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[26940] 【習作】機械仕掛けの武士、ハルケギニアに参上す(ゼロ魔×サガフロンティア1)
Name: 影慶◆e8c3975f ID:8985ce85
Date: 2011/04/07 17:59
ここ、ハルケギニアの一国、トリステインに1人の武士(もののふ)が舞い降りる。



ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは焦燥していた。トリステイン魔法学院生は2年生になった時に生涯のパートナーとなる者を得るため召喚の儀式を執り行う。現に他の生徒全てが召喚に成功しそれぞれのパートナーと親交を深めている。
しかしルイズだけが未だに召喚出来てない。時間が経つにつれクラスメート達が野次を飛ばしていく。

「…(なんで、なんで!成功しないの!?このままじゃ…)」
桃色の髪の少女ルイズがうめく。

「ミス・ヴァリエール…焦らないで、心を落ち着かせるのです。」
頭頂部がかなり寂しい中年の男が優しい口調で話しかける。

「す、すみません!コッパ…げふん、コルベール先生。
……宇宙の果てのどこかにいる私の使い魔よ!」

「宇宙?」
ポカンとするギャラリー達

「神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!我は心より求め、訴える!我が導きに応えよ!!」
やけくそ気味に絶叫するルイズ。その時…彼女達の頭上に光り輝く鏡が現れた。

「!やっやった!ゲートがっ…」初めて現れたゲートに成功を確信する。と、次の瞬間鏡から何かが漏れだした。

「炎?」
コルベールと褐色の肌の女生徒が膨大な力を持った炎に目を剥く。

「「!!!」」
鏡から巨大な火の鳥が現れた。
「「ちょっ…マジで!?」信じられないギャラリー達。
「やっ…やった!やった!やった!ふ、不死鳥だわ!!」興奮がMAXに到達したルイズ。しかし…

不死鳥はそのまま天高く羽ばたいていきその姿を消した。

「………えー、えーと、どういう事?」ア然とするルイズ。

「ワハハハハ!!逃げられてやんの!さすがゼロのルイズだ!」爆笑するギャラリー達。

「(…あれは、生物ではなかった。とてつもなく強力なエネルギーをともなった炎だ。しかし…あれ程の威力はスクウェアメイジでも…)…むっ!?」
コルベールが何かに気付く。

「ミス・ヴァリエール!!あそこを!」コルベールがルイズから少し離れた所を指差す。

「へっ?……!何あれ!?」
不死鳥らしき炎が通りすぎた所に何かが落ちていた。

「人!?…あ、違う、これは…」
「…ゴーレム…いや、ガーゴイルですな。しかしこれはっ…」
ガーゴイルらしき物体を見てうめくコルベール。青を基調としているが微妙に光沢やツヤがあり今まで見たこともない金属で出来ている。造形も信じられない程の出来だ。
王族や巨大な権力を持つ貴族でさえこれ程の一品を手に入れるのは不可能ではないかと思わせる。
全体から煙が吹き出したりあちこちが欠けたり凹んだりしていたがそんな事が全く気にならない程だった。
辺りにもガーゴイルの一部と思われる金属が散らばっているが、コルベールは何故かそれに恐ろしい程のオーラを感じた。

ガシャン!
「!」コルベールがガーゴイルがわずかに動くのを発見した。
一方のルイズは失意のどん底にいた。伝説の不死鳥に逃げられ目の前にあるのはボロボロのガーゴイル。これからどうしたらいいのか皆目見当もつかない。と、その時。
「ミス・ヴァリエール!このガーゴイルはまだ動けます!早く契約を!」

「!?はあ!?正気ですか!先生!?」

「このままでは留年してしまいます!背に腹は代えられません!」

「……(留年したら実家に…)」絶望的な恐怖を予感する。主に恐怖の源は母親だ。
「…我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔と為せ……えいっ」
やけくそ気味に口づけするルイズ。するとガーゴイルが光り輝いた。

「なっ何!?」突然の事態に身構えるコルベールと、へたりこむルイズ。

ギギギギギ…
ガーゴイルが動き出した。全身からよく分からない音が発生している。
「こっ…これは…」ガーゴイルが立ち上がりその姿を見たコルベールが改めてその全身に釘付けになる。
顔の部分が非常に人間に似ていて、腕や脚の関節まである。遠くから見れば中年の男性と間違えても仕方がない程だ。
その事に驚いていると

「ムッ……ぬぅ、な、なんだ!?」
ガーゴイルがしゃべった。
「「!?しゃ、しゃべった〜!?」」全員がビックリする。

「拙者は…確かにアルカイザーに敗れたはず…!?なんだ!ここは!?」
見慣れない景色に戸惑うガーゴイル。しかも周りに戦闘員とは思えない普通の人間達が大勢いる事にますます状況が飲み込めない。

「しっ失礼します。あなたはどなたか教えてくれませんか?」目を異常にキラキラ…いやギラギラさせたコルベールが話し掛ける。

「…ブラッククロスの幹部だ。それ以上は言わんでも理解できるだろう…
…失礼、礼儀を失していたな。おぬし達は何者だ?そしてここはどこか教えてもらえると有り難い。」

「ブラック…クロス?いえ、聞いた事がありませんが……あ、失礼しました。ここはトリステイン国内のトリステイン魔法学院で、私は教師を勤めています、ジャン・コルベールと申します」
「ちょっと」

「ブラッククロスを知らない!?馬鹿な…いや相当辺境のリージョンならば…リージョンシップ発着場は何処にあるかご存知か?」
「ねぇ、ちょっと…」

「リージョン、シップですか?なんでしょう、それは?」
「リージョン間を行き来する船だが…存ぜぬのか!?…という事はまさかここは別世界…」
どんな辺境のリージョンでも必ずリージョンシップは存在する。それが無いという事は必然的に別の世界となる。あの世界は開拓され尽くされ未開の地は存在しないのだ。

「ちょっと〜〜人の話を聞きなさ〜い!!」何度目かの絶叫をするルイズ。
「お、おおミス・ヴァリエール、そうでした。…え〜と、あなたの名は…」

「メタルア…いや、メタルブラックと申す。」

「…メタルブラック殿ですか…いや〜しかし意志のあるガーゴイル…あ、ひょっとしてゴーレムでしょうか?」

「ガーゴイルでもゴーレムでもない。種族はメカだ。」

「メカ…?聞いた事がないですね。…話は変わりますがメタルブラック殿、あなたはここにいるミス・ヴァリエールに召喚されたのです。そして…できれば彼女の使い魔になっていただきたいのですが…」

