浜岡1、2号機 廃炉建屋に使用済み燃料(4/15 07:57)

 中部電力が2009年1月に運転を終了し、新耐震指針の対象にならない浜岡原発(御前崎市佐倉)1、2号機の燃料プールに、現在でも計1165体の使用済み燃料が保管されていることが、14日までに分かった。東日本大震災では東京電力福島第1原発(福島県)4号機の燃料プールの水位が下がって使用済み燃料が損傷し、放射性物質が漏れ出た可能性がある。地震で燃料プール自体が損傷したとの見方もある。浜岡原発1、2号機の耐震安全性の再検証が求められるのは必至だ。
 中電によると、浜岡原発1、2号機の燃料プールにある使用済み燃料は1号機に1体、2号機に1164体。14年度末までに空にする計画という。中電の担当者は「新燃料の受け入れ計画との兼ね合いもあり、すぐに他号機の燃料プールに移すことは難しい」と説明する。冷却水を循環させるポンプの故障や電源の喪失など万が一に備え、代替電源や代替ポンプは確保しているという。
 06年に改定された新耐震指針に基づき中電は、新たな基準地震動を想定東海地震の2倍超に相当する800ガルに設定。3〜5号機の耐震安全性について国の審査を受けると同時に、自主的に千ガルの揺れを想定した耐震補強工事「耐震裕度向上工事」を行っていた。1、2号機は約3千億円という巨費を理由に耐震裕度向上工事が実施されないまま廃炉となった。運転を終了したため、新耐震指針に基づく再評価の対象からも外れている。
 京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)は「福島第1原発4号機の燃料プールは地震で損傷して冷却水が漏れている可能性がある」と指摘する。その上で、「廃炉になった浜岡原発1、2号機も、燃料プールが稼働している限り、新耐震指針に基づく800ガルや自主的な千ガルの揺れに耐えられるようにする必要があるのは当然だ」と指摘する。

 使用済み燃料プール 原子炉で燃やした後の燃料や新しい燃料を水中で保管しておく施設。使用済み燃料は熱を出し続けるため、再処理工場に運ぶまでの数年間、水で冷やし続ける必要がある。中電浜岡原発2号機のプールは、縦10メートル、横12メートル、深さ12メートル。上端から30センチ下まで水で満たしてある。東電福島第1原発4号機のプールには1331体の使用済み燃料があったが、地震後に何らかの原因で水位が低下。一時むき出しになった燃料が高温になって損傷し、火災などを起こした可能性がある。

廃炉段階の耐震安全性 曖昧さ浮き彫り
 2009年1月に運転を終了し、新耐震指針の再評価の対象にならない中部電力浜岡原発1、2号機の燃料プールに使用済み燃料1165体が保管されている問題は、廃止措置(廃炉)段階にある原発の耐震安全性の曖昧さを浮き彫りした。
 1、2号機の耐震裕度向上工事を断念したのは、原子炉建屋の免震化など膨大な工事費が必要になったためだ。現在は、少なくとも千ガルの揺れに対する耐震性の保証がないまま使用済み燃料を千本以上保管している状態。3〜5号機は千ガルの揺れに耐えられる裕度がある。同等の裕度の説明がない1、2号機の燃料プールを稼働させている現状は、内部矛盾のそしりを免れない。
 1、2号機の燃料プールの使用済み燃料は01年以前に原子炉から出した燃料で、福島第1原発4号機の燃料よりは冷却が進んでいる。プールの冷却機能が全停止した場合を想定した中電の試験によると、約30度だった水温の上昇は55度で止まった。ただ、使用済み燃料が冷却水から露出することは想定していない。
 中電は、可及的速やかに1、2号機の燃料プールの使用をやめるか、県民に安全性を証明する以外に選択肢はない。今後、日本が直面する本格商用炉の“廃炉ラッシュ”にも大きな課題を提示している。(社会部・鈴木誠之)

3〜5号機と同じ耐震安全性の裏付けがないまま、千体を超す使用済み燃料が保管されている中電浜岡原発2号機燃料プール=2009年1月、御前崎市佐倉

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