福島県郡山市出身です。今回福島は、地震と大津波だけでなく、今も予断を許さない福島第1原発事故に見舞われました。原発は人間がつくり出したものだけに県民の気持ちは複雑で、私も素直に「頑張って」と声を掛けることができません。
原発事故は、人間が神の領域に近いエネルギーをコントロールしようとした不遜さに対する、国民全体へのしっぺ返しのように感じます。神の啓示と受け止めるべきです。しかし、それがなぜ生活弱者の東北地方を襲ったのか、不思議です。
一極集中の東京では膨大な電力を消費し、それを賄うため、福島や新潟では無理に原発を稼働してきたのではないでしょうか。防災は二の次にされてきたとしか思えない。今回ばかりは怒りがこみ上げてくるのです。地震と津波だけで十分大変なんですから、原発の苦労なんて本当はしなくていいものなんです。私自身テレビで「頑張ろう」と呼びかけながら、自分の声がどこか空疎に感じます。
原発周辺では永久に土地を放棄しないといけなくなるかもしれません。そのことを見据えたまつりごとをしてほしい。東京都には、築地市場移転予定地の豊洲(江東区)に仮設住宅を造って避難者を受け入れることも検討してほしいです。
被災地以外の人々は農作物への風評被害を取っ払い、福島県産品をいっぱい食べてもらいたい。今や「放射能がうつる」「福島の女性を嫁にもらうな」などというひどい差別まで広がっており、人間の尊厳さえ奪われかねない。東北の人々の我慢強さが裏目に出ないか心配です。のどもと過ぎれば熱さ忘れるで、時間がたてば被害が忘れ去られてしまうのではないかと不安です。今回ばかりは福島の人々はしっかりと怒らないといけません。みんなでそれを支えましょう。
頑張ろうというきれい事では、もうどうにもならないところにきていることを国全体で認識すべきです。【聞き手・山寺香】
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■人物略歴
15歳まで郡山市で育つ。舞台、映画に多数出演。63歳。
毎日新聞 2011年4月13日 東京夕刊