ニュージーランド、NZという略称があるこの国を旅したことがある。自然を生かした多様な発電をしていることを知った。
首都ウェリントンの海を見下ろす丘の上には五、六基の風力発電機があった。巨大なプロペラの音は耳鳴りがするほどやかましかった。北島の火山帯にあるワイラケイ地熱発電所では水蒸気が幾重にも上がり、タービン音が響いていた。
風力や地熱発電は立地が限られ送電線延長も長くなり、採算性はまだ低い。それでも自然重視の電源開発は今も変わらないようだ。NZ経済開発省の二〇一〇年の統計だと、全発電量に対する水力の比率が56・4%で、地熱、風力を合わせた再生可能エネルギーは72%に上る。
温室効果ガスを排出する火力発電所は全人口の四分の三が住む北島に集中している。逆に主産業が畜産と観光という南島では、川と湖を活用した水力発電で必要量の九割以上を賄う。「非核宣言」をし、原発は一カ所もない。
人口約四百三十万人。国民は節電に努め、消費財購入など暮らしは質素。余暇はガーデニングやスポーツを楽しむという生活様式だ。日本と単純に比較はできないが、二つの国はくしくも大きな地震に見舞われた。
NZが地形や気象に合った中小発電所をきめ細かく建設し、近隣市町村向けの電力をつくる姿は参考になる。 (山本勇二)
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