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菅首相:内閣官房参与、続々任命 東電、経産省へ不信感

 菅直人首相は29日、田坂広志・多摩大大学院教授を内閣官房参与に任命した。東日本大震災発生後、新たに任命した内閣官房参与はこれで6人目。うち5人は原子力の専門家で、菅内閣の参与は計15人となった。東京電力福島第1原発の事故対応で助言を得るのが目的だが、東電や経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会に対する首相の強い不信感を反映している。

 「原子力に関する(政府の)態勢は保安院、原子力安全委員会とあるが、それ以外のセカンドオピニオンも重要なので、知見を持った方に必要に応じてアドバイスをもらう」

 菅首相は29日の参院予算委員会で参与増員の理由をこう説明した。

 震災後、首相が最初の新参与に小佐古敏荘・東大大学院教授を任命したのは、自ら東電本店に乗り込んで統合連絡本部を設置した翌日の16日。さらに20日には日比野靖・北陸先端科学技術大学院大副学長、22日には東京工業大の有冨正憲原子炉工学研究所長と斉藤正樹同研究所教授を加えた。

 東工大は首相の母校で、日比野氏も東工大出身。これまで日本の原発政策を推進してきた電力業界と経産省を中心とする「原子力村」には東大出身の専門家が目立つため、東工大出身者の重用にも東電・経産省への不信感がうかがえる。

 ただ、実際に事故対応を行うのは東電であり、監督官庁は経産省だ。高濃度放射線の放出が続く緊迫した状況の中、首相に直接、意見を言える参与の増員には「船頭を多くしても混乱するだけだ」(自民党幹部)などの批判も広がっている。

 首相官邸筋は「情報をすべて開示して意見を求めないと、意味がない。そのためには、守秘義務のある(公務員の)立場にする必要がある」と説明。枝野幸男官房長官は29日の記者会見で、「公務員の身分を持ってもらった方がプラスであれば、参与の立場で助言いただく。純粋な民間の方からも助言はたくさんいただいている」と助言の必要性を強調したが、政府内には「セカンドオピニオンを聞く前に、実務をやっている官僚の意見を聞いてほしい」との反発もくすぶる。【影山哲也】

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 ◆現在の内閣官房参与(就任順)◆

氏名    主な経歴

西村六善  地球環境問題担当大使

平田オリザ 劇作家・演出家

前田匡史  国際協力銀行国際経営企画部長

望月晴文  経産事務次官

峰崎直樹  参院議員、副財務相

松本健一  評論家、麗沢大教授

小林芳雄  農水事務次官

中村祐輔  東京大医科学研究所ヒトゲノム解析センター長

五十嵐敬喜 法政大教授

小佐古敏荘 東京大大学院教授

日比野靖  北陸先端科学技術大学院大副学長

山口昇   防衛大学校安全保障・危機管理教育センター長

有冨正憲  東工大原子炉工学研究所長

斉藤正樹  同研究所教授

田坂広志  多摩大大学院教授

毎日新聞 2011年3月30日 東京朝刊

 

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