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福島原発事故は政府による災害だ(その1)=石破茂 聞き手●田原総一朗/ジャーナリスト

2011年4月14日 中央公論

「阪神」の比ではない

田原 あの地震のときには、どこにいらっしゃったんですか?
石破 名古屋にいました。その二日後が、解散した市議会議員選挙の投票日だったのです。事務所で講演中でしたが、かなりの揺れでした。その後、会合の予定があった新潟にはたどり着いたのですが、直接東京に戻ることができず、大阪に一泊して翌朝の飛行機で帰ってきて、党本部に直行しました。
田原 テレビで災害の状況を見たときの第一印象は?
石破 私は議員として阪神・淡路大震災(一九九五年)を経験しているのですね。衆議院だと当選六回以上になりますから、そんなに多くはいない。いやでもあの震災と比べてしまうのですが、地震もさることながら大津波の映像を目にして、これは現在生きている日本人が経験したことのない大災害に違いないと直感しました。
田原 党本部に戻ってきて、まずやったことは?
石破 震災発生直後にできた党の地震対策本部に入り、野党の立場でできることは何なのかを検討しました。政府との違いは、今もお話ししたように、自民党は与党として「阪神」の復興を直接マネジメントした経験を持つこと。今回の被災地はもとより、北海道から沖縄まで地域にきちんとした組織があるのも民主党との違いです。各自治体でも大半は与党ですから、首長さんからの情報提供や支援の申し出などもどんどん集まってくる。
 時々刻々の情報は政府が掌握しているはずですから、我々としては、そうした知恵や経験や組織力をフル活用して、救援、復興を全力でサポートしようと決めました。むろん、復興に関しては政府に全面協力する。意見すべきことは言う。

甘かったリスク評価

田原 民主党とのやり取りや復興対策についてはあとでまた話していただくとして、今回は地震・津波の被害そのものもさることながら、福島第一原発で事故が起こってしまったことが事態を複雑にしました。この点も「阪神」との大きな違いです。事故の一報を知ったときには、どう感じました?
石破 我々は東海村JCO臨界事故(一九九九年)や、新潟県中越沖地震(二〇〇七年)時の柏崎刈羽原発の事態も与党として経験しています。大きな地震などに見舞われた場合、原発は原子炉の停止↓冷却↓放射性物質が飛散しないよう封じ込める、という手順で、安全が確保される仕組みになっています。柏崎はこのシステムが完璧に作動したために、放射能汚染などの問題は起こりませんでした。今回も、あれだけの大きな地震だったにもかかわらず、制御棒が作動して発電が停まったということでしたので、少なくともチェルノブイリのように炉心が爆発して高濃度の放射能が広い範囲に拡散するといった最悪の事態にはならないだろうという認識は、当初からありました。
 ただ、まさか冷却装置の非常用電源が働かなくなるとは……。原発は、何らかの障害や誤操作などがあった場合に必ず安全側に制御する「フェールセーフ」機能に完全に守られていると思っていたので、燃料が流されディーゼル発電機が使用不能になるなどの事態は、まさに想定外。
田原 石破さんから見ても想定外?
石破 一九八五年に御巣鷹山にジャンボジェットが墜落したときにも、当初は「安全なはずの飛行機がなぜ落ちたんだ」という議論になりました。調べてみたら、過去に機体の後部を滑走路にこする尻もち事故を起こしていて、ボーイング社の修理が不完全だったことが、事故につながった。システムは完璧でも、人間がミスをすると想定外のことが起こる。
田原 明治二十九年(一八九六)の三陸沖地震では、やっぱり一四、五メートルの津波が来たという記録が残っています。岩手沿岸での話ではありますが、福島第一原発をつくるときに想定した最大の津波が四〜五メートルというのは、甘かったのではないですか?
石破 その点は認めざるをえませんね。私は今回の震災を機に、リスク評価のあり方を原発に限らず根本的に考え直してみる必要があると感じています。
 終戦直前の一九四五年に愛知県で三河地震が発生し、二〇〇〇人を超える死者が出ました。何万年も動いたことのない活断層がずれた結果です。従来のリスク評価は、えてして「何年に一回」という尺度が幅をきかせていた。でも、本当は「何年に一回」という確率と被害規模の掛け算でなければならないのです。時間軸は「一〇〇年に一回」「一〇〇分の一」であっても、通常の地震や津波の一〇〇倍の被害に襲われるのだったら、答えは「一」なのだから。
 リスク評価の誤りは、なにも民主党政権に始まったわけではありません。自民党時代だって、財政事情が厳しくなるなかで、防災対策を政策の最優先課題には挙げにくくなっていました。その点は率直に反省する必要があります。ただその上で、民主党が掲げる「コンクリートから人へ」というスローガンには、やはり強い違和感を禁じえないのです。
田原 事業仕分けなどの際に、盛んに言われた。国民の受けも悪くない。
石破 予算は厳しい、「無駄な公共事業」が多いということで……。しかし、今回の地震・津波災害は、そのスローガンの危険性を示したとも言えるのではないでしょうか。

