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プロローグ
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やたらボロっちい四畳半の部屋で横島は目覚めた。
なぜか見覚えはあるのだがなかなか思い出せないでいると、頭の中に今日の日付がうかんできた。
「平成8年?」
平成19年から理由はわからないがこの前、妻の令子を助けるために戻ってきたよりも1年前に魂か意識がもどってきたようだ。
色々と現在の身体の記憶や部屋の中の状況やカレンダーからみるとその通りなのだろう。
今度はどんな事件にまきこまれたんだろうか。
時間移動は封じているはずだからも玉の暴走か?
それとも、ひさしぶりにでてきた宇宙の卵につっこまれたとかというのは神魔族が管理しているからそれは、最近の動向ではないだろう。
とりあえずは、様子をみるしかないか。
こうやってひさしぶりに一人でいると令子との結婚は確かに幸せだったな。
しかし色々と犠牲にしてきたものもある。
これが繰り返されるなら人生赤字の繰り返しだよな。
今後のことだがアシュタロスとの件というよりも、ルシオラの件があるので1年の猶予は助かる。
幸い今日は日曜日で考える時間はある。
そういえばこの時点では本気かどうかわからなかったことがあったよな。
しかしアパートのひとりぐらしで両親からの仕送りが、本当に最低限しか送ってこなかった時にはあせったことを思いだしていた。
生活のためにアルバイトをどうするかを考えるのもあるが、現時点で自分の霊能力がどれくらいあるかの確認をする。
部屋の中で色々とためしてみたが簡単にいえば霊力だけなら中堅GS程度といったところか。
魂ごと過去へとんできたわけではなさそうだ。
多分だが意識か知識だけもしくは両方が何らかの理由で過去にさかのぼったのであろう。
自分の最大の霊能力である文珠を生成できないのはいたいが、2日に1個程度しか生成できていなかったので切り札的にしか使用していなかったしな。
今は霊的成長期にいるのであと1年あれば前回の時よりは力はついているだろうが、力だけではあのアシュタロスは倒したりすることはできない。
可能ならばアシュタロスの希望通りに滅ぼしてやるのがよいのだろうが前回を踏襲できるであろうか。
ただし意図してきたわけではないのでルシオラに関しては複雑な思いがある。
前回と同じようにしたい分もあるが、それだと彼女の思いにたいして失礼にあたるのではないかと。
いきなり難しいことを考えるのはやめ。
霊能力自身についてはだいたいわかったが、霊能力に比較して身体能力は明らかに足りないのはこの部屋の中だけでもわかる。
まずは基礎訓練からのやりなおしか。
この前の毒蜘蛛の件で令子を助けるために時間移動をして改めてわかったことがある。
大きな事件はそれに相当する事件は必ず発生する。
しかし個人的なことは簡単にかわってしまうことだ。
妻の令子は1回目に打った解毒剤の量が俺と個人差のためか未来にもどっても毒性の中毒のままであった。
俺はあの事件で傷をおったのと、過去に解毒剤をうったことにより戻った時点では毒についての問題は発生していなかった。
これが時間の修正力なのだろう。
高校2年生の時はものすごく色々な事件があったり、何回も高校2年生をしていたような気はするが、細かいことの記憶はあやふやになっている。
色々と世話になったおキヌちゃんをたすけて生き返らせてあげたい。
しかし、死津喪比女の起こした霊障から考えると早めに手を打つと、時間の修復力により別な霊障が東京を襲うだろう。
それは俺の持っている知識のアドバンテージが生かせなくなる。難しいところだ。
今おこなった霊能力の確認での霊体痛は考えなくても良いだろう。
肉体的キャパシティは現状でも充分霊力の出力に対して適応しているようだ。
潜在能力だけならあの両親から血を受け継いだ俺だとあらためて思わされたが今は無理だな。
この時期にGSの道をすすむとなると一番の安全策は令子と一緒にいることだが、まだ事務所は開かれていないはず。
そうすると令子が研修をうけているはずの唐巣神父のところか。
その他の候補となると冥子ちゃんのところだが、この当時の冥子ちゃんはまだ冥子ちゃんのぷっつんってなおっていなかったよな。却下だ。
