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【社会】

作業員のストレス対策必要 原発で産業医が聞き取り

2011年4月20日 07時05分

福島第二原発の体育館で、寒さをしのぐため防護服を着て眠る準備をする作業員ら=谷川武教授提供

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 福島第一原発で事故処理作業にあたる東京電力社員らの心理的状態を調べた愛媛大大学院の谷川武教授(49)=公衆衛生学=が十九日、本紙の取材に応じ、「社員の多くも被災者であり、家族が避難所にいる。厳しい作業に追われる上、休む場所がまったくない」と話した。作業員にとって心理的に厳しい状況が続いており、早期の対策が不可欠だという。

 谷川教授はこれまで約二十年間、非常勤産業医として社員らの健康管理にあたってきた。今回は十六日から十九日まで、福島第二原発の免震重要棟内の仮設診療所で寝泊まりしつつ、福島第一と第二の東電社員ら九十人から話を聞いた。事故後、社員らのストレス対策で専門家が入ったのは初めてだった。

 社員自らが、家族や自宅を失っていたり、避難指示区域に住む被災者だ。震災発生直後は、家族の安否確認もできないまま、十日以上も家に帰れず、長時間の厳しい作業をした。この間、床や椅子で眠る生活が続いた。

 社員らは、谷川教授に避難所でのつらい体験を打ち明けた。休みを取って避難所の家族の元に帰っても、事故を起こした東電社員であることから「申し訳ない」との思いを抱え続けている。

 家族とくつろぐはずの避難所で、「東電」と言われながら指さされたり、誹謗(ひぼう)中傷を受けたと吐露した社員もいたという。

 谷川教授は「彼らには発電所でも、避難所でも休む場所がない。死に物狂いで頑張っているが、さすがに疲れが隠せない状態」と話した。第二原発の社員も津波や地震対策に追われ、激務をこなしているという。

 福島第二原発の体育館には畳四百五十六枚が敷き詰められ、その上で第一原発の作業員ら二百人が寝袋や毛布で眠る。夜、谷川教授が巡回すると、重症の睡眠時無呼吸症候群の患者のすさまじいいびきが響く。「強烈ないびきで他の作業員がよく眠れていない状況」といい、谷川教授はいびきの大きな人に治療を施し、睡眠環境の改善を図った。

 東電が示した事故収束への工程では、うまくいっても半年以上の緊張した作業が続く。谷川教授は「今後は、慢性的なストレス状態が続く。長期にストレスがかかると、うつ病や脳卒中など循環器系の疾患の発症リスクが高まる」と指摘。

 「ストレスの緩和や長期にわたる心のケアが必要だ。医師の応援も拡充し、ストレスや被ばく対策を含めた計画的な健康管理体制を早急に取り組まなくてはならない」と話した。

(東京新聞)

 

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