俳優の渡哲也(69)、舘ひろし(61)、徳重聡(32)らが所属する「石原プロモーション」が14日、宮城・石巻中央公民館の駐車場で、1週間の炊き出し「石巻げんき食堂」をスタートさせた。昼食と夕食の1日2回制で、初日は500メートルの行列ができるなど、予定していた2000人をはるかに超える約2800人が豊富なメニューに舌鼓を打った。
石巻市が待っていた。極秘に進められていた石原軍団の炊き出しだったが、規模の大きさゆえ、口コミやツイッターなどで情報は広がった。午前11時10分、予定を20分早めてスタート。行列は500メートルに達した。中央公民館に避難している約170人から、カレーライス、おでん、焼きそば、豚汁、ぜんざい、サラダが振る舞われた。
「勇気を与えるとか、そんなことは思っていないです。少しでも元気になっていただきたい。少しでも明日へ進む力になれればいい」。社長を務める渡は計5時間、立ったまま焼きそばを作り、サインにも応じた。舘は津波にのみ込まれた港町を目の当たりにして号泣。「現場を見て頑張ろうと思いました」。老人、ちびっ子が食事を乗せたトレーを運ぶのを手伝い、笑みを絶やさなかった。
1995年の阪神・淡路大震災でも1週間の炊き出しをするなど、スペシャリスト軍団は全精力をつぎ込んだ。スタッフは5度、同市を訪問。9日から現地で準備が進められた。電気と水は自前。俳優陣は13日に現地入りし、隣接する旧議会棟で、風呂も入らず、寝袋などで20日まで過ごす。渡は「阪神大震災の時、1日だけ仕事で東京へ戻った。その時、風呂に入ってしまった。お恥ずかしい」とストイックになる。
笑顔は広がった。家を失った阿部等さん(85)は「一生忘れない。昨日、炊き出しの準備を見て、うれしくて眠れませんでした」と涙を流す。公民館の配給はパンとおにぎりが主。阿部隼也君(12)は「焼きそばは、いつぶりだろう」と頬張った。
渡は、地元の小学生から「来てくれてありがとう」と書かれた紙のメダルをもらった。「被災者の皆さんに比べれば疲れたなんて言ってられない」。69歳の体にムチを打ち、1週間を乗り切る。
◆石原軍団の炊き出しアラカルト
◆人員132人 俳優7人(渡哲也、舘ひろし、※神田正輝、徳重聡、宮下裕治、池田努、金児憲史)、石原プロなどのスタッフ80人、地元ボランティア45人(14日は日本製紙石巻野球部、地元婦人会など)
◆車両29台 20トントラック1台、10トントラック1台、10トン給水車2台、4トントラック5台、2トントラック2台、冷蔵車3台、冷凍車1台、マイクロバス3台、ワゴン5台、乗用車5台、クレーン車(プレハブ設置用)
◆メニュー14種類 カレーライス、おでん、豚汁、焼きそば、野菜いため、天ぷらうどん、天ぷらそば、お雑煮、みそ汁、もち、ぜんざい、サラダ、おひたし、果物。そのうち6品を1食に提供し、3品選択できる。
※神田は16日のテレビ朝日系「朝だ!生です旅サラダ」に生出演後、合流。
[2011/4/15-06:00 スポーツ報知]