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原子力安全条約:原発対策「福島」教訓 安全基準を強化--検討会合

 【ウィーン樋口直樹】ウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部で開催されていた「原子力安全条約」(72締約国・機構)の検討会合が14日、閉幕した。概要報告は福島第1原発事故について「新たな課題と原子力安全の重要性を浮き立たせた」と指摘。事故を教訓にIAEA主導で安全対策を見直すことを確認した。6月下旬のIAEA閣僚会議に向け国際的な安全基準の強化などが急務となる。

 概要報告は、深刻な放射性物質漏れに苦しむ日本に強い「連帯感」を表明、「支援」の継続も約束した。条約の目標である「高レベルの原子力安全策の達成と維持」や「放射性物質漏れを伴う事故の防止」なども確認した。

 締約国はまた、福島原発事故の教訓を早急に行動に移す決意も表明した。日本から情報や分析を得ながら安全対策の見直しを進める。日本政府はできる限り早く必要な情報を提供すると約束した。

 さらに、福島原発事故に関する条約締約国会議を来年8月に開くことも決めた。

 「原子力安全」の分野でIAEAは独自の安全基準文書を有し、150カ国以上の加盟国に提示している。だが、実際の安全対策は各国の裁量に任されており、IAEAに国際基準を順守させるための強制力はない。

 この点について概要報告は「IAEAには安全基準を確立するための機能がある」と強調。各国の裁量や責務を認めつつも、「安全分野におけるIAEAの重要な役割」を改めて確認した。

 国際的な安全基準の強化は各国の国益と相反することもあるだけに困難も予想されるが、福島原発事故の教訓を生かすことができるかどうか、IAEAのリーダーシップが問われることになる。

毎日新聞 2011年4月15日 東京朝刊

 

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