ。」
「こっちも今日の分が終わったわ。」
依頼を終えた2人が報告をしにギルドに戻ってきた。
「お帰りなさい、2人とも。カシウスさんからルーク宛に手紙が届いているわよ。」
2人を迎えたキリカは手紙を机の上に出した。
「手紙?なんだろう……?」
ルークは渡された手紙を読んだ。

"ルークへ"………
今、俺はエレボニア帝国で起こったギルド襲撃事件を解決するのに指揮を執っている。だが、リベールでも怪しい動きがある。すでに何人かの信頼できる遊撃士に調査を頼んだが人手が足りないらしく
ルーク、お前もそれを手伝ってくれ。そして、レンはレナの護衛にあててくれないか。もしかしたら、敵が俺やお前を警戒してレナを人質に取るかもしれん。レンの戦闘力はすでに正遊撃士に届いてもおかしくないから大丈夫だろう。ただ、レナのほうは
今すぐというわけではないだろう。レンは期を見てロレントに帰してやってくれ。そして、ルークお前は今、調査しているアガットのほうに行ってくれ。では武運を祈る……
"カシウス・ブライト"

「………」
「お兄様どうしたの?そんな真剣な顔をして。」
「ああ、そうだな。レンにも関係していることだから読んでみてくれ。」
ルークは読んでいた手紙をレンに渡した。

「どれどれ………なんですって!!!」
レンは手紙の内容を読み顔色を変え思わず叫んだ。
「お兄様!レン、すぐにロレントに戻るわ!ママを守らないと!」
「まあ、待て。手紙を読んだだろう?母さんの方はすぐにというわけではない。それに何かロレントでもあればシェラザードもいる。
シェラザードにも母さんの周囲に気をつけていくように言っておく。それに一日中母さん
を守っていたらレンのほうが疲れていざという時に体が動かなくなるぞ。ここは父さんの言う通り期を見てロレントに帰ったほうがいい。」
「お兄様……そうね、その通りだわ。レン、つい頭に血が上っちゃったわ。」
「いや、母さんが大好きなお前にとっては見逃せないことだからな。仕方ネェよ。」

憤っていたレンはルークに窘められおとなしくなった。
「……さて、話は終わったかしら?そろそろわたしのほうにも話してほしいんだけど。」
「っと、そうだな。悪いキリカ。」
そしてルークはキリカにもカシウスの手紙の内容を話しこれからの行動を言った。

「……そう、リベールに何かが起ころうとしているのね。」
「ああ、それで俺は今で、レンも近い内にここを離れることになるけど大丈夫か?」
「あなたたちが来てくれたおかげで溜まっていた依頼も大分なくなってきたわ。それにルーアンのジャンの話しだとそろそろエステル達に推薦状を渡してこっちに向かわせるとのことだから人手は心配しなくていいわ。」
「わかった、それで今アガットはどこにいるんだ?」
「今は、ルーアンで孤児院の火事の事件を担当しているわ。」
「孤児院が火事!?あそこには数人の民間者がいたけど大丈夫だったのか?」
「ええ、幸い民間者には被害が出なかったわ。」
「そうか……じゃあ悪いが今からツァイスを出るぜ。今ならまだルーアンへ行く最終便が出てたはずだからな。」
「わかったわ。手配をしておくわ。それより、ルーク。あなた、アガットを知ってるの?」
「あ~~そういえば知らないな。「重剣」のアガットはよく聞くんだが、あいつとは仕事をしたことがないからわかんねぇんだよな……」
キリカにアガットを知ってるかと問われルークは知らないことに気付いた。

「全く……しょうがないわね。これがアガットよ。」
キリカは遊撃士の名簿をルークに見せた。そこに目付きの悪い赤い髪の男が写っていた。
「こいつがアガットか……サンキュー、キリカ。じゃあ俺はもう行くぜ。」
「ええ、わかったわ。」
「レン、母さんのことは頼んだぞ。」
ルークはしゃがんでレンを真剣な目で見た。

「大丈夫よ、お兄様。今のレンは、昔と違って誰にも負けない力があるから、レンの大事な家族は誰にも壊させないわ。」
レンは自信を持って言った。
「そうか……一応念のためにこいつをやるよ。」
ルークは懐からペンダントを出した。
「わぁ……綺麗……これは何、お兄様?」
「これはクローナシンボルって名前で俺の故郷にある状態異常除けのペンダントだ。効果はなんとグラ―ルロケット並だぜ?」
「グラ―ルロケット並!?凄い!本当にいいの、お兄様?」
「ああ、何があるかわかんねぇからな。常に万全で闘うのがベストだろ?それに俺はこのグラ―ルロケットがあるからいらねぇんだよ。」
そしてルークはレンにペンダントを手渡した。それを大事に受け取ったレンはすぐに首に掛けた。
「似合ってるぞ、レン。」
「うふふ、ありがとうお兄様。このペンダント、大事にするわね。」
「ああ、じゃあ頑張れよ、レン。」
「うん!お兄様もね!」
そしてルークはギルドを出て空港に急いで向かいルーアン行きの飛行船に乗った……





後書き ちょっと短かったかもしれませんがすでに次もある程度書きあげているので近い内また、更新できると思います。それにしてもグレイセスエフでなぜ、ソフィが大人になったかを見てレ〇ス?と思ったのは私だけでしょうか



[22786] 第14話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/27 14:53
ファルコムからの重大発表、軌跡シリーズの新作を来年出す予定を聞いて超嬉しいです!!



~ルーアン市内・夜~

「ふ~着いたか。それにしてもこんな時間か……アガットと合流するには明日にして、ホテルに空き室があるか聞いて、なければギルドで寝かせてもらうか……」
ツァイスからの最終便に乗りルーアンに着いたルークはルーアン市内にあるホテルに向かおうとした。
その時、2人の黒装束の男が物凄い勢いで横切り、また2人を追うように重剣を背負った赤毛の青年が追いかけていた。
(ん!?あれはまさか、アガットか?……追っている奴らはいったい……まさか手紙にあった、あやしい奴らか!?
だとしたら、ちょうどいいぜ!追いかけるか!)
そして、ルークもアガットを追うように駆けだした。


~アイナ街道~

リベールの名所でもあるエア=レッテンに続く道に2人の黒装束の男達が息を切らせていた。
「はあはあ……」
「な、何てしつこいヤツだ!」
「おらおらおらッ!」
そこに勢いをもった赤毛の青年―――正遊撃士、「重剣」のアガットが追いついた。

「あんな大剣をかつぎながらどうして付いてこられるんだ!?」
黒装束の男達は逃げながらもアガットの身体能力に驚愕していた。
「ハッ、鍛え方が違うんだよ……らああああああっ!」
ズドン!!
アガットは近くにあった岩にジャンプし、さらに勢いを持って男達に攻撃を仕掛けた。

「クッ……これ以上は振り切れんか……」
「仕方ない、迎撃するぞ!」
男達は装備している武器を構えた。それを見てアガットは不敵に笑った。
「ようやくその気になってくれたみたいだな……てめぇらとの鬼ごっこもここまでで嬉しいぜ。」
「しつこく追って来なければ、死なずにすんだものを……」
「馬鹿な奴だ……、2対1で勝てると思うのか?」
「ハッ、勝てるに決まってるだろ。喧嘩は気合だ!!」
アガットは劣勢を指摘されても動じず、むしろ自分が優勢だと言い放った。

「いや、2対2だぜ。」
アガットから後ろから声がし、アガットは警戒した。
「あん?誰だ!?」
そこにアガットに追いついたルークが姿を現した。

「よっ、あんたが「重剣」だな?初めましてになるな。正遊撃士、ルーク・ブライトだ。」
「ルーク・ブライト……テメェが「焔」か。なんでここにいやがんだ?」
「父さんにお前等を手伝うように言われてな。キリカにお前の居場所を聞いてルーアンに来たんだが
ちょうどいい所に蜂合わせたようだな。」
「チッ、あのオッサンめ……余計なお世話だよ。まあいい、どうやらテメェらにとっては旗色がさらに悪くなったようだな?」
アガットはルークの登場で焦っている黒装束の男達を見て笑った。

「クッ、どうする?」
「どうもこうもない、迎撃するのが一人増えただけだ。行くぞ!」
そして男達はルークとアガットにそれぞれ襲いかかった。

「ふおらあぁぁぁ!フレイムスマッシュ!」
「喰らえ!烈穿双撃破!」
「「ぐあああああっ……!!」」
しかしルークとアガットの強烈なクラフトにより男達は膝をついた。
「あっけねぇな。父さんが警戒してたが弱すぎねぇか?」
「フン、陰でコソコソして、挙句の果てには尻尾を巻いて逃げるような負け犬根性丸出しの奴らだ。そういう奴らは弱いに決まってるもんだ。
それより、とっとと降伏して洗いざらい白状してもらおうか。」
「クソ、ギルドの犬が!!!」
「このままでは、我らの計画が……」
「おしゃべりはここまでだ、さっきも言ったがテメェらの正体、目的、洗いざらい全て白状してもらうぜ。」
アガットは男達に近づいた。

「それは困るな。」
その時、また声がした。
「なっ!?」
「何!?」
そこに黒装束の男達と似ている服装をした仮面の青年が姿を現した。

「い、いつのまに……」
「何者だ……(コイツ……かなり強い……強さはアッシュ並……いやそれ以上の強さかもしれネェな……)」
アガットは突然現れた青年に驚き、またルークはその強さを感じ取り警戒した。
「た、隊長!?」
「来て下さったんですか!」
青年の登場に男達は喜んだ。

「仕方のない連中だ。定時連絡に遅れた上こんなところで遊んでいるとは。」
「も、申し訳ありません。」
「いろいろと邪魔が入りまして……」
青年の嘆息に男達は焦って言い訳をした。

「なるほどな、テメェが親玉って訳か?」
「フフ。自分はただの現場責任者にすぎない……部下達の非礼は詫びよう。ここは見逃してもらえないか?」
「ハ……?」
「はあ?今、なんて言った?」
青年の突拍子のない提案にアガットとルークは一瞬呆けた。

「見逃して貰えないかと言った。こちらとしても遊撃士協会と事を構えたくないのでね。」
「アホか!んな都合のいい話があるか!」
「そうだぜ!だいたいそのつもりがないなら最初から怪しいことを考えるじゃねぇ!」
繰り返すように言う青年の言葉をルークとアガットは否定した。
「やれやれ……悪くない話だと思ったんだが……お前達、ここは自分が食い止める。早く合流地点に向かうがいい。」
「は、はい!」
「感謝いたします、隊長!」
そして男達は走り出した。
「逃がすか、おらあ!」
アガットは追うように追撃をかけようとしたが仮面の青年が邪魔をした。

「…………」
「てめえ……フン、まあいい。こっちには2人いるしな。おいルーク、お前はさっきのやつらを追え。」
「……いいのか?コイツ、かなり強いぞ。」
「ハッ!こんな奴、俺一人で十分だ。さっさと行け!」
「わかった。気をつけろよ。」
そしてルークは逃げた男達を追おうとした。それを見て仮面の青年が邪魔をしようとしたが、
「オラァ!お前の相手は俺だ!」
「ムッ……」
アガットがそれを阻んだ。
そしてルークは駆けだした。

「フ、仕方ない。さっさと終わらせて部下達を救出するか……」
「ハッ!テメェは俺に膝を着くことになるから部下共々洗いざらい白状してもらうぜ。」
「フフ、できるかな?」
「上等ッ!」

キン!ガン!シャッ!ズドン!
アガットと青年はしばらく剣を交わしたりそれぞれの攻撃を回避した。
そしてお互い、ある程度の距離を持った。
「フン、やるじゃねぇか。」
「抑えきれない激情を持って鉄魂を振るうか……お前は自分と似たところがある。」
「………………なんだと?」
「己の無力さに打ちのめされた……そんな眼をしているぞ。」
「………クックックッ、いいねぇ。どこの誰かは知らねぇが気にいったぜ………」
アガットは何かを抑えるように笑った。

「自分もお前のような不器用な男は嫌いではない。お互い、このあたりで手打ちということでどうかな?」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁっ!!黙って聞いてりゃあ知った風な事をほざきやがって!徹底的にぶちのめしてやらぁ!」
「フッ……」
そしてお互いが力を溜めた。
「おおおおおおっ!」
「はああああああっ!」
そして一瞬の刹那
シュイン!!

「ぐっ……」
お互いの力をぶつけた後、仮面の男が膝をついた。
「へっ、口ほどにもないやつだぜ。さて、雑魚はルークに任せてコイツをギルドまで運んで徹底的に締め上げるとするか……」
しかしその時仮面の男の姿が揺らいだ。
「な、何だ?」
そして完全に男の姿は消えた。

「こ、これは……分け身のクラフト!?」
そして暗い木々の中から声が聞こえてきた。
「フフフ……悪くない一撃だったがまだ迷いがあるようだな。その迷いが太刀を狂わせる。」
「な、何!?」
「修羅と化するなら全てを捨てる覚悟が必要だ……人として生きたいなら……怒りと悲しみは忘れるがいい。
それではさらばだ……」
そして完全に気配がなくなった。
「……忘れろだと……そんな事、できる訳ねぇだろ……」
アガットは何かを堪えるように呻いた後叫んだ。
「うおおおおおおおっ!!!!!」

「ハアハア、どうにか無事につきそうだな。」
「ああ、これも隊長のお陰だな。」
そのころ、仮面の男に助けられた男たちは安堵の息をはいていた。
「おっと、それはどうかな?」
「な、何!」
しかし、そこにルークが姿を現した。
「ば、馬鹿な。なぜここに……」
男達はまたしてもうろたえた。
「役割分担ってやつだ。2人でわざわざ一人を相手にする訳ないだろ?」
「ク、クソ!どうする?」
「とにかく逃げるぞ!」
男達はまた走り出し、それを見たルークは精神を集中しある詠唱をした。

「雷雲よ!我が刃となり敵を貫け……サンダ-ブレード!!」
詠唱が終わったその時、空中から雷を帯びた剣が出てきて逃げた男達の前にささり、
さらに剣が光り、剣の周りに雷がほとばしった。
バリバリバリバリ!!
「「ぎゃぁぁぁぁぁ……」」
雷を受けた男達は気絶した。
(ふう、うまくいったか。ずっと練習した甲斐はあったな。)
ルークは術が成功したことにホッとした。

数年前にルークはローレライの力でかつての仲間達が使っていた譜術が使えることに気付いたのだ。
最初はオーブメントのアーツが譜術の代わりになるからあまり気にしなかったのだが、オーブメントをなくしたり、アーツが使えないようになったことも考え習得を決意したのだ。
そこでルークは仲間達の譜術を試しに発動したがほとんどは発動しなかった。ならば自分のオリジナルであるアッシュの術ならいけると
思い練習したら失敗ではあるが発動しかけたのだ。その後ルークは発動しかけた術をだれもいない時を見計らって練習していたのだ。

「(ま、威力はジェイドやティアほどではないが十分だろ。)さて、こいつらを拘束してアガットに合流するか……」
「それは困るな。」
「な、お前!アガットはどうした!?」
ルークは後ろから現れたアガットと戦っていたはずの仮面の男の登場に驚いた。
「フフ、あの者なら軽くいなした。」
「チッ、やるっていうならかかって来いよ。」
ルークは最大限に警戒し剣を抜いた。

「フ、貴殿と剣を交わすと長引きそうだからこうさせてもらう。」
仮面の男は懐から何かを出し、地面にたたきつけた。
シュー……
「クソ、煙幕か!」
ルークはどこから攻撃が来てもいいように構えていたが、一向に攻撃が来ずやがて煙がはれた頃には仮面の男と
気絶した黒装束の男達の姿はなくしていた。そして微かな気配が残りどこからともなく声がした。
「今日はここで失礼させてもらう……次に機会があれば貴殿の希望通り相手をさせてもらおう………」
そして気配は完全に消えた。
ガン!
「チクショウ、やられた!逃げられたか!」
ルークは持っていた剣を思わず地面に叩きつけた。

その後ルークはアガットと合流しお互い情報を交換した後、それぞれ違う方法で調べることにし別れた………






後書き え~ルークの活躍を期待しているみなさんに残念なお知らせです。しばらくルークは出さずレン視点で行きます。
申し訳ございません!ちなみに次にルークを出すのはトロイメライ戦か作れれば帝国ギルド襲撃事件で出します。
うう……焔の軌跡とかタイトルで書いてるのにレンが主体じゃタイトルの意味がなくなる……
最初はレンはFC、SCではちょっとしか出さないつもりだったのですが、いつのまにやら主役キャラに……
レン好きの自分が恨めしい……20話以上作っといて今更ですがタイトルを変えるべきですかね……?

 後、最近、軌跡シリーズとクロスオーバーの小説がもう一本思いついたんですが現在連載中のこれを終わらすまで作らないほうがいいですよね?
ちなみにクロスオーバーキャラは半魔人の王、混沌の聖女、気ままな女剣士、第5位の魔神、帝国の皇女、飛天魔族、機工種族
と言えばわかる人はいると思います。仮タイトルは”英雄伝説 闇夜の英雄達”です。




[22786] 第15話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/27 14:53
しばらくというか、FCは恐らくここからずっとレン視点で行きますのでそれでもよければどうぞ……




side Lenn

ルークを見送った後、シェラザードと毎日連絡をとりつつレンはまた遊撃士としてしばらく働き、ロレントに戻る機会を待っていた。
(ふう……シェラお姉さんの話しだと未だに、異常なしか……別にいいんだけど、ママの危険は早く取り除きたいわ……)
レンは依頼を終え、ギルドに戻る道でなかなか進展しない今の状況に溜息をついた。
そこに元気のある少女の声がレンの名前を呼んだ。

「あ――!レンじゃない!久しぶり~!ジャンさんからルーク兄はツァイスを離れたってことと、レンももしかしたら
ロレントに帰ってるかもしれないって聞いた時、一緒に仕事ができなくなって残念だったんだけどレンはまだいたんだ~」
「エステル、ヨシュア……わあ!2人ともここに来たという事はルーアンの推薦状が貰えたんだ!レンがロレントを出てからそんなに月日が経ってないのにもう、3つも貰えたんだ!凄いわ!」
「ふふん、ま、あたしがちょ~っと本気を出したらこんなもんよ。」

レンは久しぶりに会った姉ともう一人の兄に喜び、また2人の状況を思い出し驚き、エステルはレンにおだてられ調子に乗っていた。
「何が本気をだしたらだよ……こっちはヒヤヒヤさせられる事がいっぱいあったからよく、推薦状を貰えたなと思っているよ。」
ヨシュアはエステルの様子を見、溜息をついた。
「あ、やっぱりエステルなんか仕出かしたんだ。」
「ちょっとレン~やっぱりて何よ~!」
「え?だってエステルだし?」
「な~にがエステルだし?よ~!失礼しちゃうわ!それよりレン、あんたのせいでリンデ号ハイジャック事件の時、
王国軍から詳しい情報が貰えなくて苦労したんだからね~!」
「え?なんでレンのせいなの?」
エステルの苦労したという原因の一つが自分だと聞き、レンは首を傾げた。それを見てヨシュアが説明した。

「実はあの事件はボースだったからね。事件を担当していた王国軍の一番上の人がハーケン門のモルガン将軍だったんだ。
それでモルガン将軍は大の遊撃士嫌いでね……こっちに情報を廻さなかったんだ。後でわかったことなんだけど将軍の遊撃士嫌いは父さんが軍をやめて遊撃士になったこととレンが将軍直々の勧誘を蹴って遊撃士になったことに怒ってるんだよ。」
「モルガン将軍……ああ、あの時の……うふふ、それは悪かったわエステル。でも、レンは軍には興味ないもの。だったらハッキリ断るのがいいでしょう?」
「ハハ、まあそうなんだけどね……」
ヨシュアはレンの正論に苦笑した。

「それより2人ともどこか行くんじゃないの?」
「あ、いっけな~い、忘れてた!早く工房にいこ、ヨシュア!」
「わかったよ、エステル。じゃあまた後で会おう、レン。」
「ええ、2人ともがんばって。」
2人を見送った後レンはギルドに報告をし、ラッセル家に戻った。

~ラッセル家・昼~

この家の住人であるティータより一足早く報告を終えたレンが戻って来た。
「ただいま……と言っても誰もいないのよね……あら?」
ウイーン、ガン、キン、ウイーン
ラッセル家に戻ったレンは物音がするのに気付き、音の発生の部屋に入った。
そこには何かを作っている様子のラッセル博士の姿が見えた。
(あら、博士帰ってたんだ……研究に没頭しているようだし、リビングで待たせてもらおう……)
そしてレンは再び玄関のあるリビングに戻り、何日もラッセル家で生活し勝手知ったるキッチンで湯を沸かし
紅茶を入れて休憩していた。

そしてしばらくすると玄関の扉が開き、ティータとエステルとヨシュアの3人が入って来た。
「えへへ、こちらがわたしの家です。」
「あら、ティータおかえりなさい。エステルとヨシュアはいらっしゃいかしら?」
「あ、レンちゃん、ただいま♪」
「へ……なんでレンがここにいるの!?」
エステルはラッセル博士がいるだけと思ったはずの家にレンがまるで自分の家にように寛いでいるのを見て目を丸くした。

それを見てティータは2人に説明をした。
「あ、実はですね、ルークさんとレンちゃんにはツァイスにいる間は家に泊まってもらっているんです。」
「そういうことよ。だからレンのことは気にしなくていいわ。」
「全くもう、この娘ったら……そういう大事なことは会ったときに言いなさいよね。」
エステルは溜息をつき、ヨシュアはエステルを宥めた。
「まあまあエステル。ティータ、兄さんとレンがお世話になっていたようだね。ありがとう。」
「いえ、久しぶりに家が賑やかになりましたし、わたしとおじいちゃんも楽しみましたから気にしないで下さい。」
お礼を言ったヨシュアにティータは2人の滞在は楽しかったと言った。

「それより2人ともここに用事があるんじゃないの?」
「そうだね……ラッセル博士はどこにいらっしゃるのかな?」
レンの言葉に目的を思い出しヨシュアは一通り周りを見、目的の人物の場所を聞いた。
「おじいちゃんならその扉の向こうにある工房にいると思います。」
ティータは扉のあるほうに向き言った。
「それじゃあ早速挨拶させてもらいますか。」

そしてエステル達は扉の向こうに行き、ラッセル博士と出会ったが研究に夢中の博士になりゆきで実験を手伝うことになり、実験が終わった頃にはすっかり夕方になっていた………





後書き この後の話も8割出来てますので、今日か明日には更新できると思います。



[22786] 第16話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/28 18:29
~ラッセル家・夕方~

そして実験が終わり全員がリビングの椅子に座り改めての紹介をした。
「わはは、すまんすまん。すっかりお前さんたちを中央工房の新人かと思ってな。ついコキ使ってしまった。」
ラッセル博士は人違いをしたことを豪快に笑っていた。
「ったく、笑いごとじゃないわよ。コーヒーだけじゃなくさんざん手伝いをさせてさ~レンも気付いたのなら手伝いなさいよね~」
エステルは豪快に笑っている博士と優雅にお茶を楽しんでいるレンをジト眼で見た。

「うふふ、ごめんねエステル。2人の邪魔をする訳にもいかないと思ってね。その代りこうやってみんなのお茶を入れているじゃない。」
レンは何食わぬ顔でエステルに謝った。
「まあまあ、貴重な体験をさせてもらったと思えばいいじゃない。新型オーブメントの起動実験なんて滅多にあるもんじゃないんだし。それにレンの入れてくれたお茶もおいしいし、それで許してあげようよ。」
「ふう……しょうがないわね。今度からはちゃんと手伝いなさいよ。」
「うふふ、ありがとう、エステル、ヨシュア。」
切り替えの早いエステルはヨシュアの言葉で気にしなかった。

「あう~ごめんなさい、エステルさん、ヨシュアさん。なんだかわたしも、実験に夢中になっちゃって……」
ティータは申し訳なさそうに2人に謝った。
「あ、ティータちゃんは謝る必要はないんだからね?はあ、<<導力革命の父>>とかいうからどんな凄い人かと思ったけど……
ここまでお調子者の爺さんとは思わなかったわ……」
「わはは、そう誉めるでない。しかし、お前さんがカシウスとレナさんの娘か……顔はレナさん似だが目元など細かいところはカシウスに似てるのう……」
博士はエステルの顔を見、2人に似ているという感想を言った。

「あ、やっぱり博士って父さん達の知り合いだったんだ?」
「うむ、結構前からの。あやつが軍にいた頃からじゃから20年以上の付き合いになるか。あやつとレナさんの結婚式は見物じゃったぞ。あの血気盛んなカシウスが石のように緊張してたからな。」
「へ~あの不良親父でも緊張することがあったんだ~ねえ、博士。もっと詳しく聞いていい?」
「レンも興味あるわ。特にママのウエディングドレスとか凄く綺麗だったんでしょう?」
エステルとレンは両親の昔を聞き、身を乗り出した。
「まあまあ2人とも。父さん達の話は時間がある時に聞こうよ。それよりエステル、今日の目的のためにここに来たんだろう?」
「むう、しょうがないわね。」
「あっと、いけない。そうね、ヨシュア。博士、実は………」
エステルは自分の持ち物から黒いオーブメントを出し、ここに来た目的を説明した。

ある時このオーブメントをKというイニシャルの人物から預かりR博士へ届けるようにとの伝言を伝えられたのだが、2人はわからずしばらく預かり、リベールを廻っていた時ルーアンの事件で犯人を取り押さえる時犯人の持っていたアーティファクトの力で体が動かなく
なり絶対絶命になった時、黒いオーブメントが光り、アーティファクトの力がなくなったのだ。これを不思議に思った2人はルーアンのギルドの受付、ジャンからラッセル博士なら詳しいことがわかるかも知れないと聞き、ここを訪ねたことを説明した。

「ほう……アーティファクトの力が停止したのか……」
「ふえ~~」
「エステル、体が動かなくなったって聞いたけど大丈夫だったの?」
博士とティータは黒いオーブメントを興味心身で見、レンはエステルの心配をした。
「ふふ、モチのロンよ!こうやって元気にいるから大丈夫よ!」
「そっか……よかった……あんまり心配させないでよ、エステル。」
「ありがとう、レン。」
心配されたエステルはいつもと変わらず元気な様子を見せ、レンはそれを見てホッとした。

「フム……興味があるな。測定装置に置いて調べて見るか。」
「ソクテイ装置?」
エステルは言われた言葉が理解できずポカンとした。それを見てティータが説明した。
「さっきの実験で使用したあの大きな装置の事です。導力波の動きをリアルタイムに測定するための装置なんですよ。」
「よ、よくわかんないんだけど、その装置を使えばこれの正体がわかるのよね?」
言われたことを全く理解できないエステルは考え、答えを聞いた。
「まあ、重要な手掛かりは得られる可能性があるな。」
「エステル、博士たちに任せてみよう。何かわかるかもしれないし。」
「そうね、ヨシュア。じゃあ博士、お願いします。」
「うむ、それじゃあ早速……」
博士は工房に行こうと立ちあがりかけた。

「でも、おじいちゃん。そろそろゴハンの時間だよ?」
ティータは時計の時間に気付き晩御飯の時間であることに気付いた。
「えー。」
博士は調べる時間が延びたことに思わず声を出した。
「えーじゃないよおじいちゃん。あ、エステルさん達もよかったら、食べていって下さい。あんまり自信はないんですけど……」
「あ、それじゃあ遠慮なく♪」
「よかったら僕達も手伝うよ。」
「そうね人数も多いようだし、ティータ、手伝いましょうか?」
「ありがとう、レンちゃん、ヨシュアさん。」
ティータに晩御飯を進められエステルとヨシュアは快く受け、レンやヨシュアは手伝いを申し出た。

「よし、それじゃあこうしよう。食事の支度が済むまでわしの方はちょっとだけ……」
「だ、だめー。わたしだって見たいもん。抜け駆けはなしなんだから。」
「ケチ。」
博士はそう言ってこっそり工房に行こうとしたがティータに見咎められた。

それを見てエステルとヨシュアは呆れた。
(なんていうか、この2人……)
(血は争えないってやつだね。)
そこにレンが一言付け加えた。
(うふふ、ティータもああ見えて博士に似た所があるからしょうがないわ。)

そして夕食が済みついに実験の時が来た。

~夜~
「コホン……腹も膨れたことじゃし早速始めるとしよう。エステル、例のオーブメントを台の上へ」
「う、うん……」
博士の言葉でエステルは緊張した顔で黒いオーブメントを測定器の台の上に置いた。
「これでいいの?」
「うむ。ティータや。そちらの用意はどうじゃ?」
博士はオーブメントを確認しティータに用意の状態を聞いた。
「うん、バッチリだよ。」
「よろしい。それでは<<黒の導力器>>の導力測定波実験を始める。」
「ドキドキ、ワクワク……」
ティータは期待の目で実験を待っていた。
「あーティータったら凄いやる気の目ね。」
「うふふ、しょうがないわ。まあレンもちょっと興味があるんだけどね。」
ティータを見てエステルは苦笑いし、レンも友達の相変わらずの様子に笑った。

そして実験が始まり順調に進み始めた。
「よしよし、順調じゃ。ティータや、測定器の反応はどうじゃ?」
順調に進んでいると感じた博士はティータに測定器の様子を聞いた。
だが、ティータは表情の曇った顔で答えた。
「う、うん……なんだかヘンかも……」
「なぬ?」
「メーターの針がぶるぶる震えちゃって……あっ、ぐるぐる回り始めたよ!」
ティータは慌てた様子で伝えた。
「なんじゃと!?」博士は予想外の答えに声を上げた。
そしてその時オーブメントが黒く光り始めた。

「な、なんじゃ!?」
「きゃあ!」
その光りにティータと博士は驚いた。
「ティータ!レンの後ろにいて!」
なにか起こると感じたレンは急いでティータの前に出た。
「ヨシュア、これ……!?」
「あの時の黒い光……!」
そして照明など導力器が次々と導力をなくし始めた。

「ちょっとまずいんじゃないかしら!?ヨシュア、レン、街を見てみるわよ!」
「わかった。」
「わかったわエステル。ティータはここで博士といてね。」
「う、うん。」
そして3人は外に出て、手分けして街中を見たがなんと街全体の導力器が止まり、街中がパニックになっていた。

「不味いわよエステル、実験を止めないと!」
「そうだね、街の人々も混乱し始めているようだし、これは不味いよ。」
「そうね、あたしが止めてくるから2人は混乱を沈めて来て!」
「ええ!」
「わかった!」


一端合流した3人は騒動を収めるためまたそれぞれ散らばり、全て鎮まった時には夜の遅い時間になり
エステルとヨシュアもラッセル家に泊めてもらうことになった………









後書き
ふう……さすがに2つ連載はきついです……できるだけ焔の軌跡優先にしますが、闇夜の英雄達が一気に進むことがあると思いますのでご了承下さい。



[22786] 第17話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2010/12/30 15:24
~トラッド平原・昼~

ツァイス市中の導力停止現象から一夜明け、博士は改めて黒のオーブメントを調べていたが温泉で有名なエルモ旅館から温泉を汲み上げる導力ポンプが故障し、女将が博士に直しに来てほしいと依頼したのだがオーブメントを調べている博士は忙しく、代わりにティータが行くことになりその護衛にエステル、ヨシュア、レンがつくことになり4人はエルモ村へ続く街道、トラッド平原を歩いていた。

「本当にありがとうございます。エステルさん、ヨシュアさん。レンちゃんも忙しいのにごめんね。」
「気にしなくていいわよティータ。街道での安全の確保は遊撃士の義務の一つなんだから。」
「レンの言う通りよ。あたし達も黒のオーブメントでお世話になっているしこのぐらい当然よ♪」
「そうだね、だから気にしなくていいよ。」
「3人共……ありがとうございます!」
3人の言葉にティータは笑顔を見せ、それを見たエステルはティータに抱きついた。

「ふええっ?」
「あ~んもうかわいすぎ!お持ち帰りしたいわ~」
「うふふ、その気持ちはわかるわ、エステル。」
「エステル……オヤジくさいよ……」
抱きついたエステルにティータは驚き、それを見ていたレンはエステルの考えに同調し、ヨシュアは呆れていた。

そして4人は無事エルモ村に着いた。
「へ~ここがエルモ村か、ずいぶん雰囲気のいい所ね。って何この匂い?」
エステルは村について漂ってきた匂いに眉をひそめた。それを聞いてティータが説明をした。
「あ、お湯に入っている硫黄成分の匂いなんですよ。」
「温泉が沸いているところでは大抵こういう匂いがするらしいね。」
「そうよ、エステル。ちょっと変わった匂いだけど慣れれば悪くないわ。」
「へえ~そうなんだ。……うん、悪い匂いじゃないわね。」
「えへへ……よかった。あ、でも、いつもよりちょっと匂いが薄いような……湯気も出ないようだし……」
エステルの感想にホッとしたティータだったが温泉がいつもと違う事に気付いた。

「ポンプが故障したことと関係あるんじゃないかな。早速修理に行くかい?」
「あ、ポンプ小屋の鍵は旅館にいるマオおばあちゃんが持っているんですよ。まずは鍵を借りないと……」
「オッケーそれじゃあ、旅館に行きましょう。」
そして4人は旅館「紅葉亭」に向かった。

紅葉亭に向かったエステル達はポンプ小屋の鍵をもらい、行ったのだが現場を見て動き出したティータを見て自分達はいても邪魔だと思いその場をティータに任せて一端紅葉亭に戻ったのだが、観光客が一人で街道に出たという知らせを聞き、3人は急いで観光客の保護に向かっていたのだ。

「まさか護衛もつけずに街道に出る人がいるとはね……会ったら注意してやるわ!」
「エステルの言う通りよ。全くレン達の余計な仕事を増やしてくれちゃって……」
「まあまあ、エステル、レン。そういう人も中にはいるよ。」
憤っているエステルとレンをヨシュアが宥めていた。

「ふえ~ん、やだやだ、助けて~」
街道の外れを探していたエステル達は助けを求める声を聞いた。
「今のは……」
「うん、近いね。」
「どうやらまだ無事のようね。」
声に気付いた3人は声の発生源に近づこうとした時同じ声がまた聞こえてきた。

「エイドス様~!お父さん、お母さん~!ナイアルせんぱ~い、助けて下さいよ~!」
「こ、これって……」
「想像通りだと思けど……とにかく、急ごう!」
「そうね!(……今の声、どこかで聞いたことがあるような……?」
声に聞き覚えがあったエステルとヨシュアは苦い顔をし、またレンも首を傾げ急いで助けを求めている声の元に向かった。

そこには犬型の魔獣に囲まれたカメラを持った女性、リベール通信のカメラマン、ドロシーがいた。
「ワ、ワンちゃんたち……とりあえず話しあいましょ~?わたしなんか食べたって美味しくないと思うのですよ~」
「「「「グルルルル……」」」」
ドロシーの意味不明な命乞いに理解しない魔獣達はドロシーに近寄った。
「ひぃ~ん、こんな事なら給料前借して、おいしい物いっぱい食べておくんだった~」
「オン!」
「きゃあ!」
ドロシーの後悔も聞かず魔獣達の一匹が襲いかかった。

「せいっ!」
「ハッ!」
「ヤッ!そこ!」
その時エステル達が飛び込んで襲いかかろうとした魔獣の一匹を退治した。

「ハッ……あ、あなたたちは~!」
「ふう……やっぱり思った通りね。」
「ドロシーさん、もう心配ありませんよ。」
「あなたは下がってて。(やっぱり……ハァ……会いたくない人に会ってしまっわ。)」
助けた3人を見てドロシーは驚き、その後エステル達を脱力させるような言葉を言った。

「………どちらさま、でしたっけ?」
「ガクッ……」
「遊撃士協会のエステルとヨシュアです。」
「ハァ……同じく遊撃士協会のレンよ。」
「うふふ、冗談だってば。エステルちゃん、ヨシュア君、それにレンちゃんもこんな所で会うなんて奇遇ねぇ。」
ドロシーの言葉に3人は脱力した。
「は、激しくやる気が……」
「ハァ……(だから、会いたくなかったのよね……)」
「エステル、レン、来るよ!」
脱力していたエステルとレンだったがヨシュアの言葉に気を取り直し襲いかかる魔獣を撃退した。

「はあ、なんとか追い払えたか……」
「エステル。今の魔獣気付いた?」
「ええ、関所を襲ったやつよね。どうしてこんな所に……」
(何の話をしているのかしら……?)
追い払った魔獣の事に気付いたエステルとヨシュアは小声で話し、それを見たレンは怪しがった。

「わ~、スゴイスゴイ。さっすが遊撃士だねぇ。久しぶりねぇ、エステルちゃん、ヨシュア君。それにレンちゃんも。ハッ、まさかこれが運命の出会いってやつ?」
ドロシーの言葉にエステルとレンは呆れた。
「なんの運命よ、なんの……」
「そんな運命、レンお断りだわ……」
そしてヨシュアはドロシーに確認した。

「ところでドロシーさん。エルモの旅館に泊まっているお客さんって、あなたですか?」
「そうだけど……なんで、知ってるの~?」
疑問を持っているドロシーにエステル達は宿泊客の保護を依頼されたことを説明した。
「そうなんだ~ごめんねぇ~ナイアル先輩の宿題で、特集に使えそうな写真のネタを探してたんの~」
「そうですか、仕事だったんですね。」
ドロシーの言葉にヨシュアは納得した。

「そうだ!ちょうど、レンちゃんと会った事だし、レンちゃんの写真を撮っていい~?ナイアル先輩も喜ぶだろうし~」
「お断りよ。勝手にレンを撮らないで。」
「?レンの写真なんか撮ってどうするの?」
レンに写真の依頼をしたドロシーにエステルは疑問に思った。

「リベール通信で出している遊撃士の特集で使うのよ~規定年齢にも達していないながらも準遊撃士として活躍していて、カシウスさんとルークさんの剣技を受け継ぐ遊撃士協会期待の星の美少女遊撃士としてね~」
「美、美少女遊撃士~!?それに期待の星ですって~!?」
「確かに……僕達にとってレンは凄いと思うだけだけど、他人が考えてみたらそうだよね。」
ドロシーから理由を聞いたエステルは声を上げ、ヨシュアは納得していた。
「ふう……前にも言ったと思うけどレンは騒がれるのはイヤなのよ。だから諦めてちょうだい。」
「ぶう~レンちゃんのいけず~」
溜息をつきながら断ったレンにドロシーは膨れた。

「エステル、レン、とりあえずエルモに戻らない?そろそろポンプの修理も終わっているかもしれないし。」
「そうね、レンは賛成だわ。エステルもいいでしょ。」
「オッケー、じゃあドロシーそういう訳だから帰るわよ。」
「え~、レンちゃんの写真も撮ってない上、ここらへんの写真もまだ撮りたいのに~」
3人の提案にドロシーは文句を言った。それを聞いたエステルとレンは笑顔でドロシーに迫った。
「「戻・る・わ・よ!!」」
「2人ともコワイ……」
(趣味も性格も似てない姉妹だけど、こういう時は似ているな……)

無事ドロシーを紅葉亭に送り届けたエステル達は修理を終えたティータと合流し、時間も遅くなったので
女将から泊まっていくことを提案されありがたく旅館に泊まることにした。そしてその夜……




