チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27287] インフィニット・ストラトス とべない少女(オリ主)
Name: 過敏◆d0d26ae3 ID:ec57abb8
Date: 2011/04/20 11:59
タイトルどおりのISSSです。
オリ主女性メインで、一応原作をたどるかもです。
少々ゆりゆりしい面もあるかもしれません。
内容がないかもしれませんが、個人的には楽しんで書いてます。
なので読んで楽しんでいただけたら幸いです。

勢いがあるうちに二話UPです。
のほほんさん以外の二人は、名前が分からないとか表現とか展開の都合上、存在はあります。出すかどうかはさだかではありませんが。



[27287] インフィニット・ストラトス とべない少女
Name: 過敏◆d0d26ae3 ID:ec57abb8
Date: 2011/04/20 04:16
 いったい何がどうしたらこうなるんだろうか?
 大小さまざまであるけれど、そう思うことは生きていれば避けることができない言葉だと私、天同院 君子(てんどういん くんし)は思っています。
 そもそもからして、自分の名前をもってそう思うのですから間違いはないでしょう。
 
 さて、なぜこのようなことを今考えているかと言えば、今まさしくどうしてこうなったのかと思考が頭の中を飛び交っているからです。
 ぴゅんぴゅんと矢のようにせわしなく。

 今私がいるのは、いわゆる研究所というものに近いもののようです。よく分からないのは、連れてこられる途中でそういう設備が目に入ったからです。
 目隠し等を強要されなかったということは、極秘ということはないのでしょうけど、いったい私に何の用があるというのでしょうか。真っ白な一室に通され、その中にあったテーブルと椅子。
 腰掛けるように促された椅子は、少々ごてごてしていましたが、とくに考えることなくい座って、かれこれ十分。
 未だに向かい側の椅子に誰かが座る気配はありません。
 幸いにも人はいます。黒い服を着てサングラスをつけた、いかつい体つきをした男性が二人、入り口付近にですので会話はまるでないのですけどね。

 といいますか、これって誘拐なんじゃないですかね?
 家でいつものようにごろごろしながら適当にパソコンをいじっていたら、突然その黒服の人たちがやってきて、問答無用で担がれて、車に乗せられ、あれよあれよという間だったのです。
 しかし誘拐だったとして、曲りなりにも大企業、天同院グループの屋敷に侵入して誘拐なんて考えられません。ということはこれは仕組まれたことなんでしょうか? 
 というか家に売られたんですかね?
 そうだったとしたら大変です。
 家のパソコンは付けっぱなしなので、私が通販で購入しようとしていたものがばれてしまいます。
 決していかがわしいものではないのですが、プライバシー的に見られたらまずいじゃないですか。
 あぁ、本当に、

 「どうしてこんなことになったんでしょう」
 「それはこっち台詞だよ」
 
 いつの間にか口から漏れていた愚痴は、いつの間にか入ってきた女性の文句のような返しとなって私にたたきつけられました。
 服装はなんと言うか、ドレスのようなそうでないような、胸元を強調するような作りをしています。凄く目のやり場に困らない女性ですね。
 
 「私としても、これから楽しい楽しい実験だったのに、こーんなどこの馬の骨ともしれない小娘の相手をしなけりゃいけないのか」
 「はぁ、それはご愁傷様です」
 「ほんと、今すぐ死んでくれないかな? あ、私は面倒だから手を出さないよ?」
 「他殺ならあきらめますが自殺は怖いので遠慮します」

 何だろうこのやり取りは。
 意味が分からないですが、売り言葉に買い言葉のような感じになってます。
 といいますか、初対面で人に死ねって言える人を私は初めて見ました。貴重な体験ですね。
 とりあえず、いろいろ突っ込みどころのある女性ですが、なんだかあれなので、ここは一つ目の保養として、おおきなおっぱいを見ながら会話させていただきましょう。

 「まぁいいや。面倒だけど。で、資料によれば、キミが不感症の子なんだよね?」
 「全力で否定したいですが、言いたいことは分かるので、イエスと応えさせていただきます」
 「肯定するんだったら短く、はい、っていいなよ面倒だなぁ」
 「面倒なら説明と質問に専念してくださいよ。しゃべる手間が多少減りますよ?」
 「やっぱり付き合う人間は選ばないといけないよねぇ。愛を注げる付き合いが出来る人がいいよね、愛が」
 「はぁ」
 
 お互い全く目を合わせない会話でしたが、最後に適当な返事を返すと、女性が少しだけ苛立ちを見せました。
 コレは怒らせたかな? と思った瞬間、私は怪しげな機械を体中に取り付けられていました。
 
 「面倒だと思ってたけど、これはこれでいい実験ができるね。というわけで、実験開始ー」
 「──」

 何かしら文句をつむごうとしましたが、私の意識はバチッと走った電流の感覚を最後に、闇の中へと落ちていきました。
 本当に、一体どうしてこんなことになったんでしょうか?
 




 「おおう……」

 次に目が覚めたときには、やっぱり見ず知らずの場所でした。
 もっとも、意外といいところなのか、体をうずめているベッドは非常にふかふかで、天上にはシャンデリアなんかが視界に入りました。
 何はともあれと体を起こしてみて、問題なく動くことに少しだけ安堵しながら周りを見渡せば、結構お高そうなデスクが目に付きます。
 パソコン内蔵型のようで、ディスプレイは最新鋭の投影型。私のよりもいいものみたいです。
 私が喉から手が出るほど欲しかったタイプのようで、もしこれが自室にあったのなら狂喜乱舞は免れないのですが……。
 残念ながらどこからどう見ても私の部屋などではなく、しかたなしに家宅捜索だーと適当な掛け声とともに適当に探ってみると、奥にはバスルームがありました。
 脱衣所も結構な広さで、鏡は私の体をくまなく映し出せるほどの大きさでした。

