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東日本大震災:原発に外部電力 東北電から送電検討

福島第1原発1~4号機の状況について記者の質問に答える東電の社員=東京都千代田区の東電本店で2011年3月16日午後4時36分、梅田麻衣子撮影
福島第1原発1~4号機の状況について記者の質問に答える東電の社員=東京都千代田区の東電本店で2011年3月16日午後4時36分、梅田麻衣子撮影

 東京電力は16日、新たな送電線を結んで東北電力の送電設備から福島第1原発に外部から電力を供給する方針を固めた。津波で使用不能になった電源が回復すれば、炉内を緊急時に冷やす「緊急炉心冷却装置(ECCS)」が使えるようになり、放射性物質の拡散につながる炉心溶融の危機を回避できる可能性が出てくる。

 同原発では11日の地震後、非常用発電機を動かすポンプなどが津波で冠水し、ECCSなど非常時に原子炉を冷やす注水システムが使えなくなった。また、炉内にあった水は徐々に蒸発し、水位が低下、燃料棒は長時間水から露出した。東電は出力の低い消火用ポンプで海水を注入したが、十分に水がたまらず、1、3号機では水素爆発が起きた。

 このため、東電や経済産業省原子力安全・保安院は冷却機能の回復にはECCSの回復が不可欠と判断。格納容器につながっている「圧力抑制プール」に大量の水が残っていれば、これを活用して炉内に水を送り込むことができる。

 また、電源を確保すれば、施設内の照明が使えるようになるほか、不具合を起こしている水位計などさまざまな計測機器類の機能が回復し、復旧作業を円滑に進められるようになる可能性がある。

 同原発はもともと東北電力の電力供給エリアで、東北電力の稼働可能な発電設備を活用して電力供給を再開させる。

 今回の戦略について、小林圭二・元京都大原子炉実験所講師(原子炉物理学)は「核燃料が水につかれば、破損や、より高いレベルの放射性物質の放出を防ぐことができる」と話す。しかし、設備は地震の激しい揺れや津波に襲われた上に、水素爆発や放射線にさらされてきた。計測機器に使われる電子機器は、放射線にさらされて機能を失っている恐れがある。小林さんは「電源が供給されてもECCSが機能するかどうかは、実際はやってみなければ分からないだろう」という。【山本明彦、西川拓】

毎日新聞 2011年3月16日 20時12分(最終更新 3月16日 23時24分)

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