「使い魔…要は部下になれという事か?」
わずかにプレッシャーが増した。冷や汗を流すコルベール。

「…了解した。拙者は本来ならばすでに死した身、ならば新天地で新しい生き様を探すのも一興であろう。」

「!そうですか!よかった…」

「!仕方ないわね。不死鳥には劣るけど…」
ルイズが空気を読まない発言をする。

「おぬしが主(あるじ)か……むっ!?(底知れぬJPだな…)」

「何よ、不満?」

「いや問題ない…ところで左手甲に異常を感じるのだが。」

「!ルーンですね。失礼ですが拝見させてください。」

「ルーン?拙者は印術の心得はないが…」

「印術?いえ、ルーンはメイジと契約した使い魔に刻まれるものでして…おっこれは見た事がない単語だ…」

ルーンをスケッチし終わりメタルブラックに礼を言うコルベール。

「そうだ、ミス・ヴァリエールと親交を深められていかがですか?」

「そうだな。まだ知らない事が多い。お言葉に甘えよう。」
メタルブラック、ルイズが学院の方へ向かう。

「……」コルベールはメタルブラックの周りに散らばっていたカケラを凝視する。

「…妙な胸騒ぎがする。これはやはり…」
カケラを回収するコルベール。


ハルケギニアに参上した武士メタルブラック。彼が来た事によってこれからどのような事が起こるのかは誰も分からない。



※ガーゴイルとゴーレムがごっちゃになってました…恥ずかしい。若干修正しました。



[26940] 2話
Name: 影慶◆e8c3975f ID:8985ce85
Date: 2011/04/03 16:14

とある地で2人の異形の存在が闘っていた。1人はメタルブラックに似た姿のメカ。だが細部がそこそこ違っている。流線型の兜など西洋甲冑のような装いだ。もう1人はまばゆい程にオレンジ色に輝く全身鎧を纏った存在。2人は色以外瓜二つだった。

オレンジ色の鎧には仲間がいたが、途中からは一騎打ちを見守る事になった。それほど2人の放つプレッシャーが凄まじかった。

「…やるではないか、アルカイザー。」
メタルブラックに似たメカがうめくように称賛の言葉を放つ。

「お前もな…」肩で息をするオレンジ色の鎧ことアルカイザー。

「だが、もう終わらせよう。」
全身が光り輝くメタルブラック。

「!くっ…ダークフェニックスかっ!」
アルカイザーの仲間が引かざるをえなかった程の超必殺技に警戒するが。

「ゆくぞ!ダァークッ…フェニックス!!」闇色に包まれたメタルブラックがアルカイザーに迫る。

「っうおおおお~!!」耐える。ひたすら耐える。その時!

ピキーン

「真ッ!アルッ!フェニッックスッ!!」
神々しいフェニックスが現れた。そしてアルカイザーと融合する。

「なっ何っ!?」

「うおおおおおっ!!!」
アルカイザーのフェニックスはダークフェニックスをあっさり飲み込み、そして…メタルブラックを飲み込んだ。

「…メタルアルカイザー、お前は強かったよ。しかし間違った強さだった…」
血を吐くような声でうめくアルカイザー


「(全身が焼ける様な熱さだ…また、敗れたのか…結局拙者は強さというのを見誤ったのか…)」
メタルブラック…いや、メタルアルカイザーは目の前が光に包まれるのを感じた。

「(これが死か…アルカイザーの仲間…BJ&K、ラビットと言ったか…彼らは人の心を得たのだろうか…)」
あの2人をうらやましく思う。人の為に努力すれば人の心を得られるかもしれない。しかし彼の体はもう動かない。
「(生まれ変わりがあるのならば…人間になりたいものだ…)」


「む、…今のは?」
彼、メタルブラックは気付くととある部屋の中にいた。

「まさか、さっきの現象が夢というのか…」
メカは夢を見ないはず。充電モードに切り替わっている間は何も感じないはずだ。もっとも職業柄めったにそんな事はしなかったが。

「…どういう事だ?…変化が起きているのか?だが不思議な気分だ。」

少し離れた所にベッドがあり、そこに人間の少女が眠っている。

「コントラクト・サーヴァントとか言っていたな…」


昨晩


「さて、アンタは私の使い魔になったわけだけど」

「主、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。」

「な、何?」

「聞いたが、主達は貴族という者らしいな。聞いた事がない名称だったがそれは別として、貴族という役目を持つ者は誇り高き精神を宿しているようだな。」

「そうよ!敵に背中を見せない。それが出来ないのは貴族じゃないわ。」

「ならば、上に立つ立場の者として言葉使いを相応しいものにするべきであろう。」

「へ?え、あ、はい」カクカクと頷くルイズ。
何このプレッシャー

「続きを頼む」

「う…うn、えぇ、まず使い魔には三つの役目があるわ。一つは主との意志疎通…なんだけど」

「言葉は通じているな。」

「そうじゃなくて…使い魔は主の視界を共有したり、頭の中で思った事を感じたりするの。」

「…拙者には何も感じぬな。」

「私も…ま、まぁ人間…じゃなかった、人型の生命体なんて前例が無いし……で、二つ目は主のために薬草や苔などのマジックアイテムや秘薬の材料を探し出す。」

「この世界の地理、植物分布は分からないな。」

「…三つ目は主をあらゆる存在から守る事」

「…多少の敵なら不覚は取らぬ」
自分の姿を見る。最後の形態であったメタルアルカイザーの姿ではなくなっている。真アル・フェニックスというとてつもない超必殺技を受けパーツが吹き飛んでしまったか。

だがそれでもデビルテンタクラーや赤竜までのモンスターなら負ける心配はない。

「…ところで、さっき、コントラクト・サーヴァントとかいったか、どういう効果がある?左手甲に異常を感じる。」

「左手?いえ、主と意志疎通の効果を与える以外は効果はないはずだけど…ふぁ~~説明ばっかりで眠くなったわ。とりあえず私は寝るから…アン…メタルブラックはどうするの?」