 「おおお」

 鏡に映る私は、病院患者が着るような服を身に着けていました。
 髪の毛は、寝起きということもあって少々変にまとまってたりしますが、ちょっと自慢の腰元まで伸びるうねうねウェーブ。
 身長は平均よりちょっと高めで確か前はかったときは163cmでしたかね。せめて170cmは欲しかったですがまぁ仕方がないです。
 おっぱいは毎日マッサージしてるんですが、Cカップからあまり成長しません。残念ながら。
 お腹周りをさすってみると、やっぱり少々ぷにぷに感が否めません。
 決して太っているわけではなようで、メイド曰く「非常にバランスがよく、性欲を掻き立てられる肉付き……つまり、AV女優のようでエロエロです」だそうです。
 個人的にはもうちょっと引き締めたいところではありますが、運動サボってるので無理な話ですよね。
 顔つきも相変わらず、いつも寝起きみたいだねとよく出来たキュートな妹から言われる台詞の通り、眠たそうな垂れ下がった目じりでやる気のなさそうな表情をしています。
 つまり、平常運転ってことですね。よしよし。
 さてさて、ひとしきり見た限りでは、キッチンまで備え付けられていました。
 どこぞのホテルよりも設備はいいんじゃないでしょうか?
 そんなところに私を連れてきて、いったい何をしたいんでしょうかね、あのうさぎっぱいは。

 「何はともあれまずはパソコンでしょう」

 誰に言うわけでもなく、胸にときめきを覚えながら椅子を引いて無遠慮に座って、スイッチオン。
 数秒のラグで機動しました。早いですね。どうやら最新鋭なのは見た目だけじゃないようです。
 が、

 「おや……?」

 いつもならOSのロゴが出てくるはずの場面で、浮かび上がったのは全く別のも。
 表記は『IS』の文字。

 「あい……えす……」

 思わずつぶやいてしまいましたが……はて? どこかで聞いたことがあるような響きですが……

 「変わった奴だとは聞いていたが、いきなりPCか」
 
 考え込もうとした瞬間、突然聞こえた女性の声が室内に響きました。
 まぁこんな設備なので、誰かしらが来るだろうとは思って今いたからね。これくらいでは驚きません。
 いつもこういうことは想定してますからね、脳内でですが。
 いたって平静な態度で声のしたほうへと視線を向けると、そこにはすばらしい果実がありました。

 「非常に良いものをお持ちのですね」
 「……いきなり何を言っているんだ。まぁいい、混乱しているわけではないようだな」
 「はい。視界良好です。気分はすこぶる良いです」
 「ならいい。が、一つ質問があるのだが」
 「なんでしょうか」
 「お前はさっきから何処を見ている?」
 「もちろんあなたのステキなおっぱいです」
 「何故そんなものを見ている」
 「おっぱいを見るのに理由がいりますか?」
 「少なくとも現在においては必要だ」
 「ならば応えましょう。答えましょう」
 「手短にな」
 「えー」
 「そんなに語りたいのかお前は」
 「いえ、それほどでは──」

 淡々と答えた瞬間、私の頭にすさまじい衝撃が駆け抜けました。

 「ぅぉぉぉぉ……」 

 視界に火花が散って、くらりと体が揺れました。倒れるのは椅子につかまって何とか免れましたが、これはしゃれになってません。
 まだぱちぱち言っている視界の端に、女性の拳が見えました。拳骨だそうです。
 むちゃくちゃ痛いです。

 「いったい何をするんですか」
 「貴様が私をからかっているようだったからな」
 「からかうだなんてそんな。私はただおっぱいについて語りたかっただけですのに」
 「それをからかっているといわないのか」
 「おっぱいに貴賎はありません」
 「なに?」
 「ですが私は大きいほうが好みといえます。なので私は見ています」
 「…………」
 「──っ!?!?!」 


 無言で殴られました。
 しかもさっきとは違って、衝撃が体を貫きました。
 最初のでもしゃれになってないと思うくらいの威力でしたのに、二度目は意識が一瞬飛びました。
 何で頭を押さえているだけで済んでいるのか不思議でたまりません。
 そして私はここでようやく理解しました。
 この人は危険だと。
 私の危機察知能力もずいぶんとガラクタのようですね。きっとサバンナに放りだされるようなことがあれば一日持たずにハントされるでしょう。
 か弱いですね。というか痛いです……。

 「ぅぉぉぉ……」
 「さて、天同院君子。いいたいことは何かあるか?」
 「死にました。私の残り少ないまともな脳細胞が死滅しました……」
 「それは良かった。もう一度殴れば、貴様のそのふざけた欲望も殺せるかもしれんな」
 「これだけは絶対に死なない殺せないと断言します」
 「まぁいい」
 
 一蹴されました。
 ちょっとしょんぼりです。

 「不本意だが名乗っておく。私は織斑千冬。この寮の寮長をしている」
 「はぁ……寮長さんでしたか………………寮?」

 余裕の初耳でした。
 寮というと、学校とかそういうものなんでしょうか。といいますかいいんですかね。
 寮ってこんなハイスペック設備の塊だと学校経営とかに多大に影響出しそうなんですが。この部屋だけだったらまだ分かりますけど、いえ逆に分かりませんよね、ここだけ特別とか。
 といいますか、織斑千冬ってどこかで聞いたことがある気がしますが、はて?

 「そうだ。ここはIS学園の学生寮だ」
 「やっぱり学校の寮でしたか……って今、何学園っていいました?」
 「IS学園だ」
 
 一瞬嫌そうに顔をゆがめましたがちゃんと答えてくれたことには感謝します。
 ですが、え? 何を言ってるんでしょう、IS学園?
 
 「あいえすってあのIS……なんですか?」
 「他に何がある」
 「いちばんすご、いえ何でもありません。そうですよね。ISっていったらインフィニット・ストラトスですよね」

 拳が振り上げられると私はあっさりと元の路線へと乗り換えました。
 痛いのはキライなのです。

 「そうだ、そのISだ」
 「そのISの学園に、どうして私がいるんでしょう?」
 「貴様は今年の春からここに通うからだ」
 「えー」
 
 私の小さなリアクションに、千冬さんは一瞬驚きを見せました。
 いやまぁ、盛大に驚くこともできるのですけど、なんといいますか結構ありきたりな展開じゃないですか。
 アレなゲーム的には。
 なので予想はできていたといえばそうなのですが……

 「理由がイマイチわからないのですが」
 「まぁ、本来ならば貴様がIS学園に入学することが出来る確率は万が一ににもありえんからな」
 「そもそも確率で言うのなら、ゼロ以外ないと思うんですが」
 「そうだな。間違いない。何せ、貴様はISが『全く反応しない』のだからな」
 
