退職金付き解雇に　引退力士あぜん

　日本相撲協会は１４日に臨時理事会を開き、引退勧告に従わなかった幕内蒼国来（２７）と十両星風（２７）に解雇処分を下した。ところが、蒼国来に５２９万円、星風に２２０万円の退職金を支払うことを発表。その理由を放駒理事長（元大関魁傑）は「処分と退職金とは別物だと考えてたからね、最初から」と説明。「そんなバカな」と声を上げたのは、生活のため、師匠に迷惑をかけないようにと、やむなく退職届を提出した元力士たち。「汚い」「信じられない」と怒りの声が続出した。

　家のローンがある、家族を養っていかなくてはいけない、師匠に迷惑をかけられない…。八百長疑惑による引退勧告を受け、さまざまな思いで泣く泣く引退届を提出した１９人の元力士たちは、蒼国来と星風の「退職金付き解雇」を伝え聞き、怒りに声を震わせた。

　放駒理事長は「処分と退職金とは別物として考えていたからね。最初から」。引退勧告した力士たちが拒否していても同じように退職金を支払っていたか？　と問われると「引退勧告を聞き入れなかったということで初めて考えた」と説明したが、引退届を提出した１９人は解雇になれば退職金は支払われないものと思い込んでいた。

　ある元力士は「後付けでしかない。『は？』って話ですよね。だとしたらみんな引退届は出してないですよ」。この元力士は引退勧告に従わないことで、師匠に迷惑をかけることを避けたかったという。

　「ある意味、メンツの問題じゃないですか。八百長はやっていない。でも、引退届を提出したってことは、世間の人も半分は認めたんだと思うでしょう。それが気に食わない！」と唇をかみしめた。

　解雇でも理事会で決めれば退職金を支払うことはできる。「確かに解雇になれば退職金を出さないとは言われていませんでした。だけど、調査の段階から認めれば退職金を出す、認めなければ出さないと言われてましたから」と別の元力士。後味の悪さだけが残った。　（岸本隆）