たしか冥子ちゃんのぷっつんが目立たなくなったのはアシュタロス事件……公式には核ハイジャック事件だったよな。
原因はよくわからないがあのときの霊障で思うところがあったのだろう。
日曜日なのは幸いだし距離的にも比較的近いこともあり唐巣神父の教会に向かう。
立て直す前ってこんなにボロだったっかな、この教会。
そんな失礼なことを考えながら教会のドアをノックをする。
中からでてきたのは亜麻色の髪の女性だが、俺がこの前に過去へ戻った時とみて知っている若い令子より若干やわらかい感じの女性がでてきた。
「はじめまして。横島忠夫と申します。唐巣神父はいらっしゃいますか」
「ええ。今いますがどのようなご用事ですか」
「GS助手を希望していまして、その……アルバイトとしてやとっていただけないかとお願いをしたくて……」
目前の女性には令子ほどに一緒にいたいと感じはしないが、霊波が非常に似ている。
前回の10年前に時間移動の時には、思わず我を忘れるぐらいに若い令子に興味をひかれたのにこの違いはなんだろうか。
目前の女性はちょっと考えてから、
「ええ、まずは中にお入り下さい」
「ありがとうございます」
教会の中に通されたら唐巣神父ともう一人の亜麻色の髪の女性がいる。
あれはまさしく令子だ。
思わず近寄りたい衝動に耐えながらもう一人の亜麻色の髪の女性が俺のことを唐巣神父に伝えているようだ。
その唐巣神父がちかよってきて、
「私が唐巣です。君が横島君ですか? GS助手を希望とのことですが除霊の経験はありますか?」
「いえ、ありません」
今朝意識をしただけだからこの身体では実際におこなっていないので正直に言う。
「除霊というのは大変危険な行為だよ。君はそのことを認識しているのかね?」
唐巣神父は俺に対して説得をしようとしているのだろう。
「正確には認識していないかもしれませんが、先週の日曜日、夢枕に菅原道真公が現れましてそれによって俺には霊能力があることと、
その能力について語ってくれました。その夢の後にこの霊能力にめざめました。それでこの1週間練習をつんでいます」
そう言って右手と左手にそれぞれ手のひらより少し大きめなサイキックソーサーを作成する。
唐巣神父が軽く「ほぉ」という言葉をつむぎだす。
唐巣神父はその霊能力によって作り出された過程と、それによって横島の発生させる身体全体の霊力が変化していないことをみていた。
まだ充分な霊的に余力がありそうだと判断する。
これだけの霊能力でも充分にGS試験は突破できるであろう。
ましてや若くていまだ霊的成長期にありそうな前途有望そうな少年を育ててみたい気はする。
しかしながら唐巣神父から語られる言葉は自己の思いとは別な方向に向かった。
「たしかにそれだけの霊能力を埋もれさすのは惜しい。
しかしながら今いるここの二人の面倒を見ているのとこの後もう一人くるのでそれが精一杯でね」
「そうですか。よろしければ目の前のお二人の女性のお名前だけでも聞かせてもらっていただいてもよろしいですか」
「……名前ぐらいなら良いでしょう。最初にドアであったのは美神ひのめ君。そしてそちらにいるのが美神令子君です」
えっ、ひのめちゃん? 俺の知っている過去と違う平行世界に移動したのか。
そうすると原因にかかわらず、元に戻るのは難しいぞ。
そうは、いってもあまり考えるのもまずい。
「……あらためて挨拶させていただきます。横島忠夫です」
令子からはそれぐらいの霊能力は何よっといった感じを受けるが、意識がとんだ前の義理の妹にあたった、ひのめちゃんからはうらやましそうな視線を感じる。
しかし、ひのめちゃんは発火能力者としての才能を発揮していないのだろうか。
「私があずかるのはこの二人。いやさらにもう一人増える予定で手一杯なのだよ。私のところでGS助手というのはあきらめてくれないだろうか」
「うーん」
この時代に他のきちんとしたGSを知らないな。
この時点から未来になれば知り合いは増えていくが現在の住所と同じかというと自信は無い。
そんな悩みをみてとったのか唐巣神父からある提案を受ける。
「GS助手をめざすならばGS協会に行ってみてGS助手の募集が無いか確認してみてはどうかな?」
思ってもいなかった発想だ。