 インフィニット・ストラトス、通称IS。
 今や世界でもっとも優れた兵器として名をはせるパワードスーツの名称なのですが、この兵器は、単独飛行できますし、バリアなんてものもついてたります。
 現代の兵器のありかたを一変させてしまった超兵器なのですが、これはどういうわけなのか女性にしか動かせないのです。
 男性は機械的にISを装着できたとしても、指一本動かすことが出来ません。
 そのせいで今や男性のヒエラルキーは女性にとってはとてつもなく低いものとなってしまっているのは、まぁ余談です。
 さて、そんなえり好みの激しいとんでも兵器ISなのですが、女性でなければ操れないということは、裏を返せば、女性であれば誰だって動かすことが出来るのです。
 定期的に行われる検診で、ISの適正を調べることが出来るのですが、悪くても『Dランク』で、動かすことが出来ないことはないのです。
 しかし、世の中に例外というものはあるようでして、私は恐らく全世界中で唯一の『ISが反応を示さない女性』なのです。

 今でこそこんな私ですが、昔はISを装備して自由に空を飛びまわることを夢見ていた時期がありました。
 ですが、定期検診でISを装着しようとしたのですが、なぜか私はISが装着できませんでした。
 どんなに適正が低いからといって、ISが装着できないことはありえません。そもそも男性ですら装着はできるのですから。
 しかし、私は装着すらできませんでした。
 天同院グループの総力を挙げてあらゆる世界で、使用可能なあらゆるISを用意したのですが、完全に無反応。
 果てには専用機まで用意するとか言う話になりかけましたが、そもそもデータ収集ができないためにそれは断念され、そして私の居場所は消失しました。
 名門で大企業ですっごいグループの娘がヒエラルキーの頂点に立てる力を保持していない。
 そんな汚点を抱えておくメリットは企業的にはありませんしね。
 幸いといいますか、私には良くできた一つしたの妹がいて、その子がかばってくれたので、追い出されることは免れました。
 が、世間様からの視線はとっても冷たく、当時のクラスメートからはISにまったく反応しないということで、『不感症』と称されたりもしました。
 あのにっくきうさぎっぱいの言ったことはこれだったわけです。
 
 さてまぁ、このIS学園は、ISに関する人材を育成する公的な唯一の学園で、この学園に入ることは結構なエリートとして認められることになります。
 しかし私はそもそもISを反応させることすらできない残念な娘です。
 それがどうしてIS学園に入学なんていうことになるのでしょうか。

 「説明を要求します」
 「政府からのお達しでな。貴様のようなレアケースをまとめて面倒を見ろといわれたんだ」
 「私のようなレアケース…………あぁ」
 「理解したか?」
 「正直なところ、まったく理解できないといえばできませんが、まぁそういうことなら従っておきます」

 不本意ですが、という言葉は飲み込んで。
 
 「ところでですね」
 「ん?」

 そういって、私は織斑千冬と名乗った女性を頭からつま先までまじまじと見つめる。
 女性なら誰もがうらやむだろう、すらっとした長身で引き締まった体つき。それに付随する凛々しい表情。
 彼女の髪は少々癖があるようですが、それが味となって彼女の魅力を引き立てているように思えます。
 そして何より、この自己主張してやまない二つの双丘。
 総評して、彼女は絶世の美女といえましょう。

 「眼福眼福」
 「何故拝む」
 「美人は世界の宝です」
 「は?」
 「その存在は神に匹敵します」
 「何をいって……」
 「だから拝みます。そして──」

 そのおっぱいいただきます!

 恐らく人生で一番速く動けたのではないでしょうか。
 視界がかすんで見えるほどの踏み込みで、私は接敵し、両手を無遠慮に伸ばそうとして、世界が暗転しました。
 次に目を覚ましたとき、私は寮の室内の床にひれ伏してました。
 私の人生最高は、一瞬にして叩き潰されたようです。残ったのは悔しさと痛みとこぶだけでした。


 これが、入学一週間前の出来事でした。





 さて、もうお分かりだと思いますが、私はおっぱいが大好きです。
 つまり女性が好きです。
 別に男性が嫌いというわけでもなく、今の世の流れのように男を下にみているわけでもないです。まぁそもそも見下しようがないのですが。
 でもやっぱり女のこの方が好きです。やわっこいし、おっぱいが素敵ですし、いいにおいがしますし、かわいいですし、おっぱいがありますし。
 なので私は女子高にあこがれていました。
 ですが、私はごらんの有様な不感症な娘なので、高校はいかせてもらえず、家庭教師を呼んで、軟禁される予定になってました。
 ですから、女性しか動かすことの出来ないIS専門の学園、IS学園はあこがれていた女子高で、私はひそかにテンションを上げています。
 何気に、天同院グループが全力で私のことを隠蔽してきたので、当時のように四面楚歌という状況はないようで、自己紹介を終えたあとでも私を生ゴミでも見るような目で見てくる人はいませんでした。
 
 「ねーねー」
 「ここは天国ですか……」
 「おーい?」
 「あ、すみません。トリップしてました。何でしょう……か……」

 私が幸せすぎて頭の中を桃色にしてる間に近付いてきていたのか。いえ、それはどうでもいいことです。
 私としたことが、なんと言うことでしょう。こんな素晴らしいおっぱいの接近に気がつかなかったとは。
 椅子に座ったまま教室を眺めていた私は、声に振り返って目の前に飛び込んできた素晴らしきおっぱいに目を奪われ言葉を失いました。

 「どうしたのー?」
 「はっ!? あ、いえ、その、おっぱ、いえ。えっとあなたは?」
 
 あの時は状況が状況だったので、遠慮なんて持ち合わせていませんでしたが、さすがにクラスメートに欲望駄々漏れ状態ではまずいことくらいは分かります。経験済みですしね。
 
 「えっとね、わたしは、布仏本音っていうんだよー」
 
 ものすっごいのほほんとした、柔らかな笑顔で本音さんは微笑みました。
 これが天使の笑顔というものなんですかね。私の妹に負けず劣らないステキな笑顔です。
 そのまま少しだけ彼女の容姿に目を向けてみると、なんだかすごく袖が余っている感が否めない制服を着用していました。
 狙ってるんでしょうか? かわいいですけど。

