ここ、ハルケギニアの一国、トリステインに1人の武士(もののふ)が舞い降りる。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは焦燥していた。トリステイン魔法学院生は2年生になった時に生涯のパートナーとなる者を得るため召喚の儀式を執り行う。現に他の生徒全てが召喚に成功しそれぞれのパートナーと親交を深めている。
しかしルイズだけが未だに召喚出来てない。時間が経つにつれクラスメート達が野次を飛ばしていく。
「…(なんで、なんで!成功しないの!?このままじゃ…)」
桃色の髪の少女ルイズがうめく。
「ミス・ヴァリエール…焦らないで、心を落ち着かせるのです。」
頭頂部がかなり寂しい中年の男が優しい口調で話しかける。
「す、すみません!コッパ…げふん、コルベール先生。
……宇宙の果てのどこかにいる私の使い魔よ!」
「宇宙?」
ポカンとするギャラリー達
「神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!我は心より求め、訴える!我が導きに応えよ!!」
やけくそ気味に絶叫するルイズ。その時…彼女達の頭上に光り輝く鏡が現れた。
「!やっやった!ゲートがっ…」初めて現れたゲートに成功を確信する。と、次の瞬間鏡から何かが漏れだした。
「炎?」
コルベールと褐色の肌の女生徒が膨大な力を持った炎に目を剥く。
「「!!!」」
鏡から巨大な火の鳥が現れた。
「「ちょっ…マジで!?」信じられないギャラリー達。
「やっ…やった!やった!やった!ふ、不死鳥だわ!!」興奮がMAXに到達したルイズ。しかし…
不死鳥はそのまま天高く羽ばたいていきその姿を消した。
「………えー、えーと、どういう事?」ア然とするルイズ。
「ワハハハハ!!逃げられてやんの!さすがゼロのルイズだ!」爆笑するギャラリー達。
「(…あれは、生物ではなかった。とてつもなく強力なエネルギーをともなった炎だ。しかし…あれ程の威力はスクウェアメイジでも…)…むっ!?」
コルベールが何かに気付く。
「ミス・ヴァリエール!!あそこを!」コルベールがルイズから少し離れた所を指差す。
「へっ?……!何あれ!?」
不死鳥らしき炎が通りすぎた所に何かが落ちていた。
「人!?…あ、違う、これは…」
「…ゴーレム…いや、ガーゴイルですな。しかしこれはっ…」
ガーゴイルらしき物体を見てうめくコルベール。青を基調としているが微妙に光沢やツヤがあり今まで見たこともない金属で出来ている。造形も信じられない程の出来だ。
王族や巨大な権力を持つ貴族でさえこれ程の一品を手に入れるのは不可能ではないかと思わせる。
全体から煙が吹き出したりあちこちが欠けたり凹んだりしていたがそんな事が全く気にならない程だった。
辺りにもガーゴイルの一部と思われる金属が散らばっているが、コルベールは何故かそれに恐ろしい程のオーラを感じた。
ガシャン!