たしかにGS協会でGS助手の紹介していたこともあったなと思い出す。
自分ではつかったことがなかっただけにすっかり忘れていた。
「唐巣神父ありがとうございます。GS協会にいってみます。あと縁があったら美神令子さん、美神ひのめさんもよろしくお願いしますね」
ひのめちゃんはともかく、令子とは何か縁があるはずだ。
二人の反応はそれぞれ異なるが、極一般的な範囲をでてはいなかった。
早速GS協会にむかってみる。
GS協会では簡単な書類を書いてGS助手の募集をみてみる。
この時期にGS助手をだしているのはかけだしの新人か何らかの都合でGS助手がいなくなった場合だ。
俺はその中で六道女学院とは関係が無く比較的若手のGS院雅良子(いんがりょうこ)というGS助手募集にたいして紹介依頼をお願いしてみた。
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リポート1 さっそく除霊
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今日にでも面会という話だったのと遠くはないので院雅除霊事務所に直接向かうことにする。
ついた院雅除霊事務所でおこなったのは巫女姿の女性と面会だ。
「貴方が横島忠夫君ね」
「はい、横島忠夫です。貴女が院雅良子さんですか」
「そうよ。GS助手といってもそんなに難しいことをさせる気はなかったのだけど横島君は霊能力があるそうね」
「ええ」
そう言って両手にサイキックソーサーを展開する。
「充分ね。将来GSを目指すならともかく3年以内ぐらいなら、GS助手としてアルバイトは歓迎よ」
3年とは微妙な数字だ。
高校卒業までを目指すという意味なら普通の高校1年生にとっては卒業までの期間なので魅力的な提案であろう。
しかし、俺の目標は来年の夏休み明けごろにおこるであろうアシュタロスの事件だ。
その前には現在の令子とそれなりの信頼関係を築き上げておきたい。
そんなためらった感じを勘違いしたのであろうか院雅良子は、
「別に3年とはきまっていないわよ。まずは貴方が実戦でどれくらい使えるかしりたいわね。
時給とか危険手当については今日は単発の契約として、今後のことは今日の結果をみてからお話しましょう」
「えっ? 今日ですか?」
「あら、聞いていなかったのかしら。GS協会も怠慢ね……このことは聞かなかったことにしてね」
「ええ」
「一緒に行うGS助手がケガで霊的中枢(チャクラ)にダメージを残してしまったので困っていたのよね。
他のGSを頼むと金額的に高くなりすぎるしそういうところでも困っていたところなのよ」
高校生の肉体でありながら俺の主観では若い女性でもあり断れない内容なわけで思わず、
「それでOKっす」
っと言いかけるがどんな霊障を今日行うかということを聞く。
内容的にはそんなに高度では無い。
自分ひとりでもサイキックソーサーさえあれば多分大丈夫だろう。
しかし、肉体の動きについてはさすがに自信は無い。
GS助手なのに助っ人というのはおかしな話だがGS助手として臨時契約を結んで早速今日の除霊を行う場所に向かった。
院雅除霊事務所所長 院雅良子もとい院雅さんの事務所で目を通させてもらった資料によると今回の仕事のターゲットは、
『自殺者の怨霊で霊力レベルはC。特定のオフィスである部屋からでないのでオフィスの外に損害はなし。
説得は不可能であるが特殊な点はナシ。通常除霊処置で成仏可能と判断される』
書類にはそのように書いてあったが院雅さんの話によると、
「今回の怨霊は浮遊霊から霊力を吸い取る能力があったのよ。そのために現状の推定霊力レベルはBになっているのよ」
「ますますその怨霊の霊力レベルがあがっていきませんか?」
「そのあたりは他の浮遊霊が入れないように結界札を貼ってきたからあと2,3日は大丈夫よ」
このあたりはさすがにプロだな。
事務所から目的地まではタクシーで移動する。
そういえば令子のところで働いた初期は私鉄とかの移動も多かったなっと思い出すが、その後は自家用車での移動が多かったのでタクシーは滅多につかわなかったな。
まあ自家用車は事務所の必要経費ということにしてあったのを知ったのは随分たってからだったが。
タクシーに持ち込むものは以外と少ないのか?
