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[27248] 【自己満足】赤椿・After Days(原作:IS、『狂咲の赤椿第二期』)
Name: 篠ノ之空気◆a93b0f94 ID:67f59a6b
Date: 2011/04/17 05:16
 =前書き及び注意書き=


 この作品はその他板に作者が執筆した「狂咲の赤椿」の二部です。
 敢えてこの作品はチラ裏での連載であり、「自己満足」などをつけたのは、赤椿の終わりとしてはあれが文字通り「完結」であり、これから先に書く物語は作者の自己満足及び余談に過ぎないと明言いたします。
 つまりこれから先、ここに投稿されるのは本編に出す事が出来なかったシャルロットとラウラを出す事。箒さんが幸せに生きていく事。後は臨海学校とか、束さんがIS学園にいる事によって変わっていくだろう世界を単純に書きたいと思ったからです。
 ある意味、もうこの作品はISの二次創作というよりは「ISの世界観を借りてやっていく作者の思い描くIS」の世界であり、これから先、弓弦イズル氏が描くであろうISの展開などは半ば無視します。勿論、完全にガン無視、という訳ではありませんが、ここまで変化させてしまった以上、これを純粋なISの二次創作とは言えないものとなります。

 長々と書きましたが、つまりこの作品は「これから作者が好き勝手に書くよ!」という事です。なので更新も不定期であれば、突然強制終了、なんて言う事も可能性にはあります。
 こんな作品でも良ければ付き合っていただける人は作品の方でよろしくお願いします。それでは、作者でした。



[27248] 【AF】Prologue
Name: 篠ノ之空気◆a93b0f94 ID:67f59a6b
Date: 2011/04/17 04:15
 今日から日記をつけようと思い筆を取った。
 日記というものを付けるのは正直初めてだ。学校にいた頃、課題か何かの際には似たようなものはやっていたかもしれないが、こうした本格的に自分の思いを綴ろうと思い、筆を取ったという意味では初めてだろう。
 出だしからこんな文章だが、これでも悩んだ末、自分らしく書こうとした結果だ。将来、この日記を読み返す頃の自分はこんな私の文章をどう思うだろう。正直、それを考えるのも胸が躍る限りだ。
 今日という日は特別な日という訳でもない。が、やろう、と思い至った故の日記だ。我ながらこんな文章を無駄に並べ連ねるのもどうかと思うが、悩んだ末の筆である。
 書きたい、という事はたくさんあるが、どうにも筆にするのは難しい。とにかく言える事は今日から意識して、新しい生活が始まるという事になる。
 憎しみが消えきった訳ではない、まだわだかまりは抜けないが歩み寄りたいと思う姉さんがいる。私を必要としてくれた、生きていて良いと許してくれた友人達がいる。
 これからそんな生活を少しでも長く覚えていられるように、思い出せるように。どうかこれから綴られる日記がそんな楽しい日々で彩られる事を私は今日、この筆を置くと共に願う。





 * * *




 喫茶店がある。
 実に落ち着いた感じの内装の喫茶店だ。白と茶を基調とした配色に光を取り入れている内装には安らぎと温もりがある。そんな喫茶店のボックス席に座る男女が三人。私服姿の彼らは思い思いに自分らが頼んだのだろう飲み物や食べ物を摘んでいる。


「あー、春も終わりそうね。夏が来るわねぇ…」
「…日差しが暖かいですわね」
「これから鬱陶しくなるぐらいに熱くなるぞ?」


 からん、とコップに入った氷が揺れて音を響かせる。コップを握るのは鈴音だ。中のジュースを飲み干したようで、名残惜しげに氷を眺めている。肌に感じる暖かさを感じながら春から夏への移り変わりが迫っている事を実感する。
 その隣ではアイスティーを優雅な仕草で呑んでいたセシリアが心地よさそうに目を細めている。確かに陽気は暖かく、どこか眠りを誘うような温もりを秘めている。
 が、それも今だけの事と、一夏が小さく笑みを浮かべながらこれから日本の夏を知らないセシリアが味わうであろう苦痛を思い、ほくそ笑む。


「にしても、学校が無いって暇なもんよねぇー。入学早々、休校なんて笑っちゃうわ」
「仕様がないですわ。そもそも、その事態の原因は貴方でもある訳ですのよ?」
「…否定出来ない所がねぇ。まさかあの時はこんな騒動になるなんて思わなかったわよ」
「まぁ、束さんの受け入れと、それに伴う調整なんかで千冬姉も忙しそうだしな。楽しそうだけど」
「そうねぇ、本当に生き生きしてたわよねぇ。この前なんか上機嫌に私の頭撫でてきたし」
「え? 千冬姉が? 鈴の?」