 「本音さんですね。覚えました。私は天同院君子です。よろしくお願いしますね」
 
 基本笑顔は苦手なのですが、営業スマイル全開で、応えました。
 何はともあれ、このすばらしいおっぱいとは仲良くなる労力を怠ってはいけないと思います。

 「じゃあ、てしちゃんだねぇ」
 「てし?」
 
 もしかしてあだ名でしょうか?
 だとして、いったい何処から……。

 「てんどういんくんしだからー、て、んどういんくん、し。で、てしちゃんだよぉ」
 「……これは予想外です」

 今までこのような奇抜な部位をとったあだ名はあったでしょうか。不感症はのぞいて。
 本気で言ってるのだろうか? と本音さんの顔をのぞいてみますが、満面の笑顔は崩れていない所見ると、全力のようです。

 「ダメかなぁ?」
 「いえ大丈夫です。すばらしい発想だと思います。まさに誰も思いつかなかったでしょうです」
 「うぁーい!」
 
 うぁぁぁ……な、何なんでしょうこの生き物……本当に私と同じ年齢なんでしょうか?
 嘘でしょう? こんなに和んで可愛らしい人型がいていいはずが……あ、我が妹がいました。
 じゃあオッケーですね。

 「ねぇねぇ、てしちゃんてしちゃん!」
 「何でしょうか?」
 「わたしも何かあだ名つけてー」

 なんですと?

 「ほ、ほう、私にそのようなことを頼むとは本音さんはチャレンジャーですね」
 「えへへー」

 無邪気に笑う本音さんに不適な感じの台詞を投げかけて見ますが、私は正直内心滝の汗を流していました。
 というより、背中がすっごい汗かいてます。
 正直私はこういったネーミングセンスは皆無です。
 それなのに、やたらとこだわった名前をつけようとしてしまうのです。主にゲーム系ではありますが。
 そして悩んだ挙句につけた名前に、やっぱり絶望してそのうちなれていくというのがいつもの流れなのですが、ここはリアルでおかしなあだ名をつけて呼ぼうものなら、自分にも相手にも悲惨な結果をもたらしてしまうものです。
 不感症と名づけられ呼ばれていた私はまだしも、こんな天使のような本音さんまで巻き込むのは非常に不本意です。
 しかし浮かびません。というか浮かぶ人っているんですかね?

 「え、えっとですね」
 「わくわく」
 「そ、その」
 「どきどき」
 
 あぁ、そんな期待のまなざしを向けられると胸が痛いっ。
 わざとやってるなら大したものでしょうけど、こんな無邪気な表情をわざと出来る人間を私は知りません。
 なので余計にいろいろ苦しいです。

 「そ、その……」
 「うん!」
 「わ、分かりました。来年になったら改めて発表させていただきますので今日のところはこの辺りで」
  
 苦し紛れに冗談を選択してしまいました。

 「分かったよぉ。それじゃあ来年までまってるね~」
 
 なんですと!?

 来年にまで先延ばしされていながら、突っ込みもなくそのまま受け入れて、だぼだぼのそでを旗のように振って去っていこうとしました。

 「うわぁぁぁぁごめんなさいごめんなさい! 嘘です来年とかまでなんて嘘ですぅううう!」

 あまりの罪悪感に恥も外聞もなく大声を上げて本音さんを捕まえてがくんがくんとゆすりました。
 身長は私のほうが高いので、思い切り揺られされて本音さんは目を回しているようでしたが、今の私にはそれほど気にすることが出来ませんでした。

 「ててててててしちゃんおちついてぇぇぇぇ」
 「あっ、ご、ごめんなさい。取り乱しました」
 「おぁぁぁ~だ、大丈夫だよ~」
 
 とふらふらしながら言ってくれました。うう、なんていい子なんでしょう。
 私の中の闇が洗い流されるようで非常に心苦しいです。邪な目でみていてごめんなさい。
 ちょっとだけ揺らした際にゆれていたおっぱいに見入っていたごめんなさい。

 「え、えっとですね……で、ではそのあだ名は……」
 「うんうん!」
 「の、のね、さん……は 直球過ぎますね」
 「てしちゃんと一緒でわたしはいいと思ったよぉ?」
 「いえ、ちょっと語呂が悪い気がします……の、のんさんってのはどうでしょうか?」
 「のんさん?」
 「はい。なんとなくこう、それっぽくないですか?」
 「よくわかんないけど、そんな気がするね~」
 「気に入っていただけましたか?」
 「うん~!」

 苦し紛れではありますが、無難で及第点なところを選ぶことが出来たようです。セーフですね。
 いえ、本音さんなら汚物系とかつけられない限り普通に喜びそうですよね?
 ということは、これってやっぱり無難ではない? あれ?
 しかしここまでやってからようやく気付くことがあります。

 「ところで、本音さんは……」
 「むー」
 「とと、のんさんは」
 「えへへー」

 ああもうかわいいですねこの小動物は。

 「こほん、のんさんは、どうして私に声を掛けたんですか?」

 むしろ最初に疑問に思うことだったと思う。
 恐らく私は最初妖しい表情全開だったはず。現に話しかけてきたのは1人だけでしたから。
 まぁ理由としては、ある種私と同等のイレギュラーがいたからということはあるでしょうけど。
 そのイレギュラーは今は教室にはいませんが、みんなその話題で持ちきりですし。

 「んーとね。なんだか凄く楽しそうだなーって思ったんだぁ」
 「楽しそう、でしたか?」
 「うん。こう、幸せだなぁって感じだったよ?」
 「ふむ。まったくもって間違ってませんが……だから声を掛けたと?」
 「うーん……楽しそうにしてる理由が知りたかったのと、なんだか仲良くしたいなぁって思ったの~」
 「ふむ……」

 ほにゃらかに言われるそれは、なんだかとってもむずがゆいものでした。
 生まれてこの方こんな風に言われたことは初めてです。
 忘れているだけでは有りませんが、不感症となってからは少なくとも他人がこうして近付いてきたことはありませんでしたからね。
 ある種感動を覚えます。泣いたりはしませんけど。

