文部科学省は19日、福島県内の幼保育園と小中学校の校舎などを通常利用する際の限界放射線量を、1時間当たり3・8マイクロシーベルトに設定すると発表した。通常通りの学校活動を行った場合、年間の線量が20ミリシーベルトを超えるため。現段階で計13校・園が基準値を超えており、文科省は同県教育委員会に対し、この13校・園は屋外活動を1時間程度に制限することなどを通知した。対象園児・児童・生徒は計3560人に上る。
文科省が14日に行った調査結果に基づき、内閣府原子力安全委員会が示した目安を参考に決定。福島市の10校・園▽郡山市の1校▽伊達市の2校--が対象となった。
調査では、1日の子供の活動パターンを屋外8時間、木造の屋内16時間に設定。5~7日に、福島第1原発から半径20キロ圏内の避難指示区域など以外の幼保育園と小中学校で行った線量調査で、数値が高かった52校・園を再調査し、活動パターンに当てはめた場合に年間20ミリシーベルト(1時間当たり3・8マイクロシーベルト)を超えた学校について規制対象とした。小学校は高さ50センチ、中学校は1メートルの大気中の線量で判断した。
通知では屋外活動の制限の他、「屋外活動後は手や顔を洗う」などを要請。対象外の39校・園は「学校施設を通常通り利用して差し支えない」とした。
13校・園については、8月まで継続する週1回程度の線量調査で、2回連続1時間当たりの線量が3・8マイクロシーベルトを下回ったことが確認されれば通常利用できるとした。また、高校や専修学校、各種学校でも同様の配慮を求めた。学校の限界線量を巡っては13日、原子力安全委員会が「子供は年間10ミリシーベルト以下に抑えるのが望ましい」との見解を示したものの、15日に「委員個人的な見解だった」と撤回するなど混乱していた。【篠原成行】
文部科学省が目安としたのは、国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力事故の収束時の許容線量とした年間1~20ミリシーベルトの上限値だ。この数字をもとに屋外活動の制限などを求める基準値として、毎時3・8マイクロシーベルト(1マイクロシーベルトは1000分の1ミリシーベルト)以上とした。
これは1日8時間を屋外で過ごすなどと仮定した上で、年間20ミリシーベルトを超えないように定めた値だが、政府から助言要請を受けた内閣府原子力安全委員会は、今後も放射線量の計測を継続する▽子供の行動様式に近い教職員が線量計を携帯して被ばく量を確認する--と注文を付けた上で、この目安を妥当と結論づけた。放射性物質の半減期も考慮すると、線量の減少が見込まれ、毎時3・8マイクロシーベルトという数字は「かなり安全側に見積もった基準値」(安全委)と言える。
しかし、今なお福島第1原発を管理できる状態になっていない。今後の計測値によって、基準や対策を柔軟に見直していくことが求められる。【西川拓】
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◆屋外活動制限が適当とされた学校など◆
<福島市>
市立大波小学校▽聖心三育保育園▽三育幼稚園▽市立御山小学校▽市立福島第二中学校▽福島大付属幼稚園▽福島大付属中学校▽福島成蹊中学校▽市立福島第三小学校▽市立渡利中学校
<郡山市>
市立薫小学校
<伊達市>
市立小国小学校▽市立富成小学校
毎日新聞 2011年4月20日 東京朝刊