[22786] 第18話
Name: sorano◆b5becff5 ID:15a3753e
Date: 2011/01/03 12:16
~紅葉亭・夜~





女将に勧められ旅館に泊まることになったエステル達は部屋に荷物を置いた後、旅館名物の温泉に入っていた。

「はぁ~気持ちいい。温泉って初めてだけど予想以上ね。こりゃ、病みつきになっても仕方がないわ~」
気持ちよさそうに温泉に入ったエステルは疲れがとれるように感じつぶやいた。
「うふふ、エステルの言う事もわかるわ。レンも初めて入って病みつきになっちゃたわ。ツァイスにいる間で暇があったらここに来てたんだもん。」
「えへへ、わたしもかなり病みつきなんです。小さな頃から、おじいちゃんに連れてきてもらってましたから。」
エステルの呟きに同意するようにレンとティータもそれぞれの感想を言った。

「そうなんだ……あれ、あそこの扉って何?」
脱衣所とは逆方向にあった扉に気付いてエステルはティータに尋ねた。
「あそこは露天風呂に繋がってるんです。とってもおっきくて10人でも入れそうな感じです。」
「ティータの言う通りかなり広いわよエステル。それにお星様も見れるから眺めも最高よ。」
「へえ、そうなんだ~」
ティータとレンの説明にエステルは感心し、また温泉に体を委ねた。
そして何か言いたげなティータに気付いた。

「ん、どうかした?何か聞きたいことがあったら聞くわよ?」
「えと、あの、その……エステルさんとヨシュアさんはもう結婚しているのかなぁって。」
「え。」
(……あら♪)
ティータの質問にエステルは固まりレンはそれを面白そうに見ていた。

「………えと、ごめん。あたしとヨシュアが何だって?」
「あう、ですからぁ。もう結婚してるのかな~って。」
「な、な、な……何でそうなる訳!」
ティータの言葉を理解したエステルは慌てた。
「だ、だって名字がいっしょだし……兄妹にしては全然似てないからてっきりそうかな~って……」
「に、似てないのは血がつながっていないからっ!名字がいっしょなのはヨシュアが養子だからよ!それを言ったらレンやルーク兄だってそうでしょうが!
「えへへ、ごめんなさい……言われてみればそうですね。ちょっと勘違いしてすみません……。」
「と、とんだ勘違いだわ……それにあたしたちはまだ16になったばかりだし、結婚なんてまだまだ先の話よ!」
「えへへ、そうですね……お互いが好きあってもまだ結婚は早いですよね……」
「だ、だからぁ!あたしとヨシュアは恋人じゃないわ!家族よ!ただの家族!」
「そ、そーなんですか!?」
「うふふ、そうやって必死に否定しているのを見ると怪しいわよ、エステル♪」
「だ~か~ら、ち・が・う・わ・よ!ヨシュアはか・ぞ・くよ!」
必死で否定しているエステルを見てティータは意外そうな顔をして、レンはからかったがそれでもエステルは否定した。

「……ねえ、ティータちゃん。あたしとヨシュアってそーいう雰囲気に見える?らぶらぶとかあつあつとか……」
「あう……そーいう雰囲気はないですね。でも、いつも一緒で自然な感じだしお互いのことを分かりあっている感じだし……」
「あら♪ティータも結構鋭いわね♪」
「それは少しはそうだけど……そーいうのって兄妹や友達でもあるでしょ?だいたいあたしとヨシュアってそんな雰囲気になったことすら……」
エステルはそう言って思い出したが思い当たる節があったのを思い出し顔を赤くした。

「???エステルさん、お顔、まっかですけど……」
(うふふ……これは何かあったわね♪)
「あわわ、なんでもないからっ!ちょっと逆上せちゃったからちょっと外に行ってくるね!」
「あ、そうですか。」
不思議そうな顔をしたティータと面白そうにみているレンの前で慌てたエステル露天風呂に向かった。

「あ、エステルさん。露天風呂って……」
あることに気付いたティータはエステルにそれを教えようとしたが、すでにその場にエステルはいなかった。
そして気まずい顔をした。
「……混浴、なんですけど。」
(うふふ……エステルのことだから絶対何かやらかすわね……)
そしてレンの予想通り露天風呂でヨシュアと出会ったエステルは悲鳴を上げ、旅館を騒がし女将から注意された……

その後露天風呂でエステルは遠慮勝ちにしているティータに気軽に呼ぶように言い、レンからも許可をもらい、戸惑いながらもティータは
エステルとヨシュアのことを姉、兄と呼ぶようになり4人は本当の兄妹のようにおしゃべりをし温泉から
上がった後は旅館の料理を美味しく貰い、ドロシーを加え部屋でカードゲーム等して楽しみ夜は更けていった……

~ツァイス市・中央工房~
翌日、ツァイスに戻るドロシーを連れてエステル達はツァイス市に戻り、騒ぎが起こっているに気付き
駆けつけて事情を聞けば、謎のガスが突如発生しまたラッセル博士の姿が見えないことに気付き、
博士の捜索とガスの発生原因を探すためにティータを連れて煙が充満している工房の中に入った。

「うわっ……これは確かに煙っぽいわね。……でも、そんなに息苦しくないのはなぜかしら?」
「このモヤは……多分、撹乱用の煙だと思う。フロアのどこかに発煙筒が落ちていると思う……」
「へっ?」
「……何ですって?」
「ど、どうしてそんなものが……?」
ヨシュアの推理に3人は疑問を持った。

「今は博士の無事を確認しよう。」
「……そうね。博士はやっぱり3階の工房室にいるのかしら?」
「う、うん……たぶんそうだと思うけど……」
「決まりね、エステル、ヨシュア、今は3階に急ぎましょう!」
「ええ、そうね!」
そして4人は3階の工房室に入ったがそこにはだれもいなく、機械だけが空しく動いていた。

「誰もいない……ていうか、どうして機械だけが動いているわけ?」
「と、とりあえず機械を止めなくっちゃ。」
ティータは急いで機械を止めた。
「ふう……おじいちゃん……どこいっちゃたのかな?」
ヨシュアはあたりを見回しあることに気付いた。

「博士もそうだけど……<黒の導力器>も見当たらない。これはひょっとすると……」
(……まさか……!)
ヨシュアの一言にレンは心の中で思い当たる事を思い出し顔色を変えた。
「フン、ここにいやがったか。」
そこにアガットが入って来た。

「ア、アガット!?」
「どうしてこんな所に……?」
(アガット……そう、この人が「重剣」……)
エステルとヨシュアはアガットの登場に驚き、レンはアガットの名前を聞き、一通り覚えたリベールの優秀な遊撃士の中にあったのを思い出し、アガットをよく見た。
「そいつはこっちのセリフだぜ。騒ぎを聞いて来てみりゃまた、お前らに先を越されるとはな。ったく半人前のくせにあちこち首突っ込みすぎなんだよ。」
「こ、こんの~……あいかわらずハラが立つわねぇ!」
アガットの言葉にエステルは腹が立った。

「あの……お姉ちゃん達の知り合い?」
「アガットさんって言ってね。ギルドの先輩ブレイサーなんだ。」
「ふえ~そうなんだ。」
ヨシュアとティータの会話でレンとティータに気付いたアガットは顔色を変えた。

「おい、ちょっと待て。どうしてガキどもがこんなところにいやがる?」
そう言ってアガットはティータとレンを睨みつけた。
「……ひっ……」
「ガ、ガキ!?ちょっと、レディに対してそれは何!?」
睨みつけられたティータは脅え、レンは憤慨した。そしてアガットはレンが付けている準遊撃士の紋章に気付いた。
「……あん?なんでテメェみたいなガキがそれをつけているんだ?」
「レンはこれでも準遊撃士よ!年齢が足りていないから仮扱いだけど3級よ!それに何でティータを睨みつけるのよ!それが正遊撃士の態度!?」
「仮扱いの準遊撃士だと……フン、テメェが今協会の間で話題になってる「焔」の妹か。………お前らに言いたいことはやまほどあるが今は事件が優先だ。それで、一体どうなってるんだ?」
「ちょっと何かほかに言うことあるでしょう!?」
アガットは喚くレンを無視してエステル達に状況聞いた。

(……何よこの態度!これがリベールの優秀な正遊撃士!?まるっきり街にいる不良じゃない!)
無視をされたレンは心の中で憤慨した。
その間にアガットはヨシュアから博士が見当たらないことを説明された。
「フン、発煙筒といい、ヤバい匂いがプンプンするぜ。時間が惜しい……とっととその博士を探しだすぞ!」
「うん!」「了解です!」「おじいちゃん……」「……わかったわ。」
アガットの言葉にそれぞれ返事し博士を探した。

そしてある階層に入った時声が聞こえてきた。
「……待たせたな。最後の目標を確保した。」
「よし……それでは脱出するぞ。」
「用意はできてるだろうな?」
その声にエステル達は気付いた。
「今の声は……!」
「急ぐぞ、エレベーターの方だ!」
そしてアガットは剣を抜きエステル達と共にエレベータがある方に向かった。

そこにはラッセル博士を拘束した黒装束の男達がエレベーターに乗ろうとした。
「いた……!」
「てめえらは……!」
「お、おじいちゃん!?」
「その人を離しなさい!(まさか……この人達がパパの話で出たママを狙う人達……!?)」
一瞬で状況を理解したエステル達は武器を構え警告した。

「むっ……アガット・クロスナー!?」
「面倒な……ここはやり過ごすぞ!」
そして男達は博士を連れてエレベーターの中に入った。
「ま、待ちなさいよ!」
「逃がすか、オラァ!」
しかし一歩遅くエレベーターの扉は閉まった。
「クソ……間に合わなかったか!」
「も、もう一歩だったのに……」
「そ、そんな……どうしておじいちゃんを……」
「とにかく下へ降りましょう!多分街か地下道に逃げるはずよ!」
そしてエステル達は手分けして地下道、街中を探したが黒装束の男達は親衛隊の軍服に着替え逃げたことしかわからず博士は見つからなかった……



後書き なんとかできた……
感想お待ちしております。



[22786] 第19話
Name: sorano◆b5becff5 ID:78d0fbba
Date: 2011/01/07 00:31

~遊撃士協会・ツァイス支部~



結局博士は見つからず通報を受けた王国軍と中央工房にそのことを伝えた後、エステル達はギルドに報告するため一端ギルドに戻った。そこにキリカと遺跡を研究している教授、アルバ教授がいた。

「いい所に戻ってきたわね。」
「あれっ……」
「あなたは……」
エステルとヨシュアはギルドに予想外の人物がいたのを見て驚いた。
「お久しぶりですね。エステルさん、ヨシュアさん。」
2人に気付いた教授はエステル達に再会の挨拶をした。
「アルバ教授じゃない。ツァイスに来てたんだ。どうしてここに?」
「この人の通報のおかげで犯人達の行方がわかったの。」
「えっ……」
「うそっ!?」
「何だと!?」
キリカの言葉にエステル達は驚いた。

「やっぱりただ事じゃなかったんですね。通報に来てよかった。実は私、さっきまで塔の調査をしてたんですよ。」
「塔っていうと……例の<四輪の塔>の一つね。」
教授の調査場所を聞きエステルは以前護衛した時、教授がリベールにある四輪の塔を調べていたことを思い出した。
「この近くの塔といえば<紅蓮の塔>だな……」
「ええ、そしたら軍人が数名中に入って来たんです。最初は王国軍が調査をすると思ったんですが、影から様子を窺っていると誘拐だの逃走ルートだの不穏な言葉が出てきたので、気になってしまってこちらに通報に来たわけなんです。」
「その軍人たち……どんな軍服を着てましたか?」
ヨシュアは続きが気になり教授に先を促した。
「ええと……蒼と白を基調にした華麗な軍服を着ていましたが……」
「決まりだな……<紅蓮の塔>に急ぐぞ!」
「うん!」
「わかりました!」
「わかったわ。」
アガットは返事でレンが混じっているのに気付いた。
「……おい、ガキ。お前もついてくる気か?」
「せめて名前で呼びなさい!レンも準遊撃士のはしくれよ。足手まといにはならないわ!」
「アガット、レンの腕は補償するわ。この子の戦闘能力はすでに正遊撃士にとどいてもおかしくないくらいよ。」
「キリカがそこまで言うならいいが……ついて来るなら勝手にしろ。」
「当然行くわよ!(……ほんっと失礼な人!お兄様、よくこんな人と行動できたわね!)」
キリカの言葉にようやく納得したアガットはレンに同行を許したが、レンは内心憤慨しながらも顔に出さず同行の決意を言った。

そこにティータが遠慮気味に話しかけた。
「あ、あの……お姉ちゃんたち、お願い……わ、わたしも連れていって……!」
「「ティータ……」」
「それは……」
ティータの懇願にエステル達は悩んだがアガットはすでに返事を決めていたようで言った。
「こら、チビスケ。」
「ふえっ?」
「あのな……連れていけるわけねえだろが。常識で考えろよ、常識で。」
「で、でもでも……!おじいちゃんが攫われたのにわたし……わたし……!」」
アガットの反対にティータは食い下がろうとした。
「時間がねえからハッキリ言っておくぞ……足手まといだ、付いてくんな。」
「……っ!」
アガットの言葉にティータは泣きそうな顔をした。それを見てエステルとレンが言い返した。

「ちょ、ちょっと!少しは言い方ってもんが……」
「そうよ!これじゃあティータが可哀想よ!」
「黙ってろ。てめえらだって判ってるはずだ。素人の、しかもガキの面倒見てる余裕なんざねえんだよ。」
「そ、それは……」
「……確かに……そう……よね……」
エステルとレンはアガットの言葉に押し止まった。
「エステル、レン。残念だけど……僕も反対だ。あの抜け目ない連中が追撃を予想していないわけがない。
そんな危険な場所にティータを連れていけないよ。」
「ヨ、ヨシュアお兄ちゃん……」
ティータは予想外の人物の反対にさらに泣きそうになった。それを見てエステルは大分唸った後結論を出した。
「う~っ……ごめん、ティータ。やっぱ連れていけないみたい……」
「エ、エステルお姉ちゃん……ひどい……ひどいよぉっ……」
最後の頼みの綱であるエステルからも断られティータは泣きながらギルドを出た。

「ティータ!」
「ティータはレンが追いかけるわ!後から追い付くからエステル達は先に行ってて!」
「あ……レン!」
ティータをほっとけなかったレンはティータを追いかけるためにエステル達の返事も聞かずにギルドに出た。



~ラッセル家~
ティータを追いかけたレンはラッセル家のリビングで涙を流して泣いているティータを見つけた。
「……ううっ……ひっく……みんなひどいよぉ……」
「ティータ……」
「ひっく……レンちゃん……?……レンちゃんも来たらダメっていうの?」
レンに気付いたティータは親友にまで反対されるのかと思いさらに泣きそうになった。
「……ううん、レンは反対しないわ。」
「え……?」
レンの予想外の言葉にティータは驚いた。

「博士は忙しいティータのママとパパと違って、ティータにとってずっと傍にいる家族だものね。……そんな人が
攫われたらいても立ってもいられなくなるものだわ。レンだってそうだわ。」
「でもでも……レンちゃんは誰かを助ける力を持ってるけど、
レンちゃんと違って戦いがあまりできないわたしは足手まといじゃないの?」
ティータの言葉にレンは少しの間沈黙したが、急にティータに背をむけ玄関に向かって話しかけた。
「大変!攫われた博士の孫が一人で紅蓮の塔に行ったという通報が来たわ!きっと博士を助けるために向かったんだわ!」
「レンちゃん……?」
突然のレンの行動にティータは呆けた。
「一般人が一人で紅蓮の塔に入るなんて危険よ!早く保護しないとダメだけど、通報が結構遅かったから、ひょっとしたら誘拐犯の所に追いついちゃってるかもしれないわね。その時は保護と同時に博士を助けなければ……ね?」
レンは顔だけティータに向けウィンクをした。
「レンちゃん……ありがとう!」
「うふふ、おかしいわね?ここにいるのはレンだけよ。空耳かしら?」
レンの意図を理解したティータは入口を開け走り出し、それを見たレンはティータを追った……




後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第20話
Name: sorano◆b5becff5 ID:de4b45bb
Date: 2011/01/16 09:20
~紅蓮の塔~

その後ティータとレンはエステル達を追いかけるように駆け足で紅蓮の塔の入口に着いた。
「……ここにおじいちゃんが……」
ティータは塔を見上げて不安そうな顔をした。
(あら?あの魔獣は……?)
レンは入口から少しは外れた所に倒れている魔獣が気になり近づいて調べた。
(……これはなにかに強く打たれた後や鋭い何かに斬られた後……こっちは見事に2つに分かれているわ……
間違いなくエステル達ね。……それにこの魔獣、エルモの時の……そういえばエステル達、この魔獣と博士をさらった人達を知っているようだったわね。
このタイミングでこの魔獣が出てきたということは……そう、この魔獣は博士をさらった人達の番犬のようなものね……ということは間違いなくいるわね……!)
レンは倒れている魔獣と博士をさらった人物達との関連性があることを確信し、睨みつけるように塔を見上げた。
「レンちゃん?そこに何かあったの?」
「ううん、なんでもないわ。行くわよ、ティータ!」
「え?う、うん!」
ティータに話しかけられたレンは、ティータに悟られないように先に行くよう促し2人は塔の中へと入って行った。

そして2人は塔の頂上へ続く階段に着き、頂上が見えそうになるとレンが進むのを止め2人は少しだけ顔を出し頂上の
様子を窺った。そこにはエステル達と飛行船を塔の頂上につけ、博士に銃をつけエステル達が邪魔をしないように牽制している誘拐犯達がいた。

「(……まさか飛行船まで持っているとわね……エステル達が突撃しないのは博士を飛行船に連れ去る瞬間を
待っているのね……アガット・クロスナー……少しは見直した方がいいわね……)ティータ、博士を連れ去る瞬間を
狙うわよ。だから、今は少しだけ耐え……て……?」
状況を理解したレンは隣にいたティータに注意しようとしたがそこにティータがいないことに気付いた。
「な……!どこに行ったの!?」
ティータがいないことに気付いたレンは慌てて階段から降り周りを見回したがいなかった。
「まさか……!」
レンは急いで階段を上り、頂上に上がった。そこには飛行船を導力砲で攻撃しているティータに銃を向け、それに気付いたティータが砲撃を止め硬直している状態だった。そして一人の黒装束の男がティータに向けて銃弾を放った。

「「ティータ!」」
「……チィィィィッ!」
咄嗟の判断でアガットはティータをその場からどけ、自ら銃弾を受けた。
「アガット!?」「アガットさん!?」
それを見てエステルとヨシュアは慌てた。
(クッ……紅燐剣を撃つにしても博士が近すぎて巻き添えにしてしまうわ……!)
レンは剣を構えSクラフトを放とうとしたが近くに博士がいるのに気付き断念し、悔しそうな顔で闘気を収めた。そして男は慌てて飛行船に乗りこんだ。

「では、我々はこれで失礼する。」
「おじいちゃぁぁぁぁん!」
そして飛行船はその場からいなくなり、ティータの叫びは空しく塔に響いた。

その後ティータはずっと泣き続けていた。
「「ティータ……」」
それを見てエステルとレンは悲しそうな顔をした。
「とりあえず……いったんツァイスに戻ろう。あの飛行艇のことをギルドに報告しなくちゃ……」
ヨシュアはつらそうな顔をしながらもこれからの方針を決めるための提案をした。
「ティータ……つらいとは思うけど……」
見かねたエステルがティータに話しかけた。

「………どうして、おじいちゃんが……ひどい……ひどいよぉ……」
エステルに話しかけられても泣き続けているティータにアガットは静かな声で話しかけた。
「おい、チビ。」
「……?」
パン!
意外な人物に話しかけられ呆けるティータにアガットは近づいてティータの顔に平手打ちをした。
「……あ……」
「な……!」
「ちょ、ちょっと!」
アガットの行動にレンとエステルは驚愕の顔で見た。だが、アガットはそんな2人を気にせず話しだした。
「言ったはずだぜ……足手まといは付いてくんなって。お前が邪魔したおかげで爺さんを助けるタイミングを逃しちた……この責任……どう取るつもりだ?」
「あ……わたし……そ、そんなつもりじゃ……」
アガットの静かな怒りを持った言葉にティータは青褪めた。アガットは追い打ちをかけるように言葉をさらに重ねた。
「おまけに下手な脅しかまして命を危険にさらしやがって……俺はな、お前みたいに力も無いくせに出しゃばるガキがこの世で一番ムカつくんだよ。」
「ご……ごめ……ごめ……ん……なさ……ふえ……うえええん……」
さらに泣きだしたティータを見てエステルとレンはアガットに詰め寄った。
「ちょ、ちょっと!どうしてそんな酷いこと言うの!」
「エステルの言う通りよ!ただでさえ、大事な家族を浚われたばかりだっていうのに!」
2人に詰め寄られたアガットは冷静に答えた。

「だから言ってるんだ。おい……チビ。泣いたままでいいから聞け。」
「うぐ……ひっく……?」
「お前、このままでいいのか?爺さんのことを助けないで諦めちまうのか?」
「うううううっ……」
アガットの言葉を否定するようにティータは泣きながら首を横に振った。
「だったら腑抜けてないでシャキッとしろ。泣いてもいい。喚いてもいい。まずは自分の足で立ち上がれ。
てめえの面倒も見られねえヤツが人助けなんざできるわけねえだろ?」
「……あ……」
アガットの言葉にティータは泣き止んだ。
「それが出来ねえなら二度と俺達の邪魔をせず、ガキらしく家に帰ってメソメソするんだな。……フン、俺はその方が楽なんだがな……」
「「………ティータ……」」
「…………大丈夫だよ……お姉ちゃん、レンちゃん……わたし、ひとりで立てるから……」
ティータは完全に泣き止み自分で立った。それを見てアガットは笑みを浮かべた。

「へっ……やれば出来るじゃねえか。」
「本当に……ごめんなさい。わ、わたしのせいであの人達に逃げられちゃって……」
ティータは4人に謝った。
「バカ……謝ることなんてないわよ。」
「エステルの言う通りよ。ティータの行動を把握できなかったレンにも責任はあるんだから……」
「うん。ティータが無事でよかった。」
「ありがとう……レンちゃん、お姉ちゃん、お兄ちゃん。」
3人の言葉にティータは笑顔になった。そしてアガットにおどおどしながらも話した。

「あ、あの……アガットさん……」
「なんだ?文句なら受つけねえぞ?」
「えと……あ、ありがとーございます。危ない所を助けてくれて……」
ティータはアガットにお辞儀をした。
「それから……励ましてくれてありがとう……」
「は、励ましたわけじゃねえ!メソメソしてるガキに活を入れてやっただけだ!」
アガットはティータの言葉に焦った。それを見てティータは笑顔を見せた。
「ふふ……そーですね。」
「だ~から、泣いてたくせになんでそこで笑うんだよ!?ちょ、調子の狂うガキだな……」
それを見てエステルは溜息をついた。
「あんたねぇ、お礼くらい素直に受け取りなさいよ。」
「いや、アガットさん、単に照れてるだけじゃないかな。」
「うふふ、そうね。一匹狼を気取っているようだけど中々可愛い所あるじゃない♪」
「なるほど……確かにそれは可愛いわね♪」
「そこ、うるせえぞ!」
3人からからかわれアガットは照れ隠しに怒った。

そして5人はギルドへ報告しこれからの方針を決めるためにツァイスへの帰り道を戻っていった……



後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第21話
Name: sorano◆b5becff5 ID:74101bb4
Date: 2011/01/19 23:52
紅蓮の塔を出たエステル達は帰り道に急にアガットが倒れたところに、カルバード共和国の遊撃士、ジンがたまたまその場に居合わせ、ジンにアガットを中央工房の医務室まで運んでもらい、アガットが倒れた原因は黒装束の男が撃った銃弾が原因とわかり、それを治癒する薬を七曜教会に求めたが、生憎材料を切らしていて、その材料を手に入れるためにたまたまツァイスに泊まる予定だったジンを加えたエステル達5人は材料があると言われるカルデア隧道の鍾乳洞内の奥に向かって行った。


~カルデア隧道・鍾乳洞内~
「ここがカルデア鍾乳洞か……神秘的な光景ね。」
エステルは鍾乳洞に入って見た光景に思わず呆けた。
「だが、奥の方から魔獣の気配がプンプンするぞ。なかなか歯ごたえがありそうだな。」
「ジンさんの言う通りよ。しかもかなり手強いのもいそうよ。うふふ、腕がなるわ。」
ジンとレンは魔獣の気配と強さを感じ、警戒心を強めたり強敵の存在に笑みを浮かべた。
「ふ、ふえええ……」
2人の言葉を真に受けたティータは思わずよわよわしい声を出した。
「ティータ、恐かったら戻ってもいいんだからね?あんまり無理しちゃダメよ。」
「だ、大丈夫だよ……恐いけど無理はしてないから。今は急いで薬の材料をとりに行こう?」
「そうね……行くとしますか。」
「ティータ、いざとなったらレンが守るから安心していいわよ。」
ティータの様子を見て大丈夫と判断したエステル達は鍾乳洞の奥へ進んで行った。

そして鍾乳洞内を歩きしばらくすると魔獣か゛現れた。
「みんな行くわよ!」
エステルの掛け声で5人は魔獣に挑んだ。鍾乳洞内の魔獣は手ごわかったがエステル、ヨシュアは今までの経験で対処し、ティータも無理せず後ろからアーツや導力砲で援護し、ジンは体術で一撃で魔獣を沈め、レンはアーツや手数の多さで急所を狙い着実に魔獣を減らしていった。
「月閃光!……ふう、終わったわね。」
最後の魔獣を斬り伏せ仲間たちも戦闘を終了したのを確認したレンは剣についた血を払い落とすように一振りした。
そして視線を感じ自分を感心した顔で見ているジンに気付いた。

「どうしたのジンさん。レンの顔に何かついてる?」
「いや…‥あの時の少女がその年て゛よくそこまで強くなったなと感心してるんた゛。」
「あの時って?」
「そうだな……お前さんがルークと初めて会った時と言えばわかるか?」
「……!そうだったの。もしかしてお兄様と一緒に助けに来てくれた人?」
ジンの言葉にレンは目を見張って驚き聞いた。
「ああ。後、知っているかもしれないがクルツもその時の一人だ。」
「そうなんだ……クルツさんにも今度会ったらお礼するわ。ジンさん、遅くなったけどレンを助けにきてくれてありがとうございました。」
レンは淑女が紳士に対するような態度でジンにお礼を言った。
「何、それが俺達の義務だ。気にする必要はないさ。お前さんのことを協会内の噂で知った時は驚いたがな。」
「うふふ、協会の人達もレンのことを持ち上げ過ぎよ。「剣聖」と「焔」の後継者とかみんな言うけどレンとしてはまだまだよ。」
「まあ、それはこれからの経験で自信がつくさ。……お前さんの事情はルークからある程度聞いた。今、幸せか?」
「ええ。今でも遊撃士には感謝してるわ。」
「そうか……」
レンの言葉にジンは笑みを浮かべた。
「二人共何してるの?早く行くわよ~」
そこに奥に行こうとして二人を呼ぶエステルがいた。
「さて……悲しみを減らすためにも行くぞ。」
「ええ!」
呼ばれた二人はエステル達とさらに奥へと進んんで行った。

そしてついに材料がある場所に着いた。
「あ、それって……!」
ティータは材料らしき苔が光っているのを見つけて嬉しそうな顔になった。
「……うん、キリカさんに見せてもらった形に似ているし特徴もあっているわ。これみたいね。エステル、採取しましょ。」
「そうね。」
そしてエステルは材料を採取して改めてその材料を見つめた。
「う~ん、こんなにキレイだとは思わなかったわ……どうして光っているのかしら?」
「七曜石の成分が大量に含まれているかもしれないね。」
「そうなんだ……じゃあ行きましょうか。」
ヨシュアに説明され納得したエステルは4人に来た道を戻るよう促そうとした。

「……待て。」
「……どうやらタダでは帰れないみたいよ……」
「へ……」
強力な魔獣の気配を感じたジンとレンはそれぞれ戦闘態勢に入った。それを見たエステルは目を丸くした。
「あ……!」
ヨシュアも気配を感じ双剣を構えた。
そして鍾乳洞の水中から巨大な魔獣が出てきた
「な、なにアレ……」
「はわわ………」
それを見たエステルとティータはそれぞれ違った反応を見せた。
「どうやらこの鍾乳洞のヌシみたいだな。」
ジンは現れた魔獣が今まで倒したのとは別格だと感じ笑みを浮かべた。
「これは戦うしかないようですね。」
ヨシュアは戦いは避けられないと感じ気を引き締めた。そしてエステル達は魔獣に向かって行った。

現れた巨大な魔獣にさすがのエステル達も苦戦した。なぜなら豊富な体力を持ちさらに下っ端らしき魔獣も呼ぶので鍾乳洞内は混戦した。
「エステル!そっちに雑魚が何体か行ったよ!気をつけて!」
ジンと協力して巨大な魔獣を相手にしているヨシュアが雑魚を相手にしているエステルに注意を促した。
「ハァ!」
「大地の刃よ……アースランス!」
「クエ!?」
襲いかかった雑魚の一体をエステルが攻撃しさらにティータがアーツで止めをさした。
「ありがとうティータ。」
「えへへ……お姉ちゃんの役に立ててよかった。」
エステルにお礼を言われ気を抜いたティータの背後から魔獣が現れた。
「ティータ、危ない!」
「ふえ……!?」
「身妖舞!」
「クワー……」
ティータに襲いかかろうとした魔獣をレンが素早く2回斬りつけ倒した。
「ありがとう、レンちゃん。」
助けられたティータはレンにお礼を言った。
「ティータにケガがなくてよかったわ。……2人とも気を抜かないで!また来たわよ!……落ちよ、ストーンハンマー!」
ティータのお礼を笑顔で受け取ったレンだったが魔獣がまた近づいてくるのを見て気を引き締め、アーツを放った。
「え~い!」
「止めよ!」
アーツを受けて怯んだ魔獣にティータが導力砲で追撃しエステルが棒で止めをさした。

「残りは少ないようね……一気に決めるわ。ティータ、撹乱をお願い!」
レンは雑魚の数を確認しティータに撹乱するよう指示した。
「うん、わかった。えとえと……か、覚悟してください!スモークカノン!」
ティータが放った煙幕弾を受けた魔獣は前が見えなくなりうろたえた。
「エステル!」
「わかってる!はぁぁぁぁぁぁ……旋風輪!」
「倒れなさい!邪霊一閃!」
「「「「「「クエエエエ……!?」」」」」
エステルとレンの連携攻撃を受けた魔獣は全て地に伏せた。

「よし終わりッと。レン、ティータ。ヨシュア達を手伝うわよ!」
「ええ!」
「は、はい!」
雑魚の全滅を確認したエステル達はヨシュア達のところへ走って行った。

「ヨシュア、ジンさん、大丈夫?こっちの雑魚は全部倒したわ!」
向かって来たエステル達を見て目の前の巨大な魔獣を警戒しながらもジンは感心し、ヨシュアは3人の様子を見てホッとした。
「ほお、さすがだな。」
「3人共無事でよかったよ。こっちは魔獣の皮膚が硬いようで中々決定打が与えられなくて苦労しているんだ。」
「わかったわ、だったらレンに任せて……ハァ!!殲綱斬!」
片方の刃に闘気を集中させレンは巨大魔獣の体の一部を斬りつけるとその部分だけ剥がれ無防備になった。
「2人とも今よ!」
「わかった!……これで終わりだ……ハッ!セイ!ハァ!」
「グワァ!?」
レンの言葉にいち早く反応しヨシュアが剥がれた皮膚の部分にSクラフトを放ちそれを受けた魔獣はのけ反り、それを見たジンもSクラフトを放った。
「もらったぁ!はぁっ!でやあぁぁぁ!はぁっ!でやっ!たぁっ!!」
「グワァァァ……」
ジンの強烈な蹴りの連撃が決まりその反動で魔獣は壁にぶつかった後水中に落ち、二度と上がって来なかった。

「ふう……なんとか撃退できたね……」
水中の様子を見てヨシュアは溜息をついた。
「何にせよ、また襲ってこられないように急ぎましょ!」
エステルの言葉に頷いた5人はツァイスの教会へ採取した材料を持って行った……




後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第22話
Name: sorano◆b5becff5 ID:fcf94aaa
Date: 2011/01/21 10:39
そしてエステル達が持ってきた材料で調合した薬を呑ませたアガットを全員が交代で看病し、翌日にはグランセルへ行くジンを見送り、アガットの看病を続けるティータと分かれて一端ギルドに報告など行ったエステル達に信じられない情報が入った。それはたまたまツァイスの軍事施設、レイストン要塞にラッセル博士誘拐時に撮った写真を返してもらいに行ったドロシーが写真の元となる感光クオーツを返してもらえず、代わりに兵士に黙って要塞を撮った時に写った写真の中に博士をさらった男達が乗って行った飛行艇が要塞の中に入る場面を撮っていたのだ。そして事情を聴くためにレイストン要塞へ行った時、守備隊長シード少佐がエステル達に対応したがのらりくらりとかわされ、最後に立ち去る時に導力で動いている開閉装置が止まるという決定的な瞬間を見て、攫われたラッセル博士は要塞の中にいると確信しエステル達はそれを報告するためにギルドへ戻って行った。

~遊撃士協会・ツァイス支部~
「ま、まさか王国軍が博士を攫うとは……中央工房は王国軍と長年協力関係を築いてきた。なぜこんなことを……」
中央工房の責任者のマードック工房長はエステル達から信じられないような顔で聞いた。
「王国軍とは言っても一枚岩ではありません。博士をさらった時、親衛隊の服を着てたのもそれが原因かもしれませんね。」
「そうね……ヨシュアの言うことに一理あるわ……」
「じゃあまさか、親衛隊が嵌められたってこと!?」
「うん、その可能性はありそうだよ。」
ヨシュアの話にレンは同意し、エステルは親衛隊が嵌められたことに憤慨した。
「ううむ、なんたることだ……しかし、どうして博士がそのような陰謀に巻き込まれたのか……」
エステル達の会話を聞いてマードックは唸った。

「……どうやら犯人どもの手がかりを掴んだみてえだな。」
そこにティータを連れたアガットが入って来た。
「え……アガット!?」
「もう意識を取り戻したんですね。」
「ふ~ん、さすがに正遊撃士は体力が違うわね。」
アガットを見てエステルは驚き、ヨシュアとレンは感心した。
「ああ、ついさっきな。起きたら知らない場所で寝てたからビビったぜ。」
「起きたばっかりなのにもう動いて大丈夫ですか?」
ヨシュアは念のためにアガットに体調を聞いた。
「ああ、寝すぎたせいか、身体がなまってしかたねえ。とにかく思いっきり身体を動かしたい気分だぜ。
「で、でも無理しちゃダメですよぉ……毒が抜けたばかりだからしばらく安静にって先生が……」
「だ~から、大丈夫だって何べんも言ってるだろうが。鍛え方が違うんだよ、鍛え方が。」
「う~………」
ティータの心配をアガットは一蹴したがそれを聞いたティータは泣きそうになり、それを見たアガットは慌てた。
「う……わかった、わかったっての!本調子に戻るまでは無茶しなきゃいいんだろ?」
「えへへ……はいっ。」
アガットの言葉にティータは笑顔になった。
「ったく……これだからガキってのは……」
「あはは、さすがのアンタもティータには形なしみたいね。」
「ずっと付きっきりで看病してもらった身としてはしばらく頭が上がりませんね。」
「うふふ、「重剣」に以外な弱点発見ね♪」
2人の様子を見た3人はアガットをからかった。

「あ~もう、うるせえなっ。それより俺がくたばってた時に色々と動きがあったみたいだな。聞かせてもらおうじゃねえか。」
そしてエステル達は博士がレイストン要塞にとらわれていることを2人に言った。
「お、おじいちゃんがそんな所にいるなんて……」
「しかも、あの黒装束どもが軍関係者だったとはな……フン、正体が判ってすっきりしたぜ。キッチリ落とし前を付けさせてもらうことにするか。」
「落とし前っていうと?」
アガットの言葉にエステルが反応して聞いた。
「決まってるだろう。レイストン要塞に忍び込む。博士を解放して奴らに一泡吹かせてやるのさ。」
「あら♪奇遇ね、レンもそれを考えたわ♪」
アガットの提案にレンは同意し、エステルは納得した。
「あ、な~るほど。それが一番手っ取り早そうね。」
「そう簡単にはいかないわ。」
エステル達の会話を聞いてキリカが割り込んだ。

「へっ?」
「ギルドの決まりとして各国の軍隊には不干渉の原則があるわ。協会規約第3項。<国家権力に対する不干渉>……『遊撃士協会は、国家主権及びそれが認めた公的機関に対して捜査権・逮捕剣を公使できない。』……つまり、軍がシラを切る陰り、こちらに手を出す権利はないの。」
「チッ、そいつがあったか……」
「そ、そんな……そんなのっておかしいわよ!目の前で起きている悪事をそのまま見過ごせっていうわけ!?」
キリカに規約の事を言われ、アガットは舌打ちをして苦い顔をし、エステルは憤慨した。
「エステル、確かにそうだけど、どんな決まり事にも抜け道はあるわ。でしょう、キリカさん?」
エステルを諌めるようにレンは落ち着いた声で話し、キリカに確認した。
「ええ。協会規約第2項。<民間人に対する保護義務>……『遊撃士は、民間人の生命・権利が不当に脅かされようとしていた場合、これを保護する義務と責任を持つ。』……これが何を意味するかわかる?」
「なるほど……博士は役人でも軍人でもない。保護されるべき民間人ですね。」
キリカの話にヨシュアは確認するように聞いた。
「そ、それじゃあ……」
そして会話を聞いていたエステルは期待を持った。

「あとは……工房長さん、あなた次第ね。この件に関して王国軍と対立することになってもラッセル博士を救出するつもりは?」
「……考えるまでもない。博士は中央工房の……いや、リベールにとっても欠かすことのできない人材だ。救出を依頼する。」
キリカに聞かれ、マードックは迷いなく答えた。
「工房長さん……!あ、ありがとーございます!」
「礼を言う事はないさ。博士は私にとっても恩人だしね。」
それを聞いたティータが笑顔でお礼を言った。

「これで大義名分は出来たわ。……遊撃士アガット。それからエステルにヨシュア。レイストン要塞内に捕まっていると推測される
ラッセル博士の救出を要請するわ。非公式ではあるけど遊撃士協会からの正式な要請よ。」
「フン、上等だ。」
「了解しました。」
「そう来なくっちゃ!……ってあれ、なんでレンの名前がないの?」
3人はそれぞれ返事をしたが、レンの名前がないのをエステルが気付きキリカに聞いた。
「……この子は別件があって近い内、ロレントに戻らなければならないの。そうでしょう?」
「(……ママを狙う敵の正体もわかったし、博士をさらうという大胆な行動もしたから頃合いね……)ええ、実を言うと本当ならエステル達が来る前に戻らないとダメだったんだけどそれを今まで伸ばしてきたから、そろそろ戻らないとマズイのよ。」
「そうなんだ……レン、もうちょっと伸ばすのは無理?」
「エステル……レンにも事情があるんだから無理を言ったらいけないよ。それに潜入捜査になるんだからあまり人数を多く連れていけないし。」
「ヨシュア……ごめんねレン、無理を言っちゃて……」
なんとかレンをとどめようとしたエステルだったがヨシュアに諌められ諦めた。
「ううん、今まで残ってたのはレンの我儘だから気にしなくていいわよ。ティータ、ごめんね。博士救出に最後までかかわれなくて……」
「ううん、気にしないでレンちゃん。レンちゃんにとって大事な事なんだし、こっちは気にしなくていいよ。」
「ありがとう、ティータ。」
そしてエステル達は博士救出の詳しい打ち合わせをした後、ギルドを出て行った。それを見送ったレンは口を開いた。