 「それは、なんだかありがとうございます」
 「いえいえ~」
  
 ほにゃりと笑うのんさんはやっぱり小動物のようで、もう何といいますか、かわいいです。
 椅子から立ち上がって、無意識に私はのんさんの頭に手を置いてゆっくりと撫でました。

 「えへへ~」
 「おおう……滑らか実感……何という撫で心地……」
 
 これは素晴らしい。すばらしいですよ!
 おっぱいもすばらしいですが、のんさんの頭のなでごこちは、しゃれになりません。
 あぁ、幸せです。私。
 ISが動かせないとかそういうことを悩んでいたのがバカらしく思えてくるほど幸せです。

 「何はともあれよろしくお願いしますね、のんさん」
 「うん~よろしくね~てしちゃん~」

 もう少しなでていたくもありましたが、都合悪く鳴り響いた予鈴で中断せざるを得ず、物足りなさを覚えながらものんさんと分かれました。
 不安だらけな学園生活だと思っていましたが、予想外の幸先の良いスタートに、胸の高ぶりを押さえることが少しの間はできそうにありませんでした。

 




[27287] インフィニット・ストラトス とべない少女(オリ主)2
Name: 過敏◆d0d26ae3 ID:ec57abb8
Date: 2011/04/20 11:58


 「決闘ですわ!!」

 声高らかに、クラス中にはっきりと聞こえるほどの音量をもって宣言したのは、クラスでも五指に入るほどの素敵なおっぱいの持ち主である、自称英国代表候補生、セシリア・オルコットさんです。
 ISは、兵器に転用すればそれこそ男を一週間持たずに滅ぼせると言わしめるほどのものなのですが、実際そんな使い方をされてはいけないということで、
わざわざ競技を用意してあるのです。
 代表候補生というのは、その競技、モンド・グロッソに国を背負って出場することの権利を持っている人のことを言うらしいです。きっと。
 無反応者ゆえに、積極的にISにかかわろうとしなかった私は、そのあたりのことはとてつもなく疎いです。
 そう。言ってみれば、私のISに対しての知識は、セシリアさんにびしりと指を指されて決闘を申し込まれた張本人にして世界で唯一ISを操縦することができる男性、織斑一夏と同じ程度といえるでしょう。

 先にも言ったとおり、ISは女性にしか操ることはできません。
 そのために、男性がISにかかわるには技術者になるしか道はないのですが、このあたりも女尊男卑が進んでいて、あまり男性技術者は多くありません。
 つまり、積極的に知識を取り入れようとする人はごく少数ということになり、織斑一夏も例に漏れず、知識を持っていませんでした。
 一応勉強する機会はあったようですが、その資料を電話帳と間違えて捨ててしまったそうです。ありえませんよね。
 
 そんな彼が、なぜセシリアさんに決闘を挑まれているといいますと、なんといいますか、プライドのぶつかり合いというのが妥当なところでしょうか?
 
 モチベーションを維持するためなのか、学園でもISでの競い合う機会があります。
 クラス対抗戦と、個人トーナメントです。
 クラス対抗戦は、それぞれのクラスから代表を選出して戦うというものらしく、出場できるのは一人だけ。
 だというのに代表に選ばれた一人はよほどの事情がない限り、一年間代表であり続けるのです。
 そこで白羽の矢といってもいいものか、まぁ矢がぷすりと立てられたのが、クラスで唯一の男性の一夏さん。
 織斑千冬先生の自薦他薦を問わないという言葉の後に、クラス中がいっせいに彼を推薦し始めたのです。
 どうでもいいことですが、千冬さんって教師もやってたんですね。そして一夏さんのおねーさんだったんですね。
 さてまぁしかし、それが面白くなかったセシリアさんは異議を申し立て……たところまではまだ穏やかだったのですが、そこからプライドが先行しすぎて相手だけでなくお国まで貶してしまったのです。
 それに腹を立てた一夏さんが、逆に英国のだめだしをして、ついには決闘という流れになったのです。
 個人的に徹頭徹尾どうでもよいことなのですが、こういうトラブルのおかげで個人的に非常に幸せな思いをしています。

 「あ、あの、あのあのあの……!?」

 教壇で一人、このトラブルをどうすればいいかと慌てているこのクラスの副担任、山田真耶先生。
 両手をあわあわと胸の前でわたわた動かすたびにゆれる二つのマスクメロン。
 山田先生自体もおっとりしていて非常にかわいらしいと思うのですが、目を引かれるのはやっぱりその豊満なおっぱいでしょう。
 彼女の雰囲気とあわせて最強兵器の一つといってもおそらく過言ではないでしょう。いえ、最強の一つです。
 隣に不適にたたずんでいる織斑先生よりも高い戦闘力は驚嘆に値します。
 そんなおっぱいが、揺れているんです。
 見ないでか。
 幸せを感じないでか。
 はい、私、天同院君子は今幸せです。

 「さて、話はまとまったな。では一週間後の月曜日、第三アリーナで行う。両名ともそれぞれ準備をしておくように」

 そう無理やり締めくくられて、授業が開始しました。
 山田先生はほっとした動きを全身で表現して、おっぱいを揺らしてくれました。なんというサービス精神。
 いいです。もっとや――

 「貴様はいつまでトリップしている気だ」
 「のはぁ!?」

 額にしゃれにならない衝撃を覚えて私の意識は一瞬でシャットアウトしました。
 最近意識を失うことが多いですけど、私の頭大丈夫なんですかね。

 などということを、目が覚めてお昼時になってから思いました。
 二時間程度落ちていたようです。誰か起こしてくださいよ。と思いましたが、のんさんが起こそうとしてくれた結果がそれだったようです。
 大ダメージだったんですね。



 ただでさえ知識が遅れている私ですが、教師の手をもってして気絶させられていたら勉強しようがありませんよね。
 まぁそのあたりはあきらめるとして、何はともあれ昼食です。

 「さて、食事です」
 「ごはんだー」

 今日のメニューは私はカツカレーで、のんさんは和食ベースのAセット。
 私の食事です宣言にあわせるように、腕を振り上げました。おっぱいがぽよんとゆれました。ぐっじょぶっ。

