2001年1月27日(日) 読売新聞日曜版7面
[どんな仕事?] 裁判官 男澤聡子(おとこざわ・さとこ)さん
東京地方裁判所・判事補
◆良心に従い、法律と証拠で判断する
裁判は大きく分けて、お金の貸し借りによるトラブルや離婚(りこん)、交通事故の損害賠償(そんがいばいしょう)などをあつかう民事裁判と、覚せい剤や窃盗(せっとう)、殺人などの事件に関する刑事裁判があります。
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男澤聡子さん
私は裁判官になって7年目で、民事担当です。最近は医療(いりょう)事故や企業の倒産、リストラ、著作権(ちょさくけん)などがからんで社会的な影響が大きい争いが多くなっています。
刑事裁判は、有罪か無罪かで争い、罪を犯した人を何年の刑にするかを判断しますが、民事裁判は、原告も被告もふつうの人。しかし、お金や土地をめぐる争いで双方の言い分が全く違うのでストレスもたまります。双方が歩み寄り、和解すると、両者に晴れやかな表情が戻り、やりがいを感じます。だから休日などにも、和解の方法を考えることが少なくありません。
和解が成立しないと、判決で決着をつけなければなりません。印象深いのは、重度障害の赤ちゃんを産んだ女性が病院のミスを訴えたケースです。担当の研修医(けんしゅうい)にその疑いはありましたが、出産から6、7年たっていて証拠もなく、原告負けの判決を下した時は、つらい思いをしました。女性の悲痛な叫びを聞きながら、ミスはなかったと最後のだめ押しをしたわけですから。
裁判官として、良心に従い、法律と証拠だけで判断しなければならないことは、つらいのですが、誇りでもあります。
裁判官は全国に約2300人、東京地裁には400人いて、最近は女性も増えています。裁判官になるには司法試験にパスし、修習生として1年半研修しなければなりません。私は大学生のころ、弁護士にあこがれていましたが、修習生時代、多くの魅力的な裁判官に出会い、男女の差別もなかったので、この道を選びました。でも、私が裁判官というと、たいていの人は驚きます。
仕事の内容は意外と知られていないので、東京地裁では、裁判官の出張講座などを行っています。裁判の傍聴(ぼうちょう)にもぜひ、来てほしいですね。(小5・川崎曜、高1・酒井由夏、高2・吉本恵子記者)
〈感想〉
「裁判に関係する人は、一生に1度の重大事なので、1件1件、大切にしていきたい」という男澤さんは、気さくで優しく、仕事への情熱が伝わってきました。また、ベテラン判事の小磯武男さんの計らいで法廷に案内していただき、正義のために毅然(きぜん)とした態度でのぞむ裁判官の仕事は大変だけれども、誇りが持てて素敵(すてき)だと思いました。(恵)
作成日: 2002年01月30日
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