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thessalonike5
広瀬隆『二酸化炭素温暖化説の崩壊』を読む - 原発の熱
広瀬隆については従来から毀誉褒貶が甚だしく、そのことが広瀬隆への警戒感や抵抗感となって、著作への接近を躊躇させていた。そういう人は、私以外にも結構多くいるに違いない。今回の原発事故が機会となり、私は初めて広瀬隆の本を読んだが、一読した感想は、世間一般やネットで言われている評価とは全く異なるもので、印象を新たにさせられた。事故があり、エネルギー問題について否応なく強い関心を持たざるを得ない時期だからという条件もあるが、本の内容は面白く、論理と主張に引き込まれ、そのまま最後まで一気に読み切った。正直なところ、私の場合、途中で挫折せず最後まで読み通せる本は少ない。柄谷行人も、まず何より読み込めるかどうかだと言っていて、私もその読書論に同感する一人だ。今回、広瀬隆という作家が、これまで市場で人気を博してきた理由がよく納得できた。と同時に、何であのような、荒唐無稽と決めつけられる異端像が定着してきたのかと不審にも思った。俗評や風説というものが、何も根拠を持たないものだとは私は思わないが、それ以上に、それを安易に信じて作られる偏見とは恐ろしいものだと反省させられる。少なくとも、ネット上に散乱している広瀬隆に対する下劣な誹謗中傷よりは、広瀬隆の文章の方が堅実で信頼を持てる。また、NHKが飼っている岡本孝司や山口彰の「寄らしむべし」の官僚言説よりも、はるかにヒューマンな知性と説得力を感じられるものだ。
この本は、昨年7月に出された新書であり、テーマは、地球温暖化の正体が二酸化炭素が原因ではないとして、その論証を並べたものである。広瀬隆によれば、地球の気温は決して上昇してなくて、むしろ気温は低下傾向にあると言う。この主張を最初に述べ、証拠を提示した上で、都市や海水が温暖化している現象の主因がCO2の排出にあるのではなく、別の要因にあるとしている。地球の気温が低下しているという指摘は意外だし、訝る気分になるが、広瀬隆の認識では、CO2が地球の大気を包んで温室効果になっているのではなく、都市化による放熱と原発が出す排熱こそがヒートアイランド化を惹起増幅し、都市の気温を上昇させ、海水の温度を高めているのだと言う。それを証拠づける興味深いデータがP.146に示されていて、日本列島の中で都市から遠く離れた僻地である八丈島、潮岬、室戸岬、足摺岬などでは、1941年から1970年にかけての30年間に比べて、1961年から1990年までの30年間の方が、最高気温30度以上の真夏日の日数が減少しているのである。この事実には驚かされる。地球全体が温暖化しているのではなく、その犯人がCO2ではないとする広瀬隆の説については、私自身、この本を読んだだけで確信を得たとは言えないが、しかし、CO2主犯説に対する懐疑の提出としては説得力のある議論だ。そして、都市と原発の排熱について、CO2と同じかそれ以上にヒートアイランド化の要因として頷くことができる。
二酸化炭素の温室効果については、科学者たちが様々な知見や観測を元に異論を出し、専門家の間で論争が起きて当然だと思うけれども、都市化による排熱は、常識で考えて、確実に環境全体を温暖化させている争えない現実だろう。特に夏季のエアコン使用が都市部を過剰に熱している事情は、疑問を差し挟む余地がない。近年、新興諸国が経済発展し、そこで車を使い、電気を使い、エアコンを使うようになり、すなわち、仮にCO2の温室効果が温暖化の主犯であったとしても、それと同じかそれ以上に、地上で人々が直接に排熱して大気中に熱放出している行為は、温暖化要因(冷却化阻害要因)として絶対に無視できない。否、おそらく決定的なものだ。電力を生産して、それを照明やエアコンで消費して放熱し、ガスを使って湯を沸かし煮炊きして放熱し、ガソリンを燃やして環境に放熱している。電気や石油のエネルギーを使って生産し生活することは、畢竟、大気中に膨大な熱を放出することで、特に都市の夏を酷暑にする最大の元凶に違いない。1970年代の日本は、一般家庭にクーラーが普及しておらず、夏の暑さは窓からの風と扇風機で凌いでいた。現在、日本人は各部屋に1台エアコンを使い、それを欠けば、夏場は生活どころか生存が不可能になっている。思うに、私も含めて一般の素人は、「CO2による温室効果」の表象を、実際には「都市化による過剰排熱」と混同して因果関係を観念しているのだ。広瀬隆によれば、そのスリカエ(冤罪)がIPCCのトリックである。