 鈴音のぼやきにセシリアが少し呆れたように告げる。セシリアの言葉に鈴音は苦笑を浮かべながら呟く。それに合わせて一夏も今の現状を思い出して、それに伴って多忙の身となっている姉の姿を思い出す。
 それに同意するように鈴音が頷き、この前にあった出来事を二人に語った。あの千冬姉が上機嫌に、それも一夏以外の人間の頭を撫でる。ある意味、鬼などの称号が似合うあの千冬姉が、だ。


「……気に入られてますのね」
「…ふっ」
「……ぐぬぬっ…」


 セシリアがジト目で鈴音に告げる。それに対し、鈴音はふっ、と勝ち誇ったように鼻で笑って見せた。鈴音の反応にセシリアはただ悔しげに歯を噛む限りだ。そんな二人の仕草に一夏は苦笑して見ている。
 ふと、一夏は振り向いた。お、と彼は声を漏らし、軽く手を挙げる。その視線の先には彼女がいる。


「よぅ、箒」
「すまない。少し遅れた」


 そう言って席に着く彼女の姿をセシリアと鈴音は思わず凝視してしまった。セシリアと鈴音はそれぞれ、彼女たちの容姿に似合った女の子らしい格好をしているのだが、箒の格好はそれとは真逆の方向性を行っていた。
 白いYシャツに黒のベストを羽織っている。その下には黒いジーンズ。格好としてはおかしくはないが、どこかおかしい。以前の彼女のポニーテールがあれば印象もまた変わるのであろうが、今の彼女の髪型はショートに纏められたものだ。
 おかしい筈なのに違和感がない。これは一体如何に? とセシリアと鈴音は思わず顔を見合わせる。似合っているのが逆に困る、といった反応だった。そんな二人の反応に首を傾げつつも箒は一夏の隣に腰を下ろした。


「箒、それ、アンタ私服?」
「? あぁ、姉さんに選んで貰った。私はそういうのがわからんからな」
(あの人の仕業か…)
(あの人の仕業ですわね…)


 鈴音が訝しげに問いかけてくる事に首を傾げつつ、箒は自らが着ている服が姉の束に選んで貰ったのだと告げる。それに鈴音とセシリアは内心、大いに納得していた。今となっては深い付き合いになってしまった束を思い出して思わず苦笑。


「で? 今日はこれからどうするんだ?」
「んー。とりあえず注文しちゃってよ。私たちご飯食べちゃったから、アンタも此処で食べてから、どうするか決めるわよ?」
「なるほど、な。実際、学校が始まるまでにまだ日数はある訳だからな」
「そうだな。遊べる時に遊んでおかないとな! やっぱり!」
「一夏はその合間を縫って勉強しろ。じゃないとただでさえ遅れているのが遅れたままだぞ?」
「ぐっ…!」
「まぁ、そこはセシリアと鈴音が何とかしてくれるだろうから安心しろ」
「そ、そうですわ、この私が! 何とかしてみせますわ!」
「はぁ? 何言ってんの? アンタの頭でっかちの堅苦しい授業で一夏の勉強が進む訳じゃないじゃん」
「…い、言いましたわね? そもそも、鈴音さんは2組なんですから1組の私と一夏さんに構う理由なんて無いのではなくて?」
「2組言うな!! 幼馴染みの不甲斐なさを嘆いているだけよ。だ・か・ら、そんな幼馴染みを思っての私の授業は何の不思議もない訳よね? ただのお節介さん?」
「…ぐぬぬぬっ…!!」
「…ふぬぬぬっ…!!」


 互いに額を擦りつけ合わんばかりに距離を詰めて睨み合うセシリアと鈴音。今にもつかみかかって喧嘩を始めそうな二人に箒はぱんぱん、と手を鳴らしながら二人の名を呼ぶ。


「いい加減にしろ。煩いぞ?」
「だってこの人が!」
「だって此奴が!」


 セシリアと鈴音は互いに指を差し合いながら告げる。その息ぴったりな二人はまた視線を交わして睨み合っている。そんな二人の姿を見ていた一夏は小さく溜息。


「……ガキか? お前等」
「一夏は黙ってて!」
「一夏さん、うるさいですわよ!」
「……お前等の方が煩いと思うんだけどなぁ…」


 二人の同時に怒鳴られる一夏。納得がいかない、と言うように一夏は不満げに口を尖らせる。そんな一夏に小さく笑みを零しながら箒は軽く手を打ち鳴らすように合わせて告げる。


「ともかく。騒ぐなら後でゲームセンターに行くなり、何かで勝負でもして騒いでくれ。…そうだな、今日はゲーセンでどちらが多くUFOキャッチャーで商品を取れるか競うのはどうだ?」
「乗った!」
「乗りましたわ!」
「と、言う訳で午後はゲーセンだな」
「…いつもの流れ、って訳だよなぁ」