「!」コルベールがガーゴイルがわずかに動くのを発見した。
一方のルイズは失意のどん底にいた。伝説の不死鳥に逃げられ目の前にあるのはボロボロのガーゴイル。これからどうしたらいいのか皆目見当もつかない。と、その時。
「ミス・ヴァリエール!このガーゴイルはまだ動けます!早く契約を!」
「!?はあ!?正気ですか!先生!?」
「このままでは留年してしまいます!背に腹は代えられません!」
「……(留年したら実家に…)」絶望的な恐怖を予感する。主に恐怖の源は母親だ。
「…我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔と為せ……えいっ」
やけくそ気味に口づけするルイズ。するとガーゴイルが光り輝いた。
「なっ何!?」突然の事態に身構えるコルベールと、へたりこむルイズ。
ギギギギギ…
ガーゴイルが動き出した。全身からよく分からない音が発生している。
「こっ…これは…」ガーゴイルが立ち上がりその姿を見たコルベールが改めてその全身に釘付けになる。
顔の部分が非常に人間に似ていて、腕や脚の関節まである。遠くから見れば中年の男性と間違えても仕方がない程だ。
その事に驚いていると
「ムッ……ぬぅ、な、なんだ!?」
ガーゴイルがしゃべった。
「「!?しゃ、しゃべった〜!?」」全員がビックリする。
「拙者は…確かにアルカイザーに敗れたはず…!?なんだ!ここは!?」
見慣れない景色に戸惑うガーゴイル。しかも周りに戦闘員とは思えない普通の人間達が大勢いる事にますます状況が飲み込めない。
「しっ失礼します。あなたはどなたか教えてくれませんか?」目を異常にキラキラ…いやギラギラさせたコルベールが話し掛ける。
「…ブラッククロスの幹部だ。それ以上は言わんでも理解できるだろう…
…失礼、礼儀を失していたな。おぬし達は何者だ?そしてここはどこか教えてもらえると有り難い。」
「ブラック…クロス?いえ、聞いた事がありませんが……あ、失礼しました。ここはトリステイン国内のトリステイン魔法学院で、私は教師を勤めています、ジャン・コルベールと申します」
「ちょっと」
「ブラッククロスを知らない!?馬鹿な…いや相当辺境のリージョンならば…リージョンシップ発着場は何処にあるかご存知か?」
「ねぇ、ちょっと…」
「リージョン、シップですか?なんでしょう、それは?」
「リージョン間を行き来する船だが…存ぜぬのか!?…という事はまさかここは別世界…」
どんな辺境のリージョンでも必ずリージョンシップは存在する。それが無いという事は必然的に別の世界となる。あの世界は開拓され尽くされ未開の地は存在しないのだ。
「ちょっと〜〜人の話を聞きなさ〜い!!」何度目かの絶叫をするルイズ。
「お、おおミス・ヴァリエール、そうでした。…え〜と、あなたの名は…」
「メタルア…いや、メタルブラックと申す。」
「…メタルブラック殿ですか…いや〜しかし意志のあるガーゴイル…あ、ひょっとしてゴーレムでしょうか?」
「ガーゴイルでもゴーレムでもない。種族はメカだ。」
「メカ…?聞いた事がないですね。…話は変わりますがメタルブラック殿、あなたはここにいるミス・ヴァリエールに召喚されたのです。そして…できれば彼女の使い魔になっていただきたいのですが…」
「使い魔…要は部下になれという事か?」
わずかにプレッシャーが増した。冷や汗を流すコルベール。
「…了解した。拙者は本来ならばすでに死した身、ならば新天地で新しい生き様を探すのも一興であろう。」
「!そうですか!よかった…」
「!仕方ないわね。不死鳥には劣るけど…」
ルイズが空気を読まない発言をする。
「おぬしが主(あるじ)か……むっ!?(底知れぬJPだな…)」
「何よ、不満?」
「いや問題ない…ところで左手甲に異常を感じるのだが。」
「!ルーンですね。失礼ですが拝見させてください。」
「ルーン?拙者は印術の心得はないが…」
「印術?いえ、ルーンはメイジと契約した使い魔に刻まれるものでして…おっこれは見た事がない単語だ…」
ルーンをスケッチし終わりメタルブラックに礼を言うコルベール。
「そうだ、ミス・ヴァリエールと親交を深められていかがですか?」
「そうだな。まだ知らない事が多い。お言葉に甘えよう。」
メタルブラック、ルイズが学院の方へ向かう。
「……」コルベールはメタルブラックの周りに散らばっていたカケラを凝視する。
「…妙な胸騒ぎがする。これはやはり…」
カケラを回収するコルベール。
ハルケギニアに参上した武士メタルブラック。彼が来た事によってこれからどのような事が起こるのかは誰も分からない。
※ガーゴイルとゴーレムがごっちゃになってました…恥ずかしい。若干修正しました。