東京電力は17日、福島第1原子力発電所の事故収束に向けた作業を2段階で実施する工程表を発表した。6~9カ月後をメドに、原子炉を100度未満の安定した状態に保つ「冷温停止」にすることが柱。原子炉格納容器の大半を冷却水で満たす新たな対策も打ち出した。ただ原発の損傷度合いによっては作業が遅れる可能性もあり、目標の達成は予断を許さない。
工程表は、4月12日に菅直人首相が東電に策定を指示していた。
「事故の収束に向けた道筋」と題した工程表では(1)原子炉や使用済み燃料プールの冷却(2)放射性物質で汚染された水の保管や処理、大気・土壌中の放射性物質の抑制(3)避難区域などにおける放射線量の測定と低減――など大きく3つの分野に分けて、課題と対策を整理した。
第1段階(ステップ1)では今後3カ月程度で、原子炉を冷却し放射線量を着実に減少させることを目標に掲げた。第2段階(ステップ2)では原子炉を冷温停止にして放射線量を大幅に抑える計画で、さらに3~6カ月程度かかるとの見通しを示した。
福島第1原発の1~4号機周辺は、放射性物質の飛散や汚染水の漏れが続き、復旧作業を困難にしている。こうした事態を早期に食い止めることが工程表実現のカギを握る。都内で記者会見した勝俣恒久会長は「収束についてはかなり成功すると思っている。100%絶対というものはないが、目標は何とか達成したい」と述べた。
冷却への具体策として、原子炉格納容器を水で満たす「水棺」を1、3号機でまず実施する。格納容器の一部である圧力抑制室が破損している2号機については、破損部分を特殊セメントで密閉したうえで、同様の措置をとる。併せて熱交換器を設置するなどして、より安定した冷却機能の回復を目指す。
1号機で実施している格納容器への窒素封入については2、3号機にも拡大し、水素爆発の危険を避ける。第2段階では放射性物質の放出を防ぐため、原子炉の建屋に換気やフィルター設備を備えたカバーを設置する。
コンクリートを使って本格的に建屋全体を覆うことや、燃料棒の取り出し、汚染水の処理施設や汚染土壌の洗浄などについては中期的な課題に掲げたが、具体的な時期は示さなかった。
今回打ち出した対策の費用について勝俣会長は「金融機関から2兆円強の資金を確保しており、それをベースに賄いたい」と述べた。避難住民らへの損害賠償もあり、東電の資金負担はさらに膨らむ可能性がある。
政府は福島第1原発の半径20キロメートル圏内を「避難区域」、同20~30キロ圏内を「屋内退避区域」に指定しており、東電は工程表実現に大きな責任を負う。勝俣会長は避難住民の帰宅の可否については言及を避け、「放射性物質の放出を低減することが当社の役割」と強調。「具体的な時期は政府が判断することで、そのためにできるかぎりデータを提供する」と語った。
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