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梶浦由記 『FICTIONⅡ』 スペシャルインタビュー 2
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FictionJunctionとしてではなく、Kalafinaのプロデューサーでもなく、梶浦由記が“素直に聴きたい”曲を作り、1枚に集約。異界と現世の狭間を行き来するかのような幻惑的な音、郷愁をかきたてる音など、“梶浦由記”に満ちたソロアルバム『FICTION Ⅱ』について聞く。
私が聴きたい、聴いて心地良い曲を作った
――サウンドトラックの歌ものを作っている時とは、かなり意識は違いましたか?
梶浦 そうですね。『FICTION Ⅱ』は私が満足すれば100点だという意識で作りました。逆にサウンドトラックを作る時って、監督や映像スタッフの要望に応え、その先にお客様を楽しませることが第一義で、それ以下はないんですね。見てくれる人が満足してくれて100点なんです。でも、今回は、自分で聴いて心地良い曲を作ったというところですかね。勿論、聴いてくださる方が気に入れば嬉しいですけど。そこが最近の仕事との一番の違いかな。だから、長さもあまり気にせず、「リピート長いよ」と言われようと6分半で、みたいな(笑)。
――日本語曲もないですね。
梶浦 そうですね。それも同じで、日本語曲は作っているので、「そろそろ英語曲を」という流れでした。「やらない」と決めたわけでは……、いや、決めているかもしれないな。日本語曲なら多分、FJでやるでしょうから。だから、私個人では日本語をやらないかもしれませんね。
――新曲の中で特に印象に残っている曲はありますか?
梶浦 全てが印象には残っているんですけど、やりたいことを叶えたという意味で、「heigen」は達成感というか、気が済んだ感覚がありますね。これはヨハン・サラ・ジュニアさんというフィンランドの方に、joik(ヨイク)を歌ってもらったんです。ヨイクは昔、私が好きだったマイク・オールドフィールドのアルバムに入っていて、「何だろう、これ? かっこいいな」と思ったんですよね。日本の民謡っぽくもあり、モンゴルっぽくもあり、でもホーミーほどつぶれた感じではなく綺麗に歌っていて、いいとこを突いているんです。懐かしい感じもするし、日本人が聴くと無国籍な雰囲気で、すごく興味を持っていたんです。そうしたら、去年観に行ったライブにヨハンさんが出演していて、「あぁこれだ」と思い出したんですよ。そこで今回、ヨハンさんに歌ってもらうために「heigen」を書きました。「ヨイクを乗せて、ヨイクを温かく聴かせるには?」「ヨイクと掛け合うにはどういうメロディが合うか」という視点で書いたんですね。そういう意味では、「やっとヨイクができた」という感覚で。さすがにフィンランドまでは行けないので、曲のファイルを送って歌ってもらって、返してもらってというやり取りを初めて試みました。
つづく
Text/清水耕司(超音速)
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2011/04/05 16:00:00
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