「メカはモードを切り替えるだけで休める……敵もいないようだし久方ぶりに充電モードになるか…」

すでに寝入ったルイズに続きメタルブラックも充電モードに切り替える。

そして、夜が明けた。




ちょっと短いですが勘弁を。



[26940] 3話
Name: 影慶◆e8c3975f ID:8985ce85
Date: 2011/04/06 22:45
召喚の儀式の翌朝。

メタルブラックが起きて(通常モードに切り替わった)から1時間後にルイズが起きた。
「あ、メタルブラック、着替え…いえ、なんでもナイデス」
礼儀、作法に関しての説教が来ると察したルイズが自分で着替える。
メタルブラックを人間の男と見ていないためか羞恥は感じてないようだし、メタルブラックもヒューマン(人間)の文化を知りつくしている訳ではないので紳士らしく部屋を出るという事はしていない。
そして着替え終わり部屋の外に出ると…
「げ…」
「あら…ヴァリエール、今ごろ起きたの?」
褐色の肌の豊満な体つきの女性と出くわす。
「うるさいわね。ツェルプストー。」
嫌そうに返す。

「おぬしは?主のご学友か?」

「あら、近くで見るとちょっと風変わりだけどシブイおじさまじゃない。ガーゴイルには見えないわよ。っと、私はゲルマニア出身のキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アルハンツ・ツェルプストーと申しますわ。二つ名は「微熱」よ。」

「(この国の人間の名前はみな長いのか?)
メタルブラックと申す。種族はメカだ。ガーゴイルとは別物だ。」

「あら、失礼。聞いた事ない亜人名だけど、ま、これからゆっくり教えてくださればいいものね」

「ところで、二つ名とは?」
「メイジの特徴を表す異名ね。私は火のメイジだから「微熱」ってワケ」

「コラー!何色目使ってんのよ!色ボケ女!」

「ウフフッヴァリエールが召喚したあなたも素晴らしいけど私の召喚したパートナーも最高よ!フレイム!」
キュルケの背後に控えていた何かが現れる。

「(バジリスクに似ているな…)火をまとったとかげか…」

「!サラマンダー…」うめくルイズ。

「おほほほほっどうかしら!火竜山脈産よ!」

「…(強さは…バーゲストよりは数段上だな。ヘルハウンド未満といった所か)」
相手の能力を調べるメカならではの技能「スキャン」を使えばより詳細のステータスが解るだろうが今の所敵にならなさそうだし必要ないだろう。

「フンだ!メタルブラックだって強いのよ!そんなのに負ける訳ないでしょ!行きましょ!」
早足でどこかに向かう。

「あらら…すねちゃって…じゃ、またね。メタルブラック」

「先に失礼する」
ルイズの後を追う彼の後ろ姿を見てため息をつくキュルケ。側に控えるフレイムはさっきまで緊張状態だったが落ち着いたようだ。

「キュルケ殿が言っていた二つ名か、主にもあるのか?」
「…特にないわよ。」
「?」微妙に空気が変だ。
「何処に行くのだ?」
話題転換のために聞く。
「…今から朝食だから食堂…あ!メタルブラックあなた食事はいつも何食べてるの?」

「基本的に必要ない。大半のメカはオイルなどの燃料が必要だが拙者は半永久的に活動できる様に改造されているからな。
(…京茶のオイル割りは流石になかろうし、地味に辛いな)」
リージョンの一つ「京」で飲める茶を思い出す。

そして食堂についたが…
「…出鱈目な広さだな。」驚きを越して呆れるほどだ。

「使い魔はいないのか…主、拙者は外で待機しておく。」

「え!?…ん、分かったわ。(食事でしつけようと思ったけどよく考えたら墓穴よね…助かったわ。)」

「一人当たりの食事の量が尋常ではなかったな。拙者の世界のヒューマンとは燃費率が違うのか…」

そして、朝食の時間が終わり、ルイズと合流し教室に向かう。

「使い魔も入られるのか?」

「えぇ、問題ないわ。特に今日はサモン・サーヴァントの翌日で使い魔のお披露目の意味もあるし」

教室に入ると…
「…凄まじいな。」
教室の後ろに集まっている使い魔達。メタルブラックも見た事がない種族やモンスターだらけだ。

「(こうして考えてみると恐ろしいな。これほどのモンスター達が無抵抗で使い魔になるというのは…)」

メタルブラックも使い魔達のいる所で待機しようとするが…
「あ、アンタは、っとと、メタルブラックはいいのよ、隣に座りなさい。」
「了解した。」
ルイズの隣に座りしばらくすると、恰幅の良い中年女性が入ってきた。
生徒達が挨拶する。教師のようだ。

「みなさん、おはようございます。春の使い魔召喚は成功の様ですね。このシュヴルーズ、春の新学期に様々な使い魔を見るのが楽しみなのですよ。」

と、その時
「ミセス・シュヴルーズ、ミス・ヴァリエールは公爵家である実家から高級品ガーゴイルを持ってきたんですよ!」小太りな少年が愉快そうに野次を飛ばす。
「違うわよ!この風邪っ引き!ちゃんと召喚に成功したわ!」

「嘘つけ!ゼロのルイズが召喚なんて成功する訳ないだろ!」
すると突然彼の口に赤土色の粘土が突っ込まれた。と同時にルイズの口にも同じように粘土が張り付いている。

「貴族同士でそのような口汚い口論をするべきではありません。反省しなさい。」

「(最低限の所作でこの様な術を発動するとは、なかなかのものだな。)」
雰囲気的にカードの秘術のような術だ。
「(ところで、ゼロとはどういう事だ?彼女のJPは膨大だった。)」

そんなやり取りのさなか、大胆に胸元を開けたフリルつきの服を着た男子生徒がメタルブラックを凝視していた。

数分経ち粘土も取ってもらい、ルイズは熱心に授業を聞いている。
すると、「では…次に錬金をしてもらいましょうか……ミス・ヴァリエールお願いできますか?」

その瞬間教室中が凍りつく。
「?なんだ?この空気は…」
「先生、ミス・ヴァリエールにやらせるのは止めた方がよいかと…」と生徒。

「何故ですか?彼女は座学の成績も優秀ですし、今日の始めを除けば授業態度も真面目ですよ。」

「ヴァリエール、止めて」とキュルケ。

「(何故こうも緊迫した空気になる?何が起きるというのだ?)」
少し警戒するメタルブラック。
「…」人知れず教室を出る小柄な青髪の少女。
「?」1人、少女に気付くメタルブラック