「……キリカさん、お願いがあるんだけど。」
「すでにアイナへの連絡とロレント行きの飛行船のチケットはとってあるわよ。」
「わぁ……さすがキリカさんね。」
キリカの素早い対応にレンは感心した。
「受付として当たり前の事をしたまでよ。それでどうするの?」
「当然、ロレントに戻るわ。キリカさん、ありがとうございました。」
「ええ。無事守れるようにエイドスに祈っているわ。」
「ありがとう,キリカさん!」
キリカの言葉にレンは微笑み飛行場に向かって走りだした。

~グランセル城内~
「全く博士を逃がすなんて、あなた達はそれでも誇り高き特務兵ですか!?」
レンがツァイスを去った翌日、王国の元凶ともいえる王国軍、情報部の特務兵達が上司であるカノーネ大尉に博士奪還を許してしまった
ことをとがめられていた。
「「「申し訳ございません!!」」」
「カノーネ君、そう怒る必要はないよ。私達は人間だ。ミスの一つや二つはしてしまう。」
「ですが……」
叱責されている特務兵達を庇ったのは特務兵を使って王国でクーデターを図っている人物、リシャール大佐であった。
「カノーネ君、そこまで言うなら彼らに汚名返上のチャンスを与えたらどうかね?」
「チャンス……ですか?」
「ああ。」
意外な表情で聞いてきたカノーネにリシャールは答えた。

「大佐、どうか私達にチャンスを!」
「どんな命令でもこなしてみせます!」
「お願いします!」
叱責されていた特務兵達は必死になってリシャールに懇願した。
「わかった。……現在、S級遊撃士カシウス・ブライトは行方不明だ。私はこれでも彼には恩があってね。彼は家族をとても大切にしているよ。
彼と彼の義理の息子であるルーク・ブライトは現在行方不明だ。今奥方を守る人はいないだろう。そこで君達が私のかわりに奥方を”保護”して
もらおうと思っているのだがどうだろう?」
「おお……そのような重大な任務を我らに……」
「その任務、ありがたく拝命いたします!」
特務兵達はリシャールからの重要任務を当てられたことに感動し、全員嬉しそうに返事をした。
「そうか……知っているとは思うが今、ロレントにいる彼の末娘は規定年齢にも達していないながらも遊撃士協会から準遊撃士として認められ、
あのモルガン将軍を破った腕前だ。くれぐれも気をつけたまえ。」
「大佐、我らは誇り高き特務兵です!14になったばかりの小娘に我らが負けるわけありません!」
「そうです!将軍が負けたのもきっと相手が子供だったから手加減したのでしょう!安心して下さい!」
「そうか……では行きたまえ!女神の加護を祈っているよ。」
「「「ハッ!!!」」」
そして特務兵達は任務を開始するために部屋を出て行った。
後にリシャールは後悔することになる。あの時、カシウスの愛妻に危害を加えることを考えなければ、今回の事件に犠牲者は出なかったと……



後書き 感想お待ちしております。それと結構話を書いたのでルークとレンの設定を近い内に出します。



[22786] 設定4
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/23 00:36
ルーク・ブライト

レベル130

HP13500
EP445
ATK1100
DEF900
SPD65
ATS800
ADF700
MOV11

強化クラフト

双牙斬⇒双牙連斬 30 3回攻撃
烈破掌⇒烈穿双撃破 25 2回攻撃&アーツ、駆動解除

追加クラフト

空破絶風撃   40 単体 風属性攻撃、アーツ、騒動解除、敵を後退させる
ロックブレイク 35 小円 地属性攻撃(威力はATSに反映)
アイシクルレイン 50 中円・地点指定 水属性攻撃、凍結15%(威力はATSに反映)
サンダ-ブレード 50 中円 風属性攻撃、封技20%(威力はATSに反映)



レン・ブライト

レベル38
HP2800
EP280
ATK400
DEF220
SPD32
ATS500
ADF320
MOV9

装備

武器 パラディウム、クリスダガー
防具 レインボーブラウス(全属性攻撃を90%にする)
靴 ストレガーβ
アクセサリー クローナシンボル(全状態異常無効)
       プリティリボン(全パラメータ2%上昇))

クオーツ
省EP2 必殺の刃 行動力2 回避3 精神2 防御2

強化クラフト
麒麟功(未完成)⇒麒麟功(完成しかけ) 40 自己 STR/SPD25%アップ

追加Sクラフト
?・????? 中円 一撃必殺奥義。ダメージ150%&即死80%
??????? 単体 おとぎ話「半魔人と聖なる姫の物語」の主人公が使う突剣技、まだ使えない。




後書き レンのSクラフトの?の部分ですけど、恐らくみなさんわかると思います。レンと言えばやはり”アレ”ですし。もう一つの?のSクラフトも判る人なら判ります。



[22786] 第23話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/23 00:36
あれからロレントに戻ったレンはいつでもレナを守れるように、依頼はあまり受けず、レナの手伝い等をしてさりげなく守っていた。そんなある日……

~ロレント郊外・森~
そこにはリシャールの命令を受けた特務兵達がレナを攫う作戦の確認をしていた。
「いいか、情報によるとカシウスの妻は今日一日中一人で家にいるそうだ。一気に決めるぞ!」
「おお!」
「了解した。」
そして特務兵達は隠密行動でブライト家に向かっていった。

同じ頃、手伝いをしていたレンは敵の気配を感じ取った。
「(……とうとう来たわね!)ママ、ちょっと出かけてくるね。」
「遅くならない内に帰ってくるのよ。」
「うん、わかった。いってきます!(ママ、絶対レンがママを守るからね。例えママに嫌われる手段をとっても……)」
決意を固めたレンは装備やオーブメントの確認をして急いで出て行った。

「特に何もなさそうだな……」
「ああ、これで博士奪還の汚名を返上できそうだな。」
特務兵達は予想以上に無防備に進めていることに安心し、軽口を叩いていた。
「うふふ、そうはいかないわよ。」
「!?誰だ!?」
特務兵達は急に聞こえた声にうろたえ、叫んだ。
「クスクス、大の大人がみっともないわね。」
そしてレンが木の裏から姿を現した。

「貴様は……準遊撃士レン!」
「おのれ……またしても遊撃士か!」
「小娘、ケガをしたくないならそこをどけ!」
特務兵達はレンの姿を認めるとまた遊撃士に邪魔をされたことに憤慨し、武器を構え叫んだ。
「あら、それはこちらのセリフよ。一度だけ言うわ、今尻尾を巻いて逃げかえれば追わないわ。そしたらティータを泣かせたこと、そして危害を加えようとしたことを100歩譲って許して上げるわ。ついでにあなた達のことも報告しないわ。どうかしら?」
「言ったな小娘……」
「ふざけるな!貴様等遊撃士のせいで我らは肩身の狭い思いをしているのだ!」
「その言葉後悔させてやろう!」
笑顔で言ったレンの言葉に特務兵達はさらに憤った。それを見たレンは誰にも見せたことのないような冷たい表情で見つめた。

「……そう。レンはこう見えても優しいけど、あなた達は絶対に許さない。なぜならティータを傷つけようとしたり、泣かせたこともそうだけど、一番の理由はレンの大事な”家族”を壊そうとしたことよ!!!!」
誰にも聞かせたことのない怒りの声をあげたレンは最大限の殺気を出し、同時にクラフトを発動して自らの身体能力も高めた。
「「「なっ……!!」」」
今まで感じたことのない殺気を感じた特務兵達はその殺気に怯んだ。
「……”あの人達”に捨てられ、苦しんで、ようやく手に入れたレンの”家族”は誰にも壊させない!!レンはエステル達と違って甘くないわ!覚悟しなさい!!!」
「クッ……相手は一人だ。速やかに無力化するぞ!」
「「オオッ!!」」
相手が一人だということを思い出し、持ち直した特務兵達は声を上げてレンに襲いかかろうとしたが、
「月閃光!」
一気に特務兵の一人に詰め寄ったレンが振るった剣に銃を構えた特務兵の片腕が宙を舞い斬られた部分が鮮血した。
「ギャァァァァァ!!!!!」
腕を失くした特務兵は腕を失くし血があふれてくる部分を抑えて断末魔をあげた。
「「な……!貴様ぁ!!!」」
それを見て驚愕した特務兵達は憤慨して、両腕についている武器でレンを攻撃したが
「うふふ、パパやお兄様と比べたら遅すぎるわ。」
「「クソ、クソ!なぜ、あたらない!!!」」
全てレンにかわされた。攻撃をかわされた特務兵達は焦って叫んだ。
そしてレンは攻撃をかわしながらも剣に最大限の闘気を乗せ、素早く後ろに下がりSクラフトを放った。

「……絶対に逃がさないわ!全てを終わらせるこの一撃……!ハァ!レ・ラナンデス!!!」
死神が持つ鎌を振るうように再び特務兵に近寄り放ったレンの斬撃は特務兵達の体を鎧ごと切り裂き、武器も破壊した。
「「グワァァァァ………!!!!???」」
特務兵達は全身血だるまになり、断末魔をあげ地に伏せた。
「な……ぜ……ここまで……す……る……!そ……れ……が……遊撃士の……やる……こと……か……!」
片腕を斬られた特務兵は仲間の状態を見て驚愕し、息絶え絶えに呻いた。それをレンは冷めた表情で見て口を開いた。

「一般市民をさらったり、殺そうとした軍人の風上にもおけない人達に言われたくないわ。……そういえばあなたがティータに銃をむけ、撃った人だったわね……レンの怒りとついでにアガットが苦しんだ分も味わいなさい!剣技!八葉滅殺!ヤァァァ……!!!」
「グ、グワァァァァ!!!!」
また一気に詰め寄ったレンが腕を失くした特務兵の背中を剣と小剣を巧みに使い滅多斬りにし、斬られた特務兵は叫び声をあげた。
「今のはアガットが苦しんだ分よ!そしてここからはレンの怒りよ!!……覚悟はいいかしら?……目触りなのよ!レンの前から………消えなさい!奥義!真神!煉獄刹!!!」
「ギ、ギャァァァァァ!!!????」
「あなた達なんかに、レンの苦しみはわからない……」
レンが使えるSクラフトの中でも凶悪な威力を持つ技をくらった特務兵は、全身の到る所を斬られ、さらに断末魔をあげほかの特務兵達にように、全身血だるまになり地に伏せた。

「さて……いっしょにギルドに行きましょうか?止血や戦えない程度の傷の手当てぐらいはしてあげるわ。」
レンは笑顔を見せて特務兵達に近づいた。
「ク……ソ……ここまで……か……ここで掴まる……ぐらい……なら……我らは……死を……選ぶ……!」
特務兵は息絶え絶えになりながらも何かを取り出した。
「小娘……貴様も我らと……共に……女神の許に来てもらうぞ……!」
そう言って特務兵は何かについているピンを抜き地面にそれを叩きつけた。
「!!しまった!!」
ズドーーン!!!!
特務兵がそれを叩きつけた瞬間あたりには大爆発が起こった。

そして大爆発が収まり、辺りに火の粉が舞い散る所にはレンだけが無事な姿でいた。
「……危なかったわ……戦闘前にあらかじめアースガードを発動してなければ、レンもエイドスの所に逝っていたわね……」
そう、レンは特務兵達の姿を見つけると念のために絶対防御の障壁を張るアーツ、アースガードを発動していたのだ。そのお陰で特務兵の自爆攻撃に無事ですんだのだ。
そしてレンは周りを見渡し焦げた特務兵のエンブレムを見つけた。
「……これは今の人の……周りを見る限る生存者はいないわね……」
レンは周囲の状況から特務兵達の生存は絶望的だと結論を出した後、震えながら自分を抱きしめた。
「……何、震えているのよ……レンは大事な家族を守ったのに……こんなの”あそこ”にいた頃に比べればよっぽどマシなのに……う、うううううっ……」

初めて人を死に追いやったという現実にレンはしばらくの間、その場にうずくまって声を押し殺して泣いた……




後書き ついにレンを切れさせてみました。いかがでしょう?そして、レンのSクラフトといえばやはりレ・ラナンデス!攻略法を知らずに初めてあれを受けた時は衝撃を受けたでしょうね。まあ、私はあらかじめ攻略サイトで知っていましたが^^感想お待ちしております。



[22786] 第24話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/24 08:47
お待たせしました!ルーク、戦線復帰です!このままだとレンが主人公になってしまう危険があったので予定より早く出しました。それではどうぞ……




ロレント郊外・ブライト家~
その後、周囲の消火をし、ギルドに報告する気力もなかったレンはブライト家に戻った。
「ただいま……」
「おかえりなさいレン。……!!」
いつもの風景にレンは安心して家に入った。そしてレナはレンのいつもと違う雰囲気を感じ、近づいて抱きしめた。
「マ、ママ!?どうしたの急に……!」
いきなり抱きしめられたレンはうろたえた。
「人を死なせてしまったのでしょう?」
「ち、違う!レンは……!」
レナに隠そうとしたことを言いあてられレンは、言い淀んだ。

「……私はこれでも軍人だった主人の妻よ。主人が人を死なせてしまった雰囲気によく似ているわ……」
「……さすが、ママね……レンのこと、嫌いになった?」
レンは不安そうな顔でレナを見つめた。
「そんなことは絶対にありません!例え血が繋がっていなくても、あなたはエステルと同じ私の可愛い娘よ!ルークに連れらてきたあなたをずっと見ていたけど、あなたは理由もなしに人を傷つけたりする子ではないわ!」
「マ、ママ……!」
ずっとレナから聞きたかった言葉を聞きレンは顔をクシャクシャにして涙を流し始めた。
「今は泣きなさい……泣き止むまでずっと抱きしめてあげるから……」
「うううううぅぅぅっ……ぁぁぁぁぁ……うわああああああんんん!」
レナに抱きしめられレンは誰にも聞かせたことのない大声で泣いた。
レナに抱きしめられ泣いていたレンは泣きながら決意した。「この優しい家族は絶対に壊させない」と……


~遊撃士協会・ロレント支部~
その後泣き止んだレンはレナに事情を説明した翌日、特務兵達のことを報告するためにレンはギルドに顔を出した。
「おはようございます。」
「あら、おはようレン。いいタイミングで来たわね。」
「?いいタイミングって?」
アイナに言われたことに疑問を持ったレンは聞き返した。

「よ、久しぶりだなレン!」
「お兄様!帰っていたの!?」
2階からシェラザードといっしょに降りて来たルークの姿を見て、レンは喜びの声をあげた。
「敵の正体もわかったし、もうコソコソ調べる必要はなくなったしな。まあ、陰で動いたお陰でいろいろわかったけどな。」
「?いろいろって?」
「リンデ号ハイジャック事件やマーシア孤児院放火事件に両方とも特務兵が関わっていたよ。」
「!なんて人達……!それが軍人のやること!?」
ルークから詳しい事情を聞き事件の大まかな内容しか知らなかったレンは顔を険しくした。

「ええ……この間のラッセル博士誘拐事件と言い、今の王国軍はおかしいわ……それより、レン。昨日、ロレント郊外で起きた謎の爆発事件について何か知らない?」
レンの言葉に同意したアイナは気を取り直すように、昨日起こった謎の爆発事件についてレンに聞いた。
「……今日はそのことに関して報告しに来ました……」
アイナの言葉にレンは珍しく真面目な表情で爆発事件の真実について話した。

「「「……………………………」」」
レンから真実をつげられ、ギルド内に沈黙が落ちた。
「すまんレン!俺がもっと早く帰って来ていればそんなことをさせなかったのに!」
ルークは必死な顔でレンに謝った。
「気にしないで、お兄様。元々ママを守るのはレンがやるべきことだったんだから。それにいつかは経験してしまうことよ。そうでしょう?シェラお姉さん?」
「……まあね。リベールは法律によって猟兵の雇用は禁止されているけど、ほかの国では雇用されているわ。そして猟兵にとって遊撃士は天敵のような存在だから、他国のブレイサーは例え望まなくても命のやり取りをするそうよ。あたしも帝国へ出張した時、経験したわ……」
レンが聞いたことにシェラザードは眼を閉じて静かに答えた。
「レン、大丈夫か?俺だって初めて人を死なせてしまった時、気持ち悪くなったり眠れなくなったりしたからな……」
「……大丈夫よお兄様。でも、レンは今回のことを通じてわかった。例え命をかけても人にはそれぞれ守りたいものがあるって!
そして命を奪ってしまったのなら、その人の分を背負うことを!」
ルークに心配されたレンだったが、レンは決意を持った顔で自分の考えを言った。

「そう……その考えがある限り、あなたは遊撃士として正しく戦っていけるわね。どうやら遊撃士をやっていく上での壁を一つ越えたようね。がんばりなさい、レン。」
「ありがとう、アイナさん。」
アイナはしばらくの間思案していたが、迷いがないレンの言葉を聞き、安心しレンを激励した。
「それにしても、レナさんをさらおうとするなんて、あいつらなりふり構わなくなってきたようね……」
気を取り直したシェラザードは思案した顔で話した。
「ああ。ただ、俺の予想だと後1回は来ると思うぜ。しかもひょっとしたら隊単位で来るかもしれねえな。」
「彼らにとってカシウスさんやあなたは抑えておきたいから、確かにもう一度襲撃する可能性はありそうね……ルーク、相手の数が多くなるその根拠は?」
アイナはルークの言ったことにある程度同意し、来る可能性のある敵がより多くなる理由を聞いた。

「数が多い理由は送ったはずの兵が帰ってこないから状況を確かめるために、念を持って以前より多くの数を連れてくる可能性があるからだ。もう一つは、やつらグランセルで何かを起こすつもりだから、ずっとこっちに構う訳にはいかないと思うしな……」
「確かにそうね……今まで彼らはグランセル以外で起こった事件全てに関与していたわね……」
シェラザードはルークに同意するように呟いた。

「そしてその全ての事件はグランセルで何かを起こすためね……遊撃士ルーク、シェラザード、レン。極秘だけど依頼を出すわ。S級遊撃士、カシウス・ブライトの妻、レナ・ブライトへの襲撃に耐えた後、グランセルに応援に向かい、リベールの暗躍を止めて下さい。。非公式だけどこれは遊撃士協会直々の依頼よ。お願いできるかしら?」
「ああ!今まで我慢した分をあいつらにぶつけてやるぜ!」
「当然よ。あいつらとの決着をつけれるのは私の希望だし、レナさんは私にとっても母のような存在だしね。」
「レンも今回の事件は最後までかかわる義務があるわ。ぜひ受けさせて下さい!」
アイナの言葉に3人はそれぞれ決意を持ち答えた。

「3人共ありがとう。」
3人の頼もしい言葉を聞き、アイナは笑顔になった。
「でも、どうする?自分で言ってなんだけど、母さんへの襲撃が後1回だけとは限らないぜ?」
「そのことに関してだけど、今回の件が落ち着くまでクロスベルから2人応援を呼べたわ。」
「へえ……ゼムリア大陸の中でもブレイサーが最も必要とされるクロスベルからよく2人も呼べたわね……」
アイナの言葉にシェラザードは感心した。
「今回の件は数ある事件の中でも国を左右させる事件だと思ったから、S級とA級遊撃士、そして期待の新人3人の準遊撃士を自由に動かせれるために、本部をねじ伏せたわ。本部が今のリベールの状況を知って、重く見ているのもあるでしょうけどね……」
「クロスベルの遊撃士かぁ……噂ではクロスベルにいる遊撃士は最低C級以上の凄腕ばかりの遊撃士がいると聞いたけど、どんな人が来るのかなぁ……」
レンはこれから来る会った事のない遊撃士を思い浮かべ、期待した。

「もしかして、アリオスか?」
「フフ、さすがにたった1人の民間人の護衛のために『風の剣聖』までは呼べないわ。」
ルークの推測をアイナは笑って否定した。
「じゃあ、誰が来るの?アイナさん、もったいぶらないで教えてよ。」
レンは期待を持った目でアイナに聞いた。
「そうあせらなくてもすぐわかるわ。もうすぐ来るはずよ。」
「ああ、アイナの言う通り来たみたいだぜ。」

ルークが人の気配を感じ3人に言い、4人はギルドの扉を見た。そしてギルドの扉が誰かによって開かれた……


後書き 次、更新した後クロスベルから来たゲスト参戦のキャラクターのパラメーターを出します。もうちょっと遅くルーク達の設定を出すべきだった……! 感想お待ちしております。



[22786] 第25話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/25 21:01
ちょっと短くなりましたが、それでもよければどうぞ……





扉を開き姿を現したのは、落ち着いた雰囲気でジンのように格闘家風の服装をした女性と、中々見られない整った顔の淑女のような雰囲気を持つロングコートを着た女性が入ってきた。
「こんにちは~」
ロングコートを着た女性がほんわかな雰囲気で挨拶をし
「ここがロレントのギルドかい?」
格闘家風の女性が確認をした。
「ええ、もしかして応援の遊撃士かしら?」
入ってきた2人に聞かれたことをアイナは答え、念のために確認した。
「ああ。クロスベル支部所属、リンだ。」
「同じくクロスベル支部所属のエオリアです。みんな、よろしくね~」
「ようこそ、ロレント支部へ。短い間かもしれないけど歓迎するわ。」
自己紹介をした2人にアイナは歓迎した。

「俺はルーク・ブライト。2人ともよろしくな。」
「よろしくお願いしますね。ルークさん。」
(へぇ……すっげぇ美人な人だな……ティアにも負けないんじゃねえか?)
ルークはエオリアの容姿を正面から見て、その整った容姿に驚いた。
「へえ……あんたが噂の『焔』か……確かにあのアリオスさんと並んでもおかしくない強さを感じるね。」
「ハハ……買いかぶりすぎだよ。」
リンのほめ言葉をルークは笑って謙遜した。
「私はシェラザード・ハーヴェイ。同じ女性の遊撃士としてよろしくね。」
「はい。いっしょにがんばりましょう。」
「あんたが『銀閃』か……こちらこそよろしく。」
シェラザードが2人に挨拶をした後、レンも自己紹介をしようと2人の正面に立った。
「レン・ブライトです。よろしくお願いします。」
「あんたが噂の少女か……本部を納得させた腕前、この機会にぜひ試させてもらってもいいかい?」
「模擬戦ですか?リンさんを納得させれるかわからないけど、こちらこそお願いします。」
リンはレンがギルド内で噂になっている少女とわかると、レンに模擬戦を申し込みレンも喜んで引き受けた。

「……………」
「どうしたの、エオリアさん。レンの顔に何かついてる?」
エオリアがレンのことをじっと見つめていることに気づき聞いた。
「……かわいい!」
「……え?」
「クリっとした金曜石の大きな瞳にプックリとした唇、そしてとどめがちょっぴり小悪魔な雰囲気!や~ん、かわいすぎ!リン、この子持って帰ってもいい!?」
「落ち着けエオリア。」
急にはしゃぎ出したエオリアに4人はあっけにとられ、リンがエオリアを諌めていた。
「じゃあせめて抱きしめさせて!お願い!」
「まあ、それぐらいならいいですけど……(なんかこの人、誰かに似ているような……)」
エオリアの迫力に負け、レンは既視感を感じつつ、つい頷いてしまった。
「それじゃあ遠慮なく……ぎゅう~!」
そしてエオリアはレンを強く抱きしめた。
「あ~ん!なんて抱き心地!やっぱり可愛いことは正義だわ!」

「やれやれ……悪いね、エオリアの悪い癖が出てしまって。」
「あー別にいいぜ。似たような光景見たことあるし。(この人、ティアと案外話があうんじゃねえか?)」
「ハァ……似たような性格の人は結構いるのね……」
「フフ、そうね。まるでアネラスじゃない。」
2人の光景を見てシェラザードは溜息をつき、アイナは笑っていた。
そして気が済んだエオリアは2人の会話に気付き、聞いた。
「今、私と同じ性格の人がいるって言ってましたけど本当ですか?」
「ええ。私の後輩でアネラス・エルフィードっていう名前の子でね。
あの子ったら暇さえあればレンを抱きしめていたり、ぬいぐるみとか買いあさってたからね……」
「後、『可愛いことには正義がある!』っていっつも言っていたよな。」
「やん♪その人とは話が合いそうだわ!ぜひ会って話をしたいわね♪」
「こらこら、何のためにあたし達がここに来たと思っているんだい。そういうのは事件が解決して暇ができたらしな。」
「んもう、リンったら~それぐらいわかっているわ。ちょっと言ってみただけよ。」
リンに注意されたエオリアだったが、ここに来た理由を理解していると言った。

「さて、そろそろ話をしてもいいかしら?」
「ええ。」
「ああ、頼むよ。」
2人の会話が終わったのを見計らってアイナは2人に事情を説明した。
「なるほど……だから、あたし達が呼ばれたのか。わかった、引き受けるよ。エオリアもいいだろ。」
「ええ、私達もカシウスさんにお世話になったしね。これを機会に恩返しをしとかないと。」
「助かるわ。じゃあ2人ともルークの指示に従ってもらってもいいかしら?」
「いいですよ。」
「ああ、この中だとルークが妥当と思うしね。」
「ありがとう2人とも。みんな、具体的な作戦なんだけど……」
そしてルーク達はギルド内で特務兵の迎撃する会議をした。
会議の結果、ロレントの地形等よく知っているルーク、シェラザード、レンが特務兵と直接対決することになり、リンとエオリアは別働隊のことを考え、レナを直接守ることになり、グランセル方面からの警戒、普段の仕事のローテーション、特務兵と出会った時の連絡手段を話しあい、5人は襲撃に備えた。


~グランセル城内~
その頃、リシャールはカノーネを呼んだ。
「お呼びですか、閣下。」
「ああ。先日の3人の事は覚えているかい?」
「先日の3人と言うと……カシウス・ブライトの妻を”保護”しにいった連中ですね。それが何か?」
「予定の時刻になっても一向に戻ってこないのでね、カノーネ君、君に部隊を一つ預けるから様子を見に行ってくれないか?」
「全くあの3人は、閣下の御手を煩わして……万が一、彼らが失敗していた時は彼らと共に私共が”保護”をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、頼むよ。」
「ハッ!では明日にでもロレントへ出発致します!」
カノーネはリシャールに敬礼した後、作戦につれていく人選等するため部屋から出て行った。

「……何もなければいいのだが……」
カノーネが出て行き人気がなくなった部屋でリシャールは呟いた。そしてリシャールの嫌な予感は翌日あたり、リシャールを後悔させることになった……





後書き ゲストキャラはリンとエオリアになりました。というかあの2人、マジでプレイヤーとして使いたかったので……零の軌跡の続きが出たならせめて顔グラフィックをありにしてほしいです!戦闘は……どうせ、ロイド達が主役だろうから無理でしょうけどね……まあ、アネラスがレギュラーキャラ化しましたから似たような性格のエオリアは希望があるかもしれませんけど。後、エオリアの武器とかクラフトの一部でちょっと悩んでいるんですよね。エオリアだけどういう戦い方をするかわからないし……



[22786] 設定(ゲスト)
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/26 08:34
考えた結果エオリアの武器は特殊な装備にしました。




リン

レベル42
HP3100
EP140
ATK430
DEF310
SPD34
ATS200
ADF170
MOV9

装備

武器 ヘヴィーセスタス
防具 バトルジャケット
靴  バトルブーツ
アクセサリー スティールリスト(気絶無効)
       コーラルリング(封技無効)

オーブメント(地属性)並びはジンです
クオーツ 石化の刃 防御3 攻撃3 HP3 行動力2 回避2

クラフト

龍神功 20 自己 ATK&DEF30%アップ
双撞掌底破 30 単体 拳による2回攻撃&アーツ、駆動妨害
治癒功 25 単体 味方一人のHPを25%回復する
三散華 40 単体 蹴りによる3回攻撃
雷神脚 35 小円 天高く飛び上がり、まるで雷光のような蹴りを繰り出す

Sクラフト

龍閃掌  単体 すざましい速度の拳の連打技 


エオリア

レベル40
HP2700
EP320
ATK300
DEF280
SPD28
ATS480
ADF310
MOV6

装備

武器 アクセプター・ロッド(導力杖……スタンハルバードの杖版)
防具 セラムコート
靴 ストライドヒール
アクセサリー シルバーブローチ(毒無効)
       マーヴルリング(封魔無効)

オーブメント(風属性)並びはオリビエです
クオーツ 暗闇の刃 精神3 駆動2 省EP3 EP3 治癒

クラフト

応急手当 10 単体 味方1人をHP20%回復&全状態異常回復する
ダブル・ショット 20 単体 杖にあるエネルギーを弾にして敵にあてる2回攻撃(ATSに反映)
麻酔針 25 単体 睡眠効果を持つ針を敵に投げる 対象が行動後睡眠100%
サンダー・インパクト 40 単体 杖のエネルギーを宝石部分に集中させその部分で攻撃、封技20%&遅延効果(ATSに反映)
掌底破 35 単体 リンに習った護身技、攻撃力半減のアーツ&駆動妨害攻撃

Sクラフト

イノセント・ガーデン 全体 無垢なる祈り、味方全員戦闘不能含め全回復&敵全体にダメージ(ATSに反映)



後書き これで一週間連続投稿です。多分そろそろ速度が落ちるかも……感想お待ちしております。



[22786] 第26話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/27 08:34
~ロレント郊外・エリーズ街道~

そこには複数の特務兵を率いたカノーネがいた。
「これより、作戦を開始する!現在行方不明の3名との合流をし、”レナ・ブライトを”確保する!この作戦に失敗は許されない!
覚悟はできてるかしら!?」
「「「「「「「イエス、マム!!!!」」」」」」
カノーネの言葉に特務兵達は力強く答えた。
「そこのあなたとあなたは迂回してブライト家へ目指しなさい!」
「「ハッ!!」」
カノーネの指示に2人の特務兵は近くの森に入りブライト家へ目指した。
そしてカノーネ達が進み始めてしばらくすると急に空中で音がしどこからともなく声が聞こえてきた。

「うふふ、お兄様の言う通りぞろぞろと連れてきてわね。たった一人の民間人のために慎重というか大人げないというかを通り越して情けないわね。」
「!?今の声と音は!?何者よ!姿を現しなさい!」
カノーネの声に応じてレンが木から飛び降りて来た。
「貴方は……準遊撃士レン!」
「うふふ、カノーネ大尉だったかしら?ツァイスで会ったから久しぶりという訳ではないわね。貴方も特務兵の一員だったのね……納得したわ。だからアガットに特務兵の捜査をやめろと言ったのね。」
「そんなことはどうでもいいわ!……貴方なら行方不明の3人を知っていそうね?彼らと出会ったかしら?」
「ああ……あの人達ね……はい、これは貴方にお返しするわ。」
カノーネの問いに答えるようにレンはカノーネの足元に焼き焦げたエンブレムを投げ捨てた。
「これは誇り高き特務兵の印であるエンブレム……!これはどういうことかしら?」
「そのままの意味よ。あの人達ったらレンに勝てないからって自爆してレンを巻き込もうとしたのよ。まあ、レンはアースガードを張って無事だったから無駄死したようなものね?」
「「「「「「なっ!!」」」」」
レンが答えたことにカノーネを含めた特務兵達は驚きの声をあげ、殺気だった。

「おのれ……総員かかれ!死んだ3人の思いを汲み取り3人が成し遂げなかった作戦をなんとしてもやりとげるわよ!」
「「「「「「「イエス。マムッ!!!!!」」」」」
カノーネに命令に殺気だった特務兵達は殺気だちながらも返事をしてレンに襲いかかろうとしたが
「せいっ!」
「魔神拳!」
鞭と衝撃波が襲って来たのを見て一端下がった。
「やれやれ……襲撃があるとわかって準遊撃士一人に任せるような愚行を協会がすると思っているのかしら?」
「全くだ。それに死んだ3人は自爆ってレンが言ってるだろうが。レンが殺したわけでもないのにレンに八つ当たりをするなんてお前等、バカだな。」
そしてルークとシェラザードがレンの後ろから出てきた。
「お兄様、シェラお姉さん!早かったわね。」
「まあ、俺とシェラザードもたまたまロレントの入口近くにいたからな。合図を見てすぐ来れたんだよ。」
「レン、今度は私達もいっしょだからあなたに辛い思いはさせないわ。」
「ありがとう。2人とも。」
なぜ、ルークとシェラザードがタイミングよく来れたのはレンがカノーネ達の姿を見つけると、あらかじめ用意していた連絡用の信号弾を空に向けて撃ったからだ。

「バカな、増援だと……それに貴方はルーク・ブライト!いつ、ロレントに戻ったの!?」
カノーネは予想外の人物の登場に驚愕した。
「お前等が正体を隠さなくなったようだからな、こうして表舞台に立たせてもらったぜ。」
「おのれ………!まあいいわ、ロレントの主立った遊撃士が全員ここにいるのだから私達の勝ちのようね?総員、突撃!時間を稼ぐだけでいいわ!」
「「「「「イエス、マム!!!!!」」」」」
ルークの言葉にカノーネは苛立ったが先に2人の特務兵を別ルートにやっていることを思い出し勝利を確信し、笑みを浮かべ特務兵に指令を出した。
「さあて、それはどうかな?」
カノーネの勝利を否定するようにルークは口元に笑みを浮かべた。




同じ頃、ブライト家にレナといっしょにいた2人は敵の気配を感じた。
「……来たね。エオリア、行くよ。」
「わかっているわ。レナさん、私達がいいと言うまで絶対に家から出ないで下さい。」
「はい、お願いします……すみません、報酬も払っていないのに守ってもらって……」
「気にしなくていいですよ。それが私達の義務ですし、何よりカシウスさんには私達もお世話になりました。その恩返しです。」
「でも………」
「本当に気にしなくていいのですが……そうです!私達がロレントにいる間でいいからオムレツをご馳走してくれませんか?」
エオリア達に罪悪感を抱いているレナにエオリアは提案をした。
「私のオムレツを……ですか?」
「はい、レンちゃんから聞きました。『ママのオムレツは世界一!』って。あれを聞いて私、なんだかレナさんのオムレツを食べたくなったんですよ♪」
「エオリア、あんたね……すみません、レナさん。こいつの言う事は気にしないで下さい。」
「フフ、私なんかのオムレツでよければいつでもご馳走しますよ。ですから無事に戻って下さい。」
「やん♪それを聞いたらやる気倍増よ♪リン、さっさと終わらせましょ♪」
「全くあんたときたら……まあ、いいわ。それじゃあ、仕事を始めますか。」
「お二人とも気をつけて。」
レナに見送られ、リンとエオリアは迎撃をするためにブライト家から出て、それぞれ物陰に隠れた。

そしてしばらくすると特務兵が2人現れた。
「よし、一気に行くぞ。」
「ああ。」
特務兵達はブライト家のドアを破るつもりで突撃したが
「ハァ!」
「ヤッ!!」
「「なっ!?」」
物陰に隠れていたリンとエオリアの奇襲攻撃に驚愕し、思わず下がった。
「なぜ、クロスベルの遊撃士がここにいる!?」
特務兵の一人はリン達の正体に気付き思わず叫んだ。
「あら、遊撃士はさまざまな支部に応援を求められればそれに答える義務がありますわ。私達はそれに答えただけですのよ?」
「へぇ、あたし達のことまで知っているとはね……情報部って名前は伊達じゃないようだね。」
「「クッ、そこをどけ!!」」
苛立った特務兵達は叫んだ。

「それはできない相談だね。」
「……貴方達を誘拐、器物破損等諸々の罪の疑いで拘束します。覚悟して下さい。」
「クソ……!!こうなれば各個撃破だ!行くぞ!」
「了解!」
気を取り直した特務兵達はそれぞれの武器で2人に襲いかかった。

こうして、後にクーデター事件と言われる戦いの序幕が始まった………!




