社会地元出身本誌記者が涙のレポート! 宮城・気仙沼被災の本当の地獄絵図(2)

掲載日時 2011年04月15日 11時00分|掲載号 2011年4月21日 特大号

 気仙沼市内では地震発生後、火災が多発しているという。そして、そのほとんどが放火だと噂されている。
 「食糧や金がある家が狙われる。家が残った人は、わずかな食料も隠している。無法地帯そのものだよ。放火だけじゃなくて、窃盗もすごくて、この辺は家の鍵なんて締めなかったんだけど、今は確認までするよ」

 記者が気仙沼入りする前、知人にこう忠告された。
 「他県ナンバーは気をつけたほうがいい。男友達が2人で来たんだけど、車を集団に囲まれて、ガソリンと食糧を奪われた」
 治安が悪化しているとは聞いていたが、こうした話は、どこまでが噂で、どこからが真実なのだろうか。
 宮城県警関係者に尋ねた。
 「だいたいが本当だね。街にいくつもあるペシャンコの車を見てみなよ。全部給油口が開けられているから。でもそんなのは序の口で、コンビニやスーパーでは食料品に加えてレジも空っぽになってるよ。自販機だって壊されて、中身を抜かれてる始末だからね」

 実際、気仙沼信用金庫・松岩支店から4000万円が盗まれたことも明らかになっている。
 3月30日の宮城県警の発表によると、震災後の窃盗被害総額は1億円を超えているという。
 窃盗が増えているのは事実のようだ。では、放火や集団犯罪はどうだろう。
 「放火だと分かっているんだが、捕まえられないんだ。気仙沼警察署が津波で機能しないため、今は防災センターに一時移転していて、人もパトカーも足りなければ、市民からの通報もままならない。それに、犯人がいたって、電気がまったくない暗闇でガレキだらけじゃあ追えないよ。だから、捕まえることができたのは大谷地区で起きた1件だけ。あとは、抑止力を期待してパトカーを数台走らせるのがやっとだね」(同)

 信じ難い話だが、レイプ事件も頻発し、警察が把握できない状況になっているという。こうした状況は、阪神大震災のときも見られたようだ。
 「阪神大震災では『火事場の犯罪は起きていない』と言われていましたが、それは事実ではありません。窃盗やレイプが相当数発生しましたが、状況が状況なので、通報したくてもできなかったというのが実情です」(在阪の全国紙記者)

 震災直後と違い、最近はチャリティーや復興といった“美談”が目立っている。
 しかし、その裏には過酷な現実が存在しているのだ。
 「もう、気仙沼はなくなった…。街や命だけじゃない。人の心も、津波はさらって行ったんだ…」
 友人が語ったこの言葉が、胸に突き刺さる。

【関連タグ】東日本大震災  

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