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  • 文科省、空前の賠償へ指針づくり 出荷制限農家8万4千戸


     原子力損害賠償紛争審査会で説明を聞く能見善久会長(右端)ら=15日夜、文科省

     東京電力福島第1原発事故の損害賠償の対象や金額について指針を定める、文部科学省の「原子力損害賠償紛争審査会」の初会合が15日、都内で開かれた。

     放射性物質の検出で出荷が制限された福島など5県の野菜や、原乳、シイタケの産出額は年間計671億円、農家数は延べ約8万4千戸に及ぶことが農林水産省から報告された。食品や水道、企業、運輸など風評被害も含め、影響は各方面に及ぶことが明らかになった。損害はさらに拡大しており、請求額は空前の規模となるのが確実な情勢だ。

     会長に互選された能見善久学習院大教授は「迅速な救済が大切で、指針を早急に出すのが目標だ」と協力を求めた。

     初会合には医療、原子力、法律の専門家ら10人の委員が出席。農水省は原発の30キロ圏内の海域が航行危険区域となり漁船の操業ができないことや、物価の下落について報告。「食品産業では、取引相手から汚染がないことの証明を求められ、新たな検査費用の負担が生じている」とした。海外では13日現在で29カ国・地域が輸入禁止や検査の強化を実施中という。

     このほか「相談会にさえ来られない人(事業者)が多々いる」(中小企業庁)、「福島ナンバーの中古車が敬遠されたり、納車時に汚染がないことの証明を求められる」(国土交通省)、「福島だけでなく茨城、栃木、群馬でも宿泊予約のキャンセルが相次ぎ、大変厳しい状況」(観光庁)などの報告が相次いだ。

     農水産物の損害に加え、避難に伴う費用や休業の損害、不動産価値の下落など、賠償の対象は多岐にわたるとみられる。作業は長期化する恐れもあり、審査会ではまず、指針づくりの優先順位を議論する方針。

     原子力事故に伴う賠償の指針策定は、1999年の茨城県東海村臨界事故で例がある。この時は事故の半年後、健康被害や経済損失などに関連する8項目がまとまった。

     ただ、東海村事故の避難の対象は、半径350メートルの住民約150人で、期間も約3日間。福島では避難や屋内退避を強いられている原発の半径30キロ圏内の住民だけでも約5万世帯に上る。

      【共同通信】