後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第27話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/01/30 21:56
遊撃士と特務兵の戦いは最初から遊撃士達が有利であった。戦闘技術の差もあるが、何より遊撃士は人を守るためにできた職業。人を守ることには何より力が出るのだ。

「爪竜連牙斬!」
「「「「「グッ!!!!」」」」」
レンの先制攻撃に特務兵達は怯み
「ぶっ潰れちまえ!烈震!天衝!」
「そこっ!」
「「「「「グハッ!!!」」」」」
ルークとシェラザードの追撃に特務兵達はたまらず後退した。
「何をしているのです!それでも閣下の手である特務兵ですか!」
「「「「「も、申し訳ありません!!!」」」」」
「私が見本を見せます。喰らいなさい!」
カノーネは特務兵達を鼓舞するために銃をルーク達に向けて撃ったが
「大地の壁よ、我らを守る楯となれ!!……アースウォール!!」
シェラザードがカノーネが銃を撃つ前に張ったアーツがルーク達に銃弾が届く瞬間に発動し、銃弾は絶対障壁に阻まれた。
「クッ……まだよ!今の内にかかりなさい!!!」
「「「「「「「ハッ!!!」」」」」」
「剛・魔神拳!!」
「魔神剣!!」
「風の刃よ……エアストライク!」
「「「「「グぅ!!!???」」」」」
カノーネの激励により立ち直った特務兵達だったがルークとレンのクラフトとシェラザードのアーツに阻まれ、前進できなかった。

「俺達の後ろには絶対に行かせねえぜ!」
「私達遊撃士は民間人の守護者!これ以上あんた達の好きにはさせないわ!」
「うふふ、レン達と同等に戦うつもりなら今の数の100倍は連れてきなさい♪」
「おのれ、遊撃士め……どこまで閣下の理想の邪魔をする気よ………!(クッ……あの2人は何をやっているの!?とっくにレナ・ブライトを確保している頃なのになぜまだ来ない!?)」
カノーネはルーク達の予想以上の強さに苛立ちながらも迂回した特務兵の2人を待った。

ルーク達とカノーネ達の戦いが始まった同じ頃、ブライト家の前でも戦闘が始まった。
「「喰らえ!」」
「甘いよ!」
「遅いですわ!」
特務兵の攻撃をリンとエオリアはそれぞれかわし、攻撃を仕掛けた
「今度はこっちの番だ。三散華!」
「グッ、ガ、ギ!?」
リンの蹴りによる3回攻撃をまともに食らった特務兵は思わず後退した。
「行きますわよ。ダブル・ショット!」
「クッ……!」
エオリアは杖の宝石部分から出した2つのエネルギー弾を特務兵に向けて撃ち、それを見た特務兵は回避した。
「ヤッ!サンダー・インパクト!」
「グワアアアァァアァ……」
回避した特務兵に、走って近づきながら杖の宝石部分にエネルギーを集中させたエオリアは宝石部分が当たるように特務兵に攻撃し攻撃を受けた特務兵は宝石部分のエネルギーを喰らい、後退し思わず叫んだ。

「まだです!オーブメント駆動!……開け、黄泉の門!ヘル・ゲート!!」
「セエイッ!!雷神脚!!」
「「ウワアアアアアァァァァァ………!!!」」
追撃するようにエオリアが放ったアーツが特務兵の下から発動し防御態勢もできずに喰らい、さらにリンの追い打ちを喰らった特務兵達はさらに叫び声を上げた。
「さて……悪いけど、さっさと片付けさせてもらうよ!隙ありだよ!はぁっ!でやあぁぁぁ!奥義!・龍・閃・掌!!!」
「ガはっ……!」
リンの目にも止まらぬ速さの拳による連続攻撃を受けた特務兵の一人はリンの最後の拳による強い衝撃を受け、近くの木にぶつかり気絶した。
「それじゃあ、私も決めさせて頂きます……!万物の根源たる七曜を司るエイドスよ、私達に光の加護を……そして仇なす者には光の鉄槌を……煌めけ!イノセント・ガーデン!!」
「ギャァァァァァ……!」
エオリアの祈りにより、特務兵は強力な光を喰らい断末魔を上げ地に伏せた。

「やれやれ、あっけなかったね。」
戦闘が終わり、リンは溜息をついて特務兵達を拘束するために近づこうとした。
「待って、リン。一応、念のために……」
近づこうとしたリンを止めたエオリアは懐から針を出し、特務兵達の皮膚が出ている部分に出した針を刺した。
「……これで、しばらく起きてこないわ。」
「あんたも顔に似合わず容赦ないね……気絶している奴に麻酔用の針を刺すなんて。」
リンはエオリアの容赦のなさに感心した。
「あら、当然のことをしただけよ。失礼しちゃうわね。それよりリン。この人達のことをお願いしてもいいかしら?」
「ああ、あんたはブライト家に戻ってレナさんを守りな。」
そしてエオリアはブライト家に戻り、リンは拘束した2人の特務兵を引きずってルーク達が戦っている場所へ歩いていった。

一方その頃、ルーク達の戦いも終結へと向かって行った。
「身妖舞!爪竜連牙斬!まだまだ行くわよ!剣技!八葉滅殺!!ヤァァァァァァ……!!!」
「「「ギャア!!」」」
レンの連続攻撃に特務兵は、一人またと一人膝をつき
「吹き飛びなァ!紅蓮襲撃!」
「「「グハッ!!!」」」
ルークの闘気を纏った炎を宿したような強烈な蹴りを喰らった特務兵は近くの障害物等にあたり、二度と起き上がれなくなり
「セイッ!そこっ!」
「「ぐぎゃ!」」
シェラザードの鞭攻撃に顔をぶたれた特務兵もまた、吹っ飛び近くの木にあたり、地に伏せた。
そして無事に立っているのはカノーネだけになった。

「バカな……!たった3人の遊撃士に特務兵の中でも選りすぐられた者達がこうもやすやすとやられるなんて……!」
カノーネは周囲の倒れている特務兵達を見て驚愕した。
「集団行動が強い軍と違って、個々の力が求められる俺達遊撃士に勝てると思ったのか?」
「全くよ。遊撃士を舐めないでほしいわね。」
「うふふ、後はオバさんだけね♪」
「なんですって……!私はまだ20代よ!!」
レンの挑発の言葉にカノーネは思わず怒りの声を上げた。
「あら♪それはごめんなさいね。肌もあれていてママより年をとっているように見えたからついオバさんだと思っちゃったわ♪」
「くっ……でも、最後に勝つのは私達よ!」
「そいつはどうだろうね?」
カノーネの必死の強がりにリンが拘束した特務兵達を引きずりながら、姿を現した。

「よう、そっちも終わったようだな。」
「ああ。」
「バカな……新たな遊撃士だと……!しかもクロスベルの遊撃士がなぜこんなところに……!」
カノーネはリンの姿を見て、リンの正体がわかり驚愕した。
「あたし達遊撃士は求められれば、どこにでも行くさ。それより、こいつらに見覚えがあるんじゃないかい?」
「なんのことかしら……な!そんな……!」
カノーネはリンに引きづられた特務兵を見ると、最後の希望も断たれ絶望した顔になった。
「さあて……取引だ。その2人も含めて無事にグランセルに戻りたかったら、2度と母さんに危害を加えないと誓うなら尻尾を巻いて逃げかえってもいいぜ?」
「ふざけるな……!我ら誇り高き特務兵を侮辱する気か………!」
ルークの言葉にカノーネは思わず怒りの声を上げた。
「あんた、見た所今回の黒幕の副司令見たいだね。だったらこの状況を見てあたし達がどれだけ譲歩しているのがわかんないかい?」
「くっ………!!」
リンの言葉にカノーネは悔しそうに声を上げ考えた。
(私一人では奴らを抑えるどころか、逆に拘束され閣下の計画に支障が出てしまうわ……行方不明の人間一人のために、これ以上兵達を消耗する訳にはいかないわ……口惜しいが退くしかないようね………)

「……わかりました。その取引に応じましょう。」
「へえ……てっきりやけになって襲ってくるかと思ったけど以外に冷静だね。」
悔しそうに答えるカノーネをリンは半分感心した。
「いいぜ。……リン。」
「わかった。」
ルークの言葉に頷いたリンは警戒しながら眠っている特務兵の2人を、カノーネの前に置いた。
「全員、いつまで寝ているつもりよ!これよりグランセルに帰還する!!」
「し、しかしカノーネ様、死んだ3人の思いは……」
「黙りなさい!返事は!?」
「イ、イエス、マム!!」
カノーネの言葉に一人の特務兵がなんとか起き上がり、否定の言葉を出そうとしたがカノーネの剣幕に負けて頷いた。
そしてほかの特務兵もよろよろと起き上がり、数名がエオリアによって麻酔を打たれた特務兵を背負った。
「これで勝ったと思わないことね!閣下の計画が成就した時、この借り絶対に返してくれるわ!!」
「そんなことはさせないぜ!そっちこそ首を洗って待っているんだな!」
「うふふ、オバさん、そのセリフまるっきり三流悪党の言葉よ♪」
「こ、小娘が………!覚えていなさい!!」
レンの言葉に逆上したカノーネは感情を抑えつつ特務兵をつれてその場を後にした。

その後、ルーク、シェラザード、レンは翌日リンとエオリアに引き続き念のためにレナの警護とロレントの仕事のことを頼み
グランセルへ向かった。そしてリシャールはカノーネの報告を聞き、深く後悔し、死んだ3人のためにも計画を絶対に成功
させることを強く誓った………




後書き 感想お待ちしております。次はクローゼ救出まで飛びます。今、レンをどのチームに入れようか迷っています。エステル達と女王救出に行くか、ヨシュア達と正面門開門に行くか、クルツ達と陽動作戦に行くかみなさんのご意見お待ちしております。……ただ、エステルチームだと”最凶”と戦うハメになりますから、あのキャラの圧倒的強さを書けるか心配ですけどね………



[22786] 第28話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/02/26 01:44
さすがに1ヵ月更新なしはまずいのでなんとか作りました……





グランセルに向かったルーク達だったが王国軍により関所が封鎖されていたため、シェラザードの提案でボース市にあるヴァレリア湖からボートを使ってグランセルの波止場に移動した。

~王都・グランセル 深夜~
「ふう、無事ついたわね。」
無事、王都についたシェラザードは安堵した。
「むう、レンの遊撃士として始まりの地であるグランセルにこんな形で来たくなかったわね。」
「気持ちはわかるが、今はギルドに行くぞ。」
「ええ、お兄様。」
そして3人は状況を把握するために王都にあるギルドに向かった。

「来たわよ、エルナン。」
「援軍に来てやったぜ。」
「お久しぶりです、エルナンさん。」
グランセルのギルドの受付であるエルナンは入って来た3人の顔を見て喜んだ。
「ルークさんにシェラザードさん!……それにレンさんも!アイナからこっちに向かったとは聞きましたけど、よく関所を越えれましたね?」
「ま、裏技を使ったようなもんよ♪……それで状況はどうなっているの?」
シェラザードは悪戯に成功したような顔で答えた後、エルナンに状況を聞いた。
「ええ、実は………」
そしてエルナンは現在の状況を語った。軍は情報部によって制圧されたこと、リシャール大佐がアリシア女王の孫娘であるクロ―ディア姫を人質にとって玉座を女王の甥であるデュナン公爵に譲るよう脅していること、エステル達が女王の依頼を受けて
潜伏していた親衛隊や王都にいた遊撃士4人と協力してクロ―ディア姫を軟禁しているエルベ離宮へ襲撃し、クロ―ディア姫やほかの人質達を解放するために作戦を開始していることを話した。

「……なるほど、大分状況が悪いようだな。俺達もクルツ達の援軍に行ったほうがいいな。」
「ええ、人手が足りない中あなた達がいれば作戦の成功率はさらに上がりますのでお願いできますか?」
「そのためにあたし達が来たんじゃない、当然オッケーよ。」
「レンも当然行きたいけど、いい?エルナンさん?」
「ええ。……アイナから一連の出来事は聞いています。今のあなたなら人間との戦闘でも大丈夫でしょう。むしろ私はあなたを戦力の一人として数えています。」
「へえ……レンが仕事するのにあんだけ難題を出していたエルナンが国を左右してもおかしくない事件に腕がいいとはいえ、規定年齢にも達していないレンを参加するのを認めるなんて珍しいな……」
ルークはエルナンが今回の事件にレンが参加することやレンを戦力として数えていることに驚いた。
「………私は実力があればあまり細かいことは言いません。では、3人共お願いします。」
「おう!」
「ええ!」
「フフ、お茶会の始まりね。こんな大勢は初めてだから失敗しないか緊張しちゃうわ♪」
「フッ……任せたまえ、エルナン君。」
ルークとシェラザードは威勢を持った声で答え、レンもこれから起こる戦闘を楽しみにした。しかしなぜか一人、知らない声が混じっていた。そしてルーク達はいつのまにかギルドの入口でポーズを決めていた金髪の青年に気付いた。
「おや、あなたは……」
エルナンはその青年を見ると目を丸くした。
「って誰だよお前!」
「いつのまに……」
ルークとレンは気付かない内に入って来た青年に驚いた。
「……2人とも行くわよ。」
「え、おい。シェラザード!?」
「ちゃんと着いて行くから引っ張らないでよ。服が伸びちゃうわ。」
シェラザードは青年を無視するかのようにルークとレンを引っ張ってギルドを出た。
「フ……シェラ君ったら照れちゃってもう。そんな所もそそられるのだがね♪」
青年はシェラザードの態度に怒るどころか喜んでいた。
「行かなくていいのですか?3人はもう出て行ってしまっていますが。」
「え……お~い、シェラ君!おいてかないでくれよ!お願いしますから、無視しないで~」
青年はシェラザード達を追うようにギルドを出た。

「………撒けたかしら?」
シェラザードはある程度ギルドから離れると後ろを見て確認した。
「誰だったんだ今の?」
「そうよ、それに逃げる必要もないんじゃ……?」
シェラザードの様子を不思議に思った2人は理由を聞いた。
「今の変態は自称天才音楽家とかふざけたことを抜かしているオリビエっていう奴よ。相手にしてたら疲れるからさっさと出たのよ。」
「ハッハッハ、いやあシェラ君にそこまで言われるなんて光栄だなあ。」
「おわっ!」
「キャッ!」
湧いて出たようなオリビエに2人はまたもや驚いた。
「はぁ……ゴキブリ並にしつこい奴ね。」
オリビエを撒けなかったことに本気で残念に思い、シェラザードは溜息を吐いた。それを見てオリビエは笑った。
「ハッハッハ、こんな面白そうなことにこのオリビエ・レンハイムが傍観者でいると思ったのかね?」
「もう何とでも言いなさい……ただし、痛い目にあっても知らないからね!」
溜息を吐いたシェラザードはオリビエに注意した。
「おいおい、いいのかシェラザード?」
一般人に見えるオリビエをこれから起こるであろう特務兵との戦闘の参加を許したシェラザードをルークは驚き確認した。
「こんな奴でも銃とアーツの腕だけ!はいいから数合わせにはなるでしょう。隊列もちょうどバランスが取れるし。」
「あの、シェラ君?なんでそこだけを強調するのかな?」
オリビエはシェラザードが強調した部分が気になり聞いた。
「変態のあんたの取り柄はそれだけでしょうが……付いて行くのを許すだけでもありがたく思いなさい!」
「ハハ、まあよろしく頼むよ。俺はルーク・ブライト、エステルとヨシュアの兄だ。」
シェラザードとオリビエの掛け合いにルークは苦笑いをしながら自己紹介をした。
「ほう、君が噂の「焔」のルーク君かね。こちらこそよろしく頼むよ。」
オリビエはルークの名前を聞き感心しながらルークと握手をした。
「レン・ブライトよ♪よろしくね、面白そうなお兄さん♪」
「なんと!この年でこの愛らしさ!将来はヨシュア君を超えそうな逸材がこんな所にいたとは……ブライト家、なんて恐ろしいんだ♪ボクはオリビエ・レンハイム。君のような可愛らしい人と行動できるなんて光栄だよ、リトルレディ。」
オリビエはレンの容姿や雰囲気に驚きレンの将来の姿を期待した後、紳士のような態度でレンの目の前で膝を付きレンの手のヒラにキスをした。
「クスクス、本当に面白いお兄さんね♪あなたとは気が合いそうだわ♪」
一人前の女性として扱ったオリビエをレンは面白く思い、思わず声を出して笑った。
「いやあ、奇遇だね♪時間があればボクも君とはいろいろと話しあいたいね♪」
(なんか見慣れた光景と思ったらこの胡散臭さ……ジェイドとアニスじゃねえか!声も似ているからあいつがもう一人増えたようなもんだぜ、はあ……レン、頼むからアニスには似ないでくれよ……)
ルークは2人の掛け合っている光景に懐かしさを感じ、昔の旅の仲間の腹黒い性格をした2人の掛け合いに似ていることに気付き溜息を吐いた後、可愛い義妹が性格が腹黒く守銭奴の少女に似ないよう切に思った。

「あ~もう……頭が痛くなるわ……まあ、いいわ。行くわよ3人共!」
2人を見て頭痛がしたシェラザードだったが気を取り直した。
「おお!」
「ええ!」
「フッ……任せたまえ!」
3人は心強い返事をした。
「さて……戦闘の隊列だけど、俺とレンが前衛、シェラザードが中衛、オリビエが後衛でいいな?」
「問題ないわ。」
「フフ、お兄様と肩を並べれるなんて光栄だわ♪」
「フッ……援護は任せたまえ。」
シェラザードは普通に返事をし、レンはルークと共に戦えることを楽しみにし、オリビエは自信があるように髪をかきあげて答えた。
「よし、みんな行くぞ!」

こうして4人はエステルやクルツ達を援護するために急いでエルベ離宮へ向かった………



後書き 闇夜の英雄達にかまけてこっちが全然更新できなくてホント、すみません!あっちはそろそろ区切ろうと思っていますのでもう少しお待ち下さい。感想お待ちしております。



[22786] 第29話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/13 23:07
お待たせしました!なんとか更新速度を上げていこうとは考えています。今回の地震、私は神奈川に住んでいたので被害はあまり受けなかったのですが………明日からしばらくの間、一時停電………これじゃあ、速度はあんまり変わらないかもしれませんができるだけ早く作ってみます。





~エルベ周遊道・深夜~

普段は観光客が緑や風景を楽しんでいた場所は、クロ―ディア姫や人質達を解放するため、親衛隊と遊撃士達と特務兵達の戦場となっていた。そこに先ほど王都を出たルーク達がついた。
「着いたか。………もう、始まっているようだな。」
ルークは聞こえてくる剣撃や銃撃を聞き、戦闘が始まっていることを悟った。
「……質はこちらが上だけど、数は圧倒的に向こうが上よ。王都の特務兵達が気付くまでに早いとこ終わらせるわよ!」
「ああ。……っといたぜ!」
シェラザードの言葉に頷いたルークは増援らしき特務兵達がクルツ達が戦っている場所に向かおうとしているのを見つけた。
「よし………いくぜ、みんな!」
「ええ!」
「フッ……第1幕の始まりだ。」
「うふふ、お茶会の始まりね♪」
そして威嚇のためにオリビエが特務兵達の足元に銃弾を撃った。

「!?何者だ!!姿を現せ!」
それに気付いた指揮官らしき将校は叫んだ。
「うふふ、こんばんは♪」
「な………少女だと……?ここは今、一般人は立ち入り禁止だ!それにこんな夜更けになぜ、こんなところにいる!?」
将校は現れたレンを見て驚き、部下達に武器を構えさせるのを止めず叫んだ。
「うふふ、か弱いレンにそんな物騒な物を向けるなんてそれでも国を守る軍人かしら?」
「聞いているのはこちらだ!質問に答えろ!!」
武器を向けられても一切恐がらず、逆にこちらの気分を逆なでするようなレンの言葉に苛立ちを感じながら将校は叫んだ。
「うふふ………仕方ないわね……レンがここにいる理由はあなた達、情報部の野望を壊すためよ♪」
「なんだと……!貴様のような小娘ごときが大佐の悲願を阻むだと………その言葉、後悔させてやる!行け!」
「ガウ!!」
将校の命令に一匹の軍用犬がレンに向かって襲いかかろうとしたが
「ハッ!!」
レンの一太刀で体を真っ二つに斬り捨てられ消えてセピスを落とした。
「「「「「「「なっ!!!!???」」」」」
子供と言ってもいいレンに特務兵達が訓練した自慢の軍用犬が斬り捨てられたことに驚愕した。
「小娘………貴様、何者だ!!??」
「ただの準遊撃士よ♪」
「貴様のような小娘が遊撃士だと………ふざけるのはたいがいに……!」
将校はレンが言っていることを子供の戯言だと思ったが、レンの容姿と武器を見て覚えていたリベールの有力な遊撃士の情報を思い出した。
「菫色の髪に琥珀の瞳、武器は剣と小剣の二刀流………まさか!ギルドが特例で認めた準遊撃士、レン・ブライトか!!」
「大正解♪そんな貴方達には素敵なプレゼントを差し上げるわ♪……魔神剣!!」
「剛・魔神拳!!」
「そぅれっ!」
「風の刃よ……エアストライク!」
「「「「グッ!!!!???」」」」
レンが放った衝撃波を合図にルークのクラフト、オリビエの銃弾、シェラザードのアーツがそれぞれ特務兵に当たり、のけ反らせた。
「さて……まさか敵がレンだけとは思ってなかったよな?」
「ま、どっちにしろあんた達はやられる運命だけどね。」
「フッ……レン君、中々美味しい登場をしたね……この漂泊の吟遊詩人にして演奏家、オリビエ・レンハイム。一本とられたよ♪ハッハッハ♪」
「バカな……「銀閃」シェラザード・ハ―ヴェイに行方不明だった「焔」のルーク・ブライトだと………!!それに貴様は決勝戦で我らの同士を
打ち破った帝国の演奏家!!」
将校は次々と姿を現したルーク達を見て驚愕し、舌うちをして部下に命令した。

「チッ、遊撃士共が……!民間人ごときがしゃしゃり出てどこまで我らの邪魔をする気だ!まあいい、数はこちらが上だ!行け!」
「「「「「「「イエス、サー!!!!!」」」」」」
「「「「ガウッ!!!」」」」
将校の命令に複数の特務兵達と軍用犬が襲いかかりルーク達はそれらを迎撃した。
「ぶっ潰れちまえ!烈震!天衝!」
「「「グハッ!!!」」」
ルークのクラフトが複数の特務兵達を一撃で沈め
「そぉれっ!クイックドロウ!!」
「「「「グッ!?」」」」
オリビエの素早く狙いが正確な銃の連射の弾に当たった特務兵はのけ反り
「そこっ!シルフェンウィップ!!」
「「「「「ブっ!!」」」」
その隙を逃さずシェラザードの鞭が兵達を吹き飛ばして沈め
「うふふ……動きが遅いわ!邪霊一閃!」
「「「「ギャウッ!?」」」」
レンのクラフトによって軍用犬達は一瞬で真っ二つになり、消えてセピスを落とした。
「え」
一瞬の内に無事なのは将校だけになり、それを見た将校は放心した後逃げようとした。
「ヒ、ヒィィィィ!!!化け物共が、覚えてろよ!!」
しかし、それを見たルークは援軍を呼ばれないために逃げようとした将校に最近習得したクラフトを実験台代りに放った。
「上官のくせして、何逃げようとしてんだよ!お前はほかのやつより特別に凄いのをお見舞いしてやるよ!腹ァ、括れよ!!天狼滅牙!!」
「ガ、ギ、ブっ、ゲハッ!!!??」
ルークの強力な連続する拳や斬撃を喰らい、吹き飛んだ将校は近くの木にぶつかり気絶した。そしてルーク達は気絶した特務兵達を拘束した。
「よし、こんなもんか。俺とレンは要撃班の援護に行く!シェラザードとオリビエは救出班の援護に行ってくれ!途中で特務兵達を見つけたら各個撃破で行くぞ!!」
「わかったわ!」
「フッ……任せたまえ!」
「うふふ、今までレン達遊撃士を舐めたことを後悔させてあげなくちゃね♪」
そしてルーク達は2手に分かれそれぞれの役割を果たすために戦場となっている場所へ向かった。

剣撃と銃撃が聞こえる場所に向かったルークとレンは途中で見かけた特務兵を蹴散らしつつ特務兵と戦っている遊撃士や親衛隊を見つけた。
「どうやら親衛隊やクルツ達はまだ、無事のようだな………」
「へえ………あそこで戦っているのって確か親衛隊の隊長のユリア中尉じゃない。あの人は捕まらなかったんだ………実力もあの中ではずば抜けているわね。さすが女王を守る親衛隊の長ね。(あら♪突剣使いのいい見本、発見♪)」
レンは戦っているメンツの中で親衛隊の隊長、ユリア・シュバルツ中尉の戦いを見て感心した後、ユリアのレイピア捌きを見て早速自分の技に組み込もうと考えた。
「ああ、確かあの人は父さんから剣の教えを受けたと言われているしな………さすがだ。」
「へえ、そうなんだ……だから、女性ながら親衛隊の隊長の実力があるんだ。うふふ、レンも見習わくちゃね……お兄様、あそことあそこ!」
レンは親衛隊と遊撃士達、それぞれの後方から援軍の特務兵達数人ずついたのを見つけて、それを指差した。
「っと!感心して見ている場合じゃないな!レン、行くぞ!」
「了解!」
そしてルークは遊撃士達の後方の特務兵、レンはあらかじめ複数の敵を攻撃するようにクオーツを入れ替えておいたオーブメントで親衛隊の後方の特務兵にアーツや譜術を使って襲撃をした。
「氷の刃よ、降り注げ!………アイシクルレイン!!」
「炎の槍よ、降り注げ!………スパイラルフレア!!」
「「「「「な!?グワァ!?」」」」
思いがけない攻撃を喰らった特務兵達は一撃で沈んだ。
「今の叫びは!?」
「!?誰かやられたのか!?」
特務兵達の叫びを聞いて一瞬仲間がやられたとユリアとクルツは勘違いし、周囲を見渡したが自分達の後方に倒れている特務兵を見つけた。
「これは一体………」
「隙あり!」
「!?クッ!」
なぜ、特務兵が自分達の攻撃以外で倒れているか理解できなかったユリアは一瞬考え、その隙を狙った特務兵の攻撃に気付き、防御しようとした所
「空破!絶風撃!!」
「なっ!?……ギャア!!」
すかさずルークが特務兵に強烈な突きのクラフトを放って、無防備な所を喰らった特務兵は倒れて脇腹を抑えて呻き声を上げて二度と立ち上がらなかった。
「戦闘中に余所見は厳禁だぜ、ユリア中尉!」
「あなたは……ルーク殿!!カシウス殿と同じく行方不明だったあなたがなぜ、こんなところに………?」
「見てわかんないか?援護に来たぜ!!」
「ありがたい!恩にきます!」
予想がけない強力な援軍にユリアは笑顔でお礼を言った。
「うふふ、レンのことも忘れないでね、隊長さん?」
「君は……?」
ユリアは戦場化している場所にいるのが似合わない少女を見て、なぜこんなところにいるか疑問を持った。
「準遊撃士3級、レン・ブライトよ。よろしくね♪」
「君がブライト家で唯一、カシウス殿の剣を受け継いだ少女か………自分はユリア・シュバルツ。兄君共々、援軍に感謝する。」
ユリアはレンの名前を聞き、略式ながら敬礼した。
「うふふ、よろしくね♪」

「あ――――!!!レンちゃんじゃない!!」
レンの姿を見て戦っていた遊撃士の一人、アネラスが大声を出した。
「へぇ……あれが例の………へっ、年の割に中々強者の雰囲気を出しているじゃねぇか!」
特務兵を一人沈めた遊撃士、グラッツはレンを見てレンが醸し出す強者の雰囲気を感じ取り不敵に笑った。
「横にいるのはルークだね………いいタイミングで来てくれたね!」
後方から銃やアーツで援護をしていた遊撃士、カルナはレンの横にいるルークの姿を見かけ自分達が有利になったことを感じ笑った。
「よし、あそこにいる2人とも連携して周囲の特務兵を一掃するぞ!」
「「「了解!!」」」
クルツの号令に3人の遊撃士達は答え、手を止めている間にも戦っている親衛隊を援護するために戦闘を再開した。そしてルーク達もそれを見てそれぞれ戦闘に参加した。
「レンちゃん!久しぶり!相変わらず可愛いわね~。ギューってしていい?」
アネラスは戦いながらレンに話しかけた。
「ふう………相変わらずね、アネラスお姉さん。別にいいけどせめて戦闘が終わってからにしてよね。」
「オッケー!じゃあ、行くわよ!レンちゃん!」
「ええ!」
そして2人は同時にある技の構えをした。
「「さぁ、行く(わ)よ!まだまだまだまだまだまだぁっ!とどめっ!!」」
「「ウワァァァァ!!!!」」
2人の目にも止まらぬ早さの連続する剣撃のクラフト――八葉滅殺を受けた特務兵は断末魔を上げ地に伏せた。
「よし、撃破!まだまだいるね………どっちが多く撃破できるか、競争だよ、レンちゃん!」
「うふふ、面白い考えね………その考え、レン載ったわ!勝った方が今度の新作のぬいぐるみを奢るっていうのはどう?」
「オッケー!」
2人の会話を聞いていた特務兵の一人が顔を真っ赤にして怒った。
「き、貴様等………!さっきから好き勝手言ってくれるな………!!これでも喰らえ!!」
そして2人に向かって武器を震ったが
「ほっ……えいっ!」
「ふっ……お返しよ!」
「グフッ!?」
見事にかわされ逆に同時に反撃され地に伏せた。
「ありゃ、同時攻撃だから同点か。ま、いいわ!それじゃあ、お先に行かせてもらうわよ!」
「あっ、ずるいわよアネラスお姉さん!」
そして2人は特務兵を次々と斬り伏せて行った。

一方ルークもクルツ達と共に戦った。
「ルーク!まさか、君が来てくれるとはな!」
「ああ!リベールでも有力の遊撃士がこれだけいるんだ!俺達を舐めていた特務兵共を後悔させるぜ、クルツ!」
「そうだな………私も彼らには借りもあるし、ここで返させて貰おう!はあっ!せいっ!」
「吹き飛びなァ!紅蓮襲撃!」
「「「「「ゴハッ!?!?」」」」」
ルークの強烈な蹴りとクルツの槍が命中した特務兵はそれぞれ膝をついて、拘束された。
「クソ!遊撃士共が………!今に見ていろ!大佐や大尉が必ず我らの無念を晴らしてくれるだろうからな!」
拘束された特務兵の一人が悪態を吐いた。
「悪いが私達、親衛隊はその企み、絶対に阻止して見せる!」
「中尉、終わったようだな!」
ルークは近づいてきたユリアに気付き、周囲の状況を見て戦闘は終わったと思って一息ついた。
「ああ。貴殿等、遊撃士のお陰だ。感謝する。」
「別にいいぜ。ここはいいから離宮に行ったらどうだ?クロ―ディア姫が心配だろ?」
「!そうだ、こうしている場合ではない!………すまないが後を任せてもいいだろうか?」
「ああ、俺達は後で追いつくから先に行きな。」
「ありがとう!」
ユリアはルークに敬礼をした後、急いで離宮に向かった。その後事後作業をしたルーク達は離宮に向かいエステル達と再会し、そのままクロ―ディア姫の依頼である情報部によるクーデター事件を解決する作戦に参加することになった………


後書き 明日から一定の間停電………仕事できるんでしょうか………このssを見ている被災者の方々を元気づけるためにも更新をがんばっていこうと思います。………感想お待ちしております。



[22786] 第30話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/15 19:58
仕事が自宅待機になったので早く更新できました………喜んでいいのか複雑な気分です………出勤とかどういう扱いになるんだろう………?





~エルベ離宮・朝~

離宮に囚われていたクロ―ディア姫や人質を解放し、情報部を拘束した親衛隊や遊撃士達はクーデター事件を解決する作戦内容の最後の確認を行っていた。
「これよりグランセル城解放と女王陛下の救出作戦を説明する。」
全員に作戦の説明をしているのは親衛隊の隊長、ユリア中尉だった。
「まずはヨシュア殿以下3名が地下水路よりグランセル城地下へと侵入。親衛隊の詰所へと急行し、城門の開閉装置を起動する。」
「了解しました。」
「ま、でかい花火の点火役ってところだな。」
「フフ………いずれにせよ第1章の最終幕の幕開けには違いない。」
ユリアの確認に城へ侵入する3人――ヨシュア、ジン、オリビエの3人はそれぞれ自信のある表情で答えた。

「城門が開くのと同時に我々、親衛隊全員と遊撃士5名が市街から城内へ突入。なるべく派手に戦闘を行い、敵の動きを城内へと集中させる。」
「「「「「「イエス、マム!!!」」」」」」
「ああ、任せてもらおう。」
「今まで活躍できなかった分、暴れさせてもらうぜ!」
「よっしゃ、腕がなるぜ!」
「ま、あたし達に任せな。」
「私はこの中では実力不足かもしれないけど……精一杯頑張らせてもらいます!」
そして撹乱チームに入っている親衛隊は敬礼し遊撃士5人――クルツ、ルーク、グラッツ、カルナ、アネラスはそれぞれこれからの作戦を成功させるよう
意気込んでいる様子で答えた。

「そして最後に………」
最後の内容を言いかけたユリアは一端言うのをやめ、納得してない表情で作戦に参加する少女、クロ―ゼーークロ―ディア姫に嘆願した。
「………殿下、やはり考え直して頂けませんか?」
ユリアの嘆願にクロ―ゼは申し訳なさそうな表情で答えた。
「ごめんなさい……お祖母様は私が助けたいんです。それに私は一応、飛行機の操縦ができますから………どうか作戦に役立てて下さい。」
自分にも必要な役割があると思ったクロ―ゼは最後は自信のある表情で自分も作戦に参加する意味はあると答えた。
「くっ………こんな事なら、操縦方法などお教えするのではなかったか………」
「まあまあ、ユリアさん。クロ―ゼのことならあたし達に任せておいて。」
「『銀閃』の名に賭けて必ずやお守りすることを誓うわ。」
「うふふ、レンも本気を出してお姫様を守るから大丈夫よ。」
自分が教えたことが結果的に守るべき人を危険な作戦に参加させてしまった結果に後悔していたユリアにクロ―ゼと行動する遊撃士ーーエステル、シェラザード、レンはユリアが
安心できるよう答えた。それを聞いたユリアはなんとか自分を納得させエステル達にクロ―ゼを守るよう頼んだ後最後のチームがやるべきことを説明した。
「わかった………どうかお願いする。城内に敵戦力が集中した直後、エステル殿以下4名のチームが特務飛行艇で空中庭園に強行着陸。
しかる後、女王宮に突入してアリシア女王陛下をお助けする。」
「了解ッ!!」
4人を代表してエステルは元気よく返事をした。
「作戦決行は正午の鐘と同時ーーそれまで待機位置についてくれ。それでは各員、行動開始せよ!」
「「「「「「「「「「「「イエス、マム!!!」」」」」」」」」」
ユリアの叱咤激励に全員が答えた。


そしてエステル達は最初の作戦を実行するヨシュア達を見送ろうとしていた。
「……ヨシュア、気を付けてよね。くれぐれも無理しちゃダメなんだから。」
「うん、気をつけるよ。だから、君の方もくれぐれも先走らないように。自分の力を過信しないでシェラさんたちと協力すること。」
「うん………分かってる。なんといっても例の約束だってあるもんね!お互い、元気な姿でグランセル城で会いましょ!!」
「うん………必ず!」
(あら♪エステルとヨシュア、もしかしてあれから進展したのかしら♪なんとなく雰囲気が前よりさらに仲良くなった気がするわ♪)
エステルとヨシュアのやり取りを見てレンは面白そうな表情で2人を見つめていた。
「ヨシュアさん。隠された水路にはどんな魔獣がいるか判りません。どうか気を付けて下さいね。」
「わかった、ありがとう。くれぐれも気を付けるよ。」
クロ―ゼの心配をヨシュアは礼を言って受け取った。
「エステルの事は心配しなさんな。あんたと今まで旅して色々と成長したみたいだからね。遊撃士としてだけじゃなく女としても、みたいだけど♪」
「シェ、シェラ姉………」
「クスクスクス………」
シェラザードの言葉にエステルは照れてその様子を見たレンは思わず笑った。
「???どういう事ですか?」
「ま、まだ判らなくていいの!」
エステルの様子を不思議がってヨシュアはエステルに訪ねたがエステルは照れながら答えるのを否定した。
「??なあ、レン。なんでエステルは照れているんだ?」
「男であるお兄様はわからなくていいの。い・い・わ・ね!」
「お、おお………」
エステルの様子がわかっていそうなレンにルークは尋ねたがレンの凄味のある笑顔で後退し、尋ねるのをやめた。
「やれやて、この非常事態に何とも頼もしいガキどもだぜ。」
「はは、まったくだな。」
情報部を探っていたためクロ―ディア姫や人質達と囚われていた新聞記者ーーナイアルはジンを笑いながらエステル達を見ていた。
「さて、俺達はそろそろ行こうか。」
ジンは2人に出発するよう促した。
「また会おう、仔猫ちゃんたち♪」
オリビエはいつもの調子で再会することを言い
「女神(エイドス)の加護を!」
ヨシュアは全員に女神の加護があるよう祈りエステル達と分かれた………



後書き ルークは最初からどのチームに入れるか決めていましたがレンは少しだけ迷っていましたがやっぱり”最凶”とも一度戦わせてみたかったのでエステルチームにしました。さあて………あのキャラの最凶っぷりが書けるかな………感想お待ちしております。



[22786] 第31話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/16 17:59
~王都グランセル・南街区~

王都中は今まで一般兵が徘徊していたが今は特務兵の徘徊に変わっていた。
「………一般兵に替わって特務兵達が巡回していますね。」
「離宮を落とされて敵さんも必死なんだろうさ。しかし何とも物々しい雰囲気だぜ。」
ヨシュアの言葉にジンは特務兵が巡回している理由を推測した後、華やかな街の物々しい雰囲気に溜息をついた。そしてそれを聞いていたオリビエは冗談か本気かわからないことを言い始めリュートを取り出そうとした。
「よし、こういう時こそボクのリュートで張り詰めた空気を和ませて………」
「目立つことをしていると、またあの人が飛んできますよ。確か、ミュラーさんでしたっけ?」
「そ、そうだった……。2人とも、帝国大使館には絶対に近寄らないでくれたまえ!」
呆れ顔のヨシュアにある事を言われたオリビエは必死に大使館に近づかないよう言った。
「はは、お互い大使館に寄ってるヒマは無さそうだな。準備を整えしだい、地下水路に降りるとしよう」
そしてジンに言われたヨシュア達は装備やオーブメントの確認をした後目的地である地下水路へ向かった。

~王都地下水路・東区画~
地下水路に降りたヨシュア達はクロ―ゼに渡された地図を見ながら隠し扉がある壁の所についた。
「あった………これだ。」
壁を念入りに探っていたヨシュアは隠されてあった仕掛けを解いた。すると壁は音を立てながら動き通路ができた。
「お見事。」
ジンはヨシュアの手際に感心した。
「ふーん。大したものだ。こういう仕掛けを見つけるコツでもあるのかい?」
オリビエは感心しながら仕掛けの見つけ方等を聞いた。
「コツというか……単なる慣れだと思います。自然と指先が探り当てるんです。」
ヨシュアはなぜ、解けたか理解できなく戸惑いながら答えた。
「自然とねえ……ヨシュア君ってその昔、伝説の少年怪盗をしていたとか?活劇物とかに出てくるようなやつ。」
「あのですね……」
半分面白がっているオリビエの言葉にヨシュアは呆れた。
「時間がない。とっとと行くぞ。ここからが本番だからな。」
ジンに促された2人は話をやめ迅速に行動し城につながっている扉の仕掛けを見つけた。
「おっと……ここが終点かな?」
「ええ、さっきと同じ隠し扉のスイッチがあります。
先頭のヨシュアが立ち止り壁を調べていることに気付いたオリビエはここが終点だと思い、ヨシュアに尋ねヨシュアはそれに答えた。
「ふむ、だったら正午までここで待機した方が良さそうだな。」
「了解です。」
「やれやれ……それでは今の内に体を休めておくとするか……」
ジンの提案に賛成したヨシュア達は一端その場で休憩した。

一方グランセル城前では撹乱する部隊ーーユリア率いる少数の親衛隊とルークを含めた正遊撃士5人が物陰等に隠れた。
「よし……各員、そのまま待機。正午の鐘と同時に突入する。」
ユリアの言葉に頷いたルーク達は静かに正午の鐘を待った。

もう一方、女王救出の部隊ーーエステル達は情報部が使っていた飛行艇が停泊している場所についた。
「情報部の特務艇……こんな形で乗るなんて。」
エステルは複雑な気持ちで呟いた。
「なんていうか……やたら趣味の悪い飛行艇ね。あの空賊艇といい勝負だわ。」
「全くよ。こんな物々しく色がない飛行艇に乗ってもレン、全然楽しくないわ。もっと綺麗な色のがよかったわ。」
シェラザードの文句に同意したレンも思わず呟いた。
「でも、かなりのスペックであることは間違いありません。こんな船を情報部は、どうやって調達したのか……」
クロ―ゼはリシャール達がなぜ軍にある戦闘飛行艇以上の能力を持つ飛行艇を手に入れた理解できず呟いた。
「うーん、そういえば。あの『ゴスペル』といい色々と謎が多いわね……」
クロ―ゼの言葉を思い返したエステルは今までの出来事を振り返り、解決できていない事の多さに溜息をついた。
「やあ、殿下。お待ちしていましたよ」
エステルが考えて唸っていた時飛行艇から男性が降りてきた。
「ペイトンさん。どうもお久しぶりです」
「えっと……この人は?」
男性の正体が判らなかったエステルはクローゼに男性の正体を尋ねた。
「ペイトンさんといって『アルセイユ』の整備をしている方です」
「といっても、中央工房から出向している技術要員ですけどね。『アルセイユ』は試験飛行段階なので色々とデータを取る必要があるんです」
「へえ、そうなんだ。ルーアンで見た時はちゃんと飛んでいたけど……」
「もちろん、通常飛行は可能ですけどね。新型の導力機関(オーバルエンジン)が開発が遅れて旧型を載せているだけで本来の性能が引き出せていないんです。ともかく、『アルセイユ』は情報部に奪われ、試験飛行も無期延期……。王都で途方に暮れていたところをユリアさんが呼んでくれたんです」
「なるほど……」
「ふふ、よろしくお願いね。」
「うふふ、ゼムリア大陸最速とも言われる飛行艇、『アルセイユ』ーー別名『白き翼』を整備している人なんだ。これは期待できるわね♪」
「ま、任せて下さい!」
シェラザードとレンの期待の言葉に整備士は緊張しながらも答えた。

そして飛行艇の入口についたクロ―ゼは3人に確認をした。
「もう正午まであまり時間はありません。乗り込んでエンジンを起動しますか?」
「ええ、急ぎましょ」
「うふふ、腕がなるわ。」
レンは初めて参加する国を左右する大規模な事件に直接関わることに自信のある言葉で呟いた。
「わかりました。……ペイトンさん。サポートをお願いします」
「了解しました。エンジンの調整は僕に任せて殿下は操縦に専念してください!」
「シェラ姉、レン、いよいよね……」
「ええ……。難しいミッションだけど、基本は何も変わらないわ。迅速に……そして着実にね」
「エステルのサポートはレンがしてあげるわ。」
「ありがとう……って!サポートするのは姉のあたしよ!」
レンの言葉にお礼を言いかけたエステルだったがすぐにサポートすべきなのは自分のはずだと気付き思わずレンに言葉を返した。
「うふふ、わかっているわよ。期待しているわね♪お・ね・え・ち・ゃ・ん?」
「全くすぐそうやってあたしをからかうんだから……」
レンの言葉にエステル溜息をついた後、4人と飛行艇に乗り込み、正午を待った。

そしてついに正午の鐘が鳴り親衛隊と遊撃士による反撃作戦が今、開始された………!