 「いただきます」
 「いただきまーす」

 どうでもよいことですが、私はカレーは最初に全部かき混ぜる派です。
 そうしたほうが無駄なく食べられる気がしているからです。ちょこちょこかけて食べるのとどっちがいいのかは知りません。やったことないですし。
 それにしても……

 「ん~おいしい~~」

 はぁぁぁぁ……何という天使でしょう。
 何かを口に運ぶたびにほにゃりと笑うその表情はもはや至高。もはや究極。
 のんさんを見ていれば、私ご飯はいくらでも食べられる気がします。あくまで気ですが。
 だぼだぼの袖で腕が飲まれたままだというのに、箸を器用に使って食べています。すごいです。
 これはもうあれです。のんさんはファンタジーなんでしょう。メルヘンなんです。
 癒されないわけがないんです。夢は壊さないんです。たまりません。

 「てしちゃん、ご飯食べないの~?」
 「おおう、いえいえ食べますよ食べますとも。ただちょっと幸せすぎて忘れてたんです」
 「ん~? よくわかんないけど、幸せはいいよねぇ」
 「まったくもってすばらしいです」
 
 癒し小動物系女の子+巨おっぱいの組み合わせはすばらしいです。
 
 「悪い、ここ相席いいか?」

 そんな時、不意に頭の上から声がかかりました。
 顔を上げると、黄色い声が飛び交う中、唯一の低音を奏でる男性、織斑一夏さんがそこにはいました。
 
 「…………」
 
 その後ろには仏頂面をした、篠ノ之箒さんがいました。
 名前を覚えている理由はいわずもがな、セシリアさん同様クラスで五指にはいるその素敵なおっぱいをお持ちだからです。
 きっと形もいいことでしょう。絶対領域に見える引き締まった足から想像するに相当鍛えているようですしね。

 「私はかまいませんが、のんさんは――」
 「うん! いいよー!」
 
 答えを聞くまでもなく、全力で満面の笑顔で席を空けていました。さすがです。
 私とのんさんで対面になるように座っていたので、彼らもそうなるように座るのですが、私の隣に一夏さんが座りました。
 個人的にはおっぱいな箒さんがよかったのですが、まぁ対面に座ればおっぱいおっぱいの構図になるので我慢しましょう。

 「ありがとう。えっと……」
 「君子です」
 「え?」
 「君子です」
 「えっと君子って名前でいいのか?」
 「だめですか?」
 「え、違うのか?」
 「てしちゃんはねぇ、てしちゃんなんだよぉ~」
 「え? て、てしちゃん?」
 「うん~」
 「え、えっと」

 うふふ、戸惑ってる戸惑ってる。
 私だけならまだしも、そこに援護射撃のようにのんさんが会話に参加してくれればもはやここは不思議メルヘン空間!
 弱点は、のんさんの顔を見ているとどうでもよくなることですかね。
 実際仕掛けた私がどうでもよくなってきました。

 「はい、天同院君子です。覚えても覚えなくてもどっちでもいいですよ、織斑一夏さん」
 「自分は俺の名前を覚えていて、覚えなくてもいいっていうのはどうなんだ?」
 「どうなんですかね?」
 「いや、聞き返されても……」
 「そっちのすてきっぱ……ではなく、篠ノ之箒さんもよろしくお願いします」
 「……すてきっぱ?」
 「お気になさらず」
 「……」

 愛想のよい一夏さんと比べて箒さんはずいぶんと無愛想のようです。というか機嫌悪くありませんかねこのスイカップさんは。
 そんな表情で食べてもご飯は美味しくないでしょうに、とは思うものの、わざわざ藪をつついて危険を犯す意味もありません。
 ここは無愛想の隣で幸せ絶頂の癒し系を見て和みましょう。

 「ふへ」
 「な、なんだかすごく緩んでるな」
 「え、緩まないんですか?」
 「君子の言ってることの意味が俺には分からないんだが……」
 「そうですか。というかさりげなく名前、呼び捨てですね」
 「だめか? 天同院よりは呼びやすくていいと思ったんだけど」
 
 なんという理由でしょう。
 それだけの理由で名前を呼ばれたのは初めてです。今日はたくさん初めてを奪われました。あ、いけない。

 「今日はたくさん初めてを奪われました」
 「ぶはっ!」

 わざわざ声にだしてそんなことを言ってみると、無言で我関せずを貫いて味噌汁をすすっていた箒さんが盛大にむせ返りました。
 すべては計算どおりです。

 「だ、大丈夫か箒?」
 「お、お前……い、きなり……何を言って!」
 「私、おかしなことを言いましたかね織斑一夏さん」
 「いや……というか、どれもおかしい気がしてならないんだけど」
 「えー」
 「その微妙な反応は不満なのか適当なのかどっちなんだ……?」
 「何もかもが私です」
 「わけが分からないぞ」
 「世の中分からないことだらけですよね」
 「そうだよねぇ~」
 「……っ……っ!」
 
 次の言葉をつむぐタイミングを完全に逸してしまったようで、なんともいえない表情で箒さんはうなっています。
 なかなか見られることのない類の表情でしょう。レアですね。
 しかしやっぱり、せっかく綺麗な顔立ちをしているのに、あの仏頂面はもったいないと思います。
 凛々しいといえばそうでしょうが、女の子はやはり笑顔ですよね。
 と思いながら、のんさんに視線を向けると、ちょうど顔を上げたのんさんと目が合いました。

 「どうしたの~?」
 「いえ、のんさんは可愛いです」
 「えへへ~ありがとうてしちゃん」
 
 はい、癒しいただきましたー。

 「二人は、結構付き合い長いのか?」
 「はい。今日の一時間目の休憩時間からの仲です」
 「すっごい短いな!?」
 「おかしいですね。お互いあだ名で呼び合うほどの仲ですのに。ねーのんさん」
 「ね~」
 「昔からの友人って感じしかしないけどなぁ……」
 
 正直に言えば、私も一日も経たないでこんなに仲良くというか、気を許せることになるとは思っても見ませんでした。
 一体何がこの状況を招いたのかといえば、ひとえにのんさんの人柄ですよね。
 無邪気で無防備でありのままで接してくれるそのあり方が、私にとって非常に心地がよかったのでしょう。
 のんさんもそのように思ってくれていればいいですが、まぁそれは求めるものでもないでしょう。

