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情報混乱で転戦・待機…救急活動わずか90分 兵庫県隊

2011年4月7日

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写真:宮城県への転戦指示を受け、移動の計画を練る兵庫県隊=3月13日午前、福島県郡山市、西宮市消防局提供拡大宮城県への転戦指示を受け、移動の計画を練る兵庫県隊=3月13日午前、福島県郡山市、西宮市消防局提供

図:兵庫県隊第一次派遣隊の動き拡大兵庫県隊第一次派遣隊の動き

 東日本大震災の直後、第一陣としては全国最大規模の緊急消防援助隊を出動させた兵庫県隊が、生き埋めになった人の生存の目安とされる「72時間」のうち90分間しか活動できていなかったことが明らかになった。情報が混乱するなか、総務省消防庁から転戦指示と待機が繰り返されたためだ。隊員たちは今も無念さにさいなまれている。

■隊長「もっと何かできたのでは」

 神戸市消防局によると、兵庫県の第1次派遣隊は、地震発生から約9時間後の3月11日午後11時30分に出発した。総務省消防庁が12日未明までに出動指示した24都道府県の中で、最大規模の252人が64台の車両で東京方面に向かった。

 長野県付近を走行中の12日午前3時59分、同県栄村で震度6強の地震が発生。消防庁の転戦指示を受け、栄村に近い飯山市で待機した。すると「地元で対応可能。福島へ行け」と再び転戦指示が出た。

 西宮市消防局の藤岡拓郎さん(28)は焦っていた。発生から72時間を過ぎると、生存率が急激に下がるといわれる。「はやる気持ちを必死で抑えた」。集合場所の福島県郡山市に着いた時には地震から約34時間がたっていた。

 13日朝、今度は宮城県山元町への転戦指示が出た。午後に山元町に着いたが、日没後の活動は危険と判断。14日午前7時、町の沿岸部でようやく捜索を始め、隊員らはスコップで必死に泥を掘った。

 その1時間半後。桂敏美・兵庫県隊長(51)は宮城県災害対策本部からの衛星電話に耳を疑った。「南三陸町に行ってほしい」

 「なぜですか! すでに活動を始めている。他の県隊を回せませんか」

 「南三陸のほうが被害が大きい。大規模部隊の兵庫にお願いしたい」

 桂隊長は感情を抑えて無線のマイクを握った。「活動停止。転戦する」

 隊員は静かに従った。だが、地元の消防団員や消防署員からは「もう帰るんですか」「行かないでくれ」と言われた。「すれ違う町民と目を合わせられなかった」と西宮市消防局の藤岡さんは言う。

 「72時間」は南三陸町への移動中に過ぎた。15日午前7時に捜索を始めたが、1人も救出できないまま、午後1時、第2次派遣隊と交代して帰途に就いた。

 救助部隊長を務めた西宮市消防局の田中正和さん(44)は、1995年の阪神大震災で行方不明者の救出に奔走した。当時、妻と2人の幼い息子が待つ団地には、全国から消防の給水車が来てくれた。今回、「16年前の恩返しができる」と意気込んだ。「もっと何かできたのではないか」。兵庫に戻ったいま、空しさが募る。

■想定外続き、被害状況把握できず 総務省消防庁

 総務省消防庁によると、東日本大震災では、岩手、宮城、福島の3県を除く44都道府県の緊急消防援助隊が出動し、6日までに延べ約2万5千人が活動に携わった。

 だが津波で役所自体が被災するなど想定外のことが次々と起き、被害状況の把握に手間取った。消防庁は発生直後に岩手、宮城、福島、茨城の4県の県庁に職員を派遣したが、電話や消防防災無線が寸断され、被害の大きい市町村と県庁との間で連絡が取れない状態が2、3日続いたという。

 兵庫県隊の場合、消防庁は長野県から福島県へ転戦させたが、到着した後になって福島県内に緊急援助隊が集中しすぎていることが判明。逆に宮城県の被害の大きさが徐々に明らかになり、転戦指示を出さざるを得なかったという。

 消防庁災害対策本部広域応援班の担当者は「予想を超える被害で情報収集が困難だった。指示に最善は尽くしたが、兵庫県隊は転戦が重なり、時間を費やしたのは事実。通信手段の確保などを含め、今後の検討課題にしたい」と説明した。(小野大輔、太田成美)

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