後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第32話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/27 23:37

~王都・グランセル・リベール通信社~
正午を示す鐘が鳴り響く中、新聞記者のナイアルとカメラマンのドロシーが急いで外に出る支度をして、鐘を聞きナイアルは舌打ちをしてドロシーを急がせた。
「ちっ………始まっちまったか!行くぞ、ドロシー!見晴らしのいい場所を確保するぞ!!」
「ま、待ってくださいよ~!すぐに感光クオーツをセットしちゃいますから~!」
慌てているドロシーは泣きごとを言いながらもカメラの準備をしていた。
「おいおい、どうしたのかね!?3日ぶりに顔を見せたと思ったら……」
ナイアル達がなぜ忙しそうにしているかわからない編集長が理由を尋ねた。
「スクープです!『リベール通信』始まって以来のどでかいスクープなんですよ!」

~グランセル城内・地下~
正午の鐘がなると同時に城の地下の壁が動き、そこから待機していたヨシュア達が姿を現した。
「城門の開閉装置は親衛隊の詰所にあります!南側の階段を登りましょう!」
「応!」
「フッ、行くとしようか!」
ヨシュア達は急いで親衛隊の詰所へ向かった。扉が開き、その音で気付いた特務兵達はヨシュア達の姿を見て驚いた。
「え……!」
「バカな、侵入者だと!?」
「侵入された方は必ずそう言うんだよね。」
オリビエは特務兵達の言葉を聞いて自分が聞くとは思わなかった言葉を聞いて、面白いと思った。
「ま、気持ちは判らんでもないが。」
「……行きます!はっ!!」
「え……グフ……」
ヨシュアが先制攻撃代わりに一瞬の内に特務兵の横を駆け抜け、駆け抜けると同時に特務兵に双剣の片方で気絶する部分を斬りつけた。斬りつけられた特務兵は何が起こったか理解もできずに気絶した。それを見たほかの特務兵は驚いた。
「なぁ!?」
「いつのまに!?」
「余所見をしている余裕はあるかな!……開け闇の扉!!……ホワイトヘゲナ!!」
「「グワァァァァ……!!!」」
驚いている特務兵にオリビエは強力な時のアーツを放った。無防備状態でアーツを受けた特務兵達は思わず叫び声を上げ膝をついた。
「せいっ!たあっ!」
「「グっ!ガハッ!」」
そして膝をついた特務兵にすかさずジンが拳で殴り、殴られた兵達は壁にぶつかり完全に沈黙した。
「よし、一丁上がりだ。」
「やれやれ、あっけない。」
「今から城門の開閉装置を操作します!敵が来たら撃退してください!」
ヨシュアが2人に頼みごとを言いながら城門の開閉装置を急いで操作し始めた。
「おお、任せとけ!『不動のジン』の名に賭けて誰一人として中には入れん!!」
ジンはいつもの余裕な顔を捨て、闘気を体全体に纏った後、敵がいつ来てもいいように攻撃態勢を取り
「フッ、今こそ天上の門が開く時……。第1章の最終楽章の始まりだ!」
オリビエは髪をかきあげた後、ジンの援護のために銃を懐から出し、敵が来る方向に銃口を向けた。

~グランセル城・正門~
特務兵達が守っていた正門はヨシュア達によって開かれた。それがわからない見張りの特務兵の2人は扉が開いた事に不審に思った。
「な、なんだ……?」
「おかしいな……。完全封鎖と聞いていたのに。」
そして2人は念のために後ろを振り向いた時、自分達に向かって突撃してくるユリア中尉率いる親衛隊と遊撃士の混合部隊に驚いた。
「なっ!?」
「馬鹿な!!」
「やぁっ!」
「双牙連斬!!」
「「グワァッ!!??」」
武器を構えることもできず、ユリアとルークの剣技に特務兵達は膝をつき、なだれこむ親衛隊や遊撃士にぶつかって吹き飛ばされて堀に大きな水音を立てて落下した。
そして城内に入ると次々と特務兵達がさまざまな方向から現れた。
「よし、敵がどんどん来ている!……親衛隊の者達よ!今こそ、情報部の者共に我らに汚名を被せたことを後悔させてやるぞ!!」
「「「「「「「イエス、マム!!!!」」」」」」」
「俺達も行くぜ、クルツ!」
「ああ!……方術、貫けぬこと鋼の如し!!みな、行くぞ!親衛隊の方達に遅れをとるな!!」
「「「了解!!」」」
そしてユリアやルーク達は特務兵の集団と戦闘を開始した。


~グランセル城・空中庭園~
「くっ、何たる失態……。閣下が戻られる前に何としても撃退せねば……」
カノーネは侵入してきた親衛隊や遊撃士の撃退方法を焦りながら必死に考えていた。
「た、大尉どの!」
「と、特務飛行艇が!」
カノーネの傍に控えていた2人が上空から近づいてきた飛行艇に気付いた。
「しまった!そちらが本命か!?」
カノーネは近づいてくる飛行艇が相手の作戦の本命だと気付き、まんまと騙されたことに悔しさを感じながら、女王宮への侵入を止めるため
いつでも戦えるようにした。そして着陸した飛行艇から出て来たエステル達を見て驚いた。
「エ、エステル・ブライト!?それに……クロ―ディア殿下まで!おまけにレン・ブライトにシェラザード・ハ―ヴェイ!!なぜ、ロレントにいたはずの遊撃士達がここにいるの!?
検門は完璧だったはずなのに……!」
カノーネはロレントで戦った遊撃士が何故、王都に来れたのか理解できず思わず叫んだ。
「うふふ、どんなに守りを固くしても弱点は必ずあるもんよ♪」
カノーネの叫びを聞いてレンは気分良く答えた。
「カノーネ大尉!またお邪魔するわよ!!」
「お祖母さまを……解放していただきます!!」
エステルとクロ―ゼの言葉にカノーネは烈火のごとく怒った。
「な、舐めるなァ!小娘ども!!」
「うふふ、レン達に勝てると思って?お・ば・さ・ん?」
「クッ……小娘!貴様だけは私の手で後悔させてやる!!」
そしてエステル達はカノーネと取り巻きの特務兵と戦い始めた。

「「喰らえッ!!」」
「っと!」
「やらせないわ!」
先制攻撃をしかけた特務兵の攻撃をエステルとシェラザードはそれぞれの武器を使って防御した。
「これでも喰らいなさい!」
そしてカノーネはそんな隙を狙って銃で攻撃してきた。
「キャッ!」
「チッ……!」
その攻撃に驚いたエステルとシェラザードは防御態勢をやめ、後退した。そこをすかさず特務兵達が攻撃をしてきた。
「「そこだっ!!」」
「あうっ!?」
「くっ!?」
特務兵達の攻撃が少しだけ当たり、2人は掠った際の痛みに顔をしかめ後退した。
「今です!たたみかけなさい!!」
「「ラジャー!!」」
カノーネの命令に特務兵達が追撃をしかけようとしたが
「岩よ落ちよ!!……ストーンインパクト!!」
「「くっ……」」
レンが発動した大きな岩の塊を降らすアーツに気付き、追撃をやめ後退した。
「優しき癒しの水よ……ラ・ティアラ!!」
そしてその隙を狙ったクロ―ゼのアーツが2人の傷を直した。
「ありがとう、クロ―ゼ。レンも援護、サンキュー!」
「うふふ、これくらいいつもヨシュアがしていることと比べれば軽いもんよ。」
エステルにお礼を言われたレンは微笑して素直にお礼を受け取り
「援護と回復は私にお任せ下さい!」
「ええその代わり、私達がお姫様を守るわ!」
クロ―ゼの言葉にシェラザードは力強い言葉で答えた。
「さっきはよくもやってくれたわね……せいっ!」
エステルが棒に力を込めて震い、その震いでできた衝撃波ーー捻糸棍が特務兵達に向かって走った。
「「うわっ!?」」
その衝撃波を回避したが、その余波を受けた特務兵達は驚いてのけ反った。その隙を狙ってシェラザードがアーツを放った。
「走れ雷!!……プラズマウェイブ!!」
「「グワァァァァ……」」
風のアーツの中でも対人戦に向けられたアーツに当たった特務兵達は感電して叫びをあげた。そしてアーツが特務兵に当たった瞬間レンが剣と小剣を構えクラフトを放った。
「爪竜連牙斬!!」
「「ぐっ………!!」」
剣と小剣、それぞれの攻撃に当たってしまった特務兵はその痛みに顔をさらにしかめ
「はぁぁ、せいっ!」
「はっ!」
「「ゴっ……!!??ガハッ!!」」
エステルの力を込めて放たれた棒のクラフトーー金剛撃とシェラザードの重みをました鞭のクラフトーーバインドウィップを受けた特務兵達は吹っ飛び近くの壁にぶつかり気絶した。
「く……小娘が……これでも喰らいなさい!!」
憎々しげにレンを見たカノーネはレンに向かって銃弾を放とうとしたが
「ジーク!!」
「ピューイ!!」
「なっ!?」
クロ―ゼに呼ばれた白隼ーージークの突進攻撃に驚いたカノーネは銃を放つのをやめ突進してくるジークを間一髪でよけた。その隙を逃さずレンはすかさず突きの構えをしてクラフトを放った。
「瞬迅剣!!」
「グッ……そん……な………」
レンの突きのクラフトを鎧の隙間で無防備になっている腹の部分を突かれ、服の中には簡易的なプレートを着込んでいたが鋭い突きによって伝わって来た衝撃に耐えきれずカノーネは沈んだ。

「ロレントと戦った時もそうだったけど鬼気迫るというか……。妙におっかない女だったわね。いったい何者なの?」
「リシャール大佐の副官よ。典型的な雌ギツネって感じ。ねえ、シェラ姉。ロレントでも戦ったって聞いたけど一体何があったの?」
シェラザードの言葉に引っ掛かりを覚えたエステルはそれを尋ねた。
「……実はこいつら、レナさんを誘拐して先生の動きを制限しようとしたのよ。それでこの女はその時の指揮官。」
「あ、あんですって~!?それ本当!?お母さんは無事!!??」
エステルは大好きな母が危険にさらされたことを知り思わず叫んだ。
「大丈夫よ。ママはお兄様やレン、シェラお姉さんが守ったわ。それに今も応援で来てくれた遊撃士がママを守っているわ。」
「そうなんだ………それだったら私も一発、この人にブッ飛ばすべきだったわ!」
レンから母が無事であったことを聞きエステルは安心した後、倒れているカノーネを見てムッとした顔で見た。
「そんなのは後にしなさい。さてと……目指すは女王宮ね!」
「「了解!!」」
「はい、急ぎましょう!」
シェラザードに先を促され3人は返事をし女王宮へ向かった………








後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第33話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/19 21:16
グランセル城・女王宮~
カノーネ達を倒した後、入口を守っていた特務兵を一瞬で倒したエステル達は女王がいるはずの女王の寝室に向かおうとした時、特務兵に守られながら歩いて来る今回のクーデターでリシャールに王座につけるという言葉にまんまとのせられた女王の甥ーーデュナン公爵が通りかかり、エステル達を見て驚いた。
「は、反逆者ども!のこのこと来おったな!?私を新たなる国王と知っての狼藉か!?」
「冗談は髪型だけにしなさいよ。あんた、まだ国王になったわけじゃないでしょ!」
「な、なぬう!?」
(何……この人……?もしかしてこの人がアリシア女王の甥……?こんなのが王様になるなんて冗談じゃないわ!)
エステルの言葉にデュナン公爵は顔を真っ赤にして怒り、公爵を見たレンはこんな小物が自国の王になることに凄く嫌がり、公爵が国王になるのを防ぐためにも作戦を必ず成功させるように剣を力強く握りしめた。
「デュナン公爵閣下ですね。私たちは遊撃士協会の者です。クローディア殿下の依頼で女王陛下の救出に来ました。大人しくそこを通してくれるとこちらも助かるんですけど。」
シェラザードは公爵にその場をどくよう笑顔で警告した。
「ク、クローディアだと!?あの小娘……余計なことをしおって!!」
「デュナン小父(おじ)様……。もう、終わりにしてください。小父様はリシャール大佐に利用されていただけなんです。」
「な、何だそなたは……。………………………………」
見知らぬ少女に叔父と呼ばれた公爵はわけがわからず、クロ―ゼをじっとよく見てある人物に似ている事に気付いた。
「ク、ク、ク、クローディアではないか!なんだその髪は!?その恰好は!?」
公爵はクロ―ゼを指差しのけ反りながら驚いて叫んだ。

「やっと気付いたのか……。こりゃ、ルーアンで会った時も気付いてなかったわけだわ。」
エステルは公爵の様子を見て呆れて溜息を吐いた。
「よく判らないけど、ずいぶんと抜けた人みたいね。」
「あら、シェラお姉さん。そんなの誰でも見たらわかるわ♪」
「あの、黙っていた私が悪かったんだと思います……」
シェラザードとレンの公爵に対する低い評価をマシにするためにクロ―ゼは公爵を少しだけ庇ったが、色々言われた公爵は怒りの表情で叫んだ。
「こ、この私をよくもたばかってくれたな!これだから女という生き物は信用がおけんのだ!小狡(ずる)く、狭量で、ささいな事ですぐ目くじらを立てて……。そんな下らぬ連中に王冠を渡してなるものか!」
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「…………フゥン……………」
その時空気が凍りエステル、シェラザードからは無表情で、クロ―ゼは困ったような表情で、レンは冷たい眼差しで公爵を見た。
「……え……その…………」
4人から無言のプレッシャーを受けた公爵は思わず言い淀んだ。
「か、閣下……。今のはマズイのでは……」
「あ、謝った方がいいかと……」
嫌な予感を感じた特務兵達は公爵に謝るよう促したが
「ふーん……下らない連中か……」
エステルは笑顔だったが目が笑っていなく
「いやはや、見直したわ。このご時世に大した度胸がある発言ね……」
シェラザードも同じ表情で
「うふふふふふふ………そんなレン達にやられる公爵さんはどんな下らないお・と・こ・かしら♪」
レンは周囲に黒い空気を背負ったような笑顔で公爵を見つめ
「ご、ごめんなさい小父様。今のはちょっと……弁護できそうにありません。」
クロ―ゼは申し訳ない表情で謝り、エステル達と共に公爵達に向かって攻撃した。そしてエステル達の怒りを受けた公爵を守っていた特務兵達はエステル達が出す怒りのオーラに悲鳴を上げながら一瞬で気絶させられ無事なのは公爵だけになった。

「はい、一丁上がりと!さーて、お次は公爵さんの番かしら?」
エステルたちが公爵を見ると、エステル達を恐れて徐々に後退していた。
「女ごときが振るう鞭の味、味わってもらおうかしらねぇ?」
シェラザードは鞭を構え
「うふふふふふふふふふふふふ…………」
レンは笑顔だったが周囲に瘴気のようなものを背負った風にも見え、それを見た公爵は悲鳴をあげた。
「ひ、ひええええええ……。寄るな、寄らないでくれええ!」
「あ、あの……。そのあたりで許してあげては……」
悲鳴をあげている公爵をさすがに可哀想と思ったクロ―ゼは遠慮がちに公爵を許すよう言った。
「くっ、こうなったら陛下を盾にするしか……。……ええい、ままよ!」
そして公爵がエステル達から逃げて女王を人質にしようと、走り出した時、階段の手すりに顔を思いっきりぶつけてしまった。
「ぎゃうっ……」
手すりに思いっきりぶつかってしまった公爵は呻き声をあげた後、気絶した。
「あちゃあ……。ちょっと脅しすぎたかも。」
エステルは気不味そうな顔をして
「まあ、邪魔したのは事実だし、いい薬になったんじゃない?」
「レンもシェラお姉さんの考えに賛成よ。だいたい、こういう人は一度酷い目に遭うべきなのよ。」
シェラザードとレンは気にする必要はないと言い
「はい……。不幸な事故だと思います。でも、気絶した小父様をこのままにしておくわけにも……」
クロ―ゼは気絶した公爵をどうしようか悩んでいた所
「……こ、公爵閣下!?」
公爵の老執事、フィリップが慌てた様子で公爵に近寄った。
「あ、フィリップさん!」
エステルはフィリップを見て声をあげた。
「エステル様……。それにクローディア殿下……。この度は、我が主が迷惑をおかけして申しわけありません!全ては、閣下をお育てしたわたくしの不徳の致すところ……。どうか、これ以上の罰はわたくしめにお与えくだされ!」
フィリップはエステル達に向かって頭を深く下げた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
頭を下げられたエステルはどうすればいいかわからず慌てたが
「フィリップさん……どうか頭をお上げください。私たちは、お祖母さまを……陛下をお助けしに来ただけです。もとより、小父様に何もするつもりはありません。どうか、私の部屋で小父様の手当てをしてあげてください。」
「で、殿下……」
エステル達の代わりにクロ―ゼが寛大な処置を命じた。
「実際、大した傷はないわ。ぶつかったショックで気絶しているだけだから大丈夫。」
「そうよ、それにレン達は遊撃士よ。基本的に戦う術のない人を傷つけたりしないわ。多分、少し寝たら起きると思うわ。」
「み、皆様……本当にありがとうございます。このご恩、決して忘れませんぞ!」
エステル達の寛大な心に感動したフィリップはデュナン公爵をクロ―ゼの部屋へ運んで行った。そしてエステル達は再び女王の元へ急いだ。急いで女王の部屋に入ったエステル達だったが、そこには誰もいなく奥のテラスにいる可能性も考え、テラスに向かった。

~グランセル城・女王宮、テラス~
「お祖母さま、大丈夫ですか?」
「助けに来ました、女王様!」
「クローディア……。それにエステルさんも……」
テラスにいたリベール国王、アリシア女王は助けに来た人物を見て複雑な表情をした。なぜなら
「ようやく来たか……。待ちくたびれてしまったぞ。」
自分が逃げないよう監視していた兵が、特務兵の中でもリシャール大佐以上の実力を持つと囁かれている仮面の男ーーロランス少尉がエステル達と戦うつもりてあったからだ。
「ロ、ロランス少尉!どうしてこんな所に……」
ロランスを見たエステルは驚いた。
「フフ……。私の任務は女王陛下の護衛だ。ここにいても不思議ではあるまい?」
「ふ、ふざけないでよね!いくらあんたが腕が立ってもこっちは4人もいるんだから!」
ロランスの言葉に反応したエステルは強がりを言った。
「なに、こいつ……。ずいぶん腕が立ちそうね。いったい何者なの?」
シェラザードはロランスの正体を知っていそうなエステルに何者か尋ね
「シェラお姉さんの言う通りよ………かなり、できるわ………(何、この人……?レンが気圧されるなんて……そんなことができるのはお兄様かパパぐらい……!クッ!……こんなことならレンがお兄様の役割を交代すべきだったかもしれないわね……!せめて、ユリア中尉がいてほしかったわ……!)」
レンはロランスからほとんど感じたことのなかった自分より格上の強者の雰囲気を肌で感じ、現在のメンバーでは勝率が低いことを一瞬で悟り、クーデター阻止作戦に参加したメンバーの中で最も実力のあるルークかユリア中尉がエステル達と行動すべきだったと思い心の中で肝心の女王救出ができるかわからず焦った。そしてエステルはレンが珍しくいつもの余裕の表情をなくしていることに気付かずロランスの正体を言った。
「情報部、特務部隊隊長。ロランス・ベルガー少尉!もと猟兵あがりで大佐にスカウトされた男よ!」
「ほう、そこまで調べていたか。さすがはS級遊撃士、カシウス・ブライトの娘だ。」
「!!!」
「外部には公表されていない先生のランクを知っているなんて……。こいつ、タダ者じゃないわね。」
シェラザードは遊撃士協会内部の情報まで手に入れているロランスを最大限に警戒した。
「フフ……。お前のことも知っているぞ。ランクC、『銀閃』シェラザード・ハーヴェイ。近々、ランクBに昇格予定らしいな。そしてそこの菫色の髪の少女、もちろんお前も知っているぞ。ランク3級、『剣聖』と『焔』の剣技に加え独自の剣技も持ちすでに戦闘能力は正遊撃士に届いていると言われている準遊撃士、レン・ブライト。規定年齢に達した時、正遊撃士の資格を与えると検討されているらしいな。しかも、正遊撃士に就任した際の級は現在の所E級だそうだな?」
「なっ………!レンのことに加えて、私達が知らない協会のレンの正遊撃士就任に関する情報まで……!本当に何者よ!?」
シェラザードはレンのことを知っていて、さらには自分達はまだ知らないレンの正遊撃士になった際の情報まで知っているロランスに驚愕し最大限に警戒した。
「………………………」
レンは無言で武器を構えいつでも攻撃に移れるようにした。
「あ、あの……。お祖母さまを返してください。もしあなたが大佐に雇われただけなのならもう戦う理由などないはずです。」
エステル達がロランスを警戒する中、クロ―ゼはロランスに女王を解放するように嘆願した。
「この世を動かすのは目に見えている物だけではない。クオーツ盤だけを見ていては歯車の動きが判らぬように……」
「え……」
突如ロランスが語り出したことにクロ―ゼはわけがわからなかった。
「心せよ、クローディア姫。国家というのは、巨大で複雑なオーブメントと同じだ。人々というクオーツから力を引き出すあまたの組織・制度という歯車……。それを包む国土というフレーム……。その有様を把握できなければあなたに女王としての資格はない。」
「!?」
ロランスの意味深な言葉にクロ―ゼは何か大事なことを言われたと気付き、それを必死に考えた。
「面白い喩(たと)えをするものですね。ですが……確かにその通りなのかも知れません。まさか、この場で国家論を聞くとは思いませんでしたけれど……」
ただ一人、女王だけはロランスの言葉を理解し、その言葉を重く受け止めた。
「フ……これは失礼した。陛下には無用の説法でしたな。」
それを聞きロランスは口元に笑みを浮かべた。

「な、なんかよく判らないけど……。要するに、女王様を解放する気はないってわけね。」
エステルは何がなんだか理解できなかったがロランスが女王を解放する気ではないと思い、棒を構えいつでも戦えるようにした。
「だとしたら……どうする?」
「決まってる……。力ずくでも返してもらうわ!」
ロランスの挑発ともとれる言葉にエステルは強く言い返し
「そうね……。ここまで来て後には引けない。」
「ええ、レン達の前に障害があるのならそれを取り除くまでよ!例えそれが越えられない障害だとしてもね!」
シェラザードとレンはエステルの言葉に呼応するようにそれぞれロランスと戦う意思を告げ
「あなたからは敵意は感じられませんけど……。お祖母さまを取り戻すためなら剣を向けさせていただきます!」
クロ―ゼもレイピアを構えてロランスと戦おうとした。
「フフ、いいだろう……。ならば、こちらも少し本気を出させてもらうぞ。」
「え……!?」
エステルがロランスの言葉に驚いているとロランス少尉が仮面を放り投げて素顔を出した。
「………………………………」
「……銀髪……」
エステルは今まで見た事がない髪の色に驚き
「いや……アッシュブロンドね……。どうやらこいつ……北方の生まれみたいだわ。」
シェラザードはロランスの容姿を見て出身地を予測した。
「フフ……。北であるのは間違いない。まあ、ここからそれほど遠くはないがな。」
「どういう意味かしら?(北方………猟兵………まさか!ノーザンブリアの猟兵!?下手をしたら殺し合いになるわね………!)」
レンはロランスの情報を頭の中で整理し、自分の持っている知識をフル活用し出た結論から推測し相手が一筋縄でいかないと思い、気をより一層引き締めた。
「お前たちが女、子供であろうが手加減するつもりはない…………行くぞ!!」
そしてエステル達とロランス少尉の戦いが始まった…………!









後書き 感想お待ちしております。




[22786] 第34話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/20 18:32

~グランセル城・テラス~
ロランス少尉と戦闘を開始したエステル達だったが予想以上に苦戦した。
「はっ!」
「フッ……」
エステルの棒は剣で受け流され
「しっ!」
「………」
シェラザードの鞭は回避され
「やっ!」
「ハァッ!殲綱斬!!」
「………まだまだだ!」
「キャッ!?」
「いたっ!」
クロ―ゼとレンの同時攻撃は両方ともロランスの剣と打ち合いになってしまい、打ち負けた2人は吹っ飛ばされてその衝撃に悲鳴をあげた。
「クッ………私の剣ではみなさんの足手まといかもしれません。なら………!……水流よ吹きあがれ……」
接近戦ではかなわないと思ったクロ―ゼはオーブメントを発動し、アーツを放とうとしたが
「甘いっ!」
ロランスはクロ―ゼに向かって剣で竜巻のような衝撃波を放った。それを見たクロ―ゼはオーブメント発動をやめて驚き硬直してしまい、動けなかった所
「危ない、クロ―ゼ!!」
間一髪でエステルが飛び込みクロ―ゼを抱きかかえて衝撃波から逃れ、その勢いで倒れた。
「いたた……大丈夫、クロ―ゼ?」
「はい、ありがとうございます、エステルさん。……それにしてもかなりの強敵ですね……アーツを撃つ隙も中々ありませんね……」
エステルにお礼を言ったクロ―ゼはなんとか隙を見てアーツを放とうした所、今度はロランスが素早くアーツを放ってきた。
「銀の楔よ………我が敵を滅せよ!………シルバーソーン!!」
ロランスが放ったアーツはシェラザードとレンを閉じ込めるかのように次々と上空から宝石のついた銀色の楔が降って来て、宝石部分が光り2人に向かって怪しい紫色の光を放たれた。
「「キャァァァァ………!!」」
光に当てられた2人は思わず悲鳴をあげ膝をついた。
「シェラ姉、レン!?」
2人の悲鳴を聞いてエステルは叫んだ後、2人に近寄った。
「大丈夫!?ほらティアラの薬よ。使いなさい!」
「……ありがとう、エステル。なんとか大丈夫よ………っつ………!」
レンは呻きながらも剣を支えに立ち上がり、エステルから貰った薬を一気に飲み、治りきっていない傷を我慢しながらも武器を構えなおした。それを見たロランスは感心して呟いた。
「ほう………あれを喰らって平気か………どうやら、状態異常対策もしっかりやっているようだな……さすがと言っておこうか。」
「どういう意味よ………?」
レンはロランスの言葉が理解できず聞き返したがその意味はすぐにわかった。
「わっ!?」
「エステル!?」
なぜなら味方のはずのシェラザードがエステルに向かって無表情で攻撃しだしたのだ。
「シェラ姉!?どうしたの!あたしは味方だよ!?」
エステルはシェラザードの攻撃を棒でなんとか防御したり、回避したりしているが完全には回避できずかすり傷などができ始めた。
「(もしかして………)エステル!シェラお姉さん、今のアーツで混乱しているわ!」
レンはシェラザードが先ほどのアーツ攻撃で混乱していることに気付き、エステルに助言した。
「あ、あんですって~!?攻撃と同時に混乱させるようなアーツ、知らないわよ!?」
エステルはシェラザードの攻撃に耐えながら、未知のアーツに驚き叫んだ。
「レンだって知らないわよ!?あなた、本当に何者!?」
「フ………お前達の情報通りの男のはずだが?」
「ふざけた事を……!お姫様!シェラお姉さんとエステルの治療をお願い!エステルは悪いと思うけど耐えて!」
「わかりました!」
「了解!」
レンの指示にエステルとクロ―ゼは頷きクロ―ゼは最初にシェラザードの状態異常を直すアーツを発動させようとした。
「させると思っているのか!?」
そしてロランスは再びクロ―ゼに先ほど放ったアーツ妨害のクラフトを放とうとした所、レンが斬りかかってくるのを見て構えをやめ迎撃にうつった。
「さっきのようには行かないわよ!!ハッ!瞬迅剣!月閃光!」
「ムッ………」
レンの剣撃を剣で捌いたロランスは一端下がり自らにアーツをかけた。
「大地の力よ、我の盾となれ…………アースガード改!!」
ロランスがアーツを発動するとロランスの周りに大地の壁が囲み消えた。
「やっかいなアーツを!……なら、効果を失くすまで!」
レンはロランスが絶対防御のアーツを使ったことに顔をしかめ、効果をなくし追撃するため両方の武器を使って攻撃をしかけた。
「(………よし!アーツを使った後にできるわずかな硬直で隙があるわ………チャンスね!)ハッ!そこ!」
レンはロランスの無防備さに気付き攻撃したが手ごたえを感じなかった。
「(……どういう事?………2回とも命中したはずなのに………)えっ!?」
レンはロランスに傷ひとつないことに気付き驚いた。
「狙いは悪くないが読みが甘かったな………せいっ!」
「キャッ!!」
ロランスの攻撃をレンは両方の武器をクロスさせて防御したが、ロランスの攻撃は重く小柄なレンはクロ―ゼ達のところまで吹っ飛ばされた。
「くっ………まさか、2度も効果があるなんて………!」
吹っ飛ばされながらも体制を整え、受け身をとって着地したレンはどんどん出てくる未知のアーツにどう対抗すれないいのか必死で考えた。
「時よ、かの者にさらなる加護を………クロックアップ改!」
レンがロランスから目を離さず警戒していた所、クロ―ゼの援護アーツがレンにかかった。
「レン!大丈夫!?」
「手間をかけさせたわね………」
「エステル!シェラお姉さん!治療は終わったのね!よかったわ……」
自分に近寄って来たエステルと正気になったシェラザードを見てレンは安心して一息ついた。
「レンちゃんが時間を稼いでくれたおかげで、治療、援護アーツは終わりました!」
「ありがとう、お姫様。さて、どうしようかしら………」
クローゼにお礼を言ったレンはロランスが再び絶対防御のアーツを発動している所をみて、攻略方法をどうするか呟いた。
「それなんだけど、あたしにいい考えがあるわ!みんな、耳を貸して!」
妙案を思いついたエステルはロランスに聞こえないように小さな声で自分の考えを言った。
「………なるほど、さすがエステルね!」
エステルの考えを聞いたレンは咄嗟に妙案を思いつくエステルを実戦で成長する彼女らしいと思い笑い
「私もその賭け、乗ったわ!」
シェラザードは片目をウィンクして了解の意を示し
「エステルさんの言う通り、あの人にはなく私達にある力を見せてあげましょう。」
クロ―ゼも頷きレイピアを構えた。

「………どうやら、相談が終わったようだな………俺を倒す作戦か、それとも逃げる算段を考えたか見せて貰おうか………」
ロランスはエステル達の表情が何かを決心したような表情に見え、口元に笑みを浮かべ呟いた。
「今、見せてあげるわ!みんな、行くわよ!」
ロランスに言い返したエステルは掛け声をし、その掛け声が合図となり全員が散らばり、それぞれアーツの発動をし出した。
「(それぞれ散らばってアーツの詠唱だと?………何を狙っている……?)フ………お前達の力、見せてもらおうか……そこだっ!」
それぞれ全く違う位置で発動しだしたので、まず最初に4人の中で一番小柄で倒しやすそうなレンをアーツ妨害と倒すためにロランスは先ほどクロ―ゼに放ったクラフトをレンに向けて放った。それを見たレンは発動をやめ、横に飛んで回避した。レンが回避すると同時にエステルのアーツが発動した。
「毒なる土よ、舞いあがれ!……ペトロブレス!」
エステルがアーツを発動するとロランスの足元からアーツによってできた特殊な土が舞い上がりロランスを囲んで障壁の一つを壊した。そして次にクロ―ゼのアーツが発動した。
「……水流よ、吹きあがれ!……ブルーインパクト!」
クロ―ゼのアーツはロランスの足元から水流があがり、エステルの発動したアーツの土と混じり、泥と化して、ロランスの障壁を破った。そしてシェラザードの上級アーツが発動した。
「悠久の時を巡る優しき風よ、我が前に集いて嵐となせ!!……エアロストーム!!」
「チッ………」
絶対防壁が破られ、竜巻が自分を囲ったことにいち早く気付いたロランスは大きく後ろに飛び、竜巻の攻撃範囲から逃れた。
そしてシェラザードのアーツは大型の竜巻となり、アーツでできた泥も巻き込み、泥の渦と化した。
「これが狙いか………さて、どう来る……?」
泥の渦を見て前が見えなくなったロランスは目くらましのためだけにそれぞれが協力してできたアーツに感心した後、泥の渦が起きている間、横から攻撃が来ると思い構えていた所、
なんと泥の渦からレンが飛び上がって、ロランスに斬りかかった。
「ハッ!」
「何!?」
それを見たロランスは思わず驚きの声を上げたが剣で防御した。
「あの泥の渦の中でどうして平気でいられる?」
ロランスはレンの攻撃を防御しながら呟いた。
「うふふ、それは秘密よ♪」
レンは口元に笑みを浮かべロランスに言葉を返した。なぜ、レンが傷や泥だらけではないのはロランスの前に泥の渦が出来た時、絶対防御のアーツ、アースガードをシェラザードのオーブメント駆動を早くするクラフトーーヘブンズキスも混ぜて早く発動し、泥の渦の中に飛び込み素早くロランスに向かって飛び上がったため、竜巻による攻撃はアースガードに守られ、泥もほとんどつかなかったのだ。
「行くわよ!剣技!八葉滅殺!ヤァァァ……!!!」
「………ほう。………」
ロランスはレンの隙のない連続技に感心の溜息をつきながらも全て捌いた。ほとんどの相手が見切れない自慢の剣技がさばかれたレンはロランスならさばけてもおかしくないと思い動揺せず、小剣はロランスに向かって突き出すように、剣を持っている手は弓を引き絞るかのような突きの構えをして剣に闘気を宿らせ、ユリア中尉やクロ―ゼの剣技を見て思いついた突剣技を放った。
「これが!レンの!突剣技!フェヒテン・アルザッ!!」
レンが次々と繰り出す突剣技を回避していたロランスだったが、頬に剣が掠り掠った部分から血がにじみ出て来た。
「……何!?」
頬に傷がついたロランスは驚いた顔でレンを見た。その表情を見たレンは口元に笑みを浮かべ言い放った。
「うふふ、余所見は厳禁よ、し、ょ、う、い?」
レンの言葉にロランスは何かあると思って周囲を見渡した時、右からはエステルが、左からはシェラザードがロランスに向かって襲いかかり、それぞれ自分の切り札となるSクラフトを放った。
「行くわよ、クインビュート!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はぁっ!!!」
「くっ………」
シェラザードによる連続する鞭攻撃を受けたロランスは初めて苦悶の声を上げた。そしてシェラザードの攻撃が終わると同時にエステルの攻撃が始まった。
「これで決めるっ!桜花!無双撃!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」
「やるな………」
エステルの連続攻撃を剣でしのいでいたロランスだったが、ところどころ防げずエステルの渾身をこめた最後の一撃はロランスの肩を強く打ち、それに耐えきれなかったロランスはついに膝をついた………









後書き ロランス戦、なんとか書けた……ロランスのSクラフトが出なかった?もちろん次の更新の時に出るに決まってます!私が軌跡シリーズで最も全滅率高かったのはロランス戦ですね。SCは正直言ってその頃は装備とか充実してたから、そんなに苦戦はしなかったですし。ロランスは素早い、攻撃力高い、状態異常も起こしてくると3拍子揃った上、回復アーツに2回絶対防御アーツは反則すぎでしょ………引き継ぎなしや1週目で戦ったらほとんどの人が負けると思います……勝つにしても状態異常対策、ベルトは必須でしょう……感想お待ちしております。



[22786] 第35話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/21 21:56
~グランセル城・テラス~
「驚いたな……。まさかここまでやるとは。」
ロランス少尉が膝をつきながらある程度本気を出した自分に勝利したエステル達を感心した。
「はあはあ……。あ、あんた!決勝で手を抜いてたわね!?あの時とはケタ違いじゃない!」
エステルは息を切らせながらエステル達が闘技大会に参加した時はこれほどの強さじゃないとわかり、ロランスに向かって叫んだ。
「こ、こんな化物によく勝てたわね……」
シェラザードも疲弊しつつエステル達がロランスに勝てた事に驚き
「し、信じられません……」
クロ―ゼも疲弊しつつ信じられない表情で
「はあはあ……少なくともこの人、お兄様並よ……どうやって勝ったのよ………」
レンも珍しく息を切らせながらエステルやヨシュア達が自分達がやった奇策以外で勝てた事に驚いた。
「エステル・ブライト……。侮っていたことは詫びよう。お前ならあるいは……父親の域まで達するかもしれん。そしてレン・ブライト、お前もただ剣が人より少し筋がいいだけの小娘ではなかったようだな。お前も姉同様、父親の域に達し、父親や兄の剣技を受け継ぐ存在になるだろうな。」
「え………」
エステルはロランスの意外なほめ言葉ともとれる言葉に驚き
「………それはどうも。あなたに言わるのなら光栄ね。」
皮肉にも自分一人では勝てない相手に誉められ、レンは面白くなさそうな顔でロランスの言葉を受け取った。
「だが……今はまだまだだ………むんっ!受けて見ろ、荒ぶる炎の渦を……鬼炎斬!!」
ロランスは立ち上がり強烈な一撃をエステル達に向かって放った。
「きゃああ……!」
「ぐっ……」
「きゃあっ!」
「いやぁー!」
ロランスの強力な一撃を受けてしまったエステル達は吹き飛び、その場で膝をつき傷が予想以上に体に響き立ち上がれなかった。
「クローディア!エステルさん!」
女王がエステル達の元に近寄ろうとしたがロランスが止めた。
「陛下、それ以上は動かないでいただこう。死ぬようなケガではない。」
「………………………………。その瞳……なんて深い色をしているのかしら。まだ若いのに……たいそう苦労してきたようですね。」
女王はロランスの瞳を見て哀れんだがロランスは女王を睨んだ後目を閉じて女王の言葉を否定した。
「………………………………。女王よ、あなたに俺を哀れむ資格などない。『ハーメル』の名を知っているあなたには……」
「!?」
女王はロランスのある言葉に驚愕して目を見開いた。
「さてと、そろそろ時間だ。お望み通り、女王陛下は返してやろう。」
ロランスはエステル達から一気に後ろに離れ口元に笑みを浮かべ、その場にいる全員にとって予想外の言葉を言った。
「へ……!?」
それを聞いたエステルは訝しげな表情をして驚きの声をあげた。

