東日本大震災では世界最悪の原発事故の報道に隠れがちだが、新幹線が今度も安全に停止して数百人の乗客の生命を守ったことを忘れてはなるまい。
新幹線技術の高さを証明したのは東北新幹線「やまびこ59号」。新花巻駅〜盛岡駅の間を時速二百七十キロ前後で走行中、マグニチュード(M)9・0の巨大地震に見舞われた。
太平洋沿岸と沿線に設置した地震計が初期微動(P波)をキャッチ。その信号を受けた変電所は直ちに新幹線への送電を止め非常ブレーキが自動的にかかって車両は緊急停止した。
東海道・山陽を含めた新幹線の歴史は一九九五年一月の阪神・淡路大震災、二〇〇四年十月の新潟県中越地震など大地震との格闘だ。とくに中越地震では強い横揺れで車両が脱線し、そのまま疾走した。
関係者は肝を冷やしたが乗客が死亡する最悪事態は回避できた。こうした経験を生かしてJR各社は脱線防止ガードを取り付けたり高架橋を補強するなど安全対策を強化してきた。
振り返れば一九六四年十月に開業した東海道新幹線以来の積み重ねがある。多くの人手と技術革新による新幹線の安全は、旧国鉄がJRに民営化された後も引き継がれてきた財産だ。
寸断された東北新幹線は近く全線で営業が再開される。当面、時速三百キロ運転は難しいが「はやぶさ」復活は東北復興のシンボルとなろう。 (大沢 賢)
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