中沢常務理事の報告は左記の通りである。
イタリアのラルデレロ地区は、世界で初めて地熱発電が行われたところですが、幅15
キロメートル長さ23キロメートルに及ぶ地域での温泉源のほとんどが、80年にわたる地 熱開発の結果全滅して、僅か残っている温泉も泉温の低下、ゆう出量の減少をきたしてい
る事が学者により報告されています。・
又環境庁の企画調整局の報告(昭和55年11月、「エネルギーと環境」海外事情調査報
告書)によれば、アメリカでは世界の十指に数えられる間欠泉が地熱探査のボーリング
の時点で完全に止り、地熱開発が行われた7地域のうち4つの地域に大きな影響があり、間欠泉枯渇があり、3つの地域の小さい地域の間欠泉が停止しています。
ネバダ州の「ベオワワ・カイザー」では、世界的に著名であった問欠泉の停止が地熱
調査のボーリングの直後に起きており、同じネバダ州のスティームボートスプリングで
も世界的間欠泉と温泉の完全なる破壊が起きています。
又、ニュージーランドのワィラケイ地熱発電所の周辺では、自噴地域の完全なる破壊
がおきて学術的に貴重であった間欠泉のすべてを失っています。
このように諸外国でも地熱発電事業の開発を行ったすべての地域に多大な影響が見ら
れ、温泉の完全停止、間欠泉の大規模の破壊があったことを報告しています。
昭和41年に岩手県松川温泉のすぐ近くに松川地熱発電所が日本ではじめて開かれて以
来現在6カ所の地熱発電所が操業されていますが、これらの地熱発電所の周辺の温泉源に著しい異常現象が起きています。
秋田県鹿角市八幡平にある大沼地熱発電所の周辺の温泉では、昭和46年8月に発電の
操業を開始してから、次第に温泉、ゆう出量に異常が起り「トロコ温泉」では完全に自
噴が停止し、営業不能になっております。「赤川温泉」では54度あった泉温が次第に減
りはじめ、現在では34度で入浴することができなくなりました。鹿角市が補助500万円を出してボーリングして50度の温泉を地下200メートルのところからくみあげていますが、従来酸性泉であったものが、アルカリ性の温泉に変ってしまいました。
「銭川温泉」では7つの温泉がありましたが、そのうちの4つの源泉の温度が著しく低
下し、89度あった源泉が47度と実に42度の低下となってしまい、このうち2つの源泉が全く枯れてしまっています。又ここは地熱が高く、有名な「おんどる療法」を行っていましたが毎年温度が低下しつづけて駄目になるのは時間の問題だとされてます。
又「澄川温泉」も秋田県衛生科学研究所の調査によると、昭和51年より泉温が低下し
ゆう出量の減少が見られたと報告されています。「後生掛温泉」では有名な「泥地獄」が乾いたり噴気の移動が大規模にはじまって無気味な現象が起きてます。「大沼温泉」は地熱発電所開始の時点で枯渇現象が起きて、地熱発電所から熱水でわかした真湯を利用しています。又「蒸ノ湯温泉」は地すべりが出て半壊してしまいました。
このように八幡平大沼地熱発電所の周辺では、遠くはなれた「志張温泉」を除いたすべての温泉に異常が起っています。
岩手県松川地熱発電所周辺の温泉は2ケ所しかありませが「松川温泉」では泉温
の低下が起き、岩風呂は水位が1メートルも下っています。同じく岩干県葛根田地熱発電所周辺では操業を開始したばかですが大きな地滑りが起っており学者間で問題にしていす。
宮城県にある鬼首地熱発電所周辺では、荒湯地獄の泥火山が大規模に乾いてしまって
いますし、「宮沢温泉」では間欠泉が止ってしまっています。
大分県の九重町には、大岳地熱発電所と八丁原地熱発電所の2つ発電所があり、九
州電力が大規模な開発を行っています。ここでも両地熱発電所にはさまれた「筋湯温泉」や「河原湯温泉」に異常が起っています。筋湯温泉は27源泉あってその大部分に泉温の低下、ゆう出量の減少が見られています。中でも「筑後屋源泉」は泉温が10度も下り、ゆう出量は毎分96リットルであったものが25リットルと4分の1になっています。
又「ひぜん湯」では4つあった源泉の3源泉が完全に枯渇川を隔てたところのある1つの源泉も、ゆう出量、泉湿に著しい異常が起きています。又「河原湯」では2つの共同浴場のいずれもが、泉温69度あったものが57度と低下して冬期問は浴槽を4分の1小さくして利用しているという有様です。
ここは有名な地獄地帯ですが小松地獄、大岳地獄、泥地獄、小地獄とすべての地獄の噴気が弱まり地温が著しく低下し、昔から湯田と称して地獄の温度で温めた湯を稲作に利用していたのですが、これもできなくなってしまいました。今では地熱発電所から熱水の供給を受けてやっています。泥地獄、小地獄では高温の湧泉が全く水になってしまっています。
この九重町に、昭和50年4月21日にマグニチュード6.4という大地震が起きています。そして大きな被書が出ました。地熱発電のせいかどうかわかりまが大岳地熱発電所開始以後に起きたものであることには間違いありません。
秋田県大沼地熱発電所周辺でも大沼地震を記録しています。このような地震の例は外国でも報告されています。
(『温泉』第50巻8月号P.24 昭和57年8月1日)
また、昭和58年度会員総会において岐阜県下呂温泉、静岡県修善寺温泉、群馬県草津
温泉の代表より「地熱発電開発に関する既存温泉地の温泉源の保護について」の議題が横
出され、この決議にもとづき9月22日、日本温泉協会は大野名誉会長、榎本会長、大島技術部委員長、さらに群馬県温泉協会長・木暮敬、静岡県温泉協会長・木村武志、下呂温泉保護協会長・矢澤鐘三、以上の連名により、関係省庁および関係先へ陳情を行ない、無秩序な地熱開発の反対を強く訴えた。