原発の排熱が海水温度を上げてヒートアイランド現象をもたらすとする説明については、何とも驚くべき内容が書かれている。日本に54基ある原発では、原子炉内で水蒸気を作る熱のわずか1/3しか電力の生産に資しておらず、残りの2/3の熱は海に捨てているのである。これが、NHKの報道の解説に登場する2次冷却系の熱交換だが、水蒸気を海水で冷やして水に変えるとき、海水が受け取った熱は海に逃がされているのだ。海の水を取水し配管で循環させて、1次冷却系の熱を取っているのである。そうして再びタービンから原子炉へ水が循環する。原発内を循環する水は冷えるが、その代わり、海に熱エネルギーが放出される。核分裂によって生成された熱は1/3しか電気にならず、残りの2/3はひたすら日本の海を熱し続けている。その量が膨大で、54基ある原発の「電気出力」の合計が4911万kwであるため、その2倍の1億kwの熱で海を加熱し続けているのである。広瀬隆によれば、この1億kwの熱量は、広島で投下された原爆の100個分に相当すると言う(P.151)。したがって、広島に投下した原爆100個分の熱エネルギーで、毎日、海を熱し続けている。これでは、太平洋や日本海の海水温度が上昇しないはずがない。日本は総電力需要の1/3を原発で賄いつつ、稼働させた原発で、電力生産する熱の2倍の熱量で近海の海水を絶えず温め続けているのである。非科学的な発想と言われるかもしれないが、世界中で450基を超える原発が稼働していれば、北極海の氷が溶けるのも無理はないと思われる。
P.156に次のような記述がある。「
まったく根拠のない二酸化炭素温暖化説の上に乗って、原発の宣伝に走り回る浅井慎平、寺島実郎、毛利衛、大前研一、吉村作治、さらに電力会社・原子炉メーカーお抱えの芸能人と、彼らに発言の舞台を提供する新聞とテレビ、雑誌に問いたいのは、あなたたちのどこに地球を愛していると言う資格があるのか、ということである
」。この告発の部分は、ネットの中の各所に引用され拡散されている。浅井慎平とは、あのTBSのサンデーモーニングの常連の写真家だ。問題を抉る知識や能力はないが、市民的感覚に依拠したコメントの姿勢があり、まずまずの評価を受けている。庶民派で良識派の浅井慎平が原発推進派の一人であったとすれば、これは容易ならざる問題で、視聴者の支持と信頼を大きく逸する一事であり、本人の釈明なり(メルケル的な)転向声明が求められるところとなるだろう。浅井慎平と電力会社の関係については、この本の中では具体的に触れられてないが、NUMO(原子力発電環境整備機構)のお先棒を担いで、高レベル最終処分場の誘致に走り回っていたらしい。同じく、寺島実郎だが、資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会委員の立場を持ち、一貫して原発推進派で、原子力発電をクリーンエネルギーとして宣伝するエバンジェリスト役をやっていた。事故後も、テレビで原発擁護の立場の発言を繰り返している。果たして、今後どうなるだろうか。雑誌「世界」レギュラーの岩波知識人として、「良識派」の看板に大きく傷がついた事態とは言える。
P.159の一文にも考えさせられた。「
原発問題で新聞社から取材を受けると、私は放射能の危険性を説明しながら『死の灰』という言葉を使うが、最近では、記者から『死の灰って何ですか』と聞き返されることがあるので、時代はもうそこまで来たかと愕然とする。広島と長崎に原爆が投下され、死の灰が降ったことを知らないのが、現代の日本人なのだろうか
