きょうの社説 2011年4月18日

◎日米外相会談 震災で促される同盟深化
 クリントン米国務長官と松本剛明外相が会談し、東日本大震災の復興と福島第1原発事 故の収束に向けて日米が緊密に協力していくことを確認した。日米安保条約は昨年、改定50年の節目を迎え、菅直人首相は日米同盟の深化に関する共同声明の発表をめざしている。そのために6月に訪米する外交日程は不透明だが、大震災で図らずも同盟の深化が促されることになった。

 先の20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が、日本の復興支援で一致 したのはありがたい。が、福島原発事故で日本の信用は大きく損なわれた。そのダメージが長く続くことを覚悟しなければならない日本にとって、復興を通して日米のつながりを幅広く強めることは重要である。

 日本の国家的危機に対して、米政府は米軍による大規模な救助・救援活動を展開し、被 災者から深く感謝された。オバマ大統領は福島原発事故にかかわらず、米国内で原発を推進する姿勢を堅持し、原子力関係の専門家や海兵隊の放射能専門部隊を日本に送り込み、支援を強化している。

 日本の事故の拡大防止は米国の原発政策にとっても重要との判断からであろうが、震災 ・原発事故での連携は、軍事面にとどまらぬ日米同盟深化の一つの方向を示しているともいえる。

 震災を契機に日米関係のレベルアップを図る動きが民間にも出始めている。米国の有力 シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が日本経団連と共同で、日本再建に向けた日米協力の具体策を提言する有識者会議を設置するのがその例である。同会議には藤崎一郎駐米大使やキャンベル国務次官補らもオブザーバー参加し、当面、災害救助・防災▽経済・財政▽エネルギー▽同盟に基づく協力など6分野で議論を進め、今秋に報告書をまとめる予定という。

 同盟深化を具体的に協議する外務・防衛担当閣僚の日米安全保障協議委員会(2プラス 2)では、日米の「共通戦略目標」の見直しも行われる。現行目標である朝鮮半島や台湾海峡情勢などへの対処だけでなく、エネルギー安保も重くとらえる必要があろう。

◎金沢井波線整備完了 アイデア出し合い活用を
 金沢市と南砺市を直結する県道金沢井波線の全線片側1車線化が23日に完了する。県 境付近にわずかに残されていたバスの行き来もままならないような難所がすっきりと解消されることにより、これまでの「裏道」的なイメージも薄れよう。両市には、金沢井波線を交流の新たな動脈として活用して双方の活性化を実現するためのアイデアを出し合い、スピード感をもって実行に移していくことが求められる。

 南砺市は早速、井波−金沢間の定期観光バスの運行実験を10〜11月に実施する計画 を打ち出している。北陸新幹線の金沢開業後、新高岡駅(仮称)だけではなく、金沢駅も南砺市の「玄関口」と位置付け、金沢井波線を生かして二次交通網の充実を図ることで、「終着駅効果」の一部を取り込むのが目的であり、その方向性は評価できる。

 こうした定期観光バスが定着すれば、金沢市としても、世界遺産の五箇山合掌造り集落 など城下町とはひと味違う観光資源に恵まれている南砺市を、「奥座敷」として個人観光客向けの周遊コースに組み入れやすくなり、新幹線開業後の金沢駅の利用促進、つまり観光誘客の拡大に期待できる。南砺市の運行実験にPRなどの面で大いに協力し、それを通じて浮かび上がってくる課題の解決にも連携して取り組み、将来の本格運行につなげてもらいたい。

 金沢井波線は、2008年に全線開通した東海北陸自動車道から金沢市へのアクセス道 の役割も持つ。南砺市内には、既存の2カ所のインターチェンジ(IC)に加え、新たなスマートICも整備されることになっている。これらのICから南砺市に入る観光客を増やし、その多くが金沢市にも立ち寄るようにするためにどうすればよいか。これも、両市で知恵を絞りたいテーマである。

 両市の間では、湯涌温泉経由の金沢福光連絡道路を建設する構想も浮上しているが、費 用対効果などの観点から早期実現は困難との見方もある。金沢井波線で「県境道路」の効用を示すことができれば、追い風になろう。