梓弓(あずさゆみ)と桶胴太鼓に何種類かの道具と札だ。
これを運ぶのが俺の役割のひとつだ。
令子のところで若いときに働いていたのに比べたら非常に少ない。
有名どころな道具や札はもう何回もつかっているので見慣れない梓弓(あずさゆみ)と桶胴太鼓の説明を受ける。
「この小さめの太鼓は桶胴太鼓といってこれををたたくと音と一緒に霊波がのらせて相手に届くのよ。
それで怨霊をあらかじめ用意しておいた結界にとじこめるのに使っているのよ」
おキヌちゃんのネクロマンサーの笛は直接説得や浄化させていたが、このような方法もあるんだ。
おキヌちゃんは相手があやつっていたキョンシーをあやつったりしたり、相手の意思に働きかけるなんてこともしていたな。
「こちらが私のメインの武器になる梓弓(あずさゆみ)よ。
これも弓をはじくと音がでてそれに霊波をのせるというのは同じだけど、桶胴太鼓よりは霊波をのせにくいのよ。
けれどもこの矢で結界に閉じ込めた怨霊を最後に止めをさすのが私の除霊スタイルよ」
世の中には色々な方法があるんだな。
「そういえば神通棍はどうするんですか?」
「そ……それはね。切り札ね」
「神通棍が切り札?」
「私が得意とするのは中距離から遠距離なの。
近距離まで迫られるような強力な怨霊から……一時的撤退をして作戦をたてなおすのに使っているわよ」
最後の方は言葉が少し弱まっているのは気にかかる。
しかし命あってなんぼだしな。
自分たちより魔力や妖力が強い魔族や妖怪を相手にするのに戦術的撤退なんてしょっちゅうだったしな。
「へーい。了解しました。それで今回の俺の役割は?」
タクシーの中で説明を受けるが、初めての仕事だし役割としては仕方が無いか。
目的地の事務所へタクシーでつくと、いつもの通り領収書をもらって降りる。
院雅除霊事務所で話した雰囲気やタクシーの中で聞いてくる内容を加味すると、この横島という少年にはまだ隠し事がありそうね。
最初に霊能力に目覚めたのが、菅原道真公が夢枕にたったその朝に霊能力が発現した?
それはまだしも1週間もたたないうちに、世界でトップ10に入る唐巣神父のところへGS助手として売り込みにいくかしら。
素人ならよくは知らないはずのそれぞれの札や神通棍についても知っていた感じがするし。
もしかしてもぐりで除霊でもしていたのかしら?
この仕事で彼を見極められるかしらね。
二人の思惑はそれぞれ異なるが除霊でゆだんは禁物。
各自ターゲットの怨霊に対して事前にたてた作戦の通りにすすむ。
前回は霊力レベルはCの怨霊ということで梓弓(あずさゆみ)のみを持ってきていたが、今回は桶胴太鼓で怨霊を結界内の隅の方へおいこんでいく。
その様子を横島が彼女の前で結界札を持ちながらすすんでいくというものだ。
横島としてはサイキックソーサーの方が確実なのはわかっているのでちょっとなさけない。
除霊はしたことが無いことになっているのだから院雅からみたら俺の初仕事である。
実際この肉体では除霊の初仕事になるわけだが。
サイキックソーサーが実戦で使用できるかどうか不明というリスクを、おいたく無いのは理解ができてしまう。
院雅さんが桶胴太鼓を使用して、怨霊を隅においつめていったところで横島は結界札を院雅さんから指示された6箇所に張っていく。
これで怨霊が移動できる範囲は5m四方程度まで小さくなった。
「院雅さん、結界札は全部貼り終わりました」
6枚目の結界札を貼り終わったところで声をかける。
「じゃあ、ラストね」
院雅さんが梓弓(あずさゆみ)で矢を放つ。
矢に霊力がのっているのはわかるが、その時の弦の音にもしっかりと霊波がのっている。
2重攻撃になるのかな。
結界の中の怨霊はあばれていて結界がミシミシと鳴っているので
「この結界もちますか?」
「あと2,3本矢がさされば成仏するから、それまでもてば大丈夫よ」
「そうすか」
「それよりも話かけるならあとにしてね」
「へーい」
話かけるなということはこの結界そんなに長時間はもたないということか。
邪魔しちゃ悪いな。
院雅さんがさらに梓弓(あずさゆみ)で矢を2本さしたが、まだ怨霊の霊力が半減した程度にしか見えない。
霊力レベルBの怨霊といってもマイト数に換算したら範囲が広いからな。