「大佐を止めたければ地下に急いだ方がよかろう。もはや手遅れだろうが……。無用な被害が広がるのを食い止められるかもしれん。」
「地下に……まさか、あの場所から地下に降りたという事ですか?」
ロランスの警告を聞いた女王は疑問の言葉をロランスに返した。
「フ……今のあなたならばその意味が嫌というほど判るはず。彼らを導いてやるといいだろう。……それでは、さらばだ。」
ロランスは女王に言い残した後、高度のあるテラスから飛び降りた。
「な!?」
「嘘!?(なんて跳躍力……!あんなの、お兄様でもできないわ!!)」
「しょ、正気!?」
エステル、レン、シェラザードは驚いて慌てて下を見たが、ロランスの姿はどこにもいなかった。
「い、いない……。池に落ちたのかな……?」
「それにしては……水面が波立っていないわ……。あの男、いったい……」
エステルの推測をシェラザードは否定し、ロランスが何者か理解できなかった。
「………少なくともただの猟兵じゃないわね……あんなに強かったら噂ぐらいにはなっているのにどうしてあの人の情報はなかったのかしら……?」
レンはロランスの情報がないことに疑問を持った。
「お祖母さま……お怪我はありませんか!?」
クロ―ゼは女王に心配そうな表情で駆け寄った。
「大丈夫よ、クローディア。乱暴なことはされていません。それよりも……」
クロ―ゼの言葉に女王は笑顔で自分が無事である事を言い、これからのことを言おうとした時
「エステル!」
「2人とも無事か!?」
ヨシュアやルークの声が部屋の方から聞こえて来て、2人がエステル達の所に駆け寄った。また、2人の後ろからジン、オリビエ、ユリア中尉も駆け寄って来た。
「ヨシュア!?それにルーク兄も!よかった、無事だったみたいね!」
2人の無事を確認したエステルは笑顔になった。
「エステルの方こそ……。リシャール大佐やロランス少尉が城内にいなかったから心配だったんだ。」
ヨシュアもエステルの無事な姿を見て安心した。
「ああ。てっきりロランス少尉辺りが俺達の方に仕掛けてくると思ったんだが、完全に読み違えてしまったぜ……」
ルークは悔しげな表情で呟いた。
「あの赤ヘルムならさっきまでここにいたけど……」
「え……!?」
「なっ!?」
エステルの言葉を聞いたヨシュアとルークは目を見開いて驚きの声をあげた。
「その手すりを越えて飛び降りて逃げていったわ。とんでもない化物ね、あれは……」
「ええ、レン達はあの少尉に遊ばれただけだったわ……」
シェラザードとレンは溜息をついた。
「そ、そうだったんですか……。本当によかった……エステル、君が無事でいてくれて……」
ヨシュアは複雑そうな表情をした後、エステルの無事を喜んだ。
「ヨシュア……」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは胸が熱くなった。
「陛下……よくぞご無事で……」
「ユリア中尉……また会えてうれしいわ。それに皆さんも……本当に感謝の言葉が尽きません。」
「フッ、女王陛下。過分なお言葉、ありがたき幸せ。」
女王の感謝の言葉をオリビエは珍しく殊勝に受け取った。
「お役に立てたならば幸いです。ですが、まだこれで終わりではなさそうですな。」
ジンは戦いはまだ終わってないと言い、気を引き締めた。
「城内の特務兵は鎮圧しましたがよくない報せが届いています。各地の正規軍部隊が王都を目指しているとのこと……。どうやら、情報部によってコントロールされているようです」
「そうですか……」
ユリアの言葉を聞いて女王は顔を曇らせた。
「失礼ですが、あまり時間がありません。どうか今すぐ飛行艇でここから脱出なさってください。」
「いえ……それはできません。それよりも……どうやら大変なことになりました。何としても、リシャール大佐を止めなくてはなりません。」
ユリアの言葉を女王は目を閉じて断った。
「ど、どういう事ですか?」
ユリアは女王の言っている意味が判らず聞き返した。
「昨夜、大佐と話をしてみてようやく真の目的が判りました。」
「真の目的……?リベールを陰から操ることではなかったんですか?」
ルークは女王がリシャールの目的が別だと言ったことに疑問を持ち聞いた。
「ええ……どうやら彼は、『輝く環(オーリオール)』を手に入れるつもりのようなのです。」
「『輝く環(オーリオール)』……。そ、それってどこかで聞いたことがあるような……」
エステルは女王の言った言葉が頭の隅に引っ掛ていてそれを思い出そうとした所、ヨシュアが思い出させてくれた。
「古代人が女神から授かった『七の至宝(セプト=テリロン)』のひとつ……。全てを支配する力を持つといわれる伝説のアーティファクトのことですね。」
「ああ、アルバ教授が言ってた……。でもそれって、教会に伝わっているただのおとぎ話なんでしょう?」
「………………………………」
ヨシュアの言葉でエステルは完全に思いだし、女王に聞いたが女王は目を閉じ黙して何も語らなかった。

「え……」
エステルは女王の様子を見て驚き
「ふむ、存在するのですね?このリベール王国のどこかに。」
エステル達の話を聞き、女王の様子を見て気付いたオリビエは確認した。
「古き王家の伝承にはこうあります。『輝く環、いつしか災いとなり人の子らの魂を煉獄へと繋がん。我ら、人として生きるがために昏(くら)き闇の狭間にこれを封じん……』」
「『人の子らの魂を煉獄へと繋がん』『人として生きるがために昏(くら)き闇の狭間にこれを封じん』…………不気味な言葉ばっかりね………」
レンはところどころ出て来た暗い言葉に眉を顰めた。
「この言葉は、代々の国王への戒めとして伝えられてきました。おそらく『輝く環』と呼ばれる何かはその危険性ゆえ、王家の始祖によって封印されたのだと推測できます。そして、王都の地下から検出された巨大な導力反応……。この2つを結びつけて考えたら……」
「王都の地下に『輝く環』が封印されている……。そう考えるのが自然でしょうね」
女王の言葉をヨシュアは真剣な表情で続けた。
「ええ……。大佐もそう考えたのでしょう。『輝く環』がどういう物なのかは伝承にも残っていませんが……。もし、蘇らせてしまったら大変なことが起きるかもしれません。それこそ過去に起きたという伝説の『大崩壊』に匹敵する……」
「そ、そんな……」
クロ―ゼは悲痛な表情をして
「おいおい……とんでもない話になって来たな……」
「参ったわね、こりゃあ……」
「そうね………レン達の手に負えるかしら………」
ルーク、シェラザード、レンは予想以上に話が大きくなり、それぞれ不安そうな表情をした。
「あ、あの女王様!ロランス少尉は『地下に行け』と言ってましたけど……。あれってどういう意味なんでしょう?」
エステルが先ほどのロランス少尉が言い残した言葉が気になり、それを女王に聞いた。
「このグランセル城には不思議な部屋があるのです……。特に何も保管されていないのに昔から立入禁止とされた場所……」
「あ……」
「宝物庫のことですか!?」
クローゼとユリア中尉はそれぞれ思い当たり、その場にいた一同は宝物庫へと向かった………



後書き 今後SCを書く際、ルークをどこで合流させようか迷っています。1章か3章、どちらがいいですかね……?みなさんのご意見お待ちしております。



[22786] 第36話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/22 23:38
~グランセル城・地下宝物庫~
そしてヨシュアは宝物庫にある王家の紋章が彫ってある大きな扉の周辺を念入りに調べ、結果を全員に言った。
「間違いありません……。つい最近、ここを頻繁に出入りしたような跡があります。」
「……それだけじゃないわ。かなり重量のある物が運び込まれたような跡もある。」
シェラザードは扉の下にある痕跡を見て推測した。
「おそらく、予備の鍵を使って中で何かをしていたのでしょう。調べてみる必要がありそうですね。」
女王が懐から鍵を出し、扉を開き全員がその先に行くと大型のエレベーターが建造されていた。
「こ、こんな場所にエレベーターが……。こんな物、無かったはずなのに!」
ユリアは予想外の場所にエレベーターがあったことに驚愕した。
「わざわざ大佐が建造させたということか……。とすると、このエレベーターで『輝く環』が封じられた場所に降りることができるわけですな。」
「ええ……。ひょっとしたら、これこそが今回のクーデターを起こした真の目的だったのかもしれません。王城を占領でもしない限り、こんなものを造るのは不可能ですから。」
ジンの言葉に女王は頷きクーデターの原因を推測した。
「ま、まさかそんな……」
エステルはそれを聞いて信じられないような顔をした。
「ふむ、ありうるかもしれない。どこの国でもそうだが、王権が守る聖域とは不可侵のものだ。それを破るとなれば、よほど思い切った強行手段に出る必要があるだろうね。」
オリビエは納得した表情で頷いた。
(聖域か………母上やナタリアからはそんな場所があることを聞いたことなかったけどバチカルにもあったのかな……?)
ルークは故郷の国も特別な場所があったのかと思った。
「いずれにせよ、これを使って地下に降りる必要がありますね。まずは動かしてみましょう………っ!!!」
エレベータ―を動かそうと操作していたヨシュアだったが、ある事に気付き手を止めた。その様子を見て、エステルは怪訝そうな顔で尋ねた。
「どうしたの、ヨシュア?」
「これは……導力的な方法でロックされている。特殊な結晶回路(クオーツ)を組み込んだ鍵を使わないと動かせないみたいだ。」
「あ、あんですって~!?」
ヨシュアの言葉にエステルは大きな声をあげた。
「そんな、ここまで来て……」
クロ―ゼはどうすればいいかわからず悲痛な顔をした。
「……そうだ!拘束した特務兵達がいるぜ!そいつらに聞けばわかるんじゃないか!?」
「……確かに彼らなら何か知っているかもしれん………今すぐ、拘束してある特務兵を締め上げて聞いてやります!どこかに鍵があるかもしれません!」
「ええ……そうした方がよさそうですね。」
ルークの考えにユリアは頷き、女王も頷いたのを見て早速行動をしようとしたところ、ある老人の声がルーク達の後ろから聞こえて姿を現した。
「いや、それには及びませんぞ。」
姿を現したのはエステル達によって助けられ、アガットと共に特務兵達から見つからないように行動していたラッセル博士だった。
「え……!」
「まさか……!」
エステルとヨシュアは驚き
「まあ……ラッセル博士!?」
女王も博士の姿を見て驚いた。
「アリシア様。ご無沙汰しておりましたな。エステルとヨシュア、ルークにレンも元気そうで何よりじゃ。」
「ちょ、ちょっと……。なんで博士がここにいるのよ!」
エステルは博士を見て疑問の声をあげ
「確かツァイスで、アガットといっしょに情報部に追われていたはずじゃ……」
ルークもアイナやレンから聞いていた情報を思い出し、なぜ博士が堂々と城に姿を現したのか疑問の声を出した。
「それに、博士がここに来ているということは……」
ヨシュアは博士の姿を見て、言葉を続けようとした時

「お、おじいちゃあ~ん。どこに行っちゃったのぉ!?」
「こら、チョロチョロと動き回ってるんじゃねえよ。爺さんもそうだが、落ち着きのない一家だな。」
「だ、だってアガットさん……。あ……!」
ティータとアガット騒ぎながらが姿を現した。
「「ティータ!?」」
エステルとレンはティータの無事な姿を見て声を合わせて喜びの声をあげ
「やっぱり……」
ヨシュアは納得していた。
「レンちゃんにエステルお姉ちゃん!それにヨシュアお兄ちゃんにルークさんも!」
ティータはエステルとレンにしがみついてきた。
「わわ、ティータ……」
「動きにくいじゃない……ほら、落ち着いて。」
しがみつかれた2人は苦笑しながらティータを慰めた。
「よ、よかったぁ。また会うことができて~。ギルドで聞いたらレンちゃんやお姉ちゃんたちがお城で戦っているって聞いて。うう、無事で良かったよう~!」
ティータは半泣きの表情でエステル達の無事を喜んだ。
「ティータ……」
ティータの言葉を聞いたエステルは感動し
「うふふ、大丈夫に決まってるじゃない♪レン達は強いんだから♪」
レンは自分達は無事で当然と胸を張って言った。
「ありがとう……。心配してくれたみたいだね。アガットさんも……よくご無事でしたね。どうして王都にいるんですか?」
ヨシュアはなぜアガットが王都にいるかを聞いた。
「いや、ひょんなところで王都行きの貨物船を見つけてな。灯台下暗しを狙って来てみたら騒ぎが起こってるじゃねえか。で、エルナンに事情を聞いてわざわざ来てみたってまけだ。おっと、ヤツからの預り物もあるぜ。」
そしてアガットはエステル達にそれぞれ報酬を渡した。
「おっと……悪いな、アガット。」
「うふふ、今回はお礼を言っておくわ。」
「ありがとうございます、アガットさん。」
報酬を受け取ったルークとレンとヨシュアはアガットにお礼を言った。
「い、いいのかな……。ちゃんと報告してないのに。」
エステルは依頼終了の報告をしていないことを思い出し、本当に報酬を受け取っていいのか悩んだ。
「親衛隊の伝令から大体の事は聞いたみたいだぜ。しかし、こんな所でガン首揃えてどうしたんだよ?てっきり残りの特務兵どもをブチのめせるかと思ってきたんだが。ん、あんたは……」
「お久しぶりです、アガットさん。灯台ではありがとうございました。」
「たしか、クローゼと言ったな?どうして、あんたみたいな学生がこんな場所にいやがるんだ?」
アガットはクロ―ゼに気付き、自分が認識しているクロ―ゼはただの学園の生徒だったのでなぜ、一介の学生が城にいるのか疑問に思った。
「どうやら、孫娘がお世話になったようですね。わたくしからもお礼を言わせてください。」
「ああ、気にすんなって。単なる仕事のついでだからな。ところで婆さんはこの城の関係者か何かかい?」
女王にお礼を言われたアガットは女王の正体がわからなかったのでいつもの口調で返した。そしてそれを聞いたユリアが怒りの表情でアガットを咎めた。
「ぶ、無礼者!この方をどなたと心得る!我がリベール国主たるアリシア女王陛下であるぞ!」
「へっ……。そ、そういえばどっかで見たような気が……」
ユリアに女王の正体を知らされたアガットは驚いて女王を見た。
「やれやれ。相変わらず未熟者じゃのう。」
「んだとう!」
博士に呆れられたアガットは思わずつっかかた。
「全く、相変わらず無礼で失礼な人ね。ねえ、お兄様?」
「ま、まあアガットも知らなかったみたいだから許してやれよ、ハハハ……(……言えねえ……昔の俺はこれ以上の酷さだったなんて、口が裂けても絶対に言えねえ……!)」
レンの言葉にルークは昔の思い出したくもなかった態度や性格が最低だった自分の黒歴史を思い出し、冷や汗をかいてそれを悟られないように顔が引きつりながらも笑って誤魔化した。
「?変なお兄様……」
そんなルークの心情を知らないレンはルークの様子を怪訝に思った。

一方女王の正体を知ったティータは驚いた後、クロ―ゼを見た。
「じょ、女王さま!?そ、それじゃあ……こっちのお姉ちゃんは……」
「女王陛下の孫娘のクローディア姫殿下だよ。僕たちはクローゼって呼んでるけどね。」
そしてヨシュアがティータにクロ―ゼの正体を明かし、エステルがクロ―ゼにティータを紹介した。
「クローゼ。この子が博士の孫のティータよ。あたしたちの妹同然の子なの。」
「そうですか……。初めまして、ティータちゃん。私のことはクローゼって呼んでくれると嬉しいです。」
「は、はいぃ……。ク、クローゼさん……」
ティータは緊張しながらも笑顔で答えた。
「あらやだ。この子、なんか可愛いわねぇ。あたしはシェラザード。エステルとヨシュアの先輩よ。シェラって呼んでちょうだい♪」
「は、はい、シェラさん……」
「それじゃあボクは『オリビエおにいちゃん』って……」
「あんたはやめい、あんたは。」
シェラザードに続くようにオリビエはどさくさに紛れてティータに変な呼び方をさせようとした所、エステルに白い目で睨まれ止められた。
「それはともかく……。そのエレベーターが動かなくて困っておるようじゃな。いったいどういう事情なのかね?」
「実は……」
エステル達はリシャールの目的、エレベーターの行き先を博士達に説明した。
「おいおい、マジかよ……。シャレになってねえぞ。」
アガットはエレベータ―を睨み呟き
「そんなものがこの下に埋まってるなんて……」
ティータは信じられないような表情をした。
「ふむ……やはりわしが恐れていた通りじゃったか。このエレベーターを使えばその場所に降りられるようじゃな?………どれ、見てみるか。」
博士はエレベーターの操作パネルを操作しある事に気付いた。
「これはわしが開発したカードキーを応用したものじゃな。同一の結晶回路を持つカードを差し込まないとロックは解除されん。じゃが、この手の初期型にはプロテクトが実装されておらん。こうして、導力圧を調整して回路に負荷を流し込めば……」
博士が小型の装置を出し、それを使ってパネルをさらに操作するとエレベーターの電源が入った。
「やった、さすが博士!」
「……お見それしました。」
エステルとヨシュアはエレベーターが動くことに喜んだ。
「ふふ……さすがですね。それではさっそく地下に降りてみるとしましょうか。」
女王もエステル達に続くようにエレベーターに乗ろうとした時
「た、大変です!王都の大門に正規軍の一個師団が到着!情報部の士官によって率いられている模様です!」
「なに、もう来たのか!?」
「さらに湖上から3隻の軍用警備艇が接近中!い、いかがいたしましょうか!?」
「ええい、この大変な時に!」
一人の親衛隊員が知らせを持ってきて、その知らせを聞いたユリアは情報部の予想以上の動きの早さに驚き、どうするか悩んだ。
「……どうやら、わたくしが説得に出た方がよさそうですね。」
その知らせを聞いた女王は静かに進み出た。
「お、お祖母さま……!?」
それを聞いたクロ―ゼは心配そうな表情をした。
「屋上のテラスに出て到着した部隊に声をかけます。ユリア中尉、用意してください。」
「で、ですが……万が一攻撃されてしまったら!」
「わたくしは彼らを信じます。誤解があったとはいえ、彼らもリベールの民……。わたくしの姿を見て、声を聞いてなぜ攻撃することがありましょう。」
「陛下………」
ユリアは女王の決意を覆すのは無理だと思いまた女王らしいと思い、反対するのを諦めた。
(………すげえ………これがリベールの『王』か………ナタリア、お前もアリシア女王のような立派な王になれよ………)
ルークは女王の決意を見て尊敬し、王位継承者となっている仲間にアリシア女王のような『王』になってほしいと願った。
「エステルさん、皆さん……。こんな事を頼むのは非常に心苦しいのですが……」
「女王様……。それ以上は仰らないでください。リシャール大佐の野望はあたしたちが食い止めます!」
「どうかお任せください。」
女王の言葉の続きがわかっていたエステルとヨシュアは女王の依頼を快く受け、その場にいる仲間達と共に地下に降りて行った。

エレベーターが降りて行った先は見たこともない巨大な遺跡のようなものだった。その巨大な遺跡にエステル達は驚き、予想以上の広さの迷宮をどう攻略すべきか悩んでいた所、ジンの提案で拠点を守る待機班と遺跡内を探索する探索班にわかれることになり、メンバーは今まで情報部の事件に深く関わって来たエステルとヨシュアが決めることになり、それに驚き辞退しようとしたエステルだったがヨシュアに諭され、エステルは自信を持って、自分とヨシュアが相談して決めて選んだメンバーと共に遺跡内の探索を始めた………!




後書き や、やっとFCラストダンジョンまでこれた………SCまで後、少し………感想お待ちしております。



[22786] 第37話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/26 23:49
ついに!軌跡シリーズの新作が発表されましたね!!



~封印区画・第一層 ~
エステルとヨシュアは色々相談した結果、接近戦が得意で今回の件で一番深く関わったアガット、アガットとは逆にアーツが主体の戦い方で本人の希望もあって決めたクロ―ゼ、
アガットと同じく接近戦が自慢でエステルと同じくある程度強力なアーツができるルーク、接近戦、アーツと万能に戦えるレンを連れていくことにした。そしてある程度進むと、自動で動く機械のようなものが複数現れエステル達に攻撃した。
「わっ!何よ、コイツ?」
エステルは初めてみる敵に驚いた。
「見たところ、警備用の自動人形みたいだね……もしかしたら、リシャール大佐がここを見つける前から動いているかもしれないね……」
ヨシュアは相手の行動を警戒しながら呟いた。
「んなこたぁ、どうでもいい。とにかくぶっ壊すぞ。」
アガットは重剣を構え全員に戦うよう言った。
「ここをずっと守って来たあなた達に罪はないけど、私達の道を阻むのなら排除させていただきます!」
クロ―ゼは決意の表情でレイピアを構えた。
「むう、こんな状況じゃなかったらティータといっしょに解体して仕組みとか調べたかったんだけどなぁ……」
レンは初めて見る自動人形を壊すのを弱冠残念そうな顔をしながら右手に剣を、左手に小剣を構えた。
「ハハ……そういうのはまた、機会がある時にしておけよ。(ガイが見たら絶対に『頼むから壊さないでくれ!』って必死で頼むだろうな……)」
ルークは機械マニアの親友が今の敵を見た時の行動が予想できて、そのことを苦笑いしながら剣を鞘から抜いて構えた。
「みんな、行くわよ!」
そしてエステルの掛け声をきっかけに全員がそれぞれ動き出した。

「はぁぁぁぁぁぁ!」
エステルは敵が固まっている中心地に飛び込み、すばやく周囲の敵を攻撃するクラフトーー旋風輪を放って敵を吹き飛ばしてばらけさせ
「はっ、せいっ!」
ヨシュアは一瞬消えた後、エステルがばらけさせた敵の一体の背後に現れた後急所をついて沈め
「えい、やあ、はあ!」
クロ―ゼは自分の近くに吹き飛んできた敵にレイピアでの連続突きクラフトーーシュトゥルムを放って倒し
「そこだぁ!ドラグナーエッジ!!」
「剛!魔神拳!!」
アガットとルークはそれぞれ直線状を走り貫通効果を持つクラフトを放って直線状にいる敵を豪快に吹き飛ばして沈め
「瞬迅剣!身妖舞!月閃光!」
レンは素早く敵を一突きで沈めた後、手数の多さで確実に周囲の敵を沈めていった。
「よーし!上出来っと!あら、こんなところにも宝箱があるわ!何か入っているのかしら?」
戦闘が終了し宝箱を見つけたエステルは宝箱に近づき、開けようとした。
「エステル!魔物が入っている場合も考えられるし、注意深く開けてよ!」
ヨシュアはエステルが何の調べもせず宝箱を開けようとしたエステルに注意を促した。
「大丈夫、大丈夫!こんな古い遺跡、大佐達が見つけるまで誰も来た事がなかったんだから、例え魔物が入っていても生きていないわよ。さ~て、何が入っているのかなっと。」
しかしエステルはヨシュアの警告を無視して宝箱を開けた。すると大型の機械人形が宝箱から現れ、それがエステルに向かって体当たりして来て、エステルは壁の所まで吹っ飛んだ。
「キャッ!?」
「エステルさん!?」
「エステル!?大丈夫!?」
「チッ……俺達はあのデカブツの相手をするぞ、ルーク!マセガキ!」
「おう!」
「だから名前で呼びなさい!全くもう!」
アガットは突如現れた大型の機械人形に舌うちをした後、ルークとレンと共に立ち向かい、
クロ―ゼとヨシュアは吹き飛ばされたエステルの所に近寄り、エステルを心配した。
「いたた……なんで、宝箱の中にあんなでかい機械人形が入っているのよ……」
壁にぶつかったエステルはぶつかった際の衝撃に呻きながら立ち上がった。
「だから、言っただろう?注意深く開けたほうがいいって。」
「今、回復しますね!……ティアラ!」
クロ―ゼが発動した回復アーツによって敵の体当たりで傷ついたエステルの傷を治した。
「ありがとう、クロ―ゼ!ヨシュアも心配かけてゴメンね……」
「いいよ、もう。君のその性格は慣れたしね。」
「誰にでもミスはあります。気にしないで下さい。」
エステルの無事を確認していた2人の所に大型の機械人形を相手にしていたアガット達が近付いてきた。
「全く、少し見直したと思ったらこれだ。……まだまだだな。」
「う、うるさいわね~!ちょっと油断しただけよ!」
アガットの言葉にエステルは思わず言い返した。
「クスクス……相変わらずね、エステルったら。」
レンは旅をしても変わってない姉の様子に思わず笑った。
「まあ、それぐらいにしてやれよ。ほら、宝箱の中にこんな武器が入ってたぞ。」
ルークは宝箱から手に入れた武器を全員に見せた。
「へっ、中々いい重剣じゃねぇか。貸してくれ、ルーク。」
「ああ。」
ルークから宝箱に入っていた重剣を受け取ったアガットは何度か素振りをして剣の感触を確かめた。
「いい感触だ。もらって行っていいか、姫さん?」
アガットは宝箱の中身を持って行っていいかクロ―ゼに聞いた。
「………はい、その剣を正しい事に使うのでしたら構わないと思います。」
クロ―ゼは少しだけ目を閉じて考えた後、了解の言葉を言った。
「えっと……いいの、クロ―ゼ?この遺跡、城の地下で見つかったから、その剣も城の財宝ってことになるけど?」
エステルは念のためにクロ―ゼに確認した。
「はい。回収しても宝物庫に眠るだけですから……民を守るために使われるのでしたら、その剣も本望でしょうし。この先で見つかる武器や防具も持って行って構いません。……リシャール大佐
を止めるためにも、少しでも強力な武器や防具があったほうがいいでしょうし。」
「わかったわ………みんな、宝箱を見つけたらどんどん開けて行こう!」
「エステル、さっきみたいに宝を守っている守護者もいるだろうし油断はしないでね。」
ヨシュアは調子に乗ってどんどん宝箱をあけようと思っているエステルに釘をさした。
「わかっているわよ!今度からはちゃんと警戒するわ!」
ヨシュアに注意されたエステルは今度からは警戒して宝箱を開けると言った。
「うふふ、誰にも見つからず眠っていた遺跡に眠っている武器……興味深いわ。レンのもあるかしら?」
レンはクロ―ゼの許可で古代から眠っている武器が貰えることができ、自分のもあるのかワクワクした。
「まあ、それは開けてからのお楽しみだな。(まあ、俺はローレライの鍵があるからいらねぇけどな……)先を急ぐぞみんな!」
ルークの言葉に全員が頷き遺跡内を探索してそれぞれの武器や防具を見つけつつ、さらに下へ降りて行った………



後書き 新作、碧の軌跡の予告ムービー見ました………あの衝撃的な映像はいったい……!そして最後に出て来た零の意味は何を示すのか………!空の軌跡キャラもまた仲間になりそうな上、前作では最後まで使えなかったワジ、ノエルがレギュラーパーティー化して使えそうな雰囲気ですから超楽しみです!!!!できればダドリーや銀も……!爆雷符無双をまたやりたいです!!銀やダドリーが使える時期は即死無双はあまりできなかっですし……感想お待ちしております。



[22786] 第38話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/28 23:02
~封印区画・第三層空中回廊~
エステル達がある程度進むと、前方から聞き覚えのある女性の声が聞こえて来た。
「やはり、ノコノコとやって来ましたわね……」
エステル達が先を急ぐと次へ進む道を守っているカノーネ大尉が自分達を憎々しげに見ていた。
「カノーネ大尉………」
ヨシュアはカノーネの姿を認めると戦闘になると思い気を引き締めた。
「な、なんであんたがこんなところにいるのよ!?空中庭園で気絶してたんじゃ………」
エステルは倒したはずのカノーネがいたのに驚き、思わず本人に聞いた。それを聞いたカノーネは鼻をならして答えた。
「フン、このわたくしがあの程度のことで倒れるものですか。どうやら城は奪われたようですけど……閣下が『輝く環』を手に入れればいつでも取り戻せるというものです。」
「雌ギツネが………ずいぶんいい気なもんだな。せいぜい夢でも見ていろや。」
「あら♪珍しく意見が合ったわね♪アガットの言う通り、どうせオバさんはレン達に勝てないんだからさっさと投降するか、無駄な抵抗をしてレン達に気絶させられて楽しい夢を見るかどっちがいいかしら?オ・バ・さ・ん?」
カノーネの負け惜しみの言葉にアガットとレンが言い返し、それを聞いたカノーネは憤怒の表情でエステル達を睨みつけた。
「ええい、おだまりなさい!とにかく、リシャール大佐の邪魔だけはさせませんわよ!いでよ!人形(マペット)ども!」
カノーネが叫ぶと上から2体の大型の機械人形が降って来た。
「わわ………!」
上から降って来た大型の敵にエステルは驚き
「古代の人形を操ったのか……」
大型の機械人形がエステル達だけに敵意を向けているのを見てヨシュアはそう簡単にはカノーネは倒せないと思い気を引き締めた。
「フフ、我らの力を見くびってもらっては困ります。ここの調査を始めてから膨大なデータを集めたわ。このように強力な人形兵器(オーバーマペット)
を操ることも不可能ではありません。」
「おいおい、命知らずだな………」
「なんて危険なことを………」
人形兵器を操ることを得意げに話したカノーネにルークは呆れ、クロ―ゼは信じられない表情でカノーネを見た。
「フン、何とでもお言いなさい。それでは………行きますわよ!」
そしてエステル達とカノーネ率いる人形兵器の戦いが始まった。

戦闘は最初からエステル達が優勢だった。人数がエステル達の方が圧倒的に勝っていたのもあるが、エステル達は途中で見つけた宝箱から出て来た人形兵器の守護者との戦いで慣れていたからだ。エステル達は数の利を活かし、2人一組で各個撃破に当たった。
「はっ!」
人形兵器が自身についている銃をつかって攻撃しようとしたところ、エステルの棒独特のリーチを生かした攻撃で武器が壊され
「………冷気の雨よ、降りそそげ!………ダイヤモンドダスト!!」
クロ―ゼの強力な水属性アーツが人形兵器に当たり、機械でもある人形兵器は氷の雨によってさまざまな部分が故障し、行動が制限され動かなくなったところを
「これで決めるっ!はっ!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」
エステルのSクラフトーー桜花無双撃によって止めをさされた。
一方ヨシュアとアガットのペアもヨシュアが素早い動きでもう一体の人形兵器を撹乱しているところアガットが重剣による重い一撃を叩きこんだ。
「くらいやがれっ!スパイラルエッジ!!」
アガットの重い一撃を受けた人形兵器は怯んでいる所
「おぉぉぉ!」
ヨシュアの特殊な睨みによってダメージ負うと同時にさらに怯んだ。
「今です!アガットさん!」
「おう!行くぜっ!うおぉぉぉぉ!うらっ!せいっ!はぁっ!どりゃあぁぁぁぁぁっ!」
ヨシュアの言葉にアガットは答えた後、エステルと同じようにSクラフトを放ってもう一体の人形兵器を沈めた。

そしてカノーネの相手をしていたルークとレンも優勢に戦っていた。
「この………喰らいなさい!」
カノーネは距離をとって銃を両手に持ち、狙い撃ったが一発も当たらなかった。
「悪いが、その程度の銃の腕では俺には当たらないぜ!(リグレットと比べれば銃の扱いが悪い上、狙いが甘すぎるぜ!)」
「うふふ、銃弾はまっすぐにしか演奏家のお兄さんの方がオバさんよりよっぽどマシよ♪あのお兄さんは回避されることも想定した位置に撃っているんだから♪」
「この………!なら、これでも喰らいなさい!」
2人の言葉に業を煮やしたカノーネは両手についた特殊なオーブメントを発動させた。するとルークとレンの戦術オーブメントが光り何かが抜き取られた。
「あら………?EPが空っぽだわ。」
「こっちもだ!いったいどうやって……」
自分のオーブメントの異常にすぐに気付いた2人は調べ、EPがなくなっていることに驚いた。
「フフ、これでアーツは撃てまい……後は近づかないようひたすら撃ち続け、貴様等を疲弊させ、じっくりいたぶってくれる!」
2人の驚きを見てカノーネは気分が幾分か良くなった。
「はぁ?なんか、勘違いしてねぇかお前?」
「本当に救いようのないオバさんね………ロレントでのレン達の戦いから何も学んでいないじゃない。」
「なんですって……?」
アーツが使えなくなったことに慌てず、自分に呆れている2人を見てカノーネは思わず呟いた。
「レン達のような前衛タイプがアーツを使えなくなったことを想定していないとでも思ったの……?甘すぎるわね!魔神剣!!」
「なぁ!?」
カノーネはレンの放った衝撃波に驚き、反射的に横に転がってなんとか回避した。
「レンの言う通りだぜ!元々アーツは俺達にとって補助のような役割だよ!……つぶれちまいな!……ロックブレイク!」
「ガハッ!?なぜ、アーツが……つか……える……!」
カノーネは突如自分の下から盛り上がった岩に上空へ突きあげられ、そして地面に落ち突きあげられた痛みや地面に落ちたときの衝撃に呻きながら呟いた。そしてルークは短期決戦で決めるために呻いているカノーネに強力な追撃をした。
「やってやる!荒れ狂え殺劇の舞!殺!劇!舞荒剣――!!」
「ガッ!?グッ!?ゴホッ!?」
ルークの強力な連続攻撃を受けたカノーネはさらに呻いた。
「お兄様!レンが止めをさすわ!……ハァァァァ……飛燕の円舞、紅燐剣!」
「キャァァァァ……!?ガハッ!?そ……ん……な……閣……下……申し……訳……あり……ま……」
レンが放った強力な衝撃波はルークの連撃で呻いていたカノーネに傷をつけると同時に吹き飛ばし、吹き飛ばされたカノーネは壁にぶつかりリシャールへの謝罪の言葉を
最後まで言えず気絶した。
「2人も終わったようね。」
戦闘が終了し、エステル達はルークやレンに近づいた。
「ええ、今度は完全に気絶していると思うわ。レンとお兄様で徹底的に痛めつけたし。」
「あはは………それにしても本当にしつこい人だったわね………目がさめたらまた、あたしたちに立ち向かってきてもおかしくないんじゃない?」
レンの言葉に苦笑したエステルは、気絶しているカノーネを見てまた立ち上がる可能性もあると思った。
「うん………しばらくは動けないと思うから安心していいと思うよ。」
カノーネの状態を調べたヨシュアはエステルを安心させた。
「それよりこいつがここを守っていたという事はこっちのルートが正しいんじゃねえのか?」
「あ、確かに………」
ルークの言葉にエステルは頷いた後、クロ―ゼにある頼みごとをした。
「クロ―ゼ、ジークにお使いをしてもらってもいい?」
「はい。……ジーク!」
そしてジークはクロ―ゼの頼みに頷いた後、戻って待機班をエステル達のところまで先導した。そして博士から今いる場所は遺跡のちょうど中継地点だと知らされ、エステル達は補給や回復をした後さらに気を引き締めて先をすすんだ。さらに進んだエステル達は大きな広間に出た時、エステルは何かを感じ取った。
「ここって……なんだか今までの場所と雰囲気が違う気がする……」
「確かに………息苦しい感じがするぜ。」
「ああ。(この感触……師匠(せんせい)との決戦の場の直前の雰囲気に似ているな………恐らく、次の部屋が終点だな……)」
「長かった情報部との戦いもとうとうクライマックスね。最終決戦に参加できるなんて……うふふ、腕がなるわ。」
エステルの呟きにアガットとルークは頷き決戦は近いと感じ気をより一層引き締め、レンはリシャールとの決戦に直接参加できることに不敵に笑った。
「たぶんここが終点だ。万全の準備をしてから中に入った方がよさそうだね。」
「ええ………あそこにちょうど回復オーブメントがありますし、装備の点検などをしてから進みましょう。」
ヨシュアの言葉に頷いたクロ―ゼは近くにある回復オーブメントをさし、最後の準備を提案しそれに頷いたエステル達は回復や装備の点検を行った後、リシャール大佐が待つであろう終点の大部屋へ進んだ………



後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第39話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/03/31 11:46

~封印区画・最下層・最深部~
エステル達が踏み込んだ曰くありげな柱が4本立っている大部屋にツァイスでエステル達が博士に渡した黒のオーブメントを置いて何かの装置を起動させている、今までの事件の黒幕であるリシャール大佐がいた。
「………やはり来たか。何となく君達が来るのではないかと思ったよ。」
何かの装置を操作していたリシャールは操作をやめ振り返り、落ち着いた表情でエステル達を見た。
「リシャール大佐……。あたしたち、女王様に頼まれてあなたの計画を止めに来たわ。」
「まだ『ゴスペル』は稼働させていないみたいですね。今なら……まだ間に合います。」
「大佐………お願いします!これ以上罪を重ねないで下さい!」
エステルやヨシュア、クロ―ゼはリシャールを説得しようとしたがリシャールは首を横に振って否定した。
「クロ―ディア殿下………申し訳ありませんが、それはできませぬ。」
「な、なんでよ!?そもそも『輝く環(オーリオール)』って何!?そんなもの手に入れてどうしようっていうのよ!?」
主君であるクロ―ゼの言葉を聞いても考えを変えないなリシャールのことがわからず、エステルは何故リシャールがそこまで拘るか叫んで聞いた。
「かつて古代人は天より授かった『七の至宝(セプト=テリオン)』の力を借りて海と大地と天空を支配したという。その至宝のひとつが『輝く環』だ。もし、それが本当に実在していたのだとしたら……。国家にとって、それがどういう意味を持つか君たちに分かるかね?」
「こ、国家にとって……」
輝かしい未来を見ているように見えるリシャールがエステル達に向かって放った言葉はエステルは何のことだかサッパリわからなかった。
「周辺諸国に対抗する強力な武器を手に入れる……。つまり、そういう事か。」
故郷では大貴族であったルークはリシャールの言葉の意味を悟り呟いた。そしてリシャールはルークの言葉に頷いた後、話を続けた。
「その通り……。知っての通り、このリベールは周辺諸国に国力で劣っている。人口はカルバードの5分の1程度。兵力に至っては、エレボニアのわずか8分の1にしかすぎない。唯一誇れる技術力の優位はいつまでも保てるわけではない。二度と侵略を受けないためにも我々には決定的な力が必要なのだよ。」
「だ、だからといってそんな古代の代物をアテにしなくてもいいじゃないの!10年前の戦争だって何とかなったんでしょう!?」
エステルの叫びにリシャールは悲痛な表情で否定した。
「あの侵略を撃退できたのはカシウス・ブライトがいたからだ。だが、彼は軍を辞めた。国を守る英雄は去ったのだ。そして、奇跡というものは女神と彼女に愛された英雄にしか起こすことはできない……」
(英雄………か。クソッ……あの頃の俺を思い出しちまったぜ………)
リシャールのある言葉を聞いてルークはかつてその言葉に酔い、何も考えず取り返しのつかないことをしてしまったかつての自分を思い出し顔を歪めた。