「やります。」
殺気立ってるルイズ。
そして教壇近くに移動し、目の前にある小石をにらみつける。

「落ち着いて…大切なのはイメージですよ。」

「分かりました……えぃっ!」と次の瞬間
ドカーン!!
爆発。そう爆発が起きた。
「!?くっ!」急いでルイズの元に駆け寄るが、教壇や周りの机等が吹っ飛び、シュヴルーズは気絶していた。そして当のルイズは…
「…ちょっと失敗したみたいね」
煤まみれの顔でふんぞり返るルイズ。
「なんでドヤ顔…?」
机の下に隠れていたキュルケがつっこむ。
「だからゼロのルイズにやらせるなって言ったんだよ!」と小太り少年。
「お前は言ってないだろ!」と彼の友達
「…(あの爆発…なかなかの威力だった。)…ゼロ?」

「!…」ビクっとするルイズ。


授業は中止となり、ルイズとメタルブラックは教室の掃除を命じられた。

「…」黙々と作業を続けるルイズ。
メタルブラックはとんでもない怪力を発揮し複数の机等を一度に運んでいる。

「…軽蔑したでしょ?」

「?いきなりだな。…いや軽蔑する動機がないが。」

「見たでしょ?さっきの爆発。私は魔法を唱えると必ず爆発してしまうのよ。今まで一度も魔法を成功させた事がない…」

「?この世界ではあの爆発は失敗とされるのか。なかなかの破壊力を秘めた術だったが。
ヒューマン…人間達の社会では分からんが拙者達のいた社会では死と隣り合わせの生活の連続だ。
あの術は弱き者から見れば脅威以外にない。自信を持つべきだと思うが。」

「!……あっありがと…」
言葉に詰まりあさっての方を向きつぶやく。

そして、次はメタルブラックが自分の力をルイズに証明する。



[26940] 4話
Name: 影慶◆e8c3975f ID:8985ce85
Date: 2011/04/13 09:15
トリステイン魔法学院。その敷地内にあるヴェストリの広場。そこに2人の男が対峙している。

1人はメタルブラック、もう1人はフリルが付いた趣味の悪い服装の少年ギーシュ・ド・グラモン。

「ど、どうしましょう!?ミス・ヴァリエール…」
ルイズの側でおろおろしているのはボブカットの黒髪の少女。メイドの格好をしている。

「大丈夫よ…シエスタ。あいつ…強いって言ってたから」
と嘘ぶく。いくら強いといってもメイジ以上とは思いにくい。しかし何か策があるのだろうとしか考えられない。


事の発端は昼食時に起きた。
床に落ちていた香水の小瓶をシエスタが拾い持ち主を捜した。その時少年の物じゃないかとクラスメートが追求したのだ。
否定した少年に1学年下の女生徒が詰め寄り、更に少年の恋人であるクラスメートのモンモランシーという少女が鬼気迫る表情で少年を追求し、言い逃れできなかった少年が両者から手痛い罰をくらった。
その鬱憤をシエスタにぶつけようとした所をルイズに邪魔される。ゼロと主が罵倒されたためメタルブラックが少年の前に立ち塞がった。

「それ以上の暴言は許せる範囲ではないな。発言を覆す気はないか?」

「ガーゴイルが何の用だい?まさかゼロのために僕に逆らってるのかね?」

「…坊主、それ以上侮辱するのならば容赦はせん。」

「ぼ、坊主だと!?…よかろう!この僕、ギーシュ・ド・グラモンは君に決闘を申し込む!」

「いいだろう。…「スキャン」」
そうつぶやくとメタルブラックの片目が数秒光った。

「「ギーシュ・ド・グラモン
種族・ヒューマン
HP(耐久力)・60/60
LP(生命力)・10/10
WP(潜在技術力)・3/3
JP(潜在魔術力)・38/38
STR(筋力) ・4
QUI(運動性)・7
INT(知力) ・13
WIL(集中力)・12
PSY(霊感) ・2
VIT(丈夫さ)・5
CHA(魅力) ・20
DEF(防御力)・10
」」
「…(典型的な術士の卵レベルだな。しかし魔術…いや、魔法には警戒は必要だ)」

「ついてきたまえ。」
ギーシュに案内され到着したのがヴェストリの広場で話は冒頭に戻る。


「諸君、これから決闘を行う!」
薔薇の造花を優雅に振るギーシュ。すると金属で出来たゴーレムが現れた。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」

「…(JPが5減少…さらにスキャン)」

「「ワルキューレ
種族・巨人系
HP・80/80
LP・1/1
WP・1/1
JP・0/0
STR・15
QUI・7
INT・1
WIL・3
PSY・1
VIT・15
CHA・10
DEF・15」」
「(巨人系…ブロンズプリナよりは格下…能力的にはマッドアクス級か…)」
「言い忘れたな。僕の二つ名は「青銅」。青銅のギーシュだ。
従って、青銅のゴーレム「ワルキューレ」がお相手をするよ。」

「構わぬ。」

一方ギャラリー達。その中にキュルケがいた。
「なんとなくだけど…ギーシュじゃ無理な気がするわね~」
のほほんと見物している所に青髪の少女が現れた。
「あら、タバサ、あなたも見物?」

「ん……多分ギーシュは全く歯が立たない。」

「ある程度強いかなって思ったけどそこまでなの?」

「すぐ分かると思う。」

再びメタルブラック達

「…」
ふところから一振りの剣を取り出した。しかし…
「ハハハ!何あれ!ボロボロじゃないか!」
嘲笑する生徒達。

「(アルカイザーとの闘いで破損したメタルアルカイザーブレード…攻撃力は16か、だが使えん事はない。…!?なんだ?身体能力上昇?
STR、WILが5、QUIが10上昇か…)」
ふと気付くと左手甲に刻まれたルーンが光っている。
そう戸惑っているとワルキューレが襲ってきた。メタルブラックは剣を駆使し攻撃をいなしていくが時折攻撃をくらったりしている。

