福島事故損害賠償で政府案 他電力に負担も
2011/04/14
東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って生じる巨額の損害賠償を巡り、東電以外も含めた電力会社の電気代に上乗せする形で賠償額の一部を負担する案が政府内で浮上している。東電は経営の安定性を保てる範囲内で賠償額を毎年支払う。東電が負担しきれない分は、原子力発電事業を手がける全電力会社の電気代に上乗せする形で集めた資金を用い、一定額を毎年拠出する。さらに政府保険と電力業界による負担額を超える「青天井」の部分は政府が最終責任を負う。東電破たんによる電力安定供給や金融市場の混乱を回避するとともに、事故の被害者を確実に救済していく。
特別法に基づいて設置する国の機関を原子力損害賠償法上の「原子力事業者」とし、賠償の無限責任を負わせることが検討されている。東電の財務状況は、原子力の長期停止による化石燃料費の急増、電気事業収入の減少、設備復旧費用、廃炉費用などで厳しさを増すことが確実。債務超過や資金ショートが懸念されている。中でも数兆円超とされる賠償負担が東電破たんの引き金となりかねないため、賠償リスクを東電から切り離し、国の機関が責任をもって賠償にあたる。
国の機関は金融機関から融資を受け、政府が債務保証を付与。使用済み燃料の再処理事業などに用いる積み立て資金を管理する既存法人にも債務保証など一定の役割を担わせる案がある。一層の信用補完のために国の機関が東電に債務保証、出資することも考えられる。
電気代への上乗せは「原子力サーチャージ」との位置付けになりそうだ。政府内では「東電1社の電気代に賠償負担を転嫁すると、関東圏の企業活動に支障をきたす」との見方がある。電力関係者からは「東電以外の需要家にも負担させる論理が成り立つのか」「原子力比率の高い会社には厳しいが、苦境の東電を支えるためならばやむを得ないか」といった声があがっている。
政府は11日、海江田万里経済産業相(原子力経済被害担当相)を本部長とする「原子力発電所事故による経済被害対応本部」の設置を発表した。同本部が賠償の大枠を検討する。海江田大臣は同日、東電が関東圏の電力供給責任を果たしつつ、収益を上げながら賠償を進めることが重要との認識を示している。
賠償にあたって東電が負担する額は、東電の支払い能力の範囲内となる見込みだ。政府は現在、バランスシートやキャッシュフローなど東電の財務状況の見通しを調べ、支払い能力を精査している。一方、政府による「真水」負担として想定されるのは、原賠法に基づく政府保険の最大2400億円と、賠償総額のうち電力負担分を超える「青天井」の部分、賠償機関への出資。
原賠法では、異常に巨大な天災地変によって生じた損害の場合、事業者は免責される。今回の事故について政府は東電の免責を否定。天災地変ではない地震や津波による損害の場合、事業者の支払い能力を超える部分は政府が援助できることになっている。 (本紙2面より)
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