 「そういうお二人はどういった関係で? ただの友人程度ではすまない仲とお見受けしますが」
 「あぁ、俺と箒は――」
 「あ、ちょっと待ってください」
 「え?」
 「ここはあえて箒さんに言ってもらいましょう」
 「な、なぜ私にふる!?」
 「会話に参加したほうが楽しいと思います」
 「私はそんなことは……」
 「まぁ、そうだよなぁ」
 「一夏!?」
 「相方さんに了承を得たことですし、改めまして、お二人はどのような関係なのですか? 恋人ですか?」
 「ぶふぉ!?」
 「お~~~~!」
 「な、なななななななななぜそうなる!?」
 「なが多いですねぇ」
 「な、なぜそうなる!」
 「それではお答えしましょう」
 
 少々構える私にならって、三人ともが聞くことに構える。
 
 「①、篠ノ之さんがあまりにも熱烈な視線を送っていたから。②、篠ノ之さんがあまりにもうらみたらしい視線を送ってきたから。③、篠ノ之さんがあまりにもからかいがいがあるので言ってみただけさぁどれでしょう」
 「…………」

 どれにしたって非常に選びにくいものを用意してみました。
 我ながらよくやったと思います。
 
 「お、お前は……私をからかっているのか……?」
 「つまり?」
 「三番ということなのかと聞いている!」
 「正解――」
 「――――っ!!!」
 「は、四番の、休み時間になった瞬間に二人ですぐにどこかへいってしまったから、でした」
 「~~~~~~~~!!!」
  
 いい反応です。すごくいい反応です。
 箒さんの端整な顔立ちが怒りにゆがんでいます。
 こういう美味しい反応をしてくださる方をからかうのは非常に楽しいです。が、やりすぎると殴られたりする可能性もあるのでほどほどにしないといけません。
 
 「というわけで、ネタは割れましたが、先ほどの反応からしてお二人は恋人というわけではないのですか?」
 「あ、いや……その……だな……」

 先ほどの怒りが嘘のようにもじもじとし始める箒さん。
 箸でさば味噌をつきつきしてばらばらにしてきます。さば味噌ばらばら事件ですね………………面白くないですねこれ。
 
 「こ、こここい……と、ぃぅ、のも……やぶさかでは……ないのだが……その…………」
 「ふむ?」

 重要なところが声が小さすぎて聞こえませんね。いいたいことはなんとなく分かるので別に問題はないのですが、進展しなさそうですね。

 「というわけで、一夏さん。答えをお願いします」
 「え? いや、でも箒が……」
 「だから、な……? その……わ、私だって……そう、思っているのだ……で、でも……」
 「という状態の箒さんでは答えが出るまでにお昼が終わってしまいそうですので」
 「……なんでこんなことになってるんだ?」
 「さぁ? のんさん分かりますか?」
 「てしちゃんマジックだね~」
 「というわけです」
 「分かった……いや、わかんないけどわかった、えっと、俺と箒は幼馴染なんだよ」
 「そうでしたか」
 「なんか、ずいぶん淡白な反応だな。別にいいんだけど」
 
 ぶっちゃけ予想通りといえばそうでしたからね。
 あれなゲームではよくある展開ですし。
 しかしなるほど。そうなると箒さんのこの状態にも多少説明がつきますね。

 「何年来の幼馴染なんですか?」
 「えっと、小学四年のころからだから、一応十年来ってことになるのか?」
 「一応?」
 「あぁ、箒が引っ越していったから、一応」
 
 ほう?
 これは、よくありがちといえばそうですが、なかなか面白い展開なのではないでしょうか?
 見る限り箒さんは一夏さんに好意を抱いています。それもその小学四年生のころから。
 そして六年ぶりに再会を果たしたのですが、その想いは未だに伝えることができていない、と。
 あれなゲームでは確かにありがちですが、まさかリアルでそんな状況に遭遇できるだなんて、レアではないでしょうか。
 何なんでしょう。不安いっぱいだと思っていたIS学園の生活もそんなに悪いものじゃない気がどんどん強まってきました。
 誰がどういった経緯で私を入学させようと思ったのかは知りませんが、ありがとうございます。

 「感動の再開というわけですか。素敵ですね」
 「そういうものかな?」
 「そういうものじゃないですか? それとも、箒さんと再会できて嬉しくなかったんですか?」

 そういった瞬間、箒さんがあからさまに反応を示しました。が一夏さんはそれに気づくことなく――

 「嬉しいに決まってるだろ」

 と、満面の笑顔で言い放ちました。
 チラリと箒さんへと視線を向けてみると、案の定顔を真っ赤にしていました。
 恥ずかしいのか嬉しいのか、ぷるぷると小刻みに震えています。
 ちなみに、のんさんは、一夏さんの台詞と同時に、目を思い切り輝かせています。
 二人ともナイス反応です。
 しかし――

 「……ふむ」
 「ん?」

 一夏さんの顔をじっと見てみます。
 打算も何もない心の底から紡がれた言葉であったのでしょう。そしてそういうことが当たり前に言える人なのでしょう。
 唯一の男IS操縦者がどんな人かと思っていましたが、ふーむ、どうやらなかなか面白い人物かもしれませんね。

 「どうかしたのか?」
 「いえ。それより少々話し込みすぎましたね」
 「うお、残り三十分か。俺は余裕だけど、みんなは大丈夫か?」
 「私を誰だと思っているんですか」
 「いや、よくわからないんだけど……」
 「言ってみたかっただけです」
 「そ、そうか……」
 「まぁ、だめなときはだめであきらめて食べ続けます」
 「食べ続けるのかよ!?」
 「もったいないですし」
 「そうだけどさ……はぁ、まぁいいや、食べよう」
 「そうですね」

 結局、食べ終わったのは全員時間ぎりぎりだったのは、言わずもがなでしょう。


 
 あれよあれよという間に放課後です。

 普通の学校なら、初日ともなれば半日程度で終わるものでしょうが、ここはIS学園。
 世界中からエリートが集まる、エリート学校。
 ともなれば、スケジュールは結構なものらしく、初日から頭に詰め込まなければいけませんでした。
 昔は神童のくんちゃんと呼ばれたこともあった私ですが、無意味なことに使う力はありません。
 あ、ちなみにくんちゃんは嘘です。神童では? と言われたことはありますが、まぁ本当に遠い過去のことですね。
 というわけで、話半分に空でも眺めながらの授業は割かし早く終わり、私は寮の自室へと戻ってベッドへと体を預けました。