」とある。私も同じことを思う。この原発事故が起こって以来、NHKは解説の中で広島・長崎の原爆症患者の話を一切しない。民族が受けた苦痛と悲劇について、福島の事故報道で資料を挿入して説明に使わない。放射能汚染の人的被害について、日本は半世紀前に重大な経験をしているのであり、未知の問題ではないのだ。「死の灰」の意味を知らないのなら、当然、「黒い雨」も知らないだろう。「死の灰」も「黒い雨」も知らない日本人、そんな日本人があるだろうか。そのような日本人を日本人と認めてよいだろうか。その若い記者は、中学高校でどのような教育を受けてきたのか。そう私は憤るが、そうした憤激を持つ者に対して、右翼は「サヨク」のレッテルを貼り、ネットで排撃と嘲弄に余念がない。原発擁護の右翼によれば、反原発派は売国の左翼なのであり、「死の灰」や「黒い雨」は左翼用語であり、焚書され、辞書から抹殺されるべきイデオロギー言語なのだ。核に批判的な意識を持たせる言語は禁止なのだ。そうした右翼のコードとプロトコルに従って、大越健介は「死の灰」も「黒い雨」も番組で言わず、禁句にしているのである。被曝して白血病で死んで行った者たちは、NHKの報道を天国でどう見ているだろう。
P.216からの「あとがき」では、自然エネルギーの展望が書かれている。ここでの広瀬隆の議論と提案も、私は大いに膝を打つ中身だった。広瀬隆は燃料電池(小型発電機)と太陽熱発電に問題解決の方向を求め、特にガス(水素ガス・メタンガス等)での発電をエネルギー革命の本命としている。窒素酸化物も出ない。硫黄酸化物も出ない。放射性物質も出ない。これは広瀬隆が言っていることではないが、私の持論は、日本列島の北半分はサハリンの天然ガスをパイプラインで引いて発電し、日本列島の南半分のエネルギーは東シナ海の天然ガスで賄うという構想である。二系統を相互にフェールセーフのバックアップとして使う。そうすれば、原子力発電も要らないし、火力発電すら要らない。中東からタンカーでコストをかけて重油を運ぶ必要はない。クリーンエネルギーとか、代替エネルギーの問題は、技術の問題では全くなくて、単に政策を転換するだけの問題だ。「原発を止めれば代替エネルギーはどうする」とか、「江戸時代の生活に戻るのか」という議論は、根拠のない笑止な戯れ言の類であり、右翼と資本だけが公共空間で通用させている虚偽意識である。この点については、さらに別稿で検討を深めよう。もう一点、広瀬隆の議論で共感を覚えるところがあった。それは、風力発電に対してネガティブな点である。私も同じだ。以前、北海道西岸の遠別から留萌の付近を車でドライブしたとき、山側に延々と風車が連なっている光景を見たが、不気味で、自然景観を壊していると強く感じた。風力発電は推奨できない。スマートグリッドに否定的な点も、これまた私と同じである。あんなペテンに騙されてはいけない。
日本人は日本人らしく、小型の自家発電で身の周りで完結的にエネルギー充足させる方法を考えるべきで、ガス・太陽光・石油をフレクシブルにミックスさせ、オプティマイズさせる方策を考案すればいい。と同時に、それ以上に、省エネ技術開発をアクセラレートさせるべきで、国家目標として、GDPと同じように、GDPと逆の論理で、エネルギーのマイナス成長(電力消費量の逐年削減)を政府が計画策定するべきなのだ。そして、それに合わせて、産業界が自動車や家電の画期的な省エネ新製品を市場に出して行けばよいのである。これこそ最も日本らしい方法で、世界が目を見張る日本的なエネルギー革命のあり方だろう。
by
thessalonike5
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2011-04-17 23:30
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