2011年4月6日11時34分
福島第一原発の安全設計はなぜ、これほどもろかったのか。
技術評論家の桜井淳さんは、福島第一原発が古い設計思想で作られていることを理由にあげる。
災害などで外部電源が失われた場合、非常用発電機は原発にとっての命綱となる。それが、最も強固な原子炉建屋の中ではなく、構造が比較的簡素なタービン建屋内にあるのは、「米国の設計思想が基礎になっており、日本ほど地震や津波に対する警戒がなかったため」と話す。
桜井さんはさらに、原発の安全設計に関する考え方が、福島第一の6号機が営業運転を開始した1979年に米国で起きた、スリーマイル島(TMI)原発事故の前と後で、根本的に変わっていると指摘する。「深刻な事故が起こりうることを認識し、その対策をとっているかどうかが、設計の違いに表れている」という。
「今回のトラブルを踏まえると、日本の原発は津波対策として新たに防波堤を設ける必要がある。また、非常用ディーゼル発電機は厳重な建屋の中に移す必要がある」と桜井さんは提言する。
宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子炉工学)も「原子炉建屋は最重要の施設であるため、タービン建屋と比べても耐震強度が高く設計されている。非常用のディーゼル発電機は炉心を冷やす電源系統の中でも極めて重要で、タービン建屋の中に置いていたのは、位置づけが甘かったといわれても仕方がない」と認める。
宮崎名誉教授は、津波に備えるという意味では、「水への防御を高める必要があるだろう」とも話し、非常用電源が置かれている場所の防水性を高める必要もある、と指摘する。
経済産業省は既に、福島第一原発の被災を受けて、電力各社に対策を求めている。3月30日に出した指示では、短期的には外部電源と非常用電源の双方を喪失した場合に備えて電源車を配置することなどを求め、中長期的には防潮堤や水密扉を設置し、空冷式のディーゼル発電機なども確保するよう、求めている。(小松隆次郎、野口陽、舟橋宏太)