マスコミが報じなかった もう一つの「東日本大震災」

2011年4月7日 12時10分

被害の最も大きかった青倉地区。公民館も全壊した

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 今回の一連の震災報道をめぐり、「ロクデナシのマスコミ」「非道な気象庁」などと抑え切れない怒りをぶちまける"記事"がインターネット上で話題となっている。

「ウィキペディア」のパロディサイト、「アンサイクロペディア」に掲載された「栄村大震災」についての記述がそれだ。

 東日本大震災のあった翌日、3月12日午前3時59分に起きた長野県と新潟県の県境にある長野県下水内郡栄村を震源とした「栄村大震災」は、最大震度6強を記録。しかも、本震からわずか1時間あまりのうちに震度6弱の余震が2度にわたって起こるなど、被害が甚大であったにもかかわらず、全国紙レベルではまったくと言っていいほど報道されなかったのだ。このため、アンサイクロペディアには「まるで何事もなかったかのように(栄村だけ)多くの国民から無視されることになる」などと痛烈な批判が書かれている。

「地元紙やローカル放送ではかなり大きく報道されていたのですが、確かに全国ネットのテレビや新聞ではまったく報じられませんでしたね。実際の被害状況は、道路が寸断されて一時孤立してしまう集落もあったくらいなんですが……」

 地元メディアの記者もこう嘆くように、地元の公民館は完全に瓦解し、小学校の天井も崩れ落ちるなど、建物の全半壊は45~46棟(物置も含む)。死者こそ出なかったものの、地震発生当初は村民約2300人のうち1700人以上が避難する深刻な被害に見舞われたという。

「毎日、テレビには津波の被害や原発事故ばかり流れているんで、そちらに目が向くのは仕方のないことだと思います……。ただ、今回ネットで栄村の被害を知ったという人たちからたくさん励ましの電話やメールが届きました。ウチの村が被害の大きさに比べて『無視されているんじゃないか』って心配してくれている人が少なからずいると知り、純粋に嬉しかったですね」

 栄村役場総務課の藤木利章さんはこう話すが、震度6強の爪痕は深く、復旧にはまだまだ時間がかかりそうな気配だ。

 実際に復興作業にあたるNPO法人「栄村ネットワーク」事務局理事の松尾真さんが言う。

「物資はかなり届いていますが、水道と下水に関しては水源が完全に土砂崩れでやられちゃったというのもあって、復旧にかなり時間がかかると思います。仮設住宅の建設も、進み具合は東北より遅いですし……。とりあえず40戸造ることは決まったのですが、まだまだ全然足りませんね」

 さらに、松尾さんが心配するのが、栄村の地震が今後一連の東日本大震災と同じに扱われるかどうかについてだ。

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