きょうの社説 2011年4月16日

◎震災「復興税」構想 復旧・復興遅らせる増税論
 有識者らで構成する政府の復興構想会議の五百旗頭(いおきべ)真議長が、財源確保策 として「復興税」創設を提唱したことに強い違和感とともに憤りすら覚える。学者や有識者が自由な立場で、大所高所から復興のアイデアを語るのは勝手だが、あたかも既定路線のごとく増税にまで踏み込んだ発言をするのは、明らかに行き過ぎだ。税制に関する論議は、国民の負託を受けた政治家が主体的に論じる分野であり、軽々しく口出しすべきではない。

 いかに「震災復興」の名で呼ばれようと、増税は増税である。日本経済が深刻な打撃を 受け、そこから立ち上がろうとしているときに、なぜ足を引っ張る愚を犯すのか。万一、増税を強行するようなことがあれば、復旧・復興を遅らせるだけに終わるだろう。

 政府が鳴りもの入りでつくった組織のトップが初会合の席で真っ先に増税を口にしたの は、菅政権の意向と受け止めざるを得ない。菅直人首相と同じ財政再建論者の与謝野馨経済財政担当相は、復興税について「ひとつの考え方ではある」と前向きな見解を示した。会議を統べる人物が財務省の代弁者のごとく極めて政治的な発言をしたことで、復興構想会議の中立性は大きく損なわれた。

 復興構想会議では今後、復興税構想について検討部会を設けて集中論議していくという 。部会では与野党からも意見を聴くというが、学者が政治家から意見聴取して増税案を練るというのは、主客転倒だ。そもそも税制論議を学識経験者に丸投げし、何が政治主導か。面倒な論議を抜きにして、増税という果実だけを得ようとする思惑が透けて見える。

 かつて自民党の橋本政権は消費税を2%引き上げたために消費が大幅に落ち込み、デフ レが深刻化した。デフレが更に悪化すると、増税に伴う税収増は期待ほど増えず、さらなる増税が必要になる。

 震災という一時的な衝撃に対応する財源調達の手段は、やはり国債以外にない。幸い日 本は国内で国債消化が可能であり、日銀による国債の直接引き受けという奥の手もある。震災を奇貨として、どさくさ紛れに増税を強行しようとするのはやめてほしい。

◎BCリーグ開幕 地域沸かす底力を今こそ
 きょう16日に開幕するプロ野球独立リーグのBCリーグに期待したいのは、人々を勇 気づけ、地域を沸かせるスポーツの底力や野球の醍醐味を、気迫あふれるプレー、息づまる熱戦を通して思う存分に示すことである。

 東日本大震災で開幕が1週間延び、震災の影響はそれぞれの地域の幅広い分野に及んで いる。5年目を迎えた今年は「野球を通じた地域活性化」というリーグ設立の原点が試されるシーズンと言ってよいだろう。

 北陸では富山市の全日本チンドンコンクール、福井市の越前時代行列など、その地域の 代表的な大型イベントが相次いで中止になっている。だが、震災以降の過剰な自粛ムードや萎縮傾向も徐々に薄れてきた印象があり、桜満開のタイミングで幕を開けるBCリーグは、気分を一新し、明るい兆しをさらに広げる役割を担う。

 今シーズンは大震災の復興支援として「がんばろう!日本」の統一スローガンの下、各 球場に募金箱が設置されるほか、ナイター開催時は可能な限り減灯し、延長戦は行われない。制約もあるが、地区・リーグのチャンピオンシップを含む全試合を対象にした予告先発は、ファンの関心を高める試みとして期待がもてる。

 昨年のリーグ覇者、石川ミリオンスターズは2連覇を狙い、富山サンダーバーズは北陸 地区最下位からの巻き返しを図る。

 昨季はミリオンスターズが独立リーグ日本一の座を逃したが、BCリーグを活性化させ るためにも、まだ手にしていない栄冠を早くつかみ取ってほしい。「日本一」の実力を兼ね備えてこそ、有望な人材が集まり、人気の裾野も広がっていくに違いない。

 ひと足早くセ・パ両リーグが開幕し、野球の魅力が再認識されているが、地域に活力を 呼び込む、より身近な存在として、BCリーグの各チームにもあらためて視線が注がれるだろう。

 今年は新たなファン層を開拓し、リーグの魅力を高める好機といえる。攻守にわたる最 高のプレーで、元気と感動を地域全体に広げてほしい。