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3.11大震災
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幼稚園バスに津波 地震後発車、のまれる 石巻

春音ちゃんら5人が亡くなった現場に花をたむけに訪れた西城さん=石巻市門脇町

 焼け焦げ横倒しになったワゴン車に菓子や花が添えられていた。がれきと化した石巻市門脇町。地震後、園児を自宅に帰そうとした幼稚園の送迎バスが津波にのみ込まれ、五人の幼い命が奪われた。「高台にある幼稚園に残っていれば助かったのになぜ…」。遺族はやるせなさを募らせている。

 亡くなったのは、同市日和が丘4丁目の私立「日和幼稚園」に通う4〜6歳の男児1人、女児4人。
 斎藤紘一園長(66)らによると、11日の地震直後、亡くなった5人を含む12人を乗せワゴン車が園を出た。門脇町や南浜町方面に住む7人を門脇小で降ろした後、大津波警報に気づき園に引き返す途中、津波に巻き込まれた。
 園児は14日、変わり果てた姿でワゴン車の周囲で見つかった。保護者は焼け残った衣服などで子どもの身元を確認した。男性運転手は一命を取り留めた。同乗していた女性職員は今も行方不明。門脇小で降りた7人は無事が確認された。
 犠牲になった5人は大街道地区や蛇田地区に住んでいた。いつもは津波が直撃した南浜町、門脇町を通らないルートで送迎されていた。
 斎藤園長は「大きな地震が起きたら園にとどめるのが原則だ」としながらも「園庭に避難した子どもたちが不安がったり寒がったりしたので、親御さんの元に早く帰そうとした」とバスを動かした理由を語った。
 会社員の西城靖之さん(42)=同市大街道東1丁目=は次女の春音ちゃん(6)を失った。
 「子どもは大人を信じてバスに乗ったはず。それが地獄行きとは知らずに。誰かを責めても切なくなる。こういう悲劇があったことだけは記録に残し、教訓にしてほしい」(大友庸一)


2011年03月27日日曜日