「だから私は、情報部を作った。諜報戦で他国に一歩先んじることもそうだが……あらゆる情報網を駆使してリベールに決定的な力を与えられるものを探したのだよ。
リベールが苦境に陥った時にふたたび奇跡を起こせるようにね。」
「それって……奇跡なのかな?」
「なに……?」
エステルの不意に呟いた言葉にリシャールは訳がわからず聞き返した。
「えっと、あたしたちは遊撃士でみんなの大切なものを守るのがお仕事だけど……。でも、守るといってもただ一方的に守るだけじゃない。
どちらかというと、みんなの守りたいという気持ちを一緒に支えてあげるという感じなの。」
「それが……どうしたのかね?」
リシャールはエステルが何が言いたいのかわからず先を促した。
「父さんだって、別に1人で帝国軍をやっつけたわけじゃない。色々な人と助け合いながら必死に国を守ろうとしたんでしょ?
みんながお互いを支え合ったから結果的に、戦争は終わってくれた。大佐だってその1人だったのよね?」
「………………………………」
「今、あたしたちがここにいる事だって同じだと思う。大佐の陰謀を知った時はかなり途方に暮れちゃったけど……。
それでも、色々な人に助けられながらここまでたどり着くことができたわ。それだって、奇跡だと思わない?」
「………………………………」
リシャールはエステルの言葉に何も言い返せず驚いた表情で黙ってエステルを見続けた。
「でも……それは奇跡でも何でもなくて……。あたしたちが普通に持っている可能性なんじゃないかって思うの。もし、これから先、戦争みたいなことが起こっても……。みんながお互いに支え合えれば何でも切り抜けられる気がする。わけの分からない古代の力よりそっちの方が確実よ、絶対に!」
エステルは太陽のような明るい笑顔で未来を語りリシャールのしようとしたことを否定した。
「エステル………」
ヨシュアは的を得た答えを言うエステルに感心した目で見つめ
「へっ、ナマ言いやがって。……だが、俺はその考えに載るぜ。」
アガットは不敵に笑い
「うふふ、さすがレンのお姉さんね♪久しぶりに感じせてもらったわよ、エステルのそんな大人なところ♪」
レンはたまに感じるエステル特有の大人なところを感じ、そんな自慢の姉のエステルを尊敬し
「はは、さすが父さんの娘だな……エステル、俺なんかがお前を妹に持って本当に幸せ者だ……!(………これが真の英雄ってやつだな……へへっ、将来が楽しみだぜ!)」
ルークはエステルに英雄としての片鱗を感じ、エステルの将来を期待した。
「フフ……強いな、君は。だが皆が皆、君のように強くなれるわけではないのだよ。
目の前にある強大な力……。その誘惑に抗(あらが)うことは難しい。そして私は、この時にために今まで周到に準備を進めてきた。この準備のために犠牲者も出た。私のせいで犠牲になった彼らのために報いるためにも今更、どうして引き返せようか。」
一方エステルの言葉を聞き終えたリシャールは皮肉げに笑った。

「………………………………。……ひとつ、教えてください。どうして大佐は……この場所を知っていたのですか?」
「なに……?」
「女王陛下すら存在を知らなかった禁断の力が眠っている古代遺跡……。ましてや、宝物庫から真下にエレベーターを建造すればその最上層にたどり着けるなんて……。
あなたの情報網を駆使したって知りえるとは思えないんです。」
「それは……」
ヨシュアの言葉にリシャールはどう返すかわからず口ごもった。
「そして、その『ゴスペル』……。ツァイスの中央工房をもしのぐ技術力で作られた謎の導力器……。
あなたは、それをいったいどこで手に入れたんですか?」
「……答える義務はないな。」
リシャールはヨシュアの言葉に目を閉じ何も答えなかった。
「違う……!あなたは、僕の質問に答えることができないんだ!」
「!!!」
「ど、どういうこと……?」
ヨシュアの叫びにリシャールは表情を歪め、ヨシュアとリシャールのやり取りを聞いて、様子がおかしいと思ったエステルはヨシュアが何が言いたいのかわからず呟いた。
「ただあなたは、この場所に『輝く環』という強大な遺物が眠っていると確信していた。
そして、その黒いオーブメントを使えば手に入ると思い込んでいたんだ。だけど、そう考えるようになったきっかけがどうしても思い出せない。そうなんでしょう!?」
「………………………………」
ヨシュアの言葉がリシャールにとって図星であるかのように、リシャールは表情を歪めたまま何も語らずヨシュアを睨みつけた。
「そ、それって……」
「ダルモア市長みたいに記憶をいじられた可能性があるってことか……」
「そんな………大佐のような方まで操られていたなんて……」
ルーアンの孤児院放火事件の真犯人であるルーアン市長、ダルモアのおかしな様子を知っていたエステルとアガット、クロ―ゼはヨシュアの言葉でリシャールが操られていることに気付いた。
「ちょっと……何?もしかして、大佐さんが今回の黒幕じゃないの!?」
「記憶をいじるってマネ、いったい誰が………」
事情がよくわかっていないレンとルークはエステル達の会話を聞き困惑した。
「それがどうしたというのだ!強大な力の実在はこの地下遺跡が証明している!
人形兵器(オーバーマペット)にしても現代の技術では製作不可能だ!ならば私は……私が選んだ道を征くだけだ!」
エステル達に何も言い返せずリシャールはやけになり、カノーネが呼んだ大型の人形兵器とは違う人形兵器を呼んだ。そして呼ばれた人形兵器が上から降ってくると同時に黒のオーブメントーー『ゴスペル』が妖しく光り出した。
「あ……!」
『ゴスペル』が光り出したことにいち早く気付いたエステルは驚いて声を出した。
「君たちの言葉が真実ならば私を退けてみるがいい……。それが叶わないのであれば所詮は、青臭い理想にすぎん。」
リシャールは腰に差している東方の国、カルバードでは”刀”といわれる特殊な形状をした剣の柄に手を置いて、戦闘態勢に入った。
「とくと見せてやろう!『剣聖』より受け継ぎし技を!」
「言ってくれるじゃない!」
「だったらこちらも遠慮なく行かせてもらいます!」
「覚悟しやがれ!」
「行きます!」
「人助けのためだけに使うと誓ったアルバート流剣技………受けてみな!!」
「さまざまな流派を取り入れて来たレンの剣技………どちらが上か試させもらうわよ、大佐さん!」
ついにエステル達とリシャール大佐のそれぞれの意地をかけた最終決戦が始まった………!



後書き はぁ~……最近、SCをどう書くか迷っているんですよね……グダグダひっぱらずに一気に4章あたりまですっ飛ばして、早くヨシュア達と再会させようかなと思っています。……感想お待ちしております。



[22786] 第40話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/04 02:50
なんとかリシャール戦、書き切った……!次のFCラスボス戦どうしよう……正直いってあんまり書く気が出ないんですよね……





~封印区画・最下層・最深部~

ついに始まったリシャールとの決戦、エステル達はカノーネの時と同じように2人一組で各個撃破を狙ったがリシャールが呼び寄せただけあって、人形兵器は手強く苦戦しなんとか倒したが、リシャール自身が強く6対1という戦力が圧倒的に不利の戦いの中、同等以上の戦いをした。
「はっ!」
「ふっ!」
「甘い……下がれッ!」
「キャッ!?」
「っつ!」
エステルとヨシュアの同時攻撃を捌いたリシャールは逆に2人に抜刀で放ったクラフトーー光輪斬で攻撃し、2人の体に浅くない傷ができエステルとヨシュアはその痛みに顔をしかめ、回復するためにも一端後退した。
「おらっ!」
「……この程度で私を沈めようなど甘い!はぁぁっ!!」
「ぐっ!?」
「アガット!?」
アガットの重い一撃を鞘で防いだリシャールは敵を気絶させる剣技ーー光鬼斬を放ちアガットを気絶させ、それに驚いたルークは急いでアガットを担ぎ後方でエステル達がクロ―ゼに治療してもらっているところまで下がった。

「………たった一人でこの人数の攻撃を防ぐなんて『剣聖』の一番弟子だというのは嘘ではないようね……」
レンは次々と傷つき一端戦線から下がる仲間を見て、リシャールは予想以上に手強いと思い、武器を構えながら思わず呟いた。
「お褒めに預かり光栄だ。これでも剣技で私に敵うのはカシウス・ブライト、ただ一人であると自負している。………ブライト家で唯一カシウス・ブライトの『八葉一刀流』の技を受け継いだ君とは前からお手わせをしたいとは思っていたよ……部下のことも含め、君には少々本気でいかせてもらう……!」
「それはレンのセリフよ!行くわよ……!剣技!八葉滅殺!!ヤァァァァァァ……!!!」
「うおぉぉぉ~!」
レンの目にも止まらぬ速さの連撃に対してリシャールも同じように信じられない速度で抜刀を繰り返す連撃クラフトーー光連斬で対抗した。2人のクラフトは双方打ち合った。
「とどめっ!」
「せいやっ!」
2人の連撃の最後の一撃も同じタイミングで出て、レンの剣とリシャールの刀が鍔迫り合いになった。
「………『八葉一刀流』奥義の一つ、『八葉滅殺』をその年で使いこなすか……これは驚いたな……君が成長したらどれだけ強くなるか今から末恐ろしいよ………将軍が君を勧誘した気持ちも今ならわかるよ……どうかな?その力を新たな祖国、リベールを守るために軍に入らないか?」
リシャールはレンと鍔迫り合いをしながら呟いた。
「結構よ……!レンは誰かに束縛される気はないわ……!それに新たな祖国とはどういう意味かしら……!」
レンは鍔迫り合いは自分では不利と思い、一端一定の距離を取りリシャールの言葉を不敵に笑いつつ否定し、ある言葉が気になり戦闘中であるにも関わらず敵であるリシャールに聞いた。
「何………今、言った通りの意味だよ。『レン・ヘイワーズ』」

「……………………………………で………呼………で。」
「?すまないがもう一度言ってくれないか?何を言っているかわからないよ。」
リシャールがレンに返したある言葉を聞き、レンは顔を下に向け小さな声で呟き、それが聞こえなかったリシャールはレンの様子がおかしいと思いつつ聞き返した。
「その名で呼ばないで!!!!!!瞬迅剣!!!」
レンは今まで誰にも見せたことがないような怒りの表情でリシャールの喉元に目がけて剣で突きのクラフトを放った
「くっ!?(なんだ、この殺気は!?それに今の攻撃は間違いなく急所を狙った攻撃……!これほどのことをたった14歳でできるのか……!なんという少女だ……!)」
リシャールはレンの膨大な殺気と自分を殺す気でいたレンに驚きながら、レンの激しい攻撃を次々と防いだ。
「レンは!あの人達とは!もう!無関係なの!飛燕の妖、身妖舞!飛燕の斬、殲綱斬!」
「レ、レン!?一体どうしたの……?」
「………もしかしたらレンにとって実の両親の姓は禁句だったのかもしれないね………」
今まで見たことがない怒りの表情でリシャールを攻撃しているレンを見てエステルはわけがわからず、ヨシュアは冷静に推理した。
「そんな………!実の両親をあれほど嫌うなんて……!エステルさん、レンちゃんには一体何があったんですか……?」
「ごめん……あたしもレンの過去についてはよくわかんないの……ヨシュアが父さんにお持ち帰りされるちょうど一年前かな?お母さんと父さんからあたしに妹ができるって言われてから数日ぐらいしてからレンがルーク兄に連れられてあたしの妹になったの……昔何があったか何回か聞いたけど、その度に笑って誤魔化されたわ……お母さんに聞いても悲しい顔をして
聞かない方がいいって言われたから、なんとなく聞いたらダメってわかったから、あの子が自分から話すまで待つって決めたからヨシュアが来てからはその話題を口にするのをやめたの……ヨシュアもみんなから言われたんじゃないの?」
「………うん。レンの容姿は兄さんを除いてエステル達と全然似てないから、父さんに聞いたけどレンの過去は『本人から話すまで何も聞くな』って真剣な表情で言われたから、今まで聞くのをやめたんだ。」
幼い頃両親を亡くしたクロ―ゼにとってレンの気持ちがわからず、エステルにレンの生い立ちを聞いたが、エステルは悲しそうな表情で首を横に振って答え、ヨシュアもレンの過去は全くわからないことに頷いた。
「……おい、ルーク。あのガキ……何者だ?剣の腕もそうだがあんな殺気、14のガキが出せるもんじゃねぇぜ?」
気絶から回復したアガットは唯一事情を知っていそうなルークに聞いた。
「………悪いがそれだけは言えない……どうしても知りたいならクルツかジンに聞いてくれ……」
「ハァ?なんであの2人があのガキの過去を知っているんだよ?」
アガットはレンとは年や出身も違い、唯一共通しているのはブレイサーの2人の名前を出され、それが理解できず聞き返した。
「悪いがこれ以上は俺からは言えない……それより、今はリシャール大佐との戦いに専念するぞ!(クソ………レンの奴、俺が自分がレプリカだと知った時のように完全に頭に血がのぼって防御や回避を無視した攻撃にうつっていやがる……このままでは隙を見せた瞬間、やられちまう……!)」
ルークはレンの無謀な攻撃を見て心配した。一方レンはルーク達の心配を知らず、ひたすらリシャールに向けて持てる技を出した。

「月閃光!爪竜連牙斬!邪霊一閃!消えなさい!!ハァァァァァッッ……!」
「させん!うおぉぉぉ~!(クッ……なんという強さだ……!これが遊撃士協会の次代を背負うと協会本部から期待されている腕か……!)」
リシャールはレンの剣技を必死に捌きながら、レンの隙を窺った。
「行くわよ……!目触りなのよ!レンの前から………消え失せなさい!奥義!真神!煉獄刹!!!」
クラフトーー八葉滅殺の最後の一撃を始動技にしたレンは最高の威力を持つSクラフトをリシャールに向けて放った。リシャールは必死で攻撃を捌いたり回避したりしたが、徐々にかすり傷が出来始めて来た。
(このままでは……!クッ……!隙が見当たらん!どうする……!)
「とどめよ!」
リシャールは徐々に出来ていく傷にあせりながらレンの隙を窺った時、レンが大ぶりで剣ごと突撃の構えをした。
「(見えた!)見切れはしまい………斬!」
リシャールは一瞬でレンの横で抜刀し駆け抜けた。
「え………そんな……!」
いつのまにか自分の後ろにいるリシャールを見てレンは驚き、そして信じられない顔で倒れた。
「レン!?」
倒れたレンに驚いたエステルは倒れて呻いているレンに駆け寄り、レンの脇腹から血が流れていることに気付き焦った。
「痛いのは……いや………お兄様……エステル……助けて………」
「レン、しっかりして!あたしはここにいるよ!」
うわ言で自分の名を呼んでいるレンの手を握り、エステルはレンに呼びかけた。
「エステル!一端レンを連れて下がれ!」
「う、うん!」
ルークの指示にエステルは従い、レンをおぶってクロ―ゼのところまで下がりクローゼに治療を頼んだ。
「レンのことをお願い、クロ―ゼ!」
「わかりました!」
そしてエステルはリシャール達と戦っているルーク達のところに行こうとしたが、レンがエステルの手を掴んだ。
「レン?」
「嫌……レンを置いていかないで……もう……一人ぼっちに……なるのは…嫌………」
「レン………」
自分の手を強く握って涙を流しそうな表情をしているレンを見たエステルは、レンの手をふりほどけず大切な妹を抱きしめた。
「大丈夫……あたしはここにいるよ……レンが泣き止むまでこうして抱きしめてあげるから……」
「あ……お姉……ちゃん………」
抱きしめられたレンはエステルにしがみつき、滅多に言わない言葉を言った。
「ふふ、久しぶりに聞いたわね、その言葉……クロ―ゼ、今の内にお願い。」
「はい。……大いなる癒しの水よ、かの者の傷を癒せ………ティアラル!!」
クロ―ゼの最高回復アーツが発動し、レンの傷を全て治した。
「レンちゃん、大丈夫ですか?」
「ありがとうお姫様……エステルも我儘いってごめんね……」
「別にいいわよ。それにレンから久しぶりに『お姉ちゃん』て言われて甘えられたのは嬉しかったわよ?」
「う………そのことは忘れてよ!……恥ずかしいんだから……」
レンは顔を赤くして、恥ずかしそうにしながらエステルを咎めた。
「はいはい、その内忘れてあげるわ。それより、今は大佐を止めるのが先決よ!」
「そうね。レンだってやられっぱなしで黙っていられないわ。……それにさっきの大佐さんとの戦いで新しい技を思いついたわ。今、それに賭けてみるわ!2人とも耳を貸して。」
そしてレンはエステルとクロ―ゼに自分が考えた作戦を伝えた。

「了解!やってみますか。」
「お姫様、またジークに活躍してもらって悪いわね。」
「気にしないで下さい。では、行きましょう!」
3人は決意の表情で今もなお、3人がかりで戦っているリシャールを沈めるために戦いに参加し始めた。
「みんな、一端下がって!」
「「「!?」」」
エステルの後退宣言に驚いたルーク達だったが、エステル達の表情を見て何かあると思ってすぐにエステルの指示通り大きくバックステップしてリシャールから離れた。
「何をするつもりだ………?」
3人の猛攻を防いだリシャールはエステル達の意図がわからず呟いた。
「ジーク!」
「ピュイ!」
クロ―ゼに呼ばれたジークは主の意図を理解しリシャール目がけて突撃した。
「クッ!?」
ジークの突撃に驚いたリシャールは慌てて回避した。回避し終わったリシャールはレンの構えを見て驚いた。
「バカな……それは抜刀の構え……!まずい……!」
リシャールはレンの構えを見て慌てて、レンに技を撃たせないためにレン目がけて走って抜刀の構えをして攻撃しようとしたが
「散りなさい!葬刃!!」
「グッ!?」
剣を一度鞘に戻して抜刀の構えをしてレンが放った居合斬りは見えない刃となり、リシャールの手を襲い、利き腕をやられたリシャールは思わず刀の柄から手を放し呻いた。
「時よ、かの者にさらなる加護を………クロックアップ改!」
そしていつの間にか詠唱していたクロ―ゼの援護アーツが発動しレンにかかった。援護アーツが自分にかかると同時にレンは自らの身体能力を高めるクラフトーー麒麟功を使って、再び剣を鞘に戻して小剣だけを構えながらリシャール目がけて地面を蹴った。
「これで、決める!」
レンは小剣のみでリシャールに何度も攻撃し、空高く舞い上がり、飛んだ時に小剣を戻し剣を鞘から抜き両手で剣を持ち、剣全体に闘気を流し込み落下速度を利用した重い一撃をリシャール目がけて放った。
「天を貫き、断ち斬る!極光! 天覇!神雷断!!」
「くっ………!」
上空からのレンの攻撃を後ろに下がってよけようとしたリシャールだったが、避けきれず正面から袈裟斬りに斬られ中に着込んでいた鎧が、強烈な攻撃で破壊されその衝撃で呻いた。
「みんな、今よ!」
レンの声を号令に全員がリシャール目がけてクラフトやアーツを放った。
「……水流よ、吹きあがれ!……ブルーインパクト!」
「うお……!」
クロ―ゼが放ったアーツはリシャールの足元から水流が吹きあがり、それを受けたリシャールは空中へ投げ出され
「これで終わりだ……はっ!」
「うっ……!」
ヨシュアの放ったSクラフトーー漆黒の牙はリシャールの背中を斬り、リシャールは斬られた痛みに顔をしかめているところを
「落ちろっ!!紅蓮襲撃!」
「ガハッ……!」
ルークの強烈な蹴りのクラフトを腹に受けたリシャールは空中から叩き落とされたところを
「そこだぁっ!ドラグナーエッジ!!」
「うおっ……グッ!?」
アガットのクラフトで壁まで吹っ飛ばされて、クラフトを受けた痛みや壁にぶつかった衝撃に呻いているところをエステルが自分の持つ最大の威力を持つクラフトを放った。
「これで決めるっ!桜花!無双撃!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」
「これまでか…………」
エステルのSクラフトを全て受けてしまったリシャールはついに膝をおり、立ち上がれなくなった…………






後書き レン、またまたクラフト習得してしまいました……!いつのまにかレンのクラフトの数がとんでもないことに……!前からグレイセス技をレンに使わせたかったので習得してしまいました……本音を言えばこれでも厳選したぐらいです。アスベル第二、三秘奥義やほかの抜刀技も考えていましたから……もしかしたら、まだ増えるかもしれません……感想お待ちしております。



[22786] 第41話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/07 08:18
~封印区画・最下層・最深部~

リシャールが膝をおると同時に黒のオーブメントーー『ゴスペル』が妖しく光り出した。
「さすが、カシウス大佐の子供たち……。だが……一足遅かったようだ。」
リシャールは自分を破ったエステル達に称賛の言葉を送った後、目的は達することができたので不敵に笑った。
「しまった……!」
「くっ……!」
それを見たエステルとヨシュアは『ゴスペル』を止められなかったことに無念を感じると同時に、『ゴスペル』が出す妖しい光にうかつに近づけなかった。
「チィッ、こいつは……!」
「これはダルモア市長邸の時の……!」
「まさか……ツァイスの時のあの現象が起こるの!?」
『ゴスペル』のことを知っていたアガットやクロ―ゼ、レンは『ゴスペル』が妖しく光り出したことに何が起こるか不安を感じた。
「なんだ……?一体何が起こるんだ!?」
唯一事情がわからなかったルークはエステル達がなぜ、そんなに慌てているのか理解できず何が起こったのかわからず焦った。そして地震が起こり、『ゴスペル』が妖しい光を周囲にまき散らすと遺跡内の照明がどんどん消えて行った。

『ゴスペル』の妖しい光は広範囲にわたって影響を与えた。
~封印区画・第3層空中回廊~
「しまった!『導力停止現象』か!」
遺跡内の異常にいち早く気付いた博士は思わず叫んだ。


~封印区画・最下層・最深部~
そして地震が終わると同時に『ゴスペル』も役目を果たしたかのように見え、妖しい光を出さなくなった。
「な、何だったの、今の……」
「導力停止現象なんだろうけど、今までのものとは違っていた……。まるで、何かが解放されたような……」
エステルの呟きにヨシュアは答えたが、実際に何があったかよくわからず困惑気味で答えた。そして突如部屋の床が光りに謎の装置に金色の光が宿ると同時に謎の声が響き渡った。
「……警告します……。全要員に警告します……」
「な………誰だ!?どこにいる!?」
聞いたこともない謎の声にルークは戸惑い叫んだ。
「お兄様!あの装置がしゃべっているんだわ!?」
「んな!どういう仕組みだよ……(おいおい……ディストでもあんなの作れねえんじゃねぇか……?こっちの古代文明ってやつは下手したらオールドラントの技術より上だったんじゃねえのか……!?)」
レンに指差されてルーク達は謎の装置を見た。そして装置は淡々と今の状況を伝え続けた。
「『オーリオール』封印機構における第一結界の消滅を確認しました。封印区画・最深部において『ゴスペル』が使用されたものと推測……。『デバイスタワー』の起動を確認……」
そしてエステル達の周りに建っていた4本の柱が地面へと収納されて行った。
「な、なによこれ!?一体何が起こるの!?」
「落ち着け、エステル!何があってもいいように警戒だけはしろ!」
慌てているエステルにルークは冷静になるように言った。
「第一結界……『オーリオール』封印機構……。大佐、これはいったい!?」
「わ……わからない……。このような事態になるとは想定していなかった……」
唯一事情を知っていそうなリシャールにヨシュアは尋ねたが、リシャールも何が起こったかわからず戸惑いの表情を見せて答えた。そして装置はさらに伝え続けた。
「第一結界の消滅により、『環』からの干渉波、微量ながら発生……。『環の守護者』の封印解除を確認……。全要員は、可及的速やかに封印区画から撤退してください……」
機械的な声の警告がなくなると、ルーク達の横にあった壁がなくなり、大きな空洞が出来た。そして空洞の奥から小さな赤い光がいくつか出て、リシャール達が連れていた人形兵器とは核が違う超大型の人形兵器と周囲を浮遊している人形兵器が現れた。
「な、なに、このブサイクなの……」
「全くよ、センスないわね……誰が設計したのよ……」
新たな人形兵器を見たエステルとレンは非常時であるにも関わらず、人形兵器の形状を見て辛辣な言葉を放った。
「気をぬかないで!こいつが『環の守護者』だ!」
ヨシュアは気を抜いているように見える2人に警告をした。
「おいおい……こんなのと戦えっていうのかよ!?」
アガットは見た事のない新たな敵に驚き
「これほどの人形兵器が地上に解放されたら、とんでもないことになります!今、ここで私達がなんとしても停止させましょう!!」
「ああ……!でも、見た目に惑わされるな!こいつら……今まで戦ってきたやつらとは核が違う!」
クロ―ゼは目の前の人形兵器が地上にあがれば、どれほどの惨劇が起こるか予想してしまい、なんとしても止める決意を言って、ルークはそれに頷いた後、全員に今まで戦ってきた人形兵器とは強さが違いすぎることを警告した。
「ゲート固定……導力供給完了……再起動確認……MODE:索敵行動……座標確認……『環の守護者』トロイメライ……索敵行動開始……」
未知なる存在、『環の守護者』がルーク達に襲いかかりルーク達は最初は苦戦したが、相手の攻撃は単調であったので戦いのセンスがいいルーク達は相手の攻撃を何度か見て、慣れてくると攻撃の予測などできたので、隙を見つけて全員が集中攻撃を行った。メンバー全員でSクラフトや強力なアーツをトロイメライに命中させたのだが敵は倒れなかった。
「な、なんで倒れないの!?」
普通なら倒れているはずの攻撃を与えたつもりなのに全然弱っている様子を見せない、トロイメライを見てエステルは焦った。、
「まだ、何かするつもりだ!」
ヨシュアはトロイメライの様子がおかしいことにいち早く気付き、仲間達に警告した。そしてトロイメライは取り巻きの浮遊していた人形兵器を自らの手と合体させ、さらに足や手も伸び、頭の部分も変形して姿も戦闘向けに見える姿になった。
「MODE:完全殲滅(ジェノサイド)……『環の守護者』トロイメライ……これより殲滅行動を開始する……」
トロイメライは変形した後、ルーク達に襲いかかった。後にクーデター事件と呼ばれる真の最終決戦がついに始まった……!




後書き いつまでもFCで引っ張るわけにもいかないので、最初のトロイメライ戦は略しました。感想お待ちしております。



[22786] 第42話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/08 18:42
FCのラスボス戦、なんとか作れました……!疲れた……





~封印区画・最下層・最深部~
変形したトロイメライは今までの敵とはけた違いに強く、アーツの詠唱にも反応し全員に光の槍の雨を降らせアーツの詠唱をキャンセルさせ、さらに見た事のない小型の人形兵器まで呼び出してきたのだ。そしてアガットが短期決戦で決めるためにSクラフトを使ったのだが、なんとSクラフトを喰らったトロイメライは強力な反撃ーーデスレイジでアガットを一撃で戦闘不能にした。
「こんちくしょう……」
強力な反撃を受けてしまったアガットは悔しそうに呟きながら、倒れた。
「アガット!?」
エステルは体力自慢であったアガットが一撃でやられたことに驚き、アガットを回復させるために近寄ろうとしたが。
「目標補足……アースランス」
「キャッ!?」
トロイメライが呼びよせた人形兵器がアーツをエステルに向かって放ち、それに気付いたエステルは回避に専念した。
「エステルさん!私がアガットさんを回復しますので、しばらくの間時間稼ぎをお願いします!」
後方からの攻撃が主であるクローゼはアガットの回復に専念することを決め、アガットを回復させるまでの間敵にアーツの妨害をさせないよう時間稼ぎを頼んだ。
「わかったわ!ヨシュア!レン!ルーク兄!行くわよ!」
「ええ!レン達、ブライト兄妹の恐ろしさを古代の兵器に思いしらせてあげましょう!」
「ヨシュア!お前はエステルと雑魚の掃討を優先しろ!俺とレンはあのデカブツの相手をする!」
「了解!気を付けて!」
エステルの号令にレンはいつもの余裕の笑みで答え、ルークはアガットを戦場から外れたところに運んだ後適切な指示をヨシュアに言って、ヨシュアはルークの指示に頷いた。
「ああ、そっちもな!レン、行くぞ!」
「はい、お兄様!」
そして4人は2手に分かれて戦闘を再開した。エステルとヨシュアは旅の間ずっと組んで戦っていた連携で次々と小型の人形兵器を屠っていったが、大元のトロイメライが倒した瞬間にさらに応援を呼んで補充するのできりがなかった。
「エステル!そっちに現れたのがクローゼを攻撃しようとしている!僕はあそこに現れたやつを相手にするから、そっちは頼む!」
「了解!もう~!倒しても倒してもきりがないわ!一体何体呼ぶ気よ!?」
ヨシュアの指示にエステルは頷いた後、次々と現れる雑魚に嫌気がさして思わず叫んだ。一方ルークとレンはトロイメライを挟み撃ちにして攻撃した。
「双牙連斬!貫く閃光!翔破!裂光閃!荒ぶる連撃!天狼!滅牙!!」
「身妖舞!爪竜連牙斬!剣技!八葉滅殺!!ヤァァァァァァ……!!!」
2人は手数が多いクラフトで何度も攻撃したが、一向に怯む様子はなくルークとレンを認識したトロイメライは腹の部分と思われる場所から大砲のようなものを出して砲口をルーク達に向けた。
「ゲッ!」
「くっ!」
砲口が自分達に向けられたことに気付いたルークとレンは攻撃をやめ、回避行動にうつった。ルークとレンの咄嗟の判断は正しく、ルーク達のいたところに強力な連続銃撃が撃たれた。
「あっぶねぇ~……あのままあそこにいたら、蜂の巣になるところだったぜ……」
銃撃が終わり、ルーク達のいた床が穴だらけになっているのを見たルークは冷や汗をかいた。
「休んでいる暇はないわ、お兄様!また、砲口をレン達に向けたわ!」
トロイメライの次の行動に気付いたレンはルークに警告した。
「チッ……これじゃあ、うかつに近づけねぇぜ。回避するぞ、レン!」
「うん!」
ルークとレンは急いでその場から横に飛んで回避したが砲口を向けたままトロイメライは動かなかった。
「?なんだ……?ハッタリか?」
トロイメライが砲口を固定したまま動かないことに気付いたルークは敵の行動がわからず、頭に疑問符を浮かべた。だが、ルークの疑問はすぐに解けた。砲口にエネルギーらしきものをチャージしたトロイメライは固定していた方向に向かって、強力な爆撃を放った。爆撃は床を走り、壁にぶつかった後大きな爆音をたてた。そして爆撃の後の床ははがれ、壁は爆撃によって黒ずみ煙をたてていた。

「「……………!!」」
トロイメライのチャージ攻撃の威力に驚き、ルークとレンはこの守護者が地上に放たれた時のことを考え顔を青ざめさせた。
「各部冷却開始……」
合成音と思われる機械の声が響いた後、トロイメライは煙を出してその場で止まった。
「(冷却開始……要するに今の攻撃はあの人形兵器にとって負担をかけるものなのね……だとすると好機は今!)お兄様!」
レンはトロイメライの合成音から先ほどの攻撃が敵にとって負担をかけ、しばらく動けなくなると直感で思いルークに呼びかけ走り出した。
「ああ!」
レンの意図がわかったルークも走り、レンと共にそれぞれSクラフトを放った。
「行くわよ……!受けてみなさい!レンの突剣技!フェヒテン・アルザッ!!」
レンはトロイメライの砲口に連続突きのSクラフトを使って集中攻撃した。そしてレンの技が終わるとレンはその場から横に飛んでどき、ルークが危険な砲口を確実に破壊するために自分の奥の手である超振動を使った。
「やってやる!!ウォォォォォォォッ!これでも……喰らえっ!レイディアント・ハウル!!」
ルークの超振動はトロイメライの砲口を完全に破壊した。
「やった……!さすがお兄様!」
一番危険な砲口が破壊されたことにレンは一安心した。
「ああ、これで攻撃手段も限られてきたはずだ。………ん?また、何かする気だぞ?まさか、アガットに放ったアレか?」
「だとしたら目を向けられた瞬間、横に回避するだけよ。同じ技は受けないわ!」
ルークとレンは先ほどアガットに放たれた強力な攻撃に対処できるように身構えたが、ルーク達の予想は外れトロイメライは両手を広げると合体させていた浮遊兵器をルーク達やエステル達を大きく囲み、背中にエネルギーをチャージした後腕からエネルギーを浮遊兵器に送り、浮遊兵器はそのエネルギーを囲んでいる全体に放った。
「……ジェノサイド……」
放たれたエネルギーは大爆音を立て配下の人形兵器ごとルーク達に牙をむいた。
「がぁあーーーっ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「いやぁぁぁぁぁぁッ!」
「うわぁぁぁぁッ!!」
大技を受けたルーク達は叫び声を上げ、倒れた。
「く……そ……こん……なところで……倒れる……わけには……!」
ルークは呻き声を上げ、なんとか立ち上がろうとしたが体に力が入らず動けず、ほかの3人も苦悶の声を上げ動けなかった。そして大技を撃った反響かトロイメライはまた、煙を立て動かなくなり片方の腕が技の反動か、雷のアーツ系を受けたかのように痺れているように見えさらに煙を出した。それを見たクローゼはルーク達を回復する絶好のチャンスと思い、味方の傷を完全に癒す祈りのSクラフトを使った。
「みなさん、今助けます……!今だ…………光よ、その輝きで傷つきし翼達を癒せ……リヒトクライス!!」
クローゼの祈りによって重傷を負っていたルーク達の傷を完全に癒し、さらに光の幕がルーク達を覆った。
「体が動ける……!助かったぜ姫さん!」
「ありがとう、クローゼ!」
「助かったよ、クローゼ。」
「うふふ、一つ貸しができたわね。」
傷が治ったルーク達はそれぞれクローゼにお礼を言った。
「お役に立てたのなら幸いです……それより、みなさん!先ほどの攻撃をまたするようです……!」
クローゼはトロイメライの行動を見て、ルーク達に警告した。
「やば……!」
「チィィッ……!」
それを見たエステルと戦闘不能から復活したアガットは焦った。
「「大地の壁よ、我らを守る楯となれ!!……アースウォール!!」」
しかしその時、いつのまにかアーツの詠唱をしていたヨシュアとレンの絶対防壁のアーツが発動し、全員にかかった。
「これで、大丈夫ね!」
レンは全員に絶対防壁のアーツがかかるのを見て安心した。
「例の大技が終わればさらに、弱ると思います!大技が終わった瞬間が好機です!」
「よし……次で決める!みんな、用意はいいか!?」
ヨシュアの言葉にルークは頷き、全員に総攻撃ができるか確認した。
「「ええ!」」
「はい!」
「おおっ!」
ルークの号令にエステル、レン、クロ―ゼ、アガットは頷きそれぞれアーツの詠唱や強力なクラフトを放つ構えをした。ルーク達が総攻撃の構えをすると同時にトロイメライの大技がまた、発動した。
「……ジェノサイド……」
トロイメライによって放たれたエネルギーは先ほどと同じように大爆音をたて、そして今度は腹の部分が片手と同じ状態になった。
そして大技が終わると同時にルーク達の猛反撃が始まった。
「深淵なる時の扉、今開かれん!……ホワイトゲヘナ!!」
クロ―ゼの放った耐性や弱点にならない上位属性である時属性の強力なアーツが始動技となり、5人はそれぞれSクラフトを放った。
「これで決める……ハァァァァァァ!烈波!無双撃!!」
エステルは正面から何度も攻撃し
「行くよ……!ふん!はっ……はっ………隠技、断骨剣!!」
ヨシュアは次々と一瞬で敵の背後や横に移動して攻撃し
「行くぜっ!うおぉぉぉぉ!ダイナスト!ゲイル!!」
「行くわよ……!目触りなのよ!レンの前から………消え失せなさい!奥義!真神!煉獄刹!!!」
アガットとレンはエステルが攻撃をやめ、その場から横に飛んだ瞬間2人同時に強力なクラフトを放ち
「(来いッ……!よし、できた!)終わりだ……!荒れ狂え殺劇の舞!殺!劇!舞荒剣――!!」
そしてルークは4人が攻撃をしている間、ローレライから授けられた力で自分にとって最強の武器ーーローレライの鍵を具現化して、普段使っている愛剣を一端鞘に戻してローレライの鍵でSクラフトを放った。
大技を撃って防御が下がっている状態で6人の総攻撃を受けたトロイメライはついに音をたてて崩れた……!



後書き 次はお待ちかねの軌跡シリーズ恒例?のラスボスフルボッコシーンです。お楽しみに……感想お待ちしております。



[22786] 第43話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/10 00:10
みなさんお待ちかねの軌跡シリーズ恒例、ラスボスフルボッコタイムです!





