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あれから…:東日本大震災から1カ月/4 福島からの避難者、妊婦 /栃木

 ◇住宅、産科確保したが…先見えず不安募る

 福島県から多くの避難住民を受け入れている栃木県。今月下旬、県営住宅など2次避難所への移転が始まる予定だが、現状では家財道具は自己負担。収入の見通しもなく、生活用品もそろえられない避難者も多いことが予想される。妊娠中のため、一足先に宇都宮市の県営住宅に入居した熊谷雄次さん(26)早也佳さん、(24)夫婦も、何もない部屋で宙に浮いたような暮らしを続けている。

 夫婦は福島第1原発1~4号機のある福島県大熊町から避難し、妊婦専用として県があっせんした県営住宅で1日から暮らしている。早也佳さんは妊娠10カ月。一応は落ち着いたものの、身寄りのない栃木での生活をどう組み立てていいのか戸惑っている。

 夫婦の家は震災で壁がひび割れ。直後は家族や親類たちと町内の中学校の体育館に身を寄せた。その後、原発事故が発生。最低限の衣類だけを持ち出して、家族らと車であてなく避難を始めた。約1週間は避難所を転々としたが、雑魚寝を続けるのは早也佳さんには負担が大き過ぎる。家族と離れ、夫婦2人だけで18日からしばらくは都内の親類宅に間借りし、住む場所を探した。

 都営住宅600戸を利用し避難者を受け入れていると聞きつけ応募した。高齢者や障害者、乳幼児とともに妊婦も優先対象となっていたはずだったが、抽選に漏れた。そこで見つけたのが栃木県の妊婦専用住宅だった。

 県と産婦人科医会から、見知らぬ土地で産婦人科を紹介してもらえ「助かった」と2人は話す。通常は妊娠初期のうちに予約が必要な産科が多い。臨月のおなかを抱えてあちこち病院を探すことは難しい。

 ただ、県から提供されたのは布団とガスコンロ、照明、ベビーベッドだけ。カーテンもなく、底冷えのする部屋には暖房器具もなかったが、2人の勤務先も避難指示地区内にあり、いつ再び収入が得られるか分からない。避難指示が解除されればすぐにでも古里に帰りたい気持ちも強かった。取り急ぎ、テーブルとテレビ、じゅうたんを買ったが「買えばますます戻れなくなる」と感じている。

 県からは担当者が定期的に通ってケアに努め、相談にも応じる。しかしそれでも、「先が見えないのが不安。知らない土地で産むのも不安。何もかも不安だらけ」と早也佳さん。2人の生活の展望は見えないままだ。【泉谷由梨子】

毎日新聞 2011年4月15日 地方版

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