特集/コラム
NPO法人グリーンバード・副代表 横尾としなりさん
「会社を退職してでも、政治の世界に挑戦したかった」
約5年半勤務した博報堂(港区赤坂5)を昨年末に退職。政治という新たな世界にチャレンジすることを決めた横尾としなりさん。きっかけとなったNPO法人グリーンバード・赤坂チームでの活動や、赤坂の街への思いについて聞いた。
■すべてのはじまりは、街のゴミ拾いをするグリーンバードだった――なぜ、政治の世界に飛び込もうと思ったのですか。
グリーンバードの活動をしなければ、政治の世界に進もうとはまったく思いませんでした。月2回とプラスアルファの活動ですが、ゴミ拾いをしたりおみこしを担いだり赤坂の街づくりに参加してきました。その中で、ゴミ拾いからはじまったけれど、街の中で僕たちができることはたくさんあると実感しました。町会や商店街の人たちが「赤坂復活ののろし上げるのに企画力も人出も力になり助かるんだよ」と言っていただき、仲間に入れていただくようになったんです。
――ゴミ拾いから、いろいろな課題が見えてきたんですね。
グリーンバードって、すごく簡単な活動なので社会参加のきっかけ作りになるんです。集まってゴミを拾っていると、「僕たちでも何かできる気がする」って思う。そんな風に目覚めた若者達と、街づくりに参加できる場所をもっとつなげていきたいと考えた時に、それができるのはNPOという立場ではなく行政ということが見えてきた。行政からNPOや企業に権限を渡していかないと、いつまでも行政は行政、NPOはNPOで勝手にやってくださいとなってしまう。せっかく若者が政治や社会活動に参加したいと思っているのに、とてももったいないなと。
――社会のために何かしたいけど「やり方が分からない」という若者は多い気がします。
今の世の中、解決しなければいけない課題は山ほどあります。意欲のある人と行政をしっかり結びつけられれば、限られた予算で多くの課題を解決し、街を良くすることができます。だから、企業やNPOの活動、町会や商店会の新しい動きなど、僕が率先して動き回って港区にある「良い芽」を伝え、つなげて、夢を持つ人たちに活躍の場をつくりたい。そこに若者をどんどん巻き込めば、税金を無駄にせず、可能性のある若い芽を街づくりに生かすことができます。
――政治の世界に挑戦することになったのは、グリーンバード代表で渋谷区議の長谷部健さんの影響も大きいですか。
そうですね。長谷部さんとの最初の出会いは、たまたまシブヤ大学の公演を聞きに行き「この人面白い!」と思い、その場で名刺交換をした時でした。当時は博報堂が赤坂に移転した時で、社内にCSR部を作るべきだとか、地域のために何か活動を起こすべきだと考えていた時でもありました。そんな話をしていたら「だったら横尾、グリーンバード赤坂チームをつくれば」と言われ、「じゃあ、やります」と詳しくわからないまま仲間と赤坂チームを立ち上げることになったんです。でも、政治のことについてはあまりアドバイスをしてくれないんですよ。「お前と勝負だな」って言われています(笑)。
――グリーンバードは大学生の参加も多いですよね。若者の力が政治にも必要ですか。
普通の選挙の王道はやはり「組織票」ですが、僕は若者の投票率を上げることがしたい。それは若者が、「アイツだったら入れてもいいか」と思うことだけでもいい。実際に考えているアイデアを実施していくなら、単に行政のなかで閉じるのではなく、若者にもどんどんコミットしてもらい、巻きこんでいきたいんです。
■無力感はある、それでも、できることがある ――横尾さんが発行しているフリーペーパーには、「街を動かすアイデア」がたくさん載っていますが、東日本大震災後に追加した項目もありますね。
今回の大きな震災については、元の暮らしに戻ろうとする復旧ということではなく、新しい生活のライフスタイルを提案していくことが大切だと思っています。節電下でも何不自由ない生活だったり、仕事にしても早く家に帰って家庭に時間を使うことが実は本当にすごく大切なことだったりしますよね。いろんなことが変わりつつあります。変わる前に戻るのではなく、今回の震災をきっかけに一歩前に進む。「こういう価値観大事だよね。こういうライフスタイルっていいよね」と提案していくことも必要なのかなと思っています。
――実際、被災地にも足を運びましたね。
街を元に戻すのは、ものすごく時間がかかり大変だということを目の当たりにしました。でも、町内会や自治会の方たちが助け合っている姿に自分が励まされました。割り箸1膳をみんなで使い回したり、家からあるものを持ち寄って配分したり。自分が震災にあったときに、自分が持っている缶詰を人に譲るかといったらどうだろうと考えました。残念ながら、グリーンバードはゴミを拾うだけでレスキューではない。正直、若い力は多くあるものの、できることってめちゃくちゃ少ない。ただ、これから街づくりの際には長期的に若い人手が必要になってくるので、僕らのネットワークや活動、家の片付けや街の清掃など含めてできることはたくさんあると思っています。
■港区に骨を埋める、そんな覚悟です ――4月16日に赤坂のレストランで「みなトーク」も開催しますね。
港区の未来をみんなで考える「みなトーク」では、参加者の意見などをもとに、僕が考えるアイデアに肉付けしていきたいと思っています。社会人になってから港区に住んでいます。この先、区議になれたとしても、そうじゃなくても、街に対して僕ができることはたくさんあります。この街に骨を埋める、そんな覚悟で港区と一生関わっていきたい。赤坂との出会いがなければ、この街をよくしたいという思いがなければ、政治家になろうとは思いませんでしたからね。
一人にできることには限りがある。だからこそ、港区の人、赤坂の人には負担を強いるかもしれない。それでも、どんどん参加してもらい、みんなで街を、そして国を変えていきたい、本気でそう思っています。
横尾俊成(よこおとしなり)
1981年3月3日、神奈川県横浜市生まれ。2011年4月24日に行われる港区議会議員選挙に無所属で立候補予定。早稲田大学人間科学部、早稲田大学大学院人間科学研究科卒業。2005年4月、博報堂に入社。以来、港区在住。博報堂では、自動車メーカーや保険会社、官公庁・NPOなどを担当する。博報堂が赤坂へ移転した際に、「グリーンバード赤坂チーム」を設立し、現在はNPO法人グリーンバード・副代表を務める。
座右の銘:世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かせ。
好きなアーティスト:Mr.Children
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