東日本大震災

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東日本大震災:地デジ設備改修費だけ残った 津波で家失い

津波で壊れた自宅前に立つ鈴木澄雄さん。右後方の山上に共聴アンテナ設備がある=福島県いわき市で2011年4月18日、花牟礼紀仁撮影
津波で壊れた自宅前に立つ鈴木澄雄さん。右後方の山上に共聴アンテナ設備がある=福島県いわき市で2011年4月18日、花牟礼紀仁撮影

 東日本大震災の津波で約80人が死亡・行方不明になった福島県いわき市平豊間地区で、テレビの地上デジタル(地デジ)化に対応する費用の支払いが課題になっている。地区の約6割に当たる約400世帯が加入する共聴アンテナ設備組合が約3500万円をかけて設備改修し、うち約900万円を3年間で業者に分割払いする予定だったが、多くの住民が家を失い、避難生活を送っている。組合役員の住民は「地区に人が戻らないと、借金も返せない」と話す。

 組合は昨夏、今年7月のアナログ停波に向けてアンテナ設備を改修。並行して約40年使用していた各戸への引き込みケーブルも最新のものに更新した。約3500万円の費用を要したため、加入世帯から5万円ずつ徴収するなどして2600万円を支払い、残る900万円は毎年徴収する維持費から分割で支払うはずだった。

 だが、津波で地区の多くの家が破壊された。アンテナ設備組合副組合長を務める元船員、鈴木澄雄さん(72)は妻や孫娘と高台に逃げて無事だったが、自宅はほぼ全壊した。続いて起きた福島第1原発の事故で他県へ避難した役員もおり、「地デジ問題」を協議する役員会の開催のめどは立っていない。

 残額の最初の支払時期は1年後。鈴木さんは「一時的な出費を抑えるため分割にしたのがよかったのかどうか。責任を感じる」と言い、復旧の行方を気にしている。

 地デジ化を所管する総務省は現在、被災地の地デジ設備の被害調査を進めており、アナログ停波時期の先送りを含めた支援策を検討している。だが、同省地上放送課は「設備再建時の補助は考えられるが、既にある設備で生じた借金を補助するのは難しい」との見解だ。【花牟礼紀仁】

毎日新聞 2011年4月19日 10時57分(最終更新 4月19日 11時09分)

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