既存温泉に影響を及ばす恐れのある地域における地熱発電開発に反対する陳情書
1要旨
既存温泉に影響を及ばす恐れのある地域における地熱発電開発を中止されたい。
特に群馬県草津温泉、静岡県湯ケ島温泉、岐阜県下呂温泉の3地区周辺の地熱発電開発は、即時中止されたい。
2、理由
日本国民にとって温泉は保養、休養、療養のため欠くことのできない天恵の資源であるところ、社団法人日本温泉協会は、早くより地熱エネルギーの開発特に地熱発電による既存温泉への影響について、痛く憂慮していたが、昭和56年度会員総会に於いて、群馬県草津温泉から提出された議題「地熱問題について」を採択し、地熱エネルギー開発特に地熱
発電開発が既存温泉に及ばす影響を憂慮して、温泉源の保護につき関係先へ運動を展開し
てまいりました。 然しながら、その後はサンシャィン計画に基づき資源エネルギー庁、新エネルギー総合開発機構、電気事業者などにより地熱発電開発促進調査を推進し、まず中部電力㈱が昭和57年度の春以来、岐阜県小坂町の御岳山麓一体で地熱発電のための調査を実施しております。これにつき下呂町は御岳山系の熱源が泉源とされる下呂温泉源に影響を及ぼすことは、必至であるとして泉源保護の立場から町全体がこの発電調査に反対しております
次いで、今年度に入り新エネルギー総合開発機構は、静岡県天城湯ケ島地区を調査地域に
決定したため、この地に隣接いたします修善寺町は、これらの調査その後の地熱発電に対
し、泉源への影響に強く危倶の念をもち地元天城湯ケ島地区温泉事業関係組合その他、広
域の関係筋の一致した要望として伊豆湯河原温泉を含む伊豆全地域を地熱発電開発促進調
査地域より除外してほしいと要望しております。
下呂温泉は昭和49年より、修善寺温泉は昭和57年より集中管理システムを完成し、温泉保護と有効利用を実施しております。そこで、これら各地の要望が当協会昭和58年度会員総会を岐阜県下呂町において開催いたしましたところ、岐阜県下呂温泉、静岡県修善寺温泉並びに群馬県草津温泉の会員代表より「地熱発電開発に関する既存温泉地の温泉源の保護について」との議題として提出され満場一致の賛成を得て、陳情要旨の如く採択されました。よってここに会員総会の総意に基づき、周辺温泉源に影響を及ぼす恐れのある地熱発電開発事業を中止されんことを陳情いたします。
添付参考資料
1、群馬県草津温泉の陳情書(略)
2 静岡県天城湯ケ島温泉の陳情書(略)
3、静岡県修善寺温泉の陳情書(略)
4 岐阜県下呂温泉の陳情書(略)
5、社団法人日本温泉協会の陳情書
スイスのバーゼルと言うところで、地熱エネルギー会社が地震を誘発して建物などに損害を与えたとして提訴されたそうです。
Markus Haering氏の会社は、地熱を利用した発電所を計画していたそうで、このプロジェクトには地元の政府も関わっていたそうです。しかし、その掘削が原因で地震を誘発し、このプロジェクト自体が2006年に中止されたそうです。
原因はその掘削によると思われる地震が発生したことで、死傷者などいなかったものの900万ドルもの損害に繋がったそうです。その後の政府による調査で、今度この掘削などを続けると類似した地震によって毎年数百万ドルもの被害が出ることが予想されることが明らかになり、先週になってこのプロジェクト自体が完全に停止されたそうです。
この会社のへーリング氏は先日裁判所に出廷し、そこで故意にこのような事態を引き起こしたわけではないと話し、更に地元の人達もこの危険性には気づいていたと話したそうです。
更に、掘削がPetit-Huningueエリアという場所で行われる前は、これに起因する地震の知識はわずかしかなかったと話したそうです。
ちなみに、この掘削が原因で発生した地震の内、一つはマグニチュード3.4にも達したそうです。
スイス政府の調査報告では、このままプロジェクトが続けば15%の可能性で最大5億ドルもの損害を伴う地震を誘発する可能性があると結論づけたそうです。
しかし、それでもこのバーゼルの町の下を走る活断層には影響を与えることはないと見られているそうで、この活断層は1356年に都市を大損害させた巨大な地震を引き起こしているそうです。
今回の裁判の判決は来週にも言い渡されるそうで、へーリング氏が故意に資産に損害を与えていると認められれば、最大で禁固5年が言い渡される可能性があるとのこと。
独立行政法人 国際協力機構の発表
北ネグロス地熱開発事業
全エネルギー消費量の約70%を輸入原油に依存している比国では、国産エネルギー資源開発がエネルギー政策上の最重要課題の一つである。国産エネルギーの開発は、全電力消費量に占める国産エネルギー利用の比率を、2005年までに50%以上とすることを目標に進められており、これまで地熱、水力、国産石炭、天然ガスの開発が行われてきた。特に、地熱開発は火山国である同国特有の資源として比側も積極的に進めており、1995年末現在、地熱発電所は全発電設備容量9,700MWの内およそ12%の1,150MWを占めている。今後も2005年までに、本事業を含めた940MWが新規に開発される予定である。
本事業は、国産エネルギーである地熱資源をベースロードとして開発し、旺盛な電力需要増を示すビサヤス系統に安定した電力を供給することを目的に、ネグロス島北西部西ネグロス州の地熱資源を開発し、地熱井の掘削、蒸気輸送・還元設備の調達・据付、40MWの発電所の建設を行うものである。