 「ふぅ」

 ようやく一息、というほど緊張していたわけではないのですが、やはり久々の学園生活は疲れますね。
 不感症と呼ばれてから数年間、私は登校することを禁止されました。
 これ以上変なうわさを広めさせないための処置としては、一番なのでしょうが、個人的にもありがたい処置でした。
 悪意ある目を向けられて、悪意ある言葉をぶつけられるのは、こんな私でもなかなかに堪えるものでした。
 夢が崩れて消えたことが最大の原因だったようですが、三日ほど寝込みましたし。
 いやぁ、それからは大変でしたねぇ。
 徐々に家族からも私への態度が変わっていき、いてもいなくても同じになって、ご飯は自分で作らないといけないわ、外へは出させてもらえないわ、
家の中の人にさえできるだけ会わないようにしなければいけなかったりと、徹底的でした。
 何で私がこんな目にあわなければいけないのか、と考えました。一日ほど。
 一日経ってから、私はすぐに両親に進言しました。
 とりあえず最低限の支援だけはしてくれと。

 今までの厳しかった跡取りへの道は閉ざされ、代わりにやってきたのは誰の束縛も受けない自由で自堕落な生活。
 だからこそ、やりたいようにやらなければ損ではないかと、思い至り通販やらネットブラウジングをやりまくりました。
 あれなゲームも片っ端からやりました。泣きから抜きまでです。
 最初は同情して少しは手を加えようとしていた人たちも、私のあまりにの堕ちっぷりに次々に去っていきました。余裕の計算どおりでした。
 予定では、一切部屋から出ないでぼへーと生活するところまで堕ちるつもりでしたが、残念ながらというべきか、幸いというべきかそこまではいきませんでした。

 ここで私のスイートハニーの妹の登場です。
 
 私一つ下の妹、天同院 帝。帝と書いて『てい』と読みます。ほんと、うちの両親のネーミングセンスは狂ってると思います。
 そのセンスを受け継いでしまった私がいうのもあれですが。
 まぁそんな帝は、何を間違ったのかお姉ちゃん子でありまして、すごく私になついてくれていました。
 こんなになってしまった私にさえいつもどおり接して、姉扱いしてくれて、そのおかげで私は最低限のプライドだけは捨てずにすみました。
 ちなみに妹は、おっぱいがすごいです。私よりも小さいですが、女性としては平均的な身長で、中学生にして反則的なスタイルです。
 髪型は私と同じうねうねウェーブなのですが、帝はポニーにしています。似合ってますとても。
 表情はきりっとしてとっても凛々しくて、でも私の前だとほにゃほにゃで、あぁ思い出しただけでほっぺをむにむにしたくなります。

 「帝は心配していますかね」

 もしかしたら今頃両親に詰め寄っているかもしれません。グループの力を全力で行使してるかもしれません。
 あぁ、考えるとなんて愛おしい妹なのでしょう。帝ラブです。癒し系最強です。
 でも帝は、私の代わりに天同院グループを継ぐことになっているので、あまり私にかかわるのはよろしくないと思うんですよね。世間体的に。
 なんてことを何度もいったんですけど、一度として聞いたことはありません。
 あれ、もしかしてあんまり姉としての威厳がない? などと悩んだこともありましたが、あの柔らかほっぺの誘惑には勝てませんでした。
 ですので、この強制入学はいい機会だったのかもしれませんね。お互いにとって。
 
 「そういえば……」

 ふと、ここで出会った癒し系を思い出しました。
 布仏本音こと、のんさん。
 どことなくお姉ちゃんモードになった帝に似ているような、でももっと突き抜けているような、癒し系で不思議系なあの娘。
 見ているだけでもすごく癒されるというのに、頭をなでると更なる癒しをかもし出してくれるという素敵な……

 「友人……といっていいんでしょうかねぇ」

 のんさんはそう思ってくれてる……かどうかは少々怪しくもありますが、私なんかがそう言ってもいいものか。
 実際のんさんにも友達がいるようですし、私を友などとしなくても問題ないようにも思います。
 といいますか、考えてみればあんまり近づかないほうがいいんじゃないですかね。もしばれたときのことを考えますと。
 私の友達でいるということにメリットはありません。
 お金も最低限しかありませんし、そもそもからして不感症ですし。
 となると、明日からは多少距離をとったほうがいいですね。あんな癒し系をこっちに引き込んでは世界の損失です。
 おっぱいと癒しは非常に惜しいですが、やむなしです。

 「なぁに、この天同院君子、人の嫌がることを実践することにかけては右に出るものはいないといえましょう」
 「そうなの~?」
 「はい。昔はいたずらマスターくんちゃんなんて、よばれ……」
 「いたずらマスターってすっごいんだね~!」

 はて、おかしい。おかしいですよ。
 ここは私の部屋です。扉を開ける鍵を持っているのは私と寮長の織斑千冬さんだけのはずです。
 そして私は部屋の鍵をかけました。個人の空間です。別におかしくはないでしょう。
 では、なぜ、なぜここに、最強の癒し小動物系の布仏本音さんがいるのでしょうか?
 
 「えっと、のんさん」
 「なぁに?」
 「いたずらマスターは嘘なんです」
 「そうなの?」
 「はい。本当は、ただの君子です」
 「てしちゃんだもんね~」
 「はい。ところでのんさん」
 「なぁに?」

 小首を傾げました。

 「可愛いですね」
 「えへへ~」
 
 あぁ癒される……。 

 「じゃなくてですね」
 「ん~?」

 今度はさっきとは逆方向に首を傾げます。な、なんという……しかし今度は惑わされません。

 「どうしてここに?」
 「だって、わたしもここの部屋なんだよ~てしちゃんが同室なんだね~やった~!」
 
 そういって、両手をばっとあげて、だぼだぼの袖を旗のようにふりふりします。
 可愛いです。
 可愛いですが……

 「なんですとぉ……?」

 私は一体、どうしたらいいのでしょうか。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.0319490432739