~封印区画・最下層・最深部~
「はあはあ……。な、何とか倒せた……?」
「う、うん……。動けなくはしたみたいだ……」
リシャールとの戦いを含め、3連戦で疲労したエステルとヨシュアはトロイメライが崩れて動かなくなるのを見て、安心し膝をついた。
「ぜえぜえ……久しぶりの連戦は体に応えるぜ………(長期戦の連戦なんて、師匠(せんせい)との決戦以来だからな……クソ、腕がなまっちまったか……?)」
「はあはあ……さすがのレンもこれ以上は無理よ………」
ルークとレンもエステル達のように息を切らせて、疲労のせいかその場で膝をついた。またアガットやクロ―ゼもエステルやルーク達と同じように地面に膝をついた。
「『環の守護者』か……。どうやら、そいつの目的は『輝く環(オーリオール)』を封印していたこの施設の破壊だったようだな……。そして、『輝く環』の封印と同時に扉の中で機能を停止したのか……。『輝く環』をめぐって古代人同士が対立していたのかあるいは……。しかし……肝心の『輝く環』はどこに……」
エステル達との戦いから回復して立ち上がったリシャールは崩れているトロイメライを見て呟いた。その時崩れていたはずのトロイメライの手が動き始めた。
「なんと……まだ動けるのか!?」
それに気付いたリシャールは驚愕の表情でトロイメライを見た。そしてリシャールの言葉通りトロイメライは立ち上がってエステルをめがけて腕を振りかぶった。
「ヨ、ヨシュア……!」
「エステルッ……!」

ヨシュアは疲弊した体で無理やり立ち上がり、エステルの壁になりトロイメライの攻撃をエステルの代わりに受けようとしたところ、トロイメライの腕が攻撃されトロイメライは攻撃を一端やめ、自分に攻撃をした敵ーーリシャール大佐に体を向けた。
「……させんっ!」
「え……」
「た、大佐……!?」
意外な人物の援護にエステルとヨシュアは驚いた。
「こいつは私が何とかする!早くここから逃げたまえ!」
「で、でも……!」
「君たちは今しがたこいつと死闘したばかりだ!私の方はもう動けるようになった!時間を稼ぐことくらいはできる!」
自らを犠牲にして自分達を逃がそうとするリシャールの言葉にエステルはすぐに頷けなかった。そしてリシャールは単独でトロイメライと戦い始めた。たった一人で無謀とも思われる戦いをリシャールは優勢に戦った。
「す、凄い……!」
「さすが、父さんの剣技を継いだだけはあるね……」
「あれが東方地方独特の剣技、『抜刀』……!」
「ああ、確かに強い……(下手したら師匠(せんせい)と互角に渡り合えるんじゃねえか………?)」
自分達が苦戦したトロイメライをたった一人で押しているリシャールを見て、エステルとヨシュア、ルークとレンは驚いた。
「何をしている!早く行け!!」
リシャールは自分の戦いを見て感心しているエステル達に早く逃げるように言った後、トロイメライに攻撃をし続けたが、敵の固い装甲への度重なる攻撃に刀が耐えきれず折れてしまいリシャールはそれに気付いて、無防備になってしまったところを敵の巨大な手に体ごと掴まれた。
「う、うおおおおおおっ!?」
「た、大佐!?」
「く……どうしたら!?」
リシャールの窮地にエステルとヨシュアは疲弊した自分達での助け方がわからず、焦った。
「い、いいから行きたまえ!君たちとの勝負に敗れた時……私の命運は……尽きていたのだ!」
「そ、そんな……」
(ちくしょう………俺はまた、助けられずはずの命を見捨てるのか!?)
自分の命を諦めているリシャールにエステルは悲痛な表情で呟き、ルークは悔しそうな表情をした。
「だから……気にすることはない……。私の計画は失敗に終わったが……。最期に君たちを助けられれば後悔だけは……せずにすむ……」
リシャールが自分が死ぬことに観念した時、入口から男性の声が聞こえて来た。

「やれやれ……。諦めなければ必ずや勝機は見える。そう教えたことを忘れたか?」
そして男性は一瞬でトロイメライに近づいて攻撃した。
「せいっ!」
男性の一撃はリシャールを掴んでいる腕ごと、棒による強烈な一撃でへし折った。
「え……!」
「まさか……!」
「父さん……!」
「パパ……!」
男性の姿ーーカシウスの姿を確認したエステル達は驚いて呟いていたが
「今だ!止めを刺せ!!」
カシウスの号令に今優先すべきことに気付き、全員は残る力全てを使って弱っているトロイメライに強力な集中攻撃をした。

「万物の根源たる七耀を司るエイドスよ………………その妙なる輝きを持って我らの脅威を退けたまえ…………光よ!我に集いて魔を討つ陣となれ………サンクタスノヴァ!」
クロ―ゼのエイドスへの祈りによって発動した裁きの光がトロイメライを包み込み、体全体に攻撃を与え
「これで終わりだっ!!らあぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!くらえっ!ファイナル……ブレイク!!」
重剣に闘気を流しこみ放ったアガットの重剣による衝撃波は地を走りトロイメライに当たると爆発し
「これで終わりだ……はっ!」
ヨシュアはSクラフトーー『漆黒の牙』で爆発によって焦げたトロイメライの頭部の部分を攻撃し
「これで決めるっ!桜花!無双撃!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」
エステルはヨシュアが攻撃を終わると同時にトロイメライにSクラフトを放った。エステルの強烈な連続攻撃と最後の一撃でトロイメライがよろけ始めた所
「ハァァァァァ………麒麟功!!」
「力がみなぎる……真・招来!!」
レンとルークは自らの身体能力を高めてそれぞれトロイメライを完全に破壊するためにエステル達と同じように切り札ーーSクラフトを放った。
「……絶対に逃がさない!全てを終わらせるこの一撃……!ハァ!レ・ラナンデス!!!」
死神が持つ鎌を振るうようにも見えるレンの強力な斬撃は敵の装甲の到るところにひびをはいらせたところを
「やってやるぜっ!『響け!集え!全てを滅する刃と化せッ!ロスト・フォン……ドライブ!!!』」
ローレライの鍵の力を使って、ルークだけが使える真の力ーー第二超振動が撃てることが可能なルークの最終奥義の攻撃が全て決まり、度重なる戦闘とエステル達による強力な攻撃を受けた古代の装甲も耐えられず、トロイメライの体中が爆発が連続で起こった後、トロイメライは腕や足が爆発によって破壊され完全にバラバラになった…………!



後書き 気付いていると思いますがあるキャラのSクラフトがなんでFCでできるの!?とかはつっこまないで下さい。このノリでFCで使える最強のアーツじゃ、見劣りしますし…………感想お待ちしております。



[22786] 第44話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/12 23:43
~封印区画・最下層・最深部~

「か、勝ったぁ~~っ……」
バラバラになって完全に沈黙したトロイメライを見てエステルは安心した。
「……みんな、ご苦労だったな。」
安心しているエステル達のところにカシウスが近付いてきた。
「ただいま。エステル、ヨシュア。ルーク、レン。ずいぶん久しぶりだな。」
「と、と、と……父さん!?」
今まで行方不明だったカシウスを見てエステルは驚いて叫んだ。
「まだまだ詰めは甘いが一応、修行の成果は出たようだな。今回は合格点をやろう。」
「ご、合格点じゃないわよ!なによ、父さん!なんでこんな所にいるの!?」
「なんでって言われても……まあ、成り行きってやつ?」
「ど、どんな成り行きよっ!」
エステルとカシウスの親子漫才が始まり、ヨシュアは相変わらずの様子に苦笑した。
「はは、父さんも相変わらず元気そうだね。」
「ほう、お前も少し背が伸びたみたいだな。どうだ、エステルのお守りは色々と大変だっただろう?」
「どーいう意味よ!?」
ヨシュアを労っているカシウスに自分の名前が持ち出され、エステルは父をムッとした表情でカシウスを睨んだ。
「まあ、それなりにね。でも、それと同じくらい僕もエステルに助けられたから。だからおあいこってところかな」
「そうか……。いい旅をしてきたみたいだな。」
ヨシュアを労ったカシウスは次にルークを労った。
「ルーク、すまなかったな。なれない事をして苦労しただろう?」
「はは……気にしなくていいよ。俺にとってもいい経験になったし。」
「そうか、これからも精進しろよ。」
「ああ。」
そして最後にエステル達のように自分を誉めてくれると期待した表情で自分に話しかけられるのを待っているレンに辛い表情で話しかけた後、謝った。
「…………レン、お前にも苦労をかけたな。……エルナンからレナを守るためにお前が経験してしまったことを聞いた。本当ならまだ遊び盛りの年頃のお前につらい思いをさせてすまない……」
「パパ………ううん、もういいの。遊撃士を続けていく以上、いつかは経験してしまうことがちょっと早まっただけよ。だから、気にしないでパパ。」
「そうか………また一つ大人に近づいたな、レン。」
レンの言葉にカシウスは少しの間目をつぶった後、レンの頭をなでた。
「うふふ、もう立派なレディーかしら?」
「ハッハッハ、レディーを名乗るにはまだまだ色気が足りないぞ?」
カシウスはレンのある部分を見て笑った。
「むぅ~……どこを見て言っているのよ……失礼ね……見てなさいよ、パパ!いつか完璧のレディーになって絶対に見返して上げるわ!」
カシウスの言葉にレンはいつかカシウスを見返すことを叫んだ。そして親子のやりとりが終わった後、アガットはカシウスを睨んで怒鳴った。
「こら、オッサン!今の今まで何を遊んでいやがった!?」
「おお、不良青年。博士から話は聞いたぞ。お前にしてはずいぶん頑張ったみたいだな。いやぁ、えらいえらい。」
「ガ、ガキ扱いするんじゃねえ!」
「冗談だ。特務兵の調査についても頑張ってくれたらしいな。娘たちも世話になったようだし感謝するぞ。」
「お、おう……」
カシウスからお礼を言われたアガットは戸惑いながら答えた。
「カシウスさん、お久しぶりですね。」
そして今まで黙っていたクロ―ゼがカシウスに話しかけた。
「おお、殿下……お久しぶりですな。エステルのやつは迷惑をかけなかったですか?」
「迷惑だなんて………エステルさんは私にとってかけがえのない友達です。カシウスさんが話していた通り、明るい方ですね。」
「ハッハッハ、そう誉めないで下さい。照れますよ。」
「な、和やかに会話している場合じゃないってば!まったく、帰ってくるなり見せ場をかっさらって……もしかして出てくる瞬間を狙っていたんじゃないでしょうね……?」
カシウスに見せ場をとられたと思ったエステルは、カシウスが見せ場の瞬間を狙って待っていたと思ってジト目でカシウスに睨んだ。

「やれやれ……。どうやら片づいたようじゃの。」
そして少しすると中継地点にいたラッセル博士達が来た。
「おや、博士。ずいぶん遅い到着ですな。」
「お前さんが先行した後、人形(マペット)の群れに囲まれてな。何とか撃退してからようやくたどり着いたが……。どうやら……全て片づいたみたいじゃな。」
博士は周りの状態を見て、安心して溜息をついた。
「ええ……。色々と課題は残ったがとりあえず一件落着でしょう。」
「で、でも……。情報部に操られた大部隊がお城に迫ってるんでしょ。女王様、大丈夫かな………?」
「確かに……。警備艇も来ていたみたいだし。父さんが来た時、地上の様子はどうだった?」
エステルとヨシュアは地上の様子が気になり、カシウスに聞いた。
「ああ。その事ならもう心配ないぞ。モルガン将軍に頼んで事態を収拾してもらっている。シードにも動いてもらったからじきに騒ぎは沈静化するだろう。」
「あ、あんですって~っ!?」
カシウスの手際のよさにエステルは驚き叫んだ。

「ふふ……なるほどな……。ここに来るまでに仕込みをしていたわけか……」
トロイメライの腕から脱出したリシャールは膝をついて自嘲気味に笑った。
「……目を覚ましたか。」
カシウスは気絶から覚めたリシャールに気付いてリシャールの方に体を向けた。
「モルガン将軍には厳重な監視をつけていた……。シードも家族を人質にとって逆らえないようにしていた……。どちらもあなたによって自由の身になったわけですか……」
「まあ、そんなところだ。だがな、リシャール。俺がしたのはその程度のことさ。別におれがいなくたって彼らは自分で何とかしたはずだ。」
「いや……違う。やはりあなたは英雄ですよ……。あなたが軍を去ってから私は……不安で仕方なかった……。今度、侵略を受けてしまったら勝てるとは思えなかったから……。だから……頼れる存在を他に探した。あなたさえ軍に残ってくれたら私もこんな事をしなかったものを……」
カシウスの言葉をリシャールは否定するように、顔を横にふって悲痛な表情で呟いた。
「………………………………」
リシャールの呟きを聞いたカシウスはリシャールに近づき、拳で思いきり殴り倒した。

バキッ!!

「ぐっ……!」
殴られたリシャールは倒れたまま、殴られた部分の痛みに呻いた。
「甘ったれるな、リシャール!貴様の間違いは、いつまでも俺という幻想から解き放たれなかったことだ!それほどの才能を持ちながら、なぜ自分の足で立たなかった!?俺はお前がいたから安心して軍を辞めることができたのだぞ!?」
「た、大佐……」
カシウスの言葉にリシャールは驚いてカシウスを見た。
「俺は……そんなに大層な男じゃない。10年前も、将軍やお前たちが助けてくれたから勝つことができた。そして、肝心な時に大切なものを自分で守れず人任せにしてしまい、二度とその過ちをしないために現実から逃げてしまった男にすぎん。」
「……父さん……」
エステルはもし、あの時ルークがいなかったら母がどうなったかを考え悲しげな表情をした。そしてカシウスは決意の表情で話を続けた。
「だがな……もう二度と逃げるつもりはない。だから、リシャール。お前もこれ以上逃げるのはよせ。罪を償いながら、自分に何が足りなかったのかを考えるがいい。」

こうして、情報部によるクーデター計画は幕を閉じた。モルガン将軍とシード少佐によって王国軍部隊の混乱は収拾され……計画に荷担していた情報部の人間は各地で次々と逮捕されていった。そして数日後………



後書き 現在、FC編ラストの話をストックして書いています。なのでいつもより時間がかかると思いますが、できましたら連日更新をしたいと思っていますのでお待ち下さい。……感想お待ちしております。



[22786] 第45話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/18 17:31
今日から数日間、久しぶりの連日更新になります!





クーデター事件が終結し、クーデター事件の影響で中止かとも囁かれていた女王生誕祭が無事開催された。王都は生誕祭でいつも以上に賑やかになり、グランセル城の前には大勢の人々がアリシア女王の姿を見ようと駆けつけ、空中庭園から姿を現した女王の姿を見て歓声をあげた。


~遊撃士協会・グランセル支部~

ルークやクルツを含む、多くの遊撃士達に見守られエステルとヨシュアはエルナンから最後の推薦状をもらおうとしていた。
「―――エステル・ブライト。並びにヨシュア・ブライト。今回の働きにより、グランセル支部は正遊撃士資格の推薦状を送ります。どうぞ、受け取ってください。」
「「はい!」」
そしてエステルとヨシュアは念願のグランセル支部の正遊撃士への推薦状をエルナンから受け取った。
「これで、5つの地方支部での推薦状が揃ったわけですね。それではカシウスさん。よろしくお願いします。」
「うむ。」
エルナンが下がり、いつもの余裕のある表情とは違い、真剣な表情をしたカシウスが進み出た。
「エステル・ブライト。並びにヨシュア・ブライト。これより、協会規約に基づき両名に正遊撃士の資格を与える。各地方支部での推薦状を提出せよ。」
「は、はい……」
「どうぞ、ご確認ください。」
厳かな雰囲気を出すカシウスにエステルとヨシュアは緊張しながら、今まで貰った5枚の推薦状をカシウスに渡した。
「ロレント支部、ボース支部、ルーアン支部、ツァイス支部、そしてグランセル支部……。5支部全てのサインを確認した。最終ランク、準遊撃士1級。ここまで行くとは思わなかった。正直、驚かされたぞ。女神(エイドス)と遊撃士紋章において、ここに両名を正遊撃士に任命する。両者、エンブレムを受け取るがいい。」
「「はい!」」
「おめでと、エステル、ヨシュア!」
エステルとヨシュアが正遊撃士の紋章を受け取るとシェラザードは2人を祝福し
「はは、新しいエンブレム、なかなか似合ってるじゃないか。」
ジンもエステル達をほめて
「まあ、今回ばかりはよくやったと誉めてやるよ。」
アガットも珍しくエステル達を誉めた。
「うふふ、最年少で正遊撃士の資格をとるなんてやるじゃない♪2人ともさすがね♪レンも負けていられないわ!」
レンも拍手をしながらエステル達を祝福し
「おめでとう2人とも。これからは同僚だな!」
ルークも2人が正遊撃士になったことを心から喜んだ。
「えへへ……みんな、ありがと!」
「ここまで来れたのも……皆さんが支えてくれたおかげです。」
仲間達からの祝福の言葉にエステルは照れながら、ヨシュアは姿勢を正して笑顔でお礼を言った。
「遊撃士としてのキャリアはここからが本番だ。そのことを忘れないようにな。」
「うん……わかってる。」
「一層、精進するつもりです。」
カシウスの言葉に2人は頷いた。

「さて、めでたい話の後で非常に申しわけないのですが……。ここで皆さんに、ひとつ残念な事をお知らせしなくてはなりません。」
「残念な知らせ……?」
エルナンの言葉が理解できずクルツは首をかしげて呟いた。
「本日を持ちまして、カシウス・ブライトさんが遊撃士協会から脱会します。しばらくの間、王国軍に現役復帰するとのことです。」
「なっ……!」
エルナンの言葉にカルナは声をあげて驚き
「ほ、本当ですか!?」
グラッツも信じられない顔をした。また、そのことを知らされていなかったクルツとアネラスも驚いた。
「長らく留守にした上に突然、こんな事を言い出して本当にすまないと思っている。だが、クーデター事件の混乱はいまだ収拾しきれていない。情報部によって目茶苦茶にされた軍の指揮系統も立て直す必要がある。その手伝いをするつもりなんだ。」
「あ、そうか……。軍人は遊撃士になれないから……。そういえば、先輩たちはこのことを知っていたみたいですね。」
カシウスが遊撃士をやめることに驚いていないシェラザードやルーク達にアネラスは尋ねた。
「ええ、相談を受けたからね。正直心細いけど……いつまでも先生に頼ってばっかりじゃあたしたちも一人前になれないし。」
「ああ。これからは俺達だけでもなんとかできることを父さんに証明してやろうぜ。」
「そうか……そうだな……」
シェラザードとルークの頼もしい言葉にクルツは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「しかし、いつまでたっても忙しさから解放されないねぇ。」
「まあ、こうして新たな正遊撃士が2人誕生したんだ。せいぜい俺の代わりにコキ使ってやるといいだろう。」
「あのね……」
「はは、これからはもっと忙しくなりそうだね。」
カルナの愚痴にカシウスはエステル達を自分の身代りにすると言い、それを聞いたエステルはジト目でカシウスを睨み
ヨシュアは苦笑した。

その後、カシウスを加えたルーク達は城への道に歩きながらクーデター事件の事後などを話していた。
「まったく父さんってば……。生誕祭くらい、王都見物に付き合ってくれたらいいのに……」
「エステルの言う通りよ。仕事で忙しいパパはこういう時に家族サービスをするべきよ。」
カシウスがせっかくのお祭りにつきあってくれないことに少女達は不満を父親に言った。
「すまんが、さっそく軍議があってな。リシャールこそ逮捕されたが、いまだ逃亡中の特務兵も多い。カノーネ大尉も、あの地下遺跡でいつの間にか姿をくらませていた。さらに、大会に参加した空賊団も混乱にまぎれて逃亡したらしい。生誕祭の途中で騒ぎが起こらないよう警備を強化しなくてはならんのさ。」
「あのオバさん、また復活して逃げたんだ………あの時、止めをさして逃げられないようにしとくべきだったわ。」
カノーネの逃亡を知ったレンは嫌そうな顔をして物騒なことを呟いた。

「ホントよね……。まったく、揃いも揃ってしぶとい連中ねぇ」
「たしかに、どちらも諦めが悪そうな感じはするね。」
「そうだな。(漆黒の翼といい、なんで盗賊団ってやつはこう、しぶといんだろうな………)」
エステルはカノーネや空賊団の性格等を思い出し、ためいきを吐いて呟き、ヨシュアとルークも同意するように軽く頷いた。

「ま、今はいいじゃない!せっかくあたしとヨシュアは正遊撃士に。レンは正式な準遊撃士の任命と1級に昇格したんだから悪いことばかりじゃないじゃない!」
「うふふ、そうね♪」
雰囲気を変えるためにエステルは話をかえ、それを聞いたレンも笑顔になって懐から先ほどエルナンから貰った手帳を出し胸をはった。
「それにしても驚いたよね………協会本部が規律を曲げてまで14歳のレンを正式な準遊撃士に認めたことは。」
ヨシュアもレンのことに驚きを隠せれなかった。実はエステル達の正遊撃士の任命式の後、続けてレンの正式な準遊撃士の任命式があり、また、任命の際これまでの功績によって1級に昇格したのだ。
「ああ。それにしてもなんでこのタイミングなんだ?仮扱いにするのだってわりともめたってエルナンから聞いたぜ?
任命するにしても支部から推薦状を貰えるようになった時とか機会はかなりあったんだけどな………?」
ルークは今ごろになってレンを正式な準遊撃士として認めた本部の真意がわからず、首を捻って呟いた。

「………まあ、向こうの考えもわからなくはないんだがな……」
「え、父さんは知っているの?」
苦い表情で呟いているカシウスを見てエステルはカシウスなら理由を知っていると思い、聞いた。
「ああ。………実は帝国であったある事件の影響で、遊撃士の数がかなり減ってしまったんだ………だから、優秀な戦力の確保の一つとしてレンを認めたんだろう。元々規定年齢にも達していないお前の活躍は逐一本部に報告をされていたしな……それに前からレンのことは話し合われてたからな………今回の件が決定打となって本部もレンの任命に踏み切ったんだろう。それに例の帝国の件でレンを筆頭に各地の支部で研修中の者達も最後の試験はなしにして急遽、ブレイサーに任命されたしな。」
「ふ~ん………数合わせのためにレンを認めたのはちょっと気にいらないけど、そのおかげでレンは準遊撃士になれたから気にしないことにするわ。」
カシウスの言葉にレンは顔を少し顰めたが、気を取り直した。
「まあ、確かに気にいらない話かもしれないが、いいこともあるぞ?それは任命式の後にあったエルナンからの個別の話で聞いただろ?」
「うふふ、そうね♪」
「え、何を言われたの??」
カシウスとレンのやり取りがわからなかったエステルは2人に聞いた。

「うふふ、驚かないでよ?あの後、エルナンさんからレンが16歳になった時、正遊撃士への昇格が決定されたことを知らされたの♪しかも最初からE級で始まるそうよ♪」
「あ、あんですって~!!??」
「おいおい、マジかよ……!正遊撃士昇格はわかるけど、最初からE級かよ!?やったじゃねえか、レン!」
事情を知ったエステルは驚き、思わず大きな声で叫んだ。また、ルークも驚きを隠せず呟いた後、レンを誉めた。
「うふふ、それほどでもないわ♪」
敬愛する義兄から誉められ気分が良くなったレンは、まるっきり嘘にしか見えない表情で謙虚の言葉を言った。
「エルナンからも聞かされたと思うが、お前の今後の活躍次第によってはさらに昇格の可能性もあるそうだから、今回の件のことで浮かれずしっかり仕事に励めよ?」
「うん、パパ!」
レンは笑顔でカシウスの言葉に頷いた。

「むう~………あたし達はG級からなのに、なんでレンだけE級からなのかしら……?」
「それだけ協会はレンに期待しているんだろうね。でも、その分レンは僕達以上の努力が必要だろうから贔屓されているわけではないよ。」
「言われてみれば確かにそうね…………いつも余裕そうに見えるレンだけど、ギルドに自分のことを認めさせるためにあたし達の数倍は努力しているんだろうな……」
レンの正遊撃士への昇格の詳しい話を聞いてエステルは頬を膨らませてレンを羨ましがったが、ヨシュアに諭された後、自分達以上に陰ながら努力をしているレンを感心した。

実はこの話にはリベールの受付代表であるエルナンすらも知らされていない事情が本部にあった。それは減ってしまった極僅かなS級ブレイサーの代わりを見つけることだった。そしてその候補の一人として最年少で正遊撃士クラスの活躍をしているレンがあがったのだ。また、短期間でA級に昇格したルークやカシウスの弟弟子であり、元クロスベル警察で「最強」と言われていた部署の人物、『風の剣聖』――アリオス・マクレインも候補にあがっていた。

特にレンは脱会してしまったカシウスと同じ候補のルークの剣技を受け継ぎ、さらに2人の家族であること、そして14才という若さであるのでこれからも成長していく可能性に協会は期待しているので候補にあがったのだ。

カシウスは本部の裏の事情に気付いていたが、S級になるのは国や大陸規模で起きるようなよっぽどの事件を解決しない限りなれず、また相当の実力がいるので候補にあげられている家族がS級の候補という重責で潰されるかもしれないと思って言わなかった。

その後5人は黒のオーブメントやカノーネと同じく姿を消したロランス少尉のことについて話のしていたらいつのまにか城門の前につき、城に入って行くカシウスと一端別れ生誕祭を楽しむために4人は王都に出かけた………




後書き 宣言通り、ラストまでのストックができました!なので前書きにも書きましたが今日からストックがなくなるまで連日更新をしていきますのでお楽しみに!いや~それにしても22日までに間に合ってよかった………「闇夜の英雄達」を読んでいる方でしたら知っていると思いますが、22日に発売するあるゲームが発売すればこっちを書く暇などありませんから。……感想お待ちしております。



[22786] 第46話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/19 08:13
~王都グランセル・ギルドの入口前~

「さて………今日は仕事もないようだし、どこを回ろうか?今日は3人の昇格祝いに特別に何でも奢ってやるぜ。」
ギルドで仕事がないことを確認したルークはあちこちに目を向けているエステル達を祝ってあげるために何か奢ることを言った。
「本当!?う~ん……何を奢ってもらおうかな……?あそこにあるアイスクリームもほしいし、あそこのお菓子なんかもいいわね……」
奢るという言葉に反応したエステルは周りの店を見て悩んでいた。それを見ていたレンは溜息をついた後、ルークの服を引っ張った。
「(ハァ………しょうがないわね……)お兄様、エステル達は2人で回る約束をしているようだから、2人に奢るのは後にして先にレンに何か奢って。」
「へ……?そうなのか、2人とも?」
レンの提案にルークは戸惑い2人に聞いた。
「えっと………僕はそんな約束知らないけど、そうなの?エステル?」
「へ……あたしも知ら……!どうしたの、レン?」
ヨシュアに話をふられたエステルは自分も知らないと言おうとしたがレンに服を引っ張られ、先にレンに聞いた。

「エステル………耳を貸して。」
「へ……なんで?」
「いいから!」
「う、うん。」
レンの強い口調に圧されてエステルはレンに耳を貸せるようにその場でしゃがんだ。
(ヨシュアに告白するのなら、今がチャンスよ。)
(!!な、なんでそれを……!)
レンに耳打ちをされたエステルは顔を赤くして驚きの表情でレンに小さな声で言葉を返した。
(うふふ、あれだけヨシュアに対して露骨な反応をしていたらわかるに決まっているじゃない♪)
(う……あたしってそんなにわかりやすかった……?)
(何年、エステルの妹をやっていると思っているの……雰囲気がいつも以上に親しく見えたわよ?レンがヨシュアと2人っきりにしてあげるからちゃんと告白はしなさいよ、お・ね・え・ちゃ・ん?)
(う、うん………)
レンの言葉に頷いたエステルは立ち上がって、レンの提案を口実にヨシュアと2人で廻ることを自分を訝しげな目で見ているルークとヨシュアに言った。

「そ、そうだ!今思い出したわ~!生誕祭の時、ヨシュアと今までお世話になった人達に挨拶回りをする予定だったわ~!うっかり、忘れていたわ。レンのお陰で思い出したわ!という訳で、ごめん!ルーク兄!明日にでもいいから、あたし達の祝いは後にして!」
「お、おう。俺は別にいいが、ヨシュアはどうだ?」
おかしな様子のエステルの気迫に圧されたルークは思わず頷いた後、ヨシュアに確認をした。
「うん………確かにエステルの提案はいいと思うから、これから僕もエステルといっしょに挨拶回りをするよ。せっかくの誘いを断ってごめんね、兄さん。」
「ハハ……気にする必要はないぜ。その代り、みんなにちゃんとお礼を言ってこいよ?これからも、お世話になるんだからな。」
「うん。」
ルークの言葉にヨシュアは頷いた。そしてタイミングを見計らってレンがエステルとヨシュアを2人っきりにするためにお邪魔虫な自分達がエステル達から離れるためにルークを急かした。
「お兄様、早く行こう!レンの買ってほしいもの、いっぱいあるもの!」
「わかったわかった……まあ、ほどほどにしてくれよ?エステル達の分もあるしな。」
「はーい。レン、いい子だからお兄様を困らせるぐらい買わないから安心してね。」
そしてルークはレンに急かされて、人混みの中へ消えて行った。それを見送ったエステルとヨシュアは2人で今までお世話になった先輩遊撃士や友達、ラッセル一家にお礼の挨拶回りをした後、休憩するために東街区の休憩所に向かった。


~王都グランセル 東街区~
「さてと、休憩所に着いたね。色々回ったから、そろそろ休憩にしようか?」
「うん、そうしよっか。」
2人は傍にあったベンチに座り、一息ついた。
「しばらくここで休もうか。とりあえず、王都で騒ぎが起きそうな気配はなかったね。」
「ハァ……あっきれた。そんな心配してたんだ。今日くらい、事件の後始末は父さんたちに任せとけばいーのよ。遅れて来たんだからそれくらい当然の義務だってば。」
せっかくの生誕祭を満喫せず、遊撃士として周囲の警戒をしていたヨシュアにエステルは呆れて溜息を吐いた。

「はは、そうなんだけどね。何となく性分っていうか……」
「はあ、仕方ないわねぇ。それにしても……あたしたちも正遊撃士かぁ。」
相変わらずのヨシュアの性格にエステルは苦笑した後、ついに長年の夢だった正遊撃士になれたことに感慨にひたった。
「これからは支部の監督を受けずに自由に行動できるようになる。ただその分、責任も増えるんだけどね。」
「うん、でもまあ何とかやっていけるわよね。今回だって、クーデターは阻止することができたんだし。もう、父さんに『ヨシュアがいないと心配だ』なんて言わせないんだから!」
「はは……さすがにもう言わないと思うよ。でも僕は、これからも君と一緒にいたいと思ってるけどね。」
正遊撃士になって、もう一人前のつもりでいるエステルにヨシュアは苦笑しつつ、女性を自分に惚れさせるような殺し文句をさらりと言った。
「……え……。………………………………。ええええええええっ!?」
「あれ、迷惑だったかな?」
ヨシュアの言葉を聞いてエステルは一瞬呆けた後、顔を赤くして驚いて叫んだ。そしてエステルの叫びを聞いたヨシュアは以外そうな表情でエステルを見た。

「いや、迷惑っていうか……。一緒にいたいって……それって……どういう……?」
エステルは目線をヨシュアに合わせず、恥ずかしがりながらヨシュアに真意を聞いた。
「そりゃあ、気心は知れてるし、お互いのクセは判っているからね。このままコンビを組んだ方がいいと思ったんだけど……」
「あ……遊撃士の仕事のことか……。なーんだ、てっきりあたし、逆に告白されちゃったのかと……」
ヨシュアが考えていることは自分の考えていることと思い違いであることに気付いたエステルは、安心して言ってはいけないことを呟いてしまった。
「えっ……」
今度はエステルの呟きを聞いてしまったヨシュアが驚いた。
「わああああああっ!今のナシ!忘れてっ!」
自分の失言に気付いたエステルは大きな声を出して、先ほどの言葉を取り消すようヨシュアに言った。
「エステル、それって……」
「し、しっかし今日はホントに暑いわよねっ!?暑いときにはアイスが一番!おごってあげるからちょっとここで待っててっ!」
ヨシュアの返事も聞かず、エステルは適当な言い訳をした後、何も考えずアイス売り場とは逆方向に走り去った。

「あ……。アイス売り場はそっちじゃないと思うんだけど……。………………………………。もしかして……エステル……。いや…………そんなわけないよな……」
ヨシュアは言っていることと違う方向に走り去ったエステルを見て呟いた後、エステルがさっき、自分に何を言おうとしたのかを考え、あることに思い当たったがすぐにその考えを打ち消した。そしてエステルと入れ替わるかのようにある人物がヨシュアに近づいて来た……


後書き 感想お待ちしております。



[22786] 第47話
Name: sorano◆b5becff5 ID:8bc17880
Date: 2011/04/20 09:02
~王都グランセル 東街区~

「いやぁ。若い人はうらやましいですね。」
ヨシュアに近づいてきた人物とは2人の旅で各地で出会った考古学者――アルバ教授だった。
「アルバ教授……」
「やあ、しばらくぶりですね。最近、色々と騒がしかったですが平和が戻って本当によかった。やはり人間、平穏無事に暮らすのが一番ですね。」
「………………………………」
和やかに話しかけてくるアルバにヨシュアは警戒の目を向けた。
「おや、どうしました?顔色が優れないようですが……。正遊撃士になれたのだから、もっと晴れやかな顔をしなくては。そうだ、私からもお祝いをさせて頂きましょうか。あまり高いものは贈れませんけど。」
アルバはそんなヨシュアの表情に気付き、その表情を解かすために祝いの言葉を言った。
「最初に会った時から……強烈な違和感がありました……。今では少し慣れましたけど……。あなたを見ていると何故か震えが止まらなかった……」
「ほう……?」
ヨシュアの言葉にアルバは何のことかわからず呟いた。

「そして……各地で起きた事件……記憶を消されてしまった人たち……。あなたは調査と称して……事件が起こった地方に必ずいた……。そう……タイミングが良すぎるほどに……」
「………………………………」
「決定的だったなのは……クルツさんの反応です……。記憶を奪われたクルツさん……。あの人も、アリーナの観客席で気分が悪そうにしていた……。そして……あなたも同じ場所にいた……」
「………………………………」
「アルバ教授……。あなた……だったんですね?」
アルバは自分に懸けられた疑いを晴らすこともなく、ヨシュアの話に耳を傾けていた。そしてヨシュアはベンチから離れ、アルバの正面に立って睨んだ。

「クク……。認識と記憶を操作されながらそこまで気付くとは大したものだ。さすが、私が造っただけはある。」
アルバは自分に懸けられた疑いに怒るどころか、逆にヨシュアに感心をした後、不気味な声で笑い謎の言葉を言った。
「……え…………」
ヨシュアはアルバの言っていることの意味がわからず、呆けた。
「では、暗示を解くとしようか。」

パチ!!

アルバは少し前に出て指を鳴らした。その時、ヨシュアの脳裏に封印されていたさまざまな記憶が蘇った。
「……………………あ…………。あなたは……。……あなたは……ッ!?」
アルバの正体を思い出したヨシュアは青褪めた表情で叫んだ。
「フフ、ようやく私のことを思い出したようだね。バラバラになった君の心を組み立て、直してあげたこの私を。虚ろな人形に魂を与えたこの私を。」
ヨシュアの表情を面白がるようにアルバは笑顔で信じられない言葉を放った。
「対象者の認識と記憶を歪めて操作する異能の力……!7人の『蛇の使徒(アンギス)』の1人!『白面』のワイスマン……!」
ヨシュアはその場から一歩下がって、アルバ教授を改めワイスマンを睨んでいつでも攻撃できるように双剣を構えた。
「はは……。久しぶりと言っておこうか。『執行者(レギオン)』No.XⅢ。『漆黒の牙』―――ヨシュア・アストレイ。」
自分に武器を向けているヨシュアを気にもせずワイスマンは醜悪な表情で、ヨシュアの真の名とかつての呼び名で久しぶりの再会を喜んだ。

「あ、あなたが……。あなたが今回の事件を背後から操っていたんだな!それじゃあ、あのロランス少尉はやっぱり……」
「お察しの通りだ。彼の記憶は消さないであげたからすぐに正体に気付いたようだね。はは、彼も喜んでいるだろう。」
ヨシュアの推理をワイスマンは口元に笑みを浮かべて肯定した。
「あ……あなたは……。………………………………。僕を……始末しに来たんですか……!!」
「ふふ……。そう身構えることはない。計画の第一段階も無事終了した。少々時間ができたので君に会いに来ただけなのだよ。」
ヨシュアはワイスマンが裏切り者の自分を始末しに来たと思って本人に聞いたが、ワイスマンは本来の性格が出た醜悪な表情で否定し話を続けた。
「第一段階……。あの地下遺跡の封印のことか……」
「『環』に至る道を塞ぐ『門』……。それをこじ開けることがすなわち、計画の第一段階でね。ふふ……もはや閉じることはありえない。」
ワイスマンは計画が順調に進んだことに気分をよくし、不気味な声で笑った。

「やはり……これで終わりじゃないのか……。『輝く環』とは一体何です!?『結社』は……あなたは何を企んでいるんだ!?」
「それを知りたければ『結社』に戻ってくればどうだい?君ならすぐに現役復帰できるだろう。少々カンは鈍っただろうがリハビリすればすぐに取り戻せるさ。」
「………………………………」
ワイスマンの言葉にヨシュアは無言で怒りの表情でワイスマンを睨み続けた。
「フフ、そんなに恐い顔をするものじゃないよ。わかっているさ。今の君には大切な家族がいる。尊敬できる父親、実の息子のように自分を愛し育ててくれた優しい母親、目標とすべき兄、さまざまな方面に天賦の才を持ちながらそれを鼻にかけることなく君を兄と慕う妹、そして……何よりも愛おしく大切な少女……。たとえ『彼』が、こちら側にいてもそれらを捨てるなど馬鹿げた話だ。」
「…………ッ…………」
ワイスマンからエステルやルーク達のことを出され、ヨシュアは顔を青褪めさせた。
「だから私は、君に会いに来た。『計画に協力してくれた』礼として真に『結社』から解放するために。……おめでとう、ヨシュア。君はもう『結社』から自由の身だ。この5年間、本当にご苦労だったね。」
「………………………………。………………え…………」
ワイスマンの労いの言葉にヨシュアは驚きの表情で呟いた。

「なんだ、つまらないな。もっと嬉しそうな顔をしてくれると思ったのだが……。ふむ、まだ感情の形成に不完全な所があるのかな?」
「僕が……計画に協力……。……はは……何を……馬鹿なことを言ってるんだ……?」
ワイスマンの呟きにヨシュアは誰にも見せた事のない暗い笑顔で呟いた。
「ああ、すまない。うっかり言い忘れていたよ。君の本当の役目は暗殺ではなく諜報だったのさ。」
ヨシュアの呟きにワイスマンはわざとらしい謝罪をした後、ヨシュアの役目を明かした。
「え……」
「『結社』に見捨てられた子供として同情を引き、見事保護されてくれた。そして定期的に、結社の連絡員に色々なことを報告してくれたんだ。遊撃士協会の動向と……カシウス・ブライトの情報をね。」
「!!!」
ワイスマンから自分の役目を聞いたヨシュアはさらに驚いた。

「無論、そんな事をしていたのは君自身も覚えていないだろう。私がそう暗示をかけたからね。」
「………………………………」
ヨシュアは絶望した表情で顔を下に向け、ワイスマンの話を聞き続けた。
「S級遊撃士、カシウス・ブライト。まさしく彼こそが今回の計画の最大の障害だった。彼に国内にいられては大佐のクーデターなどすぐに潰されてしまっただろうからね。彼の性格・行動パターンを分析して、悟られずに国外に誘導するために……。君の情報は本当に役に立ってくれた。」
「…………嘘……だ………………」
ヨシュアは頭を抱えてうずくまり現実を否定するかのようにうわ言を呟いた。
「だから……改めて礼を言おう。この5年間、本当にご苦労だった。」
そんなヨシュアにワイスマンは追い打ちをかけるかのように自分の計画の一部が成就したことに礼を言った。
「嘘だ、嘘だ!嘘だあああああああっ!……僕は……みんなと……エステルと過ごした…………僕のあの時間は…………」
ヨシュアは絶望した表情で叫んだ後、さらにうわ言を繰り返した。
「ふふ……何がそんなに哀しいのかな?素知らぬ顔で、大切な家族と幸せに暮らしていけばいいだろう?君が黙っていれば判らないことだ。」
「………………………………」
「しかしまあ……考えてみればそれも酷な話か。ブライト家の者達はどうも健全すぎるようだからね。君のような化物にとって少し眩しすぎたんじゃないかな?」
「…………ぁ………………」
ワイスマンの『化物』という言葉に反応してしまったヨシュアはある事に気付いた。

「君は、人らしく振る舞えるが、その在り方は普通の人とは違う。どんな時も目的合理的に考え、任務を遂行できる思考フレーム。単独で大部隊と渡り合えるよう限界まで強化された肉体と反射神経。私が造り上げた最高の人間兵器。それが君―――『漆黒の牙』だ。」
「………………………………」
「そんな君が、人と交わるなどしょせんは無理があったのだよ。この先、彼らと一緒にいても君が幸せになることはありえない。」
「………………………………」
「だから、辛くなったらいつでも戻ってくるといい。大いなる主が統べる魂の結社。我らが『身喰らう蛇(ウロボロス)』に……」
ヨシュアに絶望を与えたワイスマンは最後に言い残した後、その場から去って行った。

「………………………………。これが……罰か………………。……姉さん……レーヴェ……。…………僕は………………。………………………………………………僕は………………」
ワイスマンが去った後、ヨシュアは絶望した表情で何度もうわ言を呟き続けた…………

後書き 感想お待ちしております。


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