仏カンヌで開催される「第64回カンヌ国際映画祭」(5月11~22日)の出品作品が14日、発表された。昨年11月の暴行事件による無期限謹慎処分が解かれ、7月の舞台復帰が決定した歌舞伎俳優の市川海老蔵(33)が出演する「一命」(三池崇史監督、10月公開)が、最高賞「パルムドール」を争うコンペティション部門に選出。また、河瀬直美監督(41)の「朱花(はねづ)の月」も同部門への出品が決まった。
“海老蔵事件”の影響で、これまでタイトルと海老蔵の出演だけが明かされていた「一命」が、いきなり世界の大舞台で披露されることが決定した。
原作は、1958年に発表された滝口康彦氏の「異聞浪人記」。62年に小林正樹監督、仲代達矢が主演した「切腹」以来の映画化となる。英題は「HARA―KIRI:Death of a Samurai」。時代劇初の3D作品としても注目され、コンペ部門で実写の3D作品が選出されるのはベルリン、ベネチアを含めた世界3大映画祭では初めての快挙だ。
武家社会に立ち向かった2人の侍の生き様を描く。新たなキャストも明らかになった。海老蔵演じる津雲半四郎の娘婿で、もう一人の主役である千々岩求女(ちぢいわ・もとめ)には瑛太(28)。その妻は満島ひかり(25)。国際映画祭の常連で、三池監督の「十三人の刺客」に主演した役所広司(55)が海老蔵、瑛太の敵役となる井伊家の家老・斎藤勘解由役で出演する。
三池監督のカンヌ出品は2003年「極道恐怖大劇場 牛頭」が監督週間部門で上映されて以来。日本が震災に見舞われたなかでの吉報に「いつもと同じ春ならば、どんなにうれしかったことでしょう。でも、だからこそ、しっかり顔を上げ、前進あるのみです」とコメントした。
海老蔵は復帰舞台「七月大歌舞伎」(東京・新橋演舞場)の準備等で多忙のため、映画祭には参加しない。瑛太は仕事のスケジュールを調整し、現地入りする予定。63年のカンヌ国際映画祭に出品されて審査員特別賞を獲得した「切腹」から約半世紀。「一命」が再びカンヌに衝撃を与える。
◆「一命」 井伊家を訪れた浪人・半四郎(海老蔵)は「切腹の場所に、庭先を貸してほしい」と申し出る。庭を汚されたくない武家屋敷から、金をたかるための申し出とみた家老・斎藤(役所)は、以前にも同様の若い浪人がいたと半四郎に話す。その若者こそ半四郎の娘・美穂(満島)の婿・求女(瑛太)だった…。昨秋に京都で撮影。海老蔵はクランクアップ直前に撮影で腰を痛め12月公演の会見中止を発表した翌日に暴行事件に遭っていた。
[2011/4/15-06:00 スポーツ報知]