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東海原発、備えは?「想定外」に関係者困惑

津波が押し寄せ、浸水した非常用発電機の海水ポンプ(東海第二原発で、日本原子力発電提供)

 東日本巨大地震による福島第一原子力発電所の事故は、原子力関連施設が集積する茨城県にも衝撃を与えた。

 日本原子力発電東海第二発電所(東海村)が津波被害を受け、非常用発電機1台が停止したほか、原子力災害時の防災拠点施設「県原子力オフサイトセンター」(ひたちなか市)が地震の揺れで停電し、一時使えなくなった。大地震と原子力災害の両方にどこまで備えるべきか、関係者は頭を悩ませている。

 ◆津波被害◆

 地震発生から2分後の11日午後2時48分、東海第二発電所は安全に自動停止した。しかし、その後に津波に遭い、非常用発電機3台のうち1台が海水につかって停止した。日本原子力発電によると、高さ3メートルまで観測できる発電所の潮位計が振り切れていた。

 福島原発は地震ではなく、津波で非常用電源が水につかり、使えなくなったことが放射能漏れ事故につながった。日本原子力発電は2009年から、防波堤となる護岸のかさ上げ工事など津波対策を強化。無事だった非常用発電機2台は対策を講じた場所にあったが、停止した1台があった場所はまだ工事途中だった。

 3台とも停止していれば、福島原発と同じ事故につながった可能性もあり、同社は「津波対策の工事をしていたため、残り2台の被害を防げた。今後も対策を強化する」としている。

 ◆緊急時の備え◆

 原子力災害時の前線基地となる県原子力オフサイトセンターは、地震発生から約2時間半後、非常用発電機の配管が地震の激しい揺れで破損し、全館で停電した。テレビ会議や放射線予測のシステムが翌12日正午過ぎまで約20時間、使用不能になった。

 また、県内41か所で大気中の放射線量を監視しているモニタリングポストも停電が長時間続いたため、通常3〜6時間を想定しているバッテリーが切れ、一時すべて使えなくなった。

 県は「オフサイトセンターの機能が停止しても県庁で対応できた」とし、モニタリングポストについては「別の監視装置を北茨城市などに設置し、放射線量を独自に観測している研究施設からデータを取り寄せた」と特に問題視はしていない。

 ただ、東京都市大学原子力政策研究室の平野光将教授(リスク評価)は「致命的なことではないが、継続して観測を続けることに意味がある。長時間対応できるよう今後対策が必要ではないか」と指摘している。

 ◆「根底から覆る」◆

 今回の事故を巡っては、関係者が「災害対策の想定が根底から覆った」(県原子力対策課)と口をそろえる。これまで原発の事業者や県、村などが安全対策の基準にしてきた国の指針は今後、大きく変わる可能性もあり、県は「福島原発が収束すらしていない現時点で、どこまで備えればいいのか見当もつかない」(同課)と打ち明ける。

 原子力安全研究協会(東京都)の松浦祥次郎理事長は「オフサイトセンターやモニタリングポストは壊れないにこしたことはない。ただ、今回のような大地震に耐えられる耐震性を保つにはコストがかかるし、非常用電源を長時間動かす燃料を常備するには防火上の安全性確保という問題もある。その兼ね合いを見ながら改めて議論していく必要がある」と話している。(沼尻知子)

2011年3月30日00時02分  読売新聞)

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