 こうして熱くなった二人は箒に乗せられるままに遊ばれるのだろうな、と一夏は思う。以前、似たような事があって箒がその漁夫の利を得ていた事がある。あれは確かケーキバイキングで時間制限内に定められた量を食べれば無料、という話だったか。
 一夏と箒は自分のペースで好きなものをつついていたが、セシリアと鈴音は乗せられるままに貪り食い合い、後に互いの自室で悲鳴を上げたという。今回は恐らく、箒が被った景品や、持ちきれなくなった景品を掻っ攫っていくのだろうな、という想像は容易に叶った。
 気づけば良いのに、と思うも、自分が口を出してもこの反応だ。本当にこの二人は仲良く自爆するのだ。喧嘩する程仲がよい、という彦はやっぱり正しいのだろうなぁ、としみじみと一夏は思う。


「…ま、良いか」


 仲が良ければそれに越したことはない、と。そうして夢中に何かにのめり込むのも良いだろう。自分も財布に響かない程度ならばやってみようかな、と思いながら一夏は未だに睨み合っている二人と、そんな二人を楽しげに見ている箒を見ながら笑みを浮かべた。





 * * *





「うわ~っ! 箒ちゃん、なにこれ、なにこれ! お人形さんがいっぱいだよーっ! ちっちゃいのから大きいのまでー!! ふかふかもふもふーっ!!」


 IS学園の学生寮。箒が住まう部屋には姉である束もまた一緒に住んでいる。その部屋の中央にどっさりと詰まれた人形の山に束は飛びついてはしゃいでいる。ひときわ大きい人形を胸に抱きかかえながらはしゃぐ姉の姿に箒は微笑ましいやら、恥ずかしいやらで何とも言えない笑みを浮かべる。


「何、今日、UFOキャッチャーで遊んで、その景品だ」
「うわー、箒ちゃんこんなにいっぱい取ったのー!?」
「いや、私は精々小物の一つ、二つぐらいだ。後はセシリアと鈴音が取ってくれた」
「へぇー、二人とも優しいね! 明日、御礼言わなくちゃ!!」


 言われても嬉しくないだろうな、と箒は我に返って財布を覗き込み、煤けた二人を思い出して小さく吹き出す。恨みがましい目で見られたような記憶もあるが、気のせいという事にしておこう、と箒はそっとその記憶を片隅にしまった。
 人形を物色しながら目を輝かせている束を何気なしに見つめる。見るからに子供だ。本当に無邪気で、自分の好きなように生きている。その姿は、以前は憎らしい限りであったものがこうも微笑ましい。
 変わるものだ、と思いながら箒はぼんやりとする。完全に束を受け入れた訳ではない。苛つく事だってあれば、その態度が時に腹立たしい時もある。…が、思えばそれもまた当然なのではないか、と思えるようになった。
 人間、全てが好きなままではいられないのだ。それを求めるのも、求められるのも困るのだ。人間には長所と短所がある。良い面と悪い面は常に表裏一体として存在しているのだから。
 それを、以前の自分は認められなかった。余りにも脆弱だったが故に、姉に、そして周囲に完璧を求めていたのだろう、と。今思えば情けない限りだ。…が、その思いを吐き出さない事もまた間違いだと教えられた。
 だからこそ、こうしていられる。まだここにいられる。それを噛みしめるように思い返しながら箒は束へと視線を向けた。そこには束のドアップが広がっていた。


「うぁっ!?」
「わーい、吃驚したー! 箒ちゃん、隙だらけだぞー!」
「……はぁ、まったく」


 ぴょんぴょん跳ねながら全身で喜びを表現している姉の姿に箒は溜息を吐く。姉らしく、無邪気なその姿を可愛いと捉える人もいるだろう。だが、どうにも疲れる、と箒は疲れた様子を隠さずに肩を落とした。
 そんな箒の眼前に何かが差し出された。それは白い兎だった。白い兎を差し出しているのは勿論、束だ。そんな束のもう片方の手には黒い同じデザインの兎が握られている。


「えへへー、箒ちゃんとペアルックー!」
「絶対に嫌だ」


 即答だった。一切の迷いも無かった。一刀両断の一言。箒は真顔で束に言い切った。
 箒の言葉を受けて、束の顔がみるみるうちに落ち込んだものへと変わっていく。つられたように頭についた兎耳も垂れている。今にも泣きそうな束は子供のように唇を尖らせる。


「…くくっ…冗談だよ、姉さん。まぁ、小さい奴だから携帯ぐらいにはつけられるだろ」
「……むーっ! からかったーっ! 箒ちゃんがまた私をからかったーっ!!」


 ぽんぽん、と頭を撫でながら箒が告げた言葉に束は最初はほっ、と安堵したように息を吐いたが、すぐに自分がからかわれた事に気づいたのか、両手を振り上げて威嚇するように箒を睨みつける。
 が、やはり普段の印象からかその姿に迫力はない。笑いが止まらない、と言ったように箒は喉を鳴らすように笑いながら、悪い悪い、と誠意のない謝罪を告げる。箒の反応に不満げに束はうーうーと唸っている。
 そして、何を思ったのか箒に飛びかかるように束は抱きついた。突然の姉の行動に箒は反応する事が出来ずに押し倒される。そのまま束は箒の体をまさぐるように触り出す。そして箒のポケットに入っていた携帯を素早く奪い取ってそのままころころと転がるようにして離脱。
 そして手早く箒の携帯に先程の白い兎のマスコットが携帯につけられる。同じく自分の携帯にも先程の黒い兎のマスコットをつけて、どや、と箒に見せつけるように掲げた。


「……はいはい、わかったよ。まったく…」
「えへへー、ペアルックー、箒ちゃんとペアルックー」
「…でも姉さんが白じゃなくて良いのか?」


 不意に思った疑問を箒は束へと投げかけた。彼女は確かにどちらかと言えば白兎の方がイメージに合っている。なのに自分の携帯につけたのは黒い兎だ。どういう事なのだろうか? と首を傾げる箒に束はにっこりと笑みを浮かべて。


「うん。良いの。だって箒ちゃんはどっちかというと、黒でしょ?」
「…まぁ、白という性分ではないが」
「これなら、箒ちゃんと一緒だと思うと、凄く嬉しいから!」


 えへへ! と。無邪気に笑う束は本当に誇らしげで、嬉しそうだ。そんな束に呆気取られるように動きを止め、そして吐息と共に体の力を抜いて肩を落とす。


「…なるほど、常に姉さんと一緒、だな。そうなれば」
「でしょ?」
「容赦なく汚そう」
「ひっどーっ!? えーんっ! そうやって束さんは箒ちゃんに汚されていくんだーっ!!」
「人聞きの悪い事を言うな」


 てい、と箒は気の抜けるようなかけ声と共に束の額にチョップをいれる。あいた、と痛くもないのに束は額をさすっている。


「姉さんは明日も会議だろ? もう寝ろ。私も寝る」
「うん、寝る寝るー」
「…自分のベッドにいけ」
「やだっ!」
「……なら勝手に入れ。まったく…」


 諦めたように溜息を吐きながら箒は寝間着に着替え始める。はーい、と気の抜けた返事をしながら束もいそいそと着替えている。
 着替えが終われば電気を消す。そして本来は一人用のベッドで二人は寝る。束が一方的に箒に抱きつくような形でだ。


「…毎度毎度…暑苦しい…」
「箒ちゃん、またおっきくなった?」
「…そして、毎度毎度揉むなっ!!!!」
「ぎゃいんっ!?」


 束はその悲鳴を最後に気を失い、強制的な眠りへと着かせられる。そんな束に溜息を吐きながら、箒は彼女に体にしっかりと布団をかけるように肩へと手を置き、自らの瞳を閉じるのであった。





 * * *





 今日も楽しいことがいっぱいあった。一夏達と昼食を食べてゲーセンで遊んだ。セシリアと鈴音は面白いようにUFOキャッチャーで競い合ってくれた。その分、戦利品もたくさん増えた。姉さんにプレゼントしたら案の定、喜んでいた。
 一夏とは他のゲームで遊んだりもした。一夏は、頑張ってくれている。私も頑張れているだろうか。こうして普通でいられる事。幼馴染みでいること。頑張る事でもないかもしれないが、このままでいたいと、私は思う。彼もそれに応えてくれる。だから私も応えたい。
 しかし、思い返せば姉さんには疲れさせられる毎日だ。最近ではやり返す事も覚えたが、やり過ぎると泣きじゃくるから本当に困った人だ。しかも胸を揉むし。大きくなったとかうるさい。むしろ姉さんの所為だ。本当に苛々する。
 不満に思っているように書いているが、今、思うと、どこかでこんな日々を望んでいたのだと思う。
 きっとそうだろうと。人はいつだって幸せになりたい。私はこんな有り触れたものを望んでいたのかも知れない。
 前はきっと、これ以上のものを望んでいたのだろう。だけれど、今を幸せに思えるようになったのは私も少しぐらいは成長していると思って良いのだろうか。前よりも求めるだけではない自分になれているだろうか。
 そんな自分になりたい。だから、明日も頑張ろう。頑張って生きようとそう思う。
 明日もまた楽しくなりますように。


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