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大間原発建設 30キロ圏の函館で強まる懸念 依存の地元「止められぬ」

(04/16 07:25)

工事が中断している大間原発の建設現場。壁面をシートで覆った左の建物が原子炉建屋=13日、青森県大間町

工事が中断している大間原発の建設現場。壁面をシートで覆った左の建物が原子炉建屋=13日、青森県大間町

 東京電力の福島第1原発事故を受け、電源開発(東京)が青森県大間町に建設中の大間原発から半径30キロ圏にかかる函館市で建設中止を求める声が強まっている。一方、地元の大間町では、震災直後から中断している建設工事の早期再開を望む声が上がる。町経済を原発マネーに頼らざるを得ない現実が、安全性への不安を覆い隠しているようだ。(函館報道部 内本智子、写真も)

 函館からフェリーで1時間40分。大間港から見える原発建設の巨大クレーンは止まっていた。建設工事は、東日本大震災直後は「電気や燃料が確保できない」、その後は「建設資材の調達ができない」(いずれも電源開発)などを理由に中断しており、再開のめどは立っていない。

 「経営者としては明日にでも原発工事を再開してほしい」。町内でパン店を営む宮野成厚さん(54)は言った。「福島の事故で安全神話が崩れ、住民としては不安だ。だけど、それだけこの町は原発に依存しているってことだ」

 工事中断で、約1700人いた工事関係者の多くは大間を離れた。仕出しや宿泊施設の利用は激減。飲食店の予約キャンセルも相次いでいる。

 原発立地に伴う大間町への国の交付金は、2010年度までで約68億円。14年11月に予定される原発運転開始後も毎年約2億円の交付を見込む。13年就航を目指し、町が建造を計画する大間−函館フェリーの新船も、電源開発が払う固定資産税を当てにしている。

 大間漁協の浜端広文組合長は「事故を教訓に安全対策を強化するよう注文を付けていく。町が困るから今から中止にはできない」と話す。

 「原発は安全という傲慢(ごうまん)さを見直し、原発とどう向き合うか、根本から考え直すべきだ」(75歳の自営業男性)など、中止を求める声もあるが、反対運動は起きておらず、10日投開票された県議選でも原発の是非をあらためて問う議論はほとんどなかったという。

 一方、対岸の函館では原発への不安が広がる。大間原発から函館市戸井地区の汐首(しおくび)岬まで23キロ、観光地の西部地区やJR函館駅までは30キロ余り。福島の事故に当てはめると、函館市の一部が屋内退避区域に該当する。

 戸井地区の漁業者(56)は「大間の原発で事故が起きたら、戸井はもちろん、函館も全部ダメになる。絶対に建設を阻止しないといけない」と語気を強める。

 大間原発に関する情報が函館市や道に直接はもたらされないことも不安感を増幅させる。道は、工事中断を新聞報道で知り、その後は「インターネットで情報収集している」(原子力安全対策課)という。

 大間原発訴訟の会(函館)によると、福島第1原発の事故後、電源開発と国に建設差し止めなどを求めて係争中の大間原発訴訟の原告に加わりたいと、函館市民約20人から新たな申し込みがあった。

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