2011年4月4日22時53分
福島第一原子力発電所で問題になっている高濃度の放射能汚染水の保管場所確保と、設備の浸水防止のため、東京電力は4日午後7時すぎ、原発内にある比較的汚染度の低い水を海に放出し始めた。今回の事故で、汚染された水を意図的に放出するのは初めて。数日かけて計1万1500トンを出す。
原子炉等規制法に基づき、汚染や災害が発生するおそれがある場合の「応急の措置」として、東電は経済産業省原子力安全・保安院に計画を報告、了解された。
この放出の影響を試算した東電によると、原発から1キロ以遠の魚や海藻を毎日食べたとしても、年間に自然界から受ける放射線量(2.4ミリシーベルト)の4分の1程度としている。
東電によると、集中廃棄物処理施設にある1万トンを放出する。2号機のタービン建屋地下などにある高濃度の汚染水の流出を防ぐため、あらかじめ処理施設にある汚染濃度の低めの水を外に出すことで、高濃度汚染水の保管スペースを確保するという。
ほかに、5、6号機の周りの地下水をためている升の計1500トンも放出する。5、6号機には周囲から地下水がしみ出し続けており、非常用発電機など地下にある安全上重要な設備が水没するのを防ぐという。
放射能で比べると、2号機の汚染水が放射性ヨウ素で1ccあたり数百万ベクレル程度なのに対し、集中廃棄物処理施設の水は6.3ベクレル、5号機の水は1.6ベクレル、6号機の水は20ベクレル。周囲の汚染された雨水と同程度の濃度だが、原子炉等規制法が定める海水での濃度の基準の100倍程度にあたる。放出する放射能の総量は1700億ベクレル。
汚染度の低い水1万トンに含まれる放射能の量は、2号機の高濃度汚染水10リットル程度に含まれる量と同レベルにあたる。
汚染水の貯蔵場所をめぐっては、新たな仮設タンクの設置や静岡市から提供された鋼鉄製の大型浮体式構造物の利用も検討されてきたが、到着を待つ余裕がないという。ポンプとホースを使い、1〜4号機南側と5、6号機近くにある放水口付近から流す。
放射性物質を含む水は、通常時は低濃度であっても、そのまま環境中に出すことは許されていない。今回の判断について、東電は「汚染水の量が非常に多く、時間的な問題もあって放出を選択した。地域の皆様に申し訳なく思っている」と謝罪した。保安院も「やむを得ない」としている。