エネルギーをどうする

田原 今から三五年前に、僕は『原子力戦争』という本を書きました。取材していて、「薪にしろ化石燃料にしろ、これまで人類は太陽の恵みをエネルギー源として使ってきた。核分裂の利用はそこから逸脱し、猛獣を扱うようなものだ」という人がいました。
 今後、そうした議論が再燃して原発反対の意見が強まるのではないかと思います。
石破 日本は電力のおよそ三割を原子力発電に依存しています。そのおかげで、夏は涼しく冬暖かく、オール電化だったら火事の心配をすることなく調理ができてお風呂にも入れる。そんな夢のような暮らしを享受できているのですね。ところが、その裏側には、今回不幸にも発生してしまったような危険が存在した。ある意味、そこから目を背けながら、快適な生活を営んできたとも言えるわけです。
 これからは、「目を背ける」ことはできないでしょう。さらに進んで「原発をやめろ」と言うのであれば、快適な生活をある程度は我慢しなければならない。不便を甘受してでもやめるのかどうかを含めて、根本的な議論をせざるをえないと思います。
田原 まさに三五年前にも、そういう話が出ていた。
石破 ちょっと話が逸れますが、二〇〇六年に北朝鮮が核実験をやったとき、「わが国も核兵器を持つべきだ」という声が高まりました。ただ、日本はNPT(核拡散防止条約)に入っていますよね。核兵器を持つということは、NPTから脱退することを意味します。当然、条約に記載された制裁を受けることになる。例えばウラン燃料は入ってこなくなる、再処理は禁止される。つまり、原子力発電はできなくなるのです。快適な暮らしを放棄してまでも核を持つのかという議論をしないとおかしい、やりましょうと、私は申し上げました。当時、政調会長だった中川昭一さんなども、議論しようと。
田原 中川さんは「サンデープロジェクト」でそう発言して、大騒ぎになりました。ただ、実際には議論すること自体が問題だという感じになって、沙汰やみになってしまいました。
石破 残念ながら。
田原 これからの話をすると、福島第一原発はおそらく廃炉。第二原発も再稼働のハードルは相当高いと見なければなりません。東電管内を中心とするエネルギー供給をどうするか、原発計画はどうなるのか。石破さんの考えを聞かせてください。
石破 残念ながら、太陽光や風力発電で原子力の穴埋めはできません。直近のことを言えば、どこまで節電が可能なのか、周波数の異なる西日本からの一層の電力融通は可能なのかといった需給両面の見直しを徹底的に行った後、冷房使用が増える夏場に向けて、いったいどれくらい電気が不足するのかを、詰める必要があるでしょう。
 この間の状況を見てもわかるとおり、日本人には助け合いの心があります。ですから例えば、各テレビ局が画面の隅にリアルタイムの電力需給情報を表示するようなシステムができないでしょうか。「供給限界まであと何%」というように。危険領域に入ったのがわかれば、みな不要不急の電気を消しますよ。それだけで、一〇%、二〇%の節電になるはずなんです。
田原 「計画停電」は予定を立てにくく、地域格差といった不公平感も生まれています。
石破 停電についても、産業界などから要請があった総量規制が本当にダメなのか、明確な答えはないですよね。工場の夜間稼働など、まだまだできることがあるのではないかと感じます。
田原 そうしたことをすべてやった上で、しかし足りないとなったときに、「やはり原発だ」という話にもっていけるでしょうか?
石破 まず前提として、安全性に対する議論が必要なことは言うまでもありません。実は、津波の想定が十分ではないという指摘があります。二〇〇五年にできた原子力政策大綱に、安全性を見直すことが明記されていますが、今度の事故を踏まえてその作業をきちんとやらないといけない。
 想定外だろうが何だろうが、事故は起きてしまった。まずは議論も対策も不十分だったことを率直に認めなければなりません。誰が悪い、彼の責任だと言っていても詮なきことで、一義的には基準を作った国の責任ですよ。だから、二度とああしたことが起こらないように、徹底的に見直しを行う。
 その上で節電可能性の追求と安全基準の見直し。それが終わらないうちに、原発はいらないというのも、安全性を強弁することも、両方とも間違いではないかと私は思います

混乱を助長した情報発信

田原 今度の震災は、始まりは天災だったけど、そのうちに人災になったと言う人がいます。例えば、原子炉への海水投入が遅れてダメージを拡大させた。原発からの避難も三キロから始まって、五キロ、一〇キロ、二〇キロ、三〇キロと、何かためらいながら広げているようで、避難住民を心身ともに疲弊させました。
 何よりも批判を集めたのは、政府の情報発信の仕方です。枝野さん(官房長官)の発表は曖昧で、海外メディアなどはまったく理解できないと言っていました。
石破 災害が起こった翌日、谷垣(自民党)総裁が菅総理にお会いして、いくつかの要望を申し上げました。そのなかで強調したことの一つが情報発信についてです。特に原発に関しては、放射線や医学の専門家でない枝野官房長官がメッセージを発信し、記者の質問の受け答えをするのはやめるべきであると、強く要望しました。専門家に任せよと。
田原 専門家って、例えばどんな人?
石破 放射線に関する知識があって、なおかつ説明能力のある人が必ずいるはずなのです。技術者はえてして難しい数字などを持ち出して語りがちですが、そうではなくて庶民感覚を理解した、わかりやすい話ができるエキスパート。今、原発で何が起きているのか、何を心配すべきなのか、あるいはその必要はないのか。そういったことは、その人に説明を任せて、官房長官は現状分析を踏まえた政府の決定だけを述べればいいのです。
(その2へ続く)
いしばしげる=自民党・政務調査会長
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

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