「税と社会保障の一体改革」の中心テーマとなる年金制度改革で、政府・民主党が高所得者の基礎年金の減額を検討していることが19日、分かった。デフレ下でも年金削減を可能とする仕組みも併せ、給付抑制を図る。専業主婦ら「第3号被保険者(3号)」が保険料を払わなくてもいい制度を廃止し、新たに専業主婦らから保険料を徴収することも検討対象に挙げている。
厚生労働省は改革案を詰めたうえで、5月中旬の「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)に提示する。民主党側も震災で中断していた「社会保障と税の抜本改革調査会」(会長・仙谷由人官房副長官)の議論を来週再開させる。ただ、給付抑制策には党内からの反発も予想される。
政府・民主党は年金改革を2段階で進める意向だ。「第1段階」では当面の課題に対処し、「第2段階」で同党がマニフェストに掲げた全額税による最低保障年金創設などの実現を目指す。
第1段階では、高所得者は所得に応じて、基礎年金の国庫負担分(50%)を減額する案が柱だ。年金収入の所得控除を縮小し、増税する案も検討する。年金水準は物価や賃金の伸びよりも給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」で調整する仕組みだが、物価が下がるデフレの下ではこの仕組みが働かないため、デフレ下でも給付額が減る制度にする。
また、会社員らの厚生年金と公務員らの共済年金を一元化し、併せて、厚生年金加入要件を現行の「週30時間以上勤務」から「週20時間以上」に緩和する。パートなど非正規労働者の加入を促し、無年金・低年金対策と位置づける。
3号制度は廃止し、夫の収入の半分を妻の収入とみなし、相当分を妻の年金額に反映させる方式を検討する。専業主婦から保険料を徴収する案も議論を進める。
第2段階では、すべての国民が一つの制度に加入する「所得比例年金」を創設する。所得の低い人への最低保障年金は、国内に40年居住すれば満額受給できるようにする。【山田夢留、谷川貴史】
毎日新聞 2011年4月19日 20時48分