「…」

「あれ?何もたついてるのかしら」

「遊んでる…いや、確認してるように見える。」

「フッ意外に大した事ないね?」
ギーシュが挑発する。

「何を恐れている?いや、そもそも何故拙者に決闘を申し込んだ?」

「なっ何を…?」

「フン。」
一閃。ワルキューレが真っ二つになった。

「一撃……こんなものか。」
相手の能力を考えれば当然の結果だ。
「!?うっうわっ」慌てて薔薇を振ると今度はワルキューレが6体現れた。

「…(JP残り3。戦闘中にJPを回復できる手段があるのか?…無いならば愚策の極致でしかない。…むっ…?WPが1減少?)」
技を使った覚えはない。考えられるのは
「(このルーンか…)面倒だな。」
メタルブラックの動きが急加速した。
「!?」
瞬く間に6体全てが真っ二つになった。

「ば、馬鹿な…」
ア然とするギーシュ。

「すご…全く見えなかったわ、あんなに差があるなんて…ってタバサどうしたのよ!?」
キュルケと一緒にいたタバサが広場中央に進む。

「勝負有り…だな?」

「…負けました。」

ギーシュは
INTがアップ
WILがアップ
VITがアップ
HPがアップ
JPがアップした


「聞きたい事があるのだろう?午前の授業の時、敵意がない視線を感じていたからな。」

「!…えぇ、実は」
「!…何者だ?」
突如、目の前に現れた少女に問う。
「次は私と手合わせしてほしい。」

「いきなりだな。拙者と貴殿は初顔合わせのはずだが。」

「腕試しがしたい。」

「!良いだろう。手合わせは望む所であるし。」
そこにルイズが血相を変えて突っ込んでくる。
「ちょっちょっと!まだ戦う気なの!?勝ったからもういいじゃないの!」

「問題ない。限界が来れば矛を納めるつもりだ。」

「…もぅ!…やるからには怪我しないでよ!」
とそこへ
「ミス・ヴァリエール、それにメイドの君…すまなかった…」
突然ギーシュが謝ってきた。
「へっ!?な、突然どうしたのよ!頭でも打ったの?」

「…僕は前からあのガーゴイル、いやメタルブラック殿の事を知りたかったんだ。けどなかなか踏み込めなくてイライラしてる時に運悪くこういう事をしでかしちゃって…」

「謝ったしもういいわ。それより2人が怪我しなければいいんだけど…」


一方、時は少し巻き戻って学院長室。
「退屈じゃの~なぁモートソグニル。」
小さなネズミに話し掛ける老人。この老人こそ…

「自称オールド・オスマン?使い魔を使って女性のスカートの中を覗こうとするならば王宮に突き出しますわ?」
助手もしくは秘書らしき女性がネズミのモートソグニルをつまみオールド・オスマンと呼ばれた老人に放り投げる。
「うおっとっと!」
慌てて自分の使い魔を助ける。
「自称ってなんじゃ…ただのスケベじじいと勘違いしてない?ミス・ロングビル。それはそうと、つれないのぉ…余生の短い哀れな老人の道楽に付き合ってくれてもバチは当たらんぞい?」

「どの口が言うんでしょうね?」
ゴミを見る目になるロングビル。

その時
「学院長!」
ノックをして入ってきたのはコルベール。

「どうしたんじゃ…」
「これを!」

「!それは始祖の…」
「このページをご覧下さい!」

「…む…!悪いがミス・ロングビル、席を外してくれ。」

「分かりました。…(何があったんだい?)」


「このページを…」

「うむ、始祖の使い魔の1人、ガンダールヴに関しての所じゃのう。」

「そしてこれはミス・ヴァリエールの使い魔に刻まれたルーンです。」

「……同じじゃのう…寸分の狂いもない。」

「ガンダールヴ…始祖の使い魔の1人にして千のメイジと同等の力を持つという…」

「召喚したのはミス・ヴァリエールじゃったか…、彼女の使い魔という者はどうじゃった?」

「ゴーレムやガーゴイルに似た姿のメカという種族の方です。かなり理性的な性格に伺えましたが。」

「!?メカじゃと!?」
絶句するオスマン。
「が、学院長?どうされたので?」

その時、再びノックが。
「ロングビルです。じ…オールド・オスマン、緊急事態です。」
入ってくる彼女。
「ヴェストリの広場で生徒が決闘騒ぎを起こしました。」

「ふぅ…坊主達は自制が効かんのかの?で、誰じゃ?」

「1人は2年生のギーシュ・ド・グラモン」

「あの元帥の末っ子か、で、もう1人は?」

「ミス・ヴァリエールの使い魔である怪しい姿のガーゴイルらしき生き物です。」
「なんじゃと!?」
慌てるオスマン。続いて立てかけてある姿見の鏡に向かって杖を振る。
すると広場の光景が映る。
「…あれが例の使い魔か…確かに似ておる。」

「?学院長?」

そしてギーシュとの闘いが終わる。

「速い…(だいいち戦い慣れている。)」
改めて強さに冷や汗を流すコルベール。しかし表情がなにか怖い。
すると今度はガリア王国の留学生タバサが決闘を申し込んでいる。

「!彼女まで?…何故動く!?」

「?」
顔を見合わせるコルベール達。


「「……」」
睨み合う2人。

「(スキャン)」
メタルブラックがいつもの様に相手を調べる。

「「タバサ
種族・ヒューマン
HP202/202
LP8/8
WP・17/17
JP・125/125
STR・14
QUI・28
INT・35
WIL・33
PSY・43
VIT・24
CHA・27
DEF・29
」」

「(なかなかの強さだな…少々脆く非力だが一流の術士レベルだ。)」

タバサはその長い杖を構えている。

「…」
メタルブラックがふところから長い槍を取り出した。

「!…」
突然槍が現れた事に目を見開く。

「さっきもだけど、どこから出してるのかしら…?」
バックパックという便利アイテムを知らないルイズ達には知る術はない。

「楽しめそうだな……!?」
さっきより更にルーンが光る。

「(STR、WILが10、VITが5、QUIが15上昇だと!?)」
明らかに異常が起きている。その事に気をとられた瞬間氷の矢…ウィンディ・アイシクルが飛んできた。

「!」
槍で弾き返す。
通常なら被弾していた。感触から大した威力は無いと分かっていたが。
次はメタルブラックが斬り掛かる。
ひょいとかわす敵。QUIの高さから想定内だ。
「突きを喰らえい!」
槍を連続で放つ。彼自身はこの技を突きとしか認識していないが敵からは「ショットランサー」と恐れられた技だ。

