IS――正式名称「インフィニット・ストラトス」。
元々は宇宙空間での活動を想定して開発されたマルチフォーム・スーツだったのだが、ISが
発表されてから間も無く起きたとある事件によってその驚異的な戦闘能力が露見。
開発者の意図とは裏腹に飛行用パワード・スーツとして軍事転用が行なわれていった。
だが、ISには一つだけ致命的とも言える欠点がある。それは――――どういうわけか女性に
しかISは動かせない事。
この欠点により、世界は実際には平等とは言い切れない男女平等から急速に女尊男卑の世界
へと変わって行った。いやまぁ、元々の世界でも一部は女尊男卑だったような気がしないでも
無いんだけどね俺としては。
……さてさて、ここでISの説明をしたのには訳がある。
先程も言った様にどういう原理化は知らないがISは女性にしか動かせないものである。
ここで問題。もし、もしもだ。ISを動かせる男が存在したらどうなると思う?
世界的に大ニュースになる? ノンノン。世の男からヒーロー的扱いを受ける? ノンノン
ノン。世の女性から好奇心向けられまくる? ノンノンノンノン。
正解は――――徹底的に政府の手によって隠蔽されて監視と言う名の軟禁状態に晒される、
だ。正確には半軟禁状態か。そこそこ自由はあったぞ。
そんな感じで、男なのにISを動かしてしまったおかげで華の中学三年間を黒服マッチョメン
ターミネーター風味の監視下かつ専用の施設で過してしまったのがこの俺、白河 雷人(しらかわ
らいと)である。学業の方は通信教育とか政府の人の直々コーチやら何やらでどうにかなったが、
問題は入学先。この状態では間違い無く高校三年間も同じ目に合うだろう。
華の中学三年間を潰された身としては、同じく華の高校三年間も潰されてはたまらない。
でも手の打ちようが無いのが現実である。現実って非常だね。
「貴様に荷物だ」
そんな現実と一人自室(という名の軟禁部屋)で戦っていると、愛想という物が全く何も無い
黒服マッチョメンが部屋に入ってきて、手裏剣の如く封筒を飛ばして来た。
毎度毎度コイツは手紙やら何やらを手裏剣の如く飛ばしてくるんだが、何なんだろうねコレ。
その飛んでくる封筒は、どうせいつも通り政府の高官からの無駄に長くて読む気が失せる奴
なんだろうと思った俺は無愛想返ししつつ封筒をナイスキャッチ。
燃えるごみ用のゴミ箱をそばに用意してから、封を開けて出てきた手紙を読む。
「えーっと何々。この度はIS学園への御入学、誠におめでとうございます――って何ぃッ!?」
入っていた手紙はIS学園の合格通知。書かれている受験者の名前は白河 雷人。
驚きのあまり軽く三回は見返してしまったが、間違いなく俺の名前だ。
IS学園というのは、名前通りISの操縦者を育てるための学園で日本の国立特殊学校だ。
その門戸は非常に広く開かれていて、人種・国籍問わず世界各国から操縦者候補が集まる。
そして、ISの操縦者と言う事はIS学園に入学できるのは少女のみ。環境的に考えれば恐らく
教員も女性で固められているのだろう。
そんな訳なので、男でISを動かせる俺なのだがIS学園を受験した記憶も志望した覚えも無い。
と言うか今は世間一般では受験シーズン真っ只中の二月後半であり、IS学園の試験は二月の
中旬に終わってしまっている。
ってそうじゃない。そうじゃなくて!!
「おいこらちょっと待て! 一体全体どういうことだこれ!?」
「今回ばかりは答えてやろう」
受験も志望もした覚えが無い学園からの手紙に対して説明を要求すると、普段は何を聞いて
も無視する黒服マッチョメンが答えてくれる素振りを見せた。
……黒服マッチョメンが微妙に焦っているように見えるのは気のせいかね?
「先日行なわれたIS学園の受験にて、貴様と同じく男でISを動かした者が現れたとの事だ。
公式発表ではそちらが世界初のISを動かした男になるから、事実上は世界初のISを動かした
男である貴様もIS学園に入学させなければ色々とマズイのだ。
よって、勝手ながら政府が貴様の入学をIS学園に打診し、この結果となったのだ」
「……マジで?」
「残念ながらマジだ。マージ・マジ・マジーネ」
真顔で答える黒服マッチョメンだが、何故か後半は某魔法戦隊の母親の呪文だった。
言葉の作り的に本当だと強調できるけどさ、ここでボケるか普通。と言うか何故知っている。
……まぁ、それはともかく。どこの誰だか知らないが、ISを動かしてくれた人には感謝だ。
おかげでとりあえず高校三年間はIS学園の特性で自由に過せる。
そんな感謝を込めつつも、やっぱり誰が動かしたかは気になる所なので聞いてみる。
「で、そのISを動かした男って一体全体どこの誰なんだ? まだTVのニュースや新聞に載って
ないけど……アンタ等の上はもうとっくに知ってるから情報は来てるだろ?」
「うむ。本来ならば明日が情報の公開日なのだが……特別だ、貴様には先に教えてやろう。
貴様も良く知る人物だ」
そう言って黒服が取り出したのは一枚の写真。
ずずいっと近づけてくるその写真に写っていたのは――――――――
「い、一夏……だとぉっ!?」
正真正銘、紛れも無く幼稚園時代から中学入学までの付き合いである男ファースト幼馴染、
織斑 一夏であった。
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後書き
プロローグは原作1巻の冒頭よりほんの少し前からです。
なお、入っているネタは私の趣味・趣向が約10割。
……実は魔法戦隊は劇場版とVSしか見ていないのですが。
こんな調子ですが、生暖かい目で見ていただけると幸いです。