2011年4月15日5時18分
東日本大震災後、日本で開催予定だった国際会議の中止が相次いでいる。福島第一原発事故の放射能漏れへの不安が要因で、波紋は全国に広がる。
横浜市のパシフィコ横浜には今月、痛みについて研究する「世界疼痛(とうつう)学会」(本部・米国)から、「開催地をイタリアに変更したい」と連絡があった。各国から医師ら約2千人の参加が見込まれていた。
横浜市コンベンション振興課の担当者は嘆く。「会議は来秋なので、もう少し様子を見て判断してほしかった。放射能への不安以外に理由は考えられない」。同じ会場で9月に予定されているアジア太平洋不整脈学会でも開催を見直す動きがあるという。
神戸市では今秋開く予定だった超音波治療と心臓血管治療をテーマにした二つの国際会議が中止に。福岡市でも5月予定の食用ネギのシンポジウムの中止が先月下旬に決まったという。
観光庁によると、国内で中止になった国際会議は約30件に上り、今後も増えるとみられるという。日本政府観光局にも問い合わせが相次ぐ。担当者は「海外は原発事故を最も気にかけ、中止に影響している」と言う。
国際会議は経済効果が高く、観光庁は自治体などの誘致を後押ししてきた。日本での開催件数は2005年の168件から09年は538件に増え、世界17位から5位に急上昇した。
同庁は日本の多くの地域は安全だと訴える手紙を主催者に送り続けている。働きかけが成功し、名古屋市では6月の国際ビジネスの会議が中止されそうになったが、開催が決まった。
開催で被災地を励まそうという動きもある。世界建築会議は予定通り9月末に東京で開幕する。「地震と建築」を取り上げたプログラムを加え、被災地視察の日程を組むことも検討している。(坂田達郎)