「!…」
全てを紙一重でかわすタバサ。
「(やはり戦いなれているな…この地ではほんの数人しかいない戦いに身を置く者の風格を漂わせている……む、WP3減少…さっきより減少が激しいな。)」
まだ全く戦闘に影響が出る数値ではないが気になる。
「(強敵との短期決戦には良いが持久戦では不便だな…。)」
思ったよりタバサの体さばきが良い。なかなか戦いにくいタイプだ。

「(少し本気を出すか)…落雷!」
メタルブラックが手をかざすとそこから雷が放たれタバサに襲ってくる。
「!」ギリギリかわすが喉元に槍が。

「まいった。」
タバサが敗北宣言をした。
「こちらこそ良い手合わせをしてもらった。感謝する。」

タバサは
STRがアップ
QUIがアップ
INTがアップ
HPがアップした。

爽やかする2人をよそに
「「あれってライトニング・クラウドじゃ…」」ざわざわ…するギャラリー達。

「メタルブラック!怪我は?」
「問題ない。主。…ギーシュ・ド・グラモン、話は別の日でよいか?」

「ああ、構わないよ。ありがとう。」


学院長室

「見事な戦いぶりじゃのう…」

「えぇ、ミス・タバサは全力で戦ってはいないでしょうが…トライアングル相手に互角以上…」

「最後のは魔法に見えたかね?」

「さぁ…分かりかねます。学院長、この事は王宮には?」

「伝えられる訳ないじゃろ。アカデミーがしゃしゃり出かねんし戦争に利用される可能性もあるからの。」

「…ガンダールヴとはいったいどのような姿をしていたのでしょう?」

「少なくとも普通に手足はあったんじゃろうなぁ…やれやれこれからどうなることやら…」





[26940] 5話
Name: 影慶◆e8c3975f ID:8985ce85
Date: 2011/04/17 13:12
決闘騒ぎを経ての午後、ティータイムの時間帯にメタルブラック達は学院の中庭の一角に集まっていた。

メタルブラックに、主のルイズ、ギーシュ、メイドのシエスタの4人だ。

「何から聞きたい?」

「…メタルブラック殿はどういった存在でしょうか?普通ガーゴイルやゴーレムはメイジによって生み出されるのですが…」
ギーシュがおずおずと尋ねる。

「主やコルベール殿には既に話したが拙者達がいた地ではこういう姿の種族がいる。メカというのだ。大半は各種のマザーブレインという魔法とは関係のない機械から生み出される。
そして拙者は生まれてからブラッククロスという組織に身を置き改造手術を受け今の姿になった。」

「機械…こうして見ても訳分かんない体よね~」
と改めてジロジロ見るルイズ。

「(機械…確かおじいちゃんが…)」
物思いにふけるシエスタ

「いや!素晴らしいんだよ、ミス・ヴァリエール。そんじょそこらのゴーレムやガーゴイルとは格が違う。正直美の観点からしても僕のワルキューレも敵わない。それこそ悔しさが沸かないくらい差がある。
…しかし機械か…魔法とは違う技術…」

「ところで初対面の時にも聞こえたけどブラッククロスってどんな組織?有名らしいんでしょ?」

「リージョン…まぁ要は各世界だ…を震え上がらせた悪の組織だ。そこで拙者は四天王を勤めていた。」

「「へ!?……またまた冗談を…」
固まるルイズとギーシュ

「本当だ。実際数多くの戦場を駆け抜けてきた。」

「なんでアンタみたいな奴……おっとと、メタルブラックがそんな事を…」

「所詮未来のなかった、拾われた身だったからな。そうしなければ生きていけなかった。無駄な殺生はしなかったが言い訳にもならんだろう。
そして…最後は宿敵に敗北し、この地に落ち延びた。」

「負けた…?本当に…」
「本当だ。間違った強さだったのだろうな。拙者は人の心に関して未熟だ。
主の使い魔を引き受けたのも結局は人の心を理解したいからだ。」

「それは構わないわよ。(使い魔になってくれただけで…)」

さっきから黙っているギーシュが
「…メタルブラック殿、僕は強くなりたい。どうか弟子にしてくださらないでしょうか?」

「!?」突然の乱心にギョッとするルイズ。

「…正気か?おぬしは術…メイジ、拙者は魔法を使えん。教える分野が違いすぎると思うが?」

「幾多の戦場を渡り歩いたというその経験・知識を伝授していただきたいのです。」

「…一つ聞こう。おぬしは最終的にどういった強さを求める?メイジとしての強さか戦場を生き残るための強さか。後者ならば少しは力にはなれるだろう。」

「僕の目標は立派なメイジですが…それ以上に女性を守りぬく者になりたいです。戦場でも女性達を敵から守るためならば喜んでこの命を投げ出しましょう。」

「…」
ギーシュの発言に正気かと疑いの目を向けるルイズとシエスタは見直している。

「興味深い動機だ。周りにはいなかったぞ。あい分かった、引き受けよう。」

「本当ですか?」

「ただし過酷だぞ。それにこの世界でいう平民と同じように汗まみれになるような修業だ。」

「大丈夫です!ついていきます!」
鼻息が荒い。

その時
「…メタルブラック」

「タバサ殿か?何用か?」

「自分も鍛えてほしい。」

「構わんが…おぬしは十分な強さを持っていると思うのだが。」

「個人的事情でさらなる強さが必要。」

「…分かった。多少になるだろうが助けになろう。」

「…え~と…私も駄目…ですよねやっぱり。」
とシエスタ。

「…この際何人でも構わんよ。」

「…(何この展開…ったく!)わっ私もやるわ私も!」
置いてけぼりは嫌なのでついルイズも志願する。

「む…主か…(JPは膨大で鍛えるとすれば身体能力くらいなのだが…)
了解した。それでは明日の早朝…そうだな。拙者が召喚された野原で集合する。」

「「は~い!」」



翌日の早朝
「眠い…」
寝ぼけまなこのギーシュ。
彼も含め全員集合していた。
「とにかく鍛える対象のステータスが分からんからな。調べさせてもらう。ちなみに昨日すでにギーシュとタバサのは調べさせてもらった。」

