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原発:全事業者、電源長期喪失想定せず…国も「考慮不要」

 電力各社が原子炉の核燃料が溶け出す「炉心溶融」など原発のシビアアクシデント(過酷事故)への対策をまとめた報告書で、発電所への外部電源や非常用ディーゼル発電機の電源機能を長時間失う事態をいずれも想定していなかったことが毎日新聞の調査で分かった。国は各社の報告書を了承していたほか、設計段階の国の指針でも電源を長時間失う事態を「考慮しなくてもよい」としており、電力会社と国双方の想定の甘さに専門家から批判が出ている。

 過酷事故対策の報告書は、79年の米スリーマイル島原発事故などを受け、原子力安全委員会(現・内閣府原子力安全委員会)が92年に作成を推奨。起こりうる可能性が極めて低く、設計段階で考慮していなかった事態に対しても、対応手順や対策を求めた。電力各社は報告書を国に提出し、当時の通商産業省(現経済産業省)や安全委もこれを了承した。

 停電などで原発への送電が途絶えた場合、非常用ディーゼル発電機が起動し、原子炉や使用済み核燃料プールなどを冷却するための代替電源となる。

 電力各社は、電源が喪失した場合でも、原子炉内に7~8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えている。これに加え、各社の過酷事故対策の報告書では、隣接する号機の電源を融通する▽非常用ディーゼル発電機を追加設置する--などの方法で電源供給能力を向上させるとした。しかし、発電所内の電源が8時間を超えるような長時間にわたって失われる事態を想定した社はなかった。

 一方、安全委が90年に定めた原発の安全設計審査指針でも「長期間にわたる電源喪失は、送電線の復旧、非常用発電機の修復が期待できるため、考慮する必要はない」とされていた。

 福島第1原発では、東日本大震災の影響で鉄塔が倒れるなどして、外部からの交流電源が途絶えた。その後の津波で1~6号機の非常用ディーゼル発電機13台中、6号機の1台を除く12台が使えなくなり、ほぼ全ての電源が一度に失われた。その後も長期間電源を復旧できず、原子炉圧力容器内や使用済み核燃料プールの燃料棒を冷却できなくなり、放射性物質の大量放出を招いた。

 NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は「電源はすぐに復旧されると考えられ、電源喪失が深刻な問題としてきちんと顧みられてこなかった。地震や津波といった広範囲に影響を与える事象を考えれば、複数の号機での電源トラブルが一度に長時間生じる可能性は高く、想定が甘いと言わざるを得ない。それを認めていた国の責任も問われる」と指摘する。【河内敏康、西川拓】

毎日新聞 2011年4月19日 2時39分(最終更新 4月19日 3時17分)

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