とどめの一発のつもりなのか最後の矢にはこれまでよりも大きな霊力がこもっているのがわかる。
もしかしたら今までのは怨霊の霊力を見ながら矢にこめる霊力を調整していたのか。
それだったらたいしたものだ。そしてその矢を放ったら、
スカッ
怨霊が避けやがった。
それとともに結界をやぶって出てくる。
院雅さんも対応しようと梓弓(あずさゆみ)から神通棍へきりかえようとしているが、襲ってくる怨霊の行動が早くて間に合いそうに無い。
俺は院雅さんの斜め後ろにいる。
この身体では間に割り込めるほど早くないし、こちらにむかってきたときの為の吸引札を投げてあてるのはこの身体では訓練していないから今は無理だ。
俺は近くにいる院雅さんに飛びつきつつ、サイキックソーサーをノーモーションの意思だけでコントロールして飛ばす。
体勢を立て直す必要があるかと思ったらそれだけで怨霊は消えたのを感じた。
「院雅さん、怨霊消えちゃいましたね」
「えっ? 今のが消えるわけ無いのに!」
ちょうど院雅さんから見えていないのは確認している。
霊感が強いならサイキックソーサーで怨霊に止めをさしたのがわかるだろう。
「ちょっとどけてくれるかしら。まわりを確認しないと」
折角、院雅さんの身体のぬくもりをもう少し楽しみたかったので身体を預けたまま言う。
「俺のサイキックソーサーをぶつけたら消滅しました。これも院雅さんが弱めていたからだと思います」
そう言いながら思わず胸のあたりをスリスリするが胸の感触があまり無い。
これはサラシをまいているか何かか。
『こんちくしょー』
「それでもいいから、まずはどいて」
胸の感触が楽しめないならあまり駄々をこねるのは得策ではない。
一応、一緒にまわりの確認をしたが怨霊らしい気配は残っていない。
やはり無事に成仏してくれたようだな。
彼のサイキックソーサーと、私の最大霊力を込めた梓弓(あずさゆみ)の矢が同じ強さだというの?
しかも今回特にこわがっていた様子も無いし、最後のあの判断だけど普通ならサイキックソーサーのかわりに吸引札が正解のはず。
しかし、サイキックソーサーをきちんと使いこなしているということはそれなりの場数を踏んでいるわね。
こうして横島は院雅から目をつけられるがそれはセクハラ方面ではなかった。
これが良い方向に転ぶのか悪い方向に転ぶのかいまだ横島にはわからない。
院雅除霊事務所にもどって今日の臨時アルバイト分を先にもらえることになった。
元はレベルCで除霊助手の仕事なのに約束の金額より多少多めに入っている。
「あれ? 約束していた金額より多いんですけど」
「最後は助けられた格好になったからよ。本当なら吸引札を使うところだけど、
吸引札は高いから判断ミスを除いてもその分を上乗せしといたのよ。嫌かしら?」
ブンブンと首を横にふりながら
「いえ、ありがたくいただいておきます」
「それで、貴方GS助手として合格よ。本当ならもう少しテストとかしてからきめるのだけど、今日の様子を見る限り私の除霊スタイルとあっていそうよ。
次回は明日きてもらうで良いかしら?」
「明日ですか? ええ大丈夫です。ちなみに明日も仕事ですか?」
「いえ、明日は除霊の仕事はないけれどアルバイトとはいえ正式なGS助手としての雇用契約を結んでおきたいのよ。
契約書を事前にわたしておくから、目をとおしておいてね。わからない部分があったら明日その場で説明してあげるわよ」
私の見立てが正しいのなら、彼は除霊になれているわね。
あとはモグリでGSをおこなっていなかったのならどうやって場数を踏んだかよね。
どうも女好きなようだしそこをうまくすれば良いように使えるかしら。
横島の性癖はすっかりばれているようだった。
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院雅良子(いんがりょうこ)はオリキャラですが、最終巻で200年後にインガ・リョウコとでてきていますので、ビジュアル的にはそれと同じとみてください。
院雅良子は巫女姿ということで、神道の道具として梓弓(あずさゆみ)と桶胴太鼓をチョイスしました。
梓弓(あずさゆみ)と桶胴太鼓は、少なくとも霊能力発現の為の道具としては原作にでてきていません。
2011.03.21:初出