「えっ!?いつの間に!?」

「……片目が光った時?」

「その通りだ。メカ独自の技術で「スキャン」という。で、それで分かったのは…ギーシュはとにかく全ての能力が低い。ワルキューレを7体作るとほとんど空になるJPを始めな。
逆に伸び代が豊富とも言える。まずは耐久力の強化だ。強力な魔法を使えても術者がひ弱ではすぐにやられてしまう。
タバサは一流の術士…拙者の世界で言うメイジに値する。この世界のメイジのレベルがどの程度かは分からんが。」

「私はトライアングル。上にスクウェアがある。」

「昨日の授業で言っていた階級か。ギーシュがドット、その一段上がライン、その上がトライアングル、最上級にスクウェアだったな。
拙者の見た所、タバサは筋力、丈夫さが低い。それ以外は欠点は無い。」

「そう…」
的確な言葉に納得するタバサ。
そして続けてルイズ、シエスタをスキャンする。

「「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
種族…ヒューマン

HP50/50
LP7/7
WP1/1
JP??/??
STR…5
QUI…5
INT…16
WIL…18
PSY…9
VIT…3
CHA…22
DEF…8」」

「「シエスタ

種族…ヒューマン
HP150/150
LP12/12
WP28/28
JP0/0
STR…18
QUI…24
INT…6
WIL…14
PSY…10
VIT…21
CHA…24
DEF…26
」」

「主は術力以外は全ての能力が低いな。どういうメイジになりたいのだ?」

「…私は、立派なメイジになりたいとしか考えてなかったわ。平民の人達を守ったり世界の平和のために尽力するのが義務だと思ってる。」

「…そうか、ならば拙者は使い魔として主が前を進めるよう勤めよう。
シエスタは身体能力が一般的な成人男性を越えている。能力的にはワルキューレを2体くらいは倒せるだろう。」

「えぇ!?本当かね!?
ア然とするギーシュと
「そ、そんな恐れ多いですっ」
畏まるシエスタ。

「タバサ以外はとにかく身体能力を鍛えんと話にならん。まずはランニングだな。」

「えぇ~!?」嫌そうな声を挙げるルイズだが
「分かりましたっ!」
やる気満々のギーシュ。

「タバサは筋力トレーニングの後拙者と模擬戦だな。」

「了解。」


そして修業が始まり昼食前
「ワハハっ何あれ!女ったらしのグラモンにゼロのルイズ、無口女まで馬鹿やってるぜ!」
嘲笑するギャラリー。
「…フン、ギーシュの奴馬鹿みたいな事を…」
ギーシュの悪友の太っちょの少年マリコルヌが吐き捨てる。
昼食時にはすでにギーシュ達はへばっている。タバサは疲れを見せず昼食をかきこんでいる。

2日後、汗水出して頑張るギーシュに女生徒から声援が飛ぶ。

「!?モ、モテている?ギーシュが更に…」
絶句するマリコルヌ。
「……」

翌日、いつもの集合場所に1人見慣れない人間が。
「…確か教室で主といさかいを起こした…」

「!?マリコルヌ?何故ここに?」

「僕もギーシュみたいにモテる男にしてください!」
とは言えず
「え、えーと、僕も立派な貴族になりたいです。」

「…断る理由は無いな。」

「一体どういう風のふき回しなんだ…?」
首をかしげるギーシュをよそに
「ならば少し調べさせてもらうぞ。「スキャン」」

「「マリコルヌ・ド・グランドプレ

種族…ヒューマン
HP110/110
LP20/20
WP2/2
JP51/51
STR…3
QUI…18
INT…12
WIL…10
PSY…2
VIT…25
CHA…4
DEF…30
」」

「面白いな。」

「?無理なんですか?」

「いや、鍛えるのが楽しみな逸材かもしれないだけだ。」

新たに修業メンバーに参入したマリコルヌ。

そして数日後…

「今日は虚無の曜日だし王都に行くわよ!」
起きぬけに言い放つルイズ。
準備をしていたメタルブラックは
「王都?」

「トリステインの王都トリスタニア。女王がいらっしゃる王宮がある都よ。」

「どういう用があるのだ?」

「私の生活に必要な物の買い出しだけどあなたのも買うつもりよ。」

「特に不足しているものは無いが…」

「服とか武具よ。よく分からないけど今裸みたいな状態なんでしょ?それに武器もボロボロだし。」

「服か…(改になってからは陣羽織を着れなかったからな。…何故あの時こんな余裕がなかったのか…)」
打倒アルカイザーに没頭してから身だしなみや趣味、茶を楽しむ事ができなかった事を悔やむ。
「武器か。それもありがたい。」
メカは武器を装備すればするほど強くなる。無いよりは良いだろう。相性の良いのがあればだが。

2人は部屋を出、厩舎に向かう。

「ほぅ、立派な馬達だな。」
「馬術は出来る?王都はここから徒歩で半日、馬だと2時間かかるの。」

「武士に憧れた時に修業した。問題ないな。」
武士に憧れた要因の一つがテレビで放送していた時代劇という武士が登場するドラマだ。その中でも偉い地位にいる男が身分を隠し悪を薙ぎ倒す痛快劇のファンだった。
あれを見て馬術や剣術、槍術を磨いたものだ。

馬に乗って乗りこなすと
「…なんでも有りね。」
呆れる主。

そして出発する2人。

その数十分後

タバサの部屋に客が訪れた。

「タバサ!起きてる!?入るわよ!」
返事を待たずに扉の鍵を魔法で開け入ってきたのはキュルケ。

「タバ…あら?どうしたの?」

まだタバサはベッドで横になっていた。
「ん、ちょっと疲れが溜まっていただけ。…何?」

「ダーリンがヴァリエールと出かけたのよ!あなたの風竜で追いかけたいの!」

「…ダーリン?」

「メタルブラックよ。」

「…何故?」

「確かに最初はガーゴイルやゴーレムと勘違いしたけどあれで立派な種族らしいし恋はできるはずだわ。」

「…別に興味ない。」
タバサが抱いているのは師としてだけだ。軍人として途方もない領域にいる。実に勉強になる。

「タ~バ~サ?」

「なんでもない。…何で出かけた?」

「馬よ、地理的にトリスタニアじゃないかしら?」
「…」
指笛を吹くとしばらくして巨大な竜が窓際に現れた。
「きゅい~」
風竜に乗り込む2人。
風竜が飛び立つとあっという間に学院上空に到達した。
「馬二頭、食べちゃ駄目。」

ちなみにギーシュ、マリコルヌは疲労でぶっ倒れ、シエスタは仕事が忙しかった。

その頃、ルイズ達は王都に到着していた。
「賑やかな所だな。建物はマジックキングダム、雰囲気や規模はシュライクといった感じだな。」

「あなたの世界の場所だっけ?」

「リージョンという括りだがな。」

そういう会話をしながら町並みを歩く。クーロンのような露店もあり驚く。

「…」
さりげなく自身に使えそうなアイテムを探すがめぼしい物はない。

すると
「あ、あそこよ服屋は。」

「いらっしゃっいませ~、あ、これは貴族様。」
「ごきげんよう」
ルイズは自分に必要な物を選んでいく。
「なんか、気に入ったのあった?」

「これは…」

「あ、これはなんと東方からの流通品なんですよ。形が珍しすぎて売れ筋という訳ではないんですが。はかまというらしいです。」

「袴があるとはな。主、これが良いがいいか?」

「へ~変わった服ね、高くもないしあなたが良いなら問題ないわよ。」

そして購入し、羽織る。

「なんか知らないけどさまになってるわね…」妙に似合っていてうなるルイズをよそに、着方を指導した店員が驚く。
「東方の行商並の鮮やかさですね。ひょっとして東方出身の方ですか?」

「いや、別の所だ。良い物があって助かった。…そうだ、万が一、陣羽織という着物が入荷したら知らせてくれぬか?」
「じんばおりですか?分かりました。
それでは、ありがとうございました~」

服屋を出る2人。
「次は武器屋ね。」
雰囲気的にクーロンの裏通りを思わせる場所になってきた。
「あの看板ね…あそこよ。」

そして
「いらっしゃっいませ~…これはこれは貴族様。今日はどんなご用で。」
揉み手をする親父。

「客よ。」

「?…あぁそのガーゴイル?に持たせるんですかい?…なら、少々お待ちを」

「…」
店内を見回すがあまり期待出来そうにない。それこそ能力の底上げの足しになりそうな物があれば御の字だろうか。

「これなんかどうです?かのシュぺー卿が作りあげたという逸品ですぜ。」

「シュペー卿の!」
鼻息を荒くするルイズ。

「3000エキューでお譲りますぜ。」

「さっ3000!?庭付きの屋敷が買えるじゃないの!」
会話する2人をよそにメタルブラックは
「(攻撃力…10、ステータスにも変化なし…悪いが使い物にならんな)それは要らん」

「そうね!大体高すぎるし…買えない訳じゃないわよ?」

「はっ!やめとけやめとけ!ガーゴイルなんかに剣が満足に扱えっかよ!」
突如男の声がした。

「?……これか。」
乱雑に大量の剣などを突っ込んでいた箱から一振りの剣を取り出す。
「まさか、こんな所にグリランドリーがいるとはな?」

「は?グリなんとかって何の事だ?」

「こちらの話だ。…フム、握り具合も良い。」
シュっと剣を振る。

「重量、長さもちょうど良い。」
愛剣メタルアルカイザーブレードに匹敵するフィット感。
「…(攻撃力22に…STR、QUI、INT、WILが10、VITが15上昇…優れているにも程がある)。」
「なっなんだ~俺、調べられてる~?…って、オメー!」

「ん?なんだ?」

「見損なってた、オメー使い手か。」

「…使い手?どういう意味だ?」

「使い手っつったら使い手だよ。…あれ?使い手って何だっけ…」

「…」
大丈夫かと声をかけたくなる。

「ま、いいや。オメー俺を買え。」

「そのつもりだ。(だがこれほどの逸品…さっき程度ので主が驚く値段だとすると買えんかもな。)」

「え?何勝手に話進めてるのよ。そんなボロボロなインテリジェンスソードなんて使い物にならないでしょ。」

「うるせ~貴族の娘っ子、俺にはデルフリンガーていう立派な名前があるんだよ!」

「主、これが良い。」

「あ~そいつですかい?そいつなら100エキューでいいですぜ。」

「こんなボロっちいのに?高くない?」

「一応リーチが長くて鈍器としても使えますんでね。あ、買われるんならこの鞘を。鞘に入れたら大人しくなるんで。」

「…良い買い物をした。感謝する店主。」

「じゃあな。親父。」

「へっ、てめぇこそな!」


武器屋を出る2人。そこへ…
「あっダーリン見つけた!」
「キュルケ殿か?それにタバサ。……ダーリンとはなんだ?確かその単語は恋人に使う物ではなかったか?」
ヒューマンの社会の知識が間違ってなければその通りのはず

「あのギーシュ、そしてタバサとの決闘を見て考えが変わったのよ。恋愛に種族は関係ないと思わない?」

「そこら辺は分からん。」
恋愛に疎いのでこれ以上言いようもない。

「あら?変わった服ね?けどなんでか似合ってるわ。素敵。けどそのボロボロの剣が台なしにしてるわね~」

カチャカチャとデルフの鞘が鳴るが聞いてくれない。

「私ならもっと良いモノを買ってさしあげますわ。」

「あの武器屋はこの剣以外良い物はなかった。シュペー卿という者の剣も実用的ではなかった。」

「あ、あらそう……何か欲しいモノな~い?」
「…無いな。必要と感じる物は全て揃えてもらった。」

「そう…」
ガックリくるキュルケ。その姿に勝利の優越感に浸るルイズ。
そして、レストランで食事を摂る事になった。
ルイズは好物のクックベリーパイを、タバサは一般人に不人気なはしばみ草料理をたらふく食べている。

「ヴァリエール…食事量増えた?…(の割には太ってないわね…あの汗臭いトレーニングのせいかしら…ダイエットに良さそうかも。)」

「そうかしら?最近朝食も全部食べられるのよね~」

「まさか、茶があるとはな、僥倖というものだ。」

京茶程深みはないが間違いなく好みの味だ。

「ちょっと苦くない?」
とルイズ、キュルケ。

「ちょっと甘い。」
とタバサ。味覚が変だ。

こうして一行は買い物、食事を終え魔法学院に帰宅の徒についた。


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