校庭などでの活動は1日に1時間程度--。東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所事故の影響で、文部科学省は19日、福島市などの13校・園に対して、事実上屋外での活動を制限する「考え方」を示した。避難指示(半径20キロ圏内)外にもかかわらず、新学期を迎えた子供たちは、屋外で遊ぶこともできない。保護者からは「子供の立場からすると制限はかわいそう」という声も聞こえる。【古関俊樹、種市房子、福永方人、和田武士】
対象校の福島市の福島大学付属中学校は既に、国のガイドラインが示されるまでは屋外での体育や部活は控えるよう求める市教育長通達に基づき、校庭での部活は中止し、時間を区切り体育館を使用させているという。
白石豊校長は「生徒に屋外で活動させてやれないのはつらいし、悔しい。結果は理解して基準が下回るまで受け入れるが、国や県、市、そして東電は校庭の土壌を入れ替えるなど除染をする努力もしてほしい」と話した。
福島市の福島大付属幼稚園は、園児の健康面への不安を訴える保護者の声などを受け1日から休園中で、5月9日から新学期を始める予定だった。斎藤和代副園長は「幼稚園教育では自然に親しみ感性を磨くことが重要で、大変困る。開園までに放射線量が基準を下回らない場合は屋内活動を充実させるしかないが、非常に難しい」と頭を抱える。
対象の福島市立小学校教頭は「まだ文科省から通知が来ていないので、学校としては何も方針を示せない」と困惑する。既に中休みや昼休みに校庭で遊ばない、手洗いやうがいを励行するなど、文科省が示した対策は指導しているという。
市立薫小学校が対象となった郡山市教委は、既に市内の86小中学校に児童・生徒の屋外活動を控えるよう指示している。市教委幹部は「約2週間前から国としての安全基準を早く示すように求めていた。保護者の不安は大きく、これで対応しやすくなる」と話した。
葛尾村から福島市に避難する主婦、佐久間美千代さん(41)の小学2年の長男は今月から市内の小学校に通い始めた。「葛尾では外で遊んで汗だくになって帰ってきた。放課後にみんなで遊んで友達を増やし、絆を深めていくのが子供。子供の立場からすると制限はかわいそう」と言う。
長男が通い始めた小学校は対象校ではないが、登校時にマスクを着けさせたり、雨の日は傘とカッパを併用させている。「どの程度の放射線量で将来どのような影響が出るか分からない。制限はやむを得ない部分もあるのでは」とも話した。
遠藤俊博・県教育長は「県としては、基準が出るのに長く待たされたという感がある。学校が始まる前に何としても出してほしかった」とした上で、「手を洗う、土を落とすといった対策は基準に関係なく全学校で実施すべきだ。児童生徒の被ばくが少なくなるよう全校に指導する。基準を超えた13校・園では一日も早く、専門家を交えた説明会を開きたい」と述べた。
毎日